ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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Θ49 VSダイゴ

 

 

 爆睡眠コンビネーションで(たま)の休みを無駄消費して、更に翌日。俺は選手控え室にて対策を練っている最中だ。でも、今日は相手が分かっているからまだ良いハズである。

 

 

「相手がダイゴだからなー」

 

 

 ダイゴの出してくるポケモンが鋼タイプであれば、「シンオウ地方でのもう1個の目的」だったピジョンの新兵器がお披露目となる。相手が岩タイプであれば先日の脳内会議の通り、ニドリーナに『へんしん』したミュウで『アイアンテール』を連発してもらえば良いかな。あとは、鋼と岩なんていうヤツが来たならばそれこそ頑張って『にどげり』するしかないかもしれない。

 ……むぅ。鋼と岩の複合タイプのポケモンって素で「ぼうぎょ」が半端ないのが多いから、いくら4倍弱点でも物理技じゃ削りきれないと思うんだけどなぁ。格闘タイプの中では弱めの威力の『にどげり』だし。

 

 

「……となればプリンを登録して……って、駄目か。相手の先発ポケモンを確実に倒せるとは限らない」

 

 

 プリンの『ほろびのうた』であれば相手を強引に倒せる……かと思いきや、アレは自らも倒してしまう技だ。しかもポケモンを交換した時点で「ほろびのカウント」がリセットされてしまって効果が無くなるんで、相手を最後の1体にしなくては容易に逃げられてしまう。

 でもって更に。なにせ俺のプリンは、レベルが10と残酷なまでに育成不足なのである。となれば相手の手持ち1体に対してこちらは2体残っているという状態を作り出す必要がある。

 さらにプリンは初めのターンで撃墜されるだろうから、最初の1体が(最初の1体が相手の先発を撃墜したという前提がそもそも必要なので)傷ついた体で残り2ターンを耐え切らなくてはならないのだ。この点については、プリムさんの時は『くろいヘドロ』で何とかなったけど……

 

 

「ダイゴがこないだのボスゴドラとか出してきたら、どうしようかね?」

 

 

 俺が捕まえたのにな、との思考は彼方へと遠投しといて。あれから日程はそう空いていないからどうせバトルが出来るようなレベルではないと思うし、多分出ては来ないだろう。しかしつまりは、攻撃力高めの相手が出てこられたら回復量を上回ってしまうんだし面倒なことになりそう、という思考路線なのだ。

 ……ダイゴのゲームでの手持ちは防御高めの御仁が多かったから、何となく大丈夫な気はするけどさ。

 

 

「なら結局は相手の手持ち次第だな。……ダイゴの手持ちを予想してみるか。ダイゴの思考的には、」

 

 

・硬いものが好き = 防御が好き

・ダイゴはバトルクラブ高ランク

・となれば、得意な戦術もある

・多分、防御を活かした戦い方をしてくる

 

 みたいな感じかと。まぁとりあえず、ゲームでの手持ちやらこないだのムロでのダイゴの選んだルートから先発は予想できているんだ。なにせ「空を飛べるポケモンを持っていなければ危険すぎる、壁際を伝うルート」を通ってたからなぁ、ダイゴは。

 あとのもう1体は、ホウエン地方のポケモンも調べつくされてはいないことや化石ポケモン再生技術はこないだ作られたばっかりという点を考慮すれば……

 

 

「ネンドールもしくはメタグロスってトコだな」 

 

 

 ネンドールはともかくとして、想像したくない相手だよなぁメタグロス。合計種族値600族だし。かといって2対2のバトルに「エース」を出さないというのも考え辛く、(ネンドールはエース向きのポケモンではないから)メタグロスが入ってくる可能性は物凄く高いだろう。メタグロスの進化レベルについては他の地方のチャンピオン達と同じくゲームよりも低レベルで進化できている可能性が、これまたダイゴの石愛によって十分過ぎる程にあると思う。

 で、あとはゲームでの手持ち順なんかから考えて……ピジョンで、個人的にはいける気がする。

 

 

「……まぁ、後はバトルしてみてからか」

 

 

 先発さえ上手く突破できれば勝ち様は幾らでもあるだろう。んじゃ、行くか!

