ま、つまりは傍観者じゃつまんなくね? って事なのだろう、うん。多分。
「でもまぁ、結局はこうなるんだよな」
――《ザッ、ザッ》
ある意味では気分を新たに、
「……思考は、すっきりは、したけれど……今度は、寒くなってきたわ……」
――《ザッ、ザッ》
ある意味では今までと変わりなく。
――《ドフッ!》
「――ィリュウ!」
「よし。戻ってくれ、カイリュー! ……皆、進路はオーケーだよ」
「うむ。……野生ポケモンも殆どいないようだし、そろそろセキエイに着くな」
しかし、今になって本当の意味でこの世界を歩くことができているのかもしれない……とか、そんな感じだな。
某テントになれる風妖精が出てきそうな気がする台詞だし、結局今までとやることに変わりはないんだから口には出さないけど。
「……もう少しで、と。……あー、見えて来たな」
さて。先程の問答2連(ダブル爺からの)を終えた俺とミィ、親切お爺さんと(前回空気だった)ワタルはその後も歩き続け……こうしてセキエイ高原までたどり着いたのだった。
「……、……」
「……うん。よく頑張った、ミィ」
「うむ。少女にとってはきつい寒さであっただろう」
「ミィちゃんには確かにきついのかも知れないな……」
高所と寒さの両責めにあったミィを早く休ませてやりたい所だ。
――と考えて、セキエイ高原のポケモンセンター内部に素早く侵入することに。
いくつものゲートをくぐり、ポケモンセンターが合併されたリーグ本部へと入るのだった。
あと、ミィには素早く……既に暖を取ってもらう……の、だが……そこで。
「それでは、私は失礼するよ。後はワタル君に任せよう」
「あー、……ありがとうございました」
俺に向かって声を掛けてくれたこのお爺さんは、本当に俺達を「送って」くれたのだろう。
ここにはいないミィの分も感謝の気持ちをこめ、お礼を言うことにする。
「まぁ……色々と、ですけどね。本当に、重ね重ねですが、ありがとうございました」
「うむ。だがそれでも、君達のやることは変わらないのだろう?」
「はい。ですがそこは気持ちの問題です」
俺達の立ち位置を修正させてくれたのだし。それになにより、
「なにより単純に……お年寄りにでも、心配してもらえるのは嬉しいことだと思います。その点についてはお礼を言っても問題はないでしょう?」
「……はっは! 遠慮なく言ってくれる!」
壁を作るというのも、それをわざと破るというのも、面倒だからな。
……全く……楽しむのも、難しいもんだ。
「いつかまた会いましょう。その時は、バトルでもしますかね!」
「そうだな。君たちとのバトルならば、いつでも大歓迎だよ」
そういうとお爺さんは振り返って、コートの内側からボールを取り出す。
……うん、やっぱり渋い(思考跳び)。
「それではな、若者達。君達と出会えたことに、感謝しよう」
――《ボウン!》
「ウォー、グルゥッ!」
でもって、そのまま出したポケモンに乗り、セキエイの空から飛んでいったのだった。
……あー、
……ウォーグル、ね……
ΘΘΘΘΘΘΘΘ
―― Side 『お爺さん』
「……なるほど。何を望んで生きるか、か」
こうして空港で飛行機を待つ間にも考えてしまうのだが、やはり若者の持つ力というものは凄まじいものがある。
ワタルしかり、その後に出遭った若き……いや、肉体的には幼き、といった方がしっくりくるかも知れんな、あの2人ならば。
「私も市長として何かを残さねば『ならん』……と、思ってはいたのだが」
成程。残さねば、ではなく「私が、残したかった」のだろう。そして、この想い自体も無駄ではないとあの2人が教えてくれたのだ。
……この年になってからでも、存外学ぶことはあるものだな。
「……門下生か」
ショウ……2人の、少年の方が冗談交じりに提案していた案。
これならば確かに、私のポケモンバトルへの執念もいい方向で生かせるのかもしれない。
――《ボスッ》
「おっと……すまない。余所見をして……」
「……いっひっひ! 何を物思いにふけっているかい、シャガ!」
「……キクコか。久しいな」
あいかわらず神出鬼没なヤツだ。
そして、第1回ポケモンリーグからずっと四天王の座に着いているキクコがここ(空港)にいるということは、だ。
「セキエイ高原から、わざわざ空港まで追いかけてきたのか」
「ふん、あたしもそこまで暇じゃあない……といいたいところだが、今回ばかりはその通りだよ」
「……何用だ」
こいつ……キクコも、私と同じくポケモンバトルに執心している者。そしてセキエイから追いかけて来たとなれば、……あの2人のことだろうか。
「そうさ。市長職も始まって、忙しくて時間がないだろうに、あんたが妙に気にかけている様だったからね。感想を聞きに来てやったのさ!」
「……感想、か」
ふむ。
「……まだまだ私達には敵わないだろう」
「……それで?」
「だが……彼らのような若者をこそ、私達は待っているのかも知れん」
「……ほっほう。……そりゃあ、あんたにしては最高の評価だねぇ……」
私の言葉に、キクコは先までの高揚が抑まったかの様に見える。だがこれは、おそらく……逆だ。昂ぶりを意識的に抑えなければいけなくなっているのだろう。
……何故なら、立場が逆であれば私もそうなるからな。
「……ひっひ。それなら……少しばかり楽しみが増えたかもしれないねぇ」
「……程々にしておけ」
「おや。やめろ、とは言わないのかい」
……言わないだろうな。確かに。
「私達の様な年寄りは、どうせ乗り越えられていくものだ。……それに、それがお前なりの……」
「あーあぁ、全く。どうせあたしゃあババァだからね!」
……拗ねたか、照れたか。どちらにしろ素直じゃない奴なのは昔からなのだが。
「後悔しとくんだねシャガ。このキクコ、あんたと違って優しくはないんだからねぇ!」
「……わかった、わかった」
そう、言葉だけは悪態をつきながら、杖を突いてキクコが空港から去っていく。
……全く。後2ヶ月もすれば新しい春だというのに、オーキドも大変なヤツに絡まれているものだ。
―― Side End
キクコとシャガについて
原作において、この2人の関わりは「一切」描写されておりません。ですが一応正しい原作沿いにおける設定として、キクコとシャガの2人ともポケモンバトル大好き、という部分は共通しております、はい。
また原作において、キクコは「イッヒッヒ」とは笑っていないようでした。これも私の捏造です、はい。
……えと、ついでにキクコツンデレ説も私の(ry