あんなに明るかった月が沈んで太陽が顔をのぞかせている頃になっても、オツキミ山の頂上にはむしろ先程までより多くの人とそのポケモン達が集まっている。
全ては「オツキミ山事変」とでも呼ぶべき昨晩からの事件の後始末のせいなのだが……はてさて。
「これで全員ですか?」
「はい。捕らえたのは、これで全部ですよ」
変装している服装のせいで何度か団員と間違えられたけどな。
因みに目の前では、バトルをしていた幹部や下っ端共がジュンサーさん達に次々と連行されていってる所だ。なんにせよ、オツキミ山の頂上がこんなにも賑やかになったのは初めてなんじゃないか? とはいえ、ロケット団の悪事で賑やかになっても嬉しくはないかも知れないけど。
……んー……む?
「ショウくーん? 引渡し、ご苦労様ー!」
ジュンサーさんと話をしているところへ、ハナダジム現ジムリーダーにしてカスミの姉であるサクラさんが走って来た様だ。
眩しさに若干目を細めながらそちらへと視線を向けると……今立っている所は縦穴のあるオツキミ山頂付近なため……走って来るサクラさんの背後には朝靄に包まれたハナダシティが見えていた。
眼下に広がる朝日差し込む朝靄の風景なんかを見下ろしていると、なんとも徹夜明けの気分だな。実際に徹夜明けではあるけど!
……ま、無駄思考は置いといて。サクラさんにも開口一番ではあるがお礼を言いたいところだ。
「有難うございました。サクラさん」
ヘルガーの炎を受けたニドリーナも炎以外の傷がなかったために傷口から感染しないですんでいたし、今回俺に協力してくれた班員やそのポケモン達は全員無事だそうだ。この結果を得られたのは、各ジムリーダー達が協力してくれえたからだろうと思う。
……いや、ヘルガーの炎って火傷の跡から感染するらしいんだよな。怖い怖い。
そして、今回捕まえたロケット団員達はハナダ・ニビの警察両方から引き取られることとなっている。そのせいでサクラさんもタケシも、暫くは忙しい日々が続くのかもしれないので……そう考えるとなんか、申し訳ないかも。
「んふー。ショウ君は気にしなくていいのよー? ロケット団が蔓延っている方が面倒なんだし、駆除できたのはむしろ有難い事なんだから!」
そういって、自らの守る街をバックにサクラさんは笑う。……なら、まぁ良いか!
因みにロケット団員下っ端はピッピの流通ルートをはくのも早かったらしく、既に大半のピッピの行方が判明しているそうだ。まぁ、中には大好きクラブにいたピッピの様に人に慣れてしまっているのもいるだろうし、そこについてはオツキミ山に強制送還とはならないようにこちらからも調整しようと思っている所である。
と、考えているうちにもサクラさんが矢継ぎ早に話しかけてきていて。
「こっちはこっちで研究室の中にいた妙にドガースばっかり手持ちの研究員とか、コラッタ・ズバット・アーボの代わり映えしない下っ端軍団とか、バトルに触発されて飛び出してくる野生ポケモンなんかと戦ってたから大変ではあったけどねー」
「それはご愁傷様です。サクラさん的にも、ロケット団的にも」
「ううん、幹部とか言うのと戦ってたショウ君程じゃあないと思うよー! ……それにしても、ショウ君からのあの連絡はなんだったのかしら?」
「あー、あたしが勝てたのはサクラさんのおかげだって事です」
では、毎度の試合後解説をば。相変わらずの長さだけど。
まず、戦っていたロケット団幹部の正体。ヒントはロケット団幹部+手持ちヘルガー。これだけで誰かを特定できる人も多いかもしれない。……その正体は『アポロ』だ。
名前を覚えている人は少ないかもしれないが、HGSSではラジオ塔展望台で最後に戦い、FRLGではナナシマのロケット団倉庫で戦った奴である。ただしFRLGでの戦いのときは「ロケット団幹部」としか表記されていなかったんだけどな。
どちらの際にも、手持ちのエースがヘルガー。ゲーム的な部分もあってかFRLGの時の方がレベルが高いけど、台詞といいヘルガーといい同一人物であろうとは推測できたのだ。
でもって、そのアポロの手持ちの考察。
今のこの時代がFRLG手前なので、HGSSよりもFRLGの手持ちを優先する。すると、ゴルバットかマタドガスの2択になるの、だが。
……ここでロケット団がよく「逃げる」こと、「ポケモンを道具のように扱う」ことを念頭に置く。さらにアポロが戦闘中に言っていた「このバトルにおいて、ロケット団は逃げ切ることが出来れば勝ちである」ということも前もって理解しておけば……マタドガスが適していると考えられる(半分以上勘とか俺も言ってたけど)と思う。その要因としては、『じばく』を所持しているという点がある。
例えばゲームであれば、両者戦闘不能になった時点で『じばく』を仕掛けたほうが云々といった形での勝敗がつく。そしてそれは、この世界における公式ルールでも適用されている勝敗の決定法だ。
しかし、この場において両者の手持ちが戦闘不能になれば、残るのはトレーナー同士。子どもである俺と大人であるアポロが戦えば、普通に考えれば大人が負けることはないだろう。そうなれば逃げ切ったも同然、すなわちアポロの勝利なのである。
……いや、チートあるから実は負けないんだけどな?