 

 

 ――

 

 ――――

 

 

『さぁさぁさぁさぁ、本日はお日柄も良くて以下略! ブーイングされる前に、早速選手の紹介をいたしましょう!』

 

 《ワァアアッ!》

 

『このタイミングでの歓声はなんとなくわたしへの挑戦な気がしますけど、とりあえず無視しますよぅ! ではまず挑戦者、ショウ選手ですぅ!!』

 

 

 今日も絶好調だなぁ、アナウンスのお人。無駄な方向性だけど。

 

 

『プリム様やシバ&トウキさんを破っての3戦目進出! これで9才とは驚きの以下略! ……略せてないですよね、あと実力って言うだけでしたしッ!!』

 

 

 ……このアナウンス嬢にはもう1人、ブレーキ役が必要なんじゃないだろうか。個性がウケてるのかもしれないが、寄り道が多すぎて解説としては機能しないと思うんだ。まぁ、俺としては面白いから別に嫌いじゃないけど!

 で。そんな風にバトルフィールドに立ちつつ無駄思考をする俺の向かいには、予定通りにダイゴが立っている。因みに少し視線をずらした俺の隣には、先発予定であるピジョンがおとなしく待ってくれているという状況だ。……おとなしく、とかいう事実からしてどうやら、俺の手持ち達は小うるさいアナウンスにはここ数日で慣れてしまったらしい。こうしておとなしく待ってくれてのはありがたいけれど、なんだか申し訳ない感覚も多大に感じていたりなんだり。こんなのに慣れさせてしまってスマン!

 

 

『次に、ショウ選手の対戦相手! デボンコーポレーションの御曹司で、ホウエン地方バトルクラブナンバー2の実力者! こちらも年少にして会社の部門にも属している天才少年……ダイゴさんですぅ!』

 

 《ワァッ!》《ダイゴクンーカッコイイー!》《ステキー》《キャーカワイー!!》

 

『はいはい! 黄色い悲鳴が上がるのは判ってましたよぅ。ダイゴさんのルックス的に!! そんなのはいいですから、今日もわたしからルール説明をばさせていただき――』

 

 

 お、アナウンスからは今日もルール説明があるみたいだな。今日が始めての観客もいるだろうから、当然と言えば当然か。んじゃあ、今の内にダイゴに挨拶でもしておくかね。

 そう考え、俺からダイゴへと近づくことに。

 

 

「んじゃあダイゴ、今日はよろしくな。手加減なしで!」

 

「あぁ。ボクも手加減はしないよ……と、言いたいけどね」

 

 

 ……ん?

 

 

「ポケモンバトルは好きだけど、実はそれを指示するボク自身にはあまり自信がないんだ」

 

「えー……今更だろ。バトルクラブのナンバー2で天才少年が何を言うか」

 

「とはいっても。……ボクとしてはポケモン勝負くらいには、親の威光が届いていないと信じたいんだけどね」

 

 

 そう言いつつダイゴは本当に困ったような顔を見せていて……成程。デボンコーポレーションの社長である親を助けたい気持ちがあり、その会社にいるからには七光りを気にしているなんていう面倒な部分もあるんだろう。七光りが届かない「本当に自分の実力を見てもらえる場所」が、ダイゴにとってはバトルクラブだということか。

 ……でも、

 

 

「お前は負ける気はないんだろ?」

 

「うん。負けたくはないかな」

 

 

 ふぅん、なら。

 

 

「ならどちらにせよここで俺がお前を『負かせば』、万事解決っていうワケだ」

 

「……そうか。……あぁ、成程。……うん、そうなる!!」

 

 

 俺はどちらにせよ「わざとは負けない」けど、ダイゴも「負けたくはない」。しかしこの仮定は、ダイゴが勝つことを前提に成り立っている図式だったり。

 ……つまり俺が「勝ってしまえば」、こんな事で悩む必要はないだろう! 強引だけど!!

 

 

「こんなにバトルが楽しみなのは、久しぶりかもしれない!」

 

「おー。楽しそうだな、ダイゴ」

 

「いやぁ……そんな風に言われたのは流石に初めてだったから」

 

 

『――となります。ではこれにて解説しゅーりょーですぅ! 両者、位置についてくださぁいッ!』

 

 

 ダイゴが腰のモンスターボールに手をかけ、同時に、俺も隣に控えていたピジョンへと指示を出す。

 

 

「どうかボクを負けさせてくれ! ショウ!」

 

「うっわ。さっきはああ言ったけど……どうせなら自信満々にボクが1番強い、くらいの大言を語ってみせろって」

 

「……そうだね。それはいつか、ボクがポケモンリーグの頂点に立てた時に!」

 

 

『それではっ……バトル開始ですぅ!!』

 

 

 ダイゴの宣言に重なったアナウンスと同時。

 相手はボールを持ち上げて、俺も ―― ほいよっと!

 

 

「頼んだ、ピジョン!」

 

「ピジョー!」

 

「1番手はキミだ、エアームド!」

 

「エァームドッ!」

 

 

 投げられたモンスターボールからは互いのポケモンが、フィールドの空へと飛び出す。

 

 

 ――さぁて、ピジョン。まずは作戦通りに距離をとってくれよ!

 

 

「……ピジョーォッ!」

 

「様子見かい? ショウにしては、消極的な戦法だね」

 

 

 「指示の先だし」によるすばやさアドバンテージを利用して距離をとったピジョンをみて、ダイゴはそう評価してみせる。プリム戦とは違ってこちらからは何もしていない点もあってか、警戒している様子だな。

 

 

「ならまずはまきびしだ、エアームド!」

 

「ムドッ!」

 

 《バラッ、バラバラッ》

 

 

『おや。ダイゴ選手は距離をとったピジョンに対して、フィールド状況を有利にし始めましたようですよぅ!』

 

 

 おぉ、これはアナウンス解説の言う通り。『まきびし』は大雑把に言えば、交代時に浮いていない相手ポケモンへ定値ダメージを与えるっていう技だ。俺のピジョンへすぐさまダメージを与えられはしないけど、後々の展開を有利にすることが出来る。

 ……しかし、これは2対2のバトル。ポケモン交代の行われる回数は少なくなるハズで、ダイゴもそれに気づいていないって事はないだろう。なら、相手にも思惑があると思う。

 

 

「……うし。そんなら、ピジョン!」

 

 

 声掛けをしてピジョンの視線を引く。そして、サインによるタイミング指示だ!

 

 

 ……『ねっぷう』で!!

 

 

「ピ……ヨーッ!!」

 

 ――《ブオォオッ!》

 

「ムドッ!?」

 

「どうした、エアームド…………熱い!?」

 

 

『えぇっ!? ダイゴ選手のエアームドが『かぜおこし』に押されてますよぅ!? あーんな硬そうなポケモンなのに!』

 

 

 そりゃあそうだ。実際には風に色が着く訳でもなし、遠目からじゃあ……鋼タイプに効果抜群な炎タイプの技『ねっぷう』は、ただの『かぜおこし』にしか見えないのは仕方がない。しかしリアクションからして、少なくともダイゴには「こちらがエアームドに有効な技を使っている」のはばれているだろう。ま、対抗策はうってある!