とまぁ、そんな状況にて「ポケモンを道具のように以下略」な奴が選ぶポケモンというのはマタドガスだろうなー、と女の勘も告げていたのだ。『じばく』できればどんなに不利でも引き分けに持っていける可能性が高いからな。あとプライド高そうだったし、悪の組織っていうのに妙な誇りをもってそうだったし。
次に、何故マタドガスは『じばく』出来なかったか。
……というかまず、隕石落下跡の縦穴近くで『じばく』させてしまっては崩落して皆さん生き埋めの危険があると考えてたから、阻止する方向で動いてるので悪しからず。
で、まぁ結論から言うと「水タイプのジムリーダーであるサクラに、しめりけの特性を持つゴルダックを出しておいてもらった」のだ。『しめりけ』は『じばく』等が出来なくなるという特性で、マタドガスが『じばく』出来なかったのはこれのせいなのである。サクラさんがゴルダックを持っているのは、①の時に確認しておいたんで。
さて。特性を使うと決めたからにはゴルダックとの距離が大切で、状況確認時での縦穴との距離目測は、20~30メートル先。しかし相手のマタドガスはトレーナーであるアポロと共にこちらよりも穴に近い場所にいたため、実際には穴まで10メートルなかったんじゃないかと思う。で、これはポケモンバトルにおいては決して遠い距離ではないため「ゴルダックの特性もこっちに届くかなー」と考えたのだ。
しかし、事前に覗き込んでいたために縦穴の深さもわかっていて……縦穴の底で下っ端団員と戦っているサクラやゴルダックとの距離は、実際にはもっと遠かっただろうと思う。
そこでアポロがグダグダ語っているうちに、種族値的にもマタドガスより早く動けるピジョンへ『かぜおこし』を指示。相手の位置を「より穴へと近い位置に移動」させることにした。……まぁ、これは保険みたいなものだけどな。
これらの結果として、マタドガスは『じばく』することが出来なかったのである。その後はなるべく戦闘の位置を動かさないよう、色んな方位から『でんこうせっか』で攻撃し続けて撃破だ。
……あとこれは蛇足且つ余談だけど、流石にあそこでアポロがパニックを起こし『じばく』を連呼するとは思ってなかったので。
あいての『じばく』のタイミングで手元で『げんきのかけら』を使い、ニドリーナとピジョンで2対1でのバトルにしてしまおうと考えてたんだが……ま、ニドリーナの出番はなかったという次第だな。
さて、解説は終了だ!
こう纏めてみても、今回ロケット団に勝てたのはチームの力が大きかったなぁ……とか考えつつ周囲を見ると、今回のリーダー格である皆も丁度よく集まって来ている所だった。
……なら、もう1度お礼を言っておくかな。
「まぁアレですよ。今回は、あたしに力を貸してくれて……」
しかしここで違和感を覚え、自分の状況を省みること……に……
「(……ミュ?)」
↑
主人公さんはミュウの『へんしん』でロケット団員コスプレ&フルスキン女装中。
(ミュウが『へんしん』しているので、うかつに解除できません)
「……んふー。『あたし』、ねー。ショウちゃんって呼んだ方が良い?」
「おねぇちゃん、こんな所にいたー。……あれ、おねえちゃん? この娘……」
「おーいサクラさーん! ハナダの方の収容状況……、は……」
「……」←リアルエスパー
「班長……ですよね?」「ハンチョー!?」「……ハンチョウ?」
……朝日がチカチカしていて、非常に眩しい。
……え……目の前真っ暗になってくんないのかなぁ、これ!
……戦闘描写が憎いです。そして何より、私の文章力のなさが怨めしいです。
今回は本編最後に大体まとめて説明してみました。ですが、本編自体が読み辛(ry
以下、開示出来るその他ネタの解説です。
・カスミの姉サクラ
殆どオリジナルです。口調とか性格とかも。
年齢不定、主人公よりやや上。本編中のカスミが10才未満でジムリになれないため、アニメより長女の名前を逆輸入させて頂きました。本当は母親を使いたかったのですが、両親は設定の欠片も見つからなかったので、姉で。
・アポロ
倉庫のロケット団幹部=アポロは確定……ではないのかもしれませんが、設定的に確定で良いかと愚考してしまいました。彼と思われる人物は、FRLGにおいて幹部とは表記されますが立ち絵は下っ端と変わりません。
性格が違うのは、ここからHGSSに向けて変わるからという。もう結構変わりましたけど。