 

 

「……仕方がない。エアームド、接近して鋼の翼!」

 

「ェア、……ムドォ!」

 

「ピジョン、もう1度!」

 

「ピジョォーーッ!!」

 

 ――《ブォォッ!》

 

 

 硬質化した翼を直接ぶつけるという『はがねのつばさ』がピジョンへと当たるその前に、今は「離れた位置にいる」エアームドに向かって2発目の『ねっぷう』が放たれた。エアームドは向かい風の中を突き進み……いや、向かい熱風だけど。

 

「(このために最初のターンを移動に費やしたんだからな)」

 

 最初の指示にて俺はピジョンに、指示の先だしのすばやさアドバンテージを使って距離をとってもらった。これは「ダイゴお得意の守備を生かした戦法を誘発してターンを消費してもらうため」でもあり、「種族値的に物理攻撃を得意とするであろうエアームドから距離をとるため」でもある。

 こちらが遠ざかり、かつ何もしないとなれば、ダイゴは自分の得意な戦法に持ち込もうとするであろうとの予測はついていた。例えば『まきびし』の後に『ほえる』『ふきとばし』を使っていく戦法とかな。俺のピジョンには『まきびし』は効かないけど、ダイゴは2体目がエースだとすれば、強制交替技によって俺のもう1体の手持ちを確認しておくだけでも利点になるに違いない。そもそも『まきびし』によるダメージが加わる可能性もあるんだから、尚更だ。

 しかし実際は、遠ざかっても間接技であればこちらからの攻撃は可能。ダイゴの思考的には間接技であっても……ピジョンとか鳥ポケモンの代名詞である『かぜおこし』などであれば……エアームドにはダメージが殆どないって算段だったんだろうな。つまりは俺のピジョンの『ねっぷう』の習得・存在自体が文字通り、大誤算(ダイゴさん)となったのだった。

 

「(ダイゴ自身が硬いポケモンタイプに詳しいし……けど今回に限っては、鋼タイプの相性を知っているのが仇だ)」

 

 鋼・岩タイプ相手に「普通の飛行タイプである」ピジョンじゃあ歯が立たなかっただろうってのは、確かだけどな。

 ついでに言えば、十分に距離をとっておけばエアームドお得意の物理直接攻撃が来るまでの間に(それこそ今の状況そのままに)数発くらいは『ねっぷう』を当てられるとの算段も元からあったし。

 

 さて。

 そんなエアームドは未だ『ねっぷう』に逆らいつつ、ピジョンへ向かって羽ばたいており……

 

 

「――ムド、ォオ……!」

 

『ああーーッ! エアームド、だんだんと高度が落ちてきて……』

 

 ――《ドスッ、ドッ、ズザザァッ!》

 

「うん、ありがとう。……戻ってくれ! エアームド!!」

 

 

『――戦闘不能! 戦闘不能ですぅッ!!』

 

 

「ナイスだ、ピジョン! あんがと!」

 

「ピジョォ」

 

 

 さて、まずは先発勝利だ。……しかしここではとりあえず、何故ピジョンが『ねっぷう』を覚えているかという解説は後回しにして、次に切り替えておきたい場面。なにせ俺の予想ではダイゴの次のポケモンは……

 

 

「次はキミだ……メタグロスッ!!」

 

「ェタグロスッ!」

 

 ――《ドッシィイイイイン》

 

 

 予想通り会場の真ん中に現れる、4脚青鋼の身体を持つポケモン。……嫌な予想ばかり的中するんだよな、俺。

 

 

『でましたぁっ、ダイゴさんお得意のポケモンですよぅ!! その爪の一撃と遠距離エスパー技で、幾多のポケモン達をのして来たエース中のエース! なんだかカニっぽいポケモンでぇっす!』

 

 

「……アレの相手も続けて頼んでいいか、ピジョン?」

 

「ピジョジョォ」

 

 

 ピジョンが一旦俺の横へと着地し、コクコクと頷く。

 それにしても、流石にメタグロスの相手をするにはピジョンだけじゃあキツいと……うん?

 

「(爪の一撃?)」

 

 いつもであれば聞き流していたアナウンス嬢の言葉の中にあった、違和感を覚える単語だ。メタグロスなのに爪の一撃……『メタルクロー』か。……もしかしたら、

 

 

「うーん……やってみる価値は、十分だな」

 

「ピジョ?」

 

「あぁ、作戦は決まった。基本的にはさっきと同じだけど――」

 

 

 視線を逸らさずに話している俺の目の前で、降り立ったメタグロスは目を見開く。これで相手も戦闘態勢が整った。そんな俺をダイゴが指差して、勝負の始まりを告げる。

 

 

「これがボクのエース。さぁ勝負だ、ショウ!!」

 

「グロスッ!」

 

「――ピジョ!」

 

「頼んだぞ。……うし、行こう! ピジョン!」

 

 

『さぁさぁ、お2人のポケモンが同時に動き出しました! またも距離をとったショウ選手のピジョンに対して、ダイゴ選手のポケモンは……『ねんりき』ですぅッ!!』

 

 

 《ヒィンッ》

 

「ピ――ィジョッ、」

 

「回避に専念したのか……メタグロス、もう1度!」

 

「タァ、グロスゥ!」

 

「ピィ――――ジョッ! ピジョ」

 

 《シュンッ》――《バサバサッ》

 

 

『ピジョンが高速回避の後に、空中で体勢を立て直します! 果たしていつまでかわし続けられるのかぁ!! なんだか異常に早い気もしますけどね!!』

 

 

「ならばメタグロス、念力を面で展開して確実に捉えるんだッ」

 

「グゥ、ロォスッ!」

 

「うし、ここで反撃だピジョン! (ねっぷう!)」

 

「ジョォオッ!」

 

 

『風と念波が交差し、互いのポケモンを直撃します! いや、ダイゴ選手のほうが早い! ピジョンよりも重そうに見えますが、カニっぽい方が早いですよぅッ!』

 

 

「くっ、やっぱり念力の範囲を広げると威力は弱くなるね。でも、ボクのメタグロスは耐久力に自身がある。どちらが我慢強いか……メタグロス! もう1回、広範囲で念力!」

 

「ピジョン、もう1回!」

 

 ――《ヒヨォン!》

 

 ――《ブォッ!!》

 

 

 うし! なんとか上手く進んでるから、この辺で地の文(むだしこう)を再開しよう。

 どうやらダイゴは、俺が耐久勝負を狙っていると思ってるみたいだが……勿論、メタグロス相手にそんなことしてもピジョンじゃあ勝ち目がないのは明らかだ。俺の2番手でメタグロスに確実に勝てるのであれば耐久勝負もいいかもしれないけど、手持ちにピジョン以外で炎タイプもしくは地面タイプの技を使えるポケモンはいないんだし。

 

「(ここまではなんとか、『でんこうせっか』の空打ちで技の直撃を回避できてる)」

 

 だからといって、指示を出しても確実な回避ができる保障はない。ピジョンも『でんこうせっか』の後に体勢を立て直すのに結構な時間を喰ってるから、普通の『ねんりき』にもいつかはあたってしまうだろうな。ジリ貧というヤツだ。

 

「(……だからこそ数度回避をすることによって、ダメージの拡散する広範囲への攻撃を誘発した。ダメージの減ったターンを利用して『ねっぷう』で反撃。ついでにダイゴの指示における言質から、その技が『ねんりき』だって事を確定できた)」

 

 最初の2ターンを回避できたのは運が良かった。そのおかげで『ねんりき』が広範囲に切り替わり、『ねっぷう』によって2回も反撃できた……けど、相手はあくまでメタグロス。いくらダメージが拡散しているうえ『サイコキネシス』ではなく『ねんりき』であっても、ピジョンじゃあ2発も受ければ「ひんし」状態が近いに違いない。

 

「(だから勝負は――ここで仕掛ける!)」

 

 

 息を精一杯吸い込む。

 

 空に浮かび『ねっぷう』を放ってくれているピジョンに向かって。

 

 サインによる指示ではなく、出来る限りの大声を使って指示を叫ぶ。

 

 そう ―― 例え『ねっぷう』は知らなくとも、ポケモントレーナーであれば誰もが知っているであろう、その技の名を。

 

 

「ピジョォォォン!

 

 『たいあたり』

 

 だぁぁあーッ!!」

 

 

「ピジョッ」バサッ

 

「!? ……メタグロス、迎え撃ってくれ! 『メタルクロー』!」

 

「グゥ、ロォ――」

 

 

『おおっと、ショウ選手! この展開になって接近……せ、ん……』

 

 

 今まで繰り広げられた遠距離戦にいささか焦れていたであろうメタグロスは、お得意の物理攻撃が出来ると喜び勇んで。

 ピジョンよりも素早く動く事ができるため、直接接触の際に『メタルクロー』で迎え撃とうと、ご自慢の爪を振り上げている――――けど。

 

 

『……ありゃあ?』

 

 

「ピィ――」

 

「…………しまったッ! メタグロs」

 

「――ジョオォッ!」

 

 

 《ブォォオオッ!!》

 

 

「――ロォ、ロスッ!?」

 

 

 アナウンスの気の抜けた声と同時に、ピジョンから放たれた3発目の『ねっぷう』がメタグロスを襲う。

 ……因みに、ピジョンは接近などしていない。素振りは見せたけどな。

 

 

「グ、ロ……ォス」

 

 《ズッ、スゥゥンッ!》

 

 

 ――《ァァ、》

 

 

『ああっと、かぜおこしによってカニさんが倒れまs』

 

 

 ――――《《《ドワァァァーッ!!》》》

 

 

 

 

ΘΘΘΘΘΘΘΘ

 

 

 

 

 本日も夜になったら郊外の草原まで逃げてきて以下略。そして本日も解説タイムを以下略。

 

 

「相変わらずだなぁ……俺の脳内」

 

 

 なんて風に、一応は自分に呆れてみる。いっつもこんなんだし、まぁ、別にいいけどな。

 さて。尺の都合から解説を手早く済ませれば……

 

1.『ねっぷう』は、ノモセ周辺・フロンティア建設予定の島・キッサキの3ヵ所に行った際に、ゲームで「教え技」を教えてくれた人達を探し出して教えて貰った。

 (ついでに、「教え方」も教えて貰ったんで)

 

2.メタグロスは例によって「低レベル進化」しているが、技習得のレベルについては変わっていない様子だった。

 (つまり、強力な技を覚えるには結局レベルを上げる必要がある)

 

3.だから攻撃技のバリエーションが『メタルクロー』『ねんりき』程度だと判明してた。

 

4.最後の技はつまるところ、ウソつきましたゴメンなさい。

 

 以上。因みに技習得レベル云々については、アナウンス嬢の発言から予想できたという次第だ。

 ……いや、流石に4日で3戦は疲れたから、こんなんで勘弁して欲しいかなぁと。

 

 

「なんにせよ、明日明後日は休みだし」

 

「……zz、ピィ……」

 

 

 先日とは変わって、胡坐をかいた俺の膝の上ではピジョンが寝ていたり。丁度、鳥が巣に入るようなあの格好で俺の足の間に納まっているその姿は、なんとも言えず愛らしい気も。毛並みもナナミのおかげでフッワフワのモフモフだし、これでピジョットに進化したらと思うと、なんとも末恐ろしいモフモフである。

 そんなピジョンの毛並みを手櫛ですきながら、

 

 

「……ふわぅ。俺も、寝て、……いいよなー……」

 

 

 眠い眠い、ねむ……い。

 

 外だけど、まぁ、南国だし、夏だし、いいかー……。

 

 






 ピジョンが無双するという、ある意味では史上最大のネタ回。
 これは勿論、バトルに勝利するためのネタを詰め込んだという意味で、ですが。
 ……おかげで読みづらい事この上ないですすいません。

 因みに作中では語られなかったピジョンの持ち物は、岩タイプ半減実でした。
(実は念のために岩タイプも警戒していたと言う)
 ただし、その場合に反撃できる術があるのかといわれると、微妙なのですが。

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