ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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Θ55 VSミュウツー②

 

 俺が独りセキチクシティについてから1時間半ほど経った頃。

 ポケモンの完全回復を待つ間にこうして海際に立ち、カンナさんの残った方角を見ているんだが……

 

 《――バシャァァンッ!》

 

 そんな俺の目には空いっぱいに空間が歪み、20メートルほどの水柱が上がったのが映ってしまってだな……と、つーかさ。

 

 

「アレに巻き込まれたカンナさんは、ホントに無事なのか?」

 

 

 20メートルて……などと思うものの、その原因たるポケモンの力ならば出来るのだろうと思い直す事にする。思い直し、次いで。

 

 

「……さて。津波が来るか」

 

 

 あんな量の水が巻き上げられたのだ。その余波は、少なくともセキチクシティには届いてしまうに違いない。

 

 

「どうやって防いだものかねー……」

 

 

 手元にあるトレーナーツールで、この街のジムリーダーであるキョウさんへの連絡の文面を作りながら考える。

 俺の手持ち……『そらをとぶ』使えないしなぁ。あと、津波を水やらエスパーポケモンの力で押し返せれば防げるのかもしれないけど、それが出来そうだったカンナさんが向こうに残ってしまっているというどうしようもない状況だ。

 

 

「それに、ミュウツーが負けていなかったら……いや、負けてないんだろうな。なにせ ――

 

 《ヒュゴォォッ!》

 

 ―― んん?」

 

 

 脳内思考を続ける俺の真上を、大きな音をたてて1体の大型ポケモンが飛んで行く。思わず見上げると、飛んでいったポケモンは遥か先の海上で一旦停止した。

 さて。所要16時間で地球を1周しそうな巨体のポケモンとその主は、

 

 

「カイリュー! 『はかいこうせん』!!」

 

「リュー!」

 

 《ズビッ》――《ズドドドドドッ!!!》

 

「……うっわぁ……」

 

 

 遥か向こうから迫り来る津波による海鳴りを、黒いビームの1薙ぎで黙らせたのだった。

 

 

 

 

 ――

 

 ――――

 

 

 

 

「ファファファ、ショウ。各街への連絡と避難は任せておくが良い。拙者が伝達を引き受けよう」

 

「お願いします、キョウさん」

 

 

 セキチクシティのポケモンセンターにて。

 俺はキョウさんと打ち合わせをしつつ回復したポケモン達を受け取り、モンスターボールを腰へと付け直す。因みに、女装そのままでは知り合いだと気付かれないんでメタモンと共にキャストオフ中だ。

 

 

「それにしても、ワタルさんが来てくれて助かりました」

 

「ふむ。ワタル、か。つい先週、拙者のジムにも来ていたが……まっこと、凄まじい実力よの」

 

 

 先ほど津波を黙らせてくれたワタルはどうやら、博士から連絡を受けて俺の救援に来てくれたという流れだったらしい。恐らくはミィを通しての救援なのだろう。となれば、アイツとの合流も視野に入れておきたい場面か。

 そして意気揚々とミュウツーの相手を買って出てくれたワタルは現在、戦闘の舞台を海上から……セキチクから西北のタマムシへと伸びる海上通路、「サイクリングロード」へと移している。

 

 

「まぁ、ワタルさんは竜の里1番の実力者らしいですからね。……それより、俺も準備は終わりました。先へ向かいますよ」

 

「もう行くのか?」

 

「はい、お世話になりました。……キョウさんは予定通り、各街への通信をお願いします。それじゃあ」

 

 

 白いモンスターボール6つを腰につけ、バッグを肩から下げ、セキチクシティにあるポケモンセンターのエントランスを飛び出す。

 ……と、その前にだな。振り向き様で申し訳ないけど、

 

 

「連絡もそうですが、カンナさんもよろしくお願いしますね!」

 

 

 気を失ったカンナさんはついさっき、ラプラスがその背に乗せて連れてきてくれていた。

 ……そう。ポケモンは「ひんし」状態になっていようが、行動不能になるわけじゃあない。秘伝技は使えるし、逃げるだけの余力は残している。ただ勿論、セキチクまでの距離を移動するというのは大変だったと思うが。

 まぁつまり。カンナさんのラプラスは文字通り精根尽きた状態であろうとも、自らのトレーナーを背に乗せセキチクまでを泳ぎきってくれたという次第なのだ。

 

 そうして振り返りつつも感謝の念を伝えつつ更なる仕事を突きつけるなんていう忙(せわ)しない俺へ、キョウさんは呆れつつもエールを送ってくれる。

 

 

「ファ、ファ! 安心せよ、ショウ! 現在の忍者たるもの、むしろ人命救助と人々を守る事にこそ力を入れているのだ!! 心してポケモンバトルをすると良い!」

 

 

 横目に入るポケモンセンターのTVには、『野生ポケモン達が逃走を始めている』『謎のポケモン、セキチク上空に出現』との緊急ニューステロップが踊っている。セキチク周辺、タマムシ周辺のポケモン達はミュウツーの飛来を敏感に察知し、既に逃走を開始しているらしい

 けどこんな状況だからこそ、俺と直接話をしたことで状況を理解出来ているキョウさんに、連絡やカンナさんを任せるべきだと思うんだ。

 

 

「それでは、キョウさん!」

 

 

 手を振り、今度こそ振り返りはしない。

 

 

「……んじゃ、行こうか!」

 

 ―― カタカタ、カタタッ!!

 

 

 今からサイクリングロードを追いかけていても、北上するミュウツーとワタルの戦闘には追いつけないだろう。となれば、先回りで……目指すはタマムシシティとヤマブキシティ辺りか。サファリパークを直線距離で突っ切れば、何とか追いつけそうではあるし。

 

 さぁ、第二ラウンドのための準備を開始だな!

 

 

 

 

 

 ―― サイクリングロード

 

 

 今はまだは盛大に土だらけのオフロード仕様でありゲームの時ほど整備されてはいない……海沿いの直線路。

 景色は十分に良い筈なのだが、辺りを包む空気と暗雲立ち込めた空によって、言い知れぬ不安を抱かせる風景となっている。

 

 

「カイリュー、『はかいこうせん』! プテラ、『いわなだれ』!」

 

「ミュー」

 

 

 カンナとの戦闘において『じこあんじ』を使用しヤドランの『ドわすれ』をコピー。また自らも『バリアー』を積んだ結果として得た凄まじい防御力によって、カイリューの『はかいこうせん』のみならずプテラの『いわなだれ』をも「全く動じず」受けきるミュウツー。

 

 

 ――《シュウウンッ!!》

 

 

 そしてミュウツーはまたも『じこさいせい』で回復。カイリューの背に乗りながらサイクリングロードをタマムシ方面へと逆のぼるワタルは、呆れ顔を浮かべた。

 

 

「……この攻防に果てはあるのかな」

 

 

 言いつつ、ワタルは思う。これでも目の前のポケモンとは対等でない、と。

 目の前に浮かぶこのポケモンが先ほどまで、ショウやその仲間である少女と戦っていたのは、ミィから聞いた話で知っている。しかしながら、……ショウの実力は人伝いに聞いているものの……自分のポケモン2体を相手に悠然とバトルを繰り広げるこのポケモンは、規格外であったのだ。

 

 

「それでもやるしかない。……バッジ集めも終わった所だし、オレはもっと強くならなくちゃあいけないんだ」

 

 

 これは所謂、心がけ。

 ポケモンリーグにおけるチャンピオンはただ単に強さというだけでなく、他にも認められる「何か」が必要になる。

 それは「求心力」であったり「求道心」であったり、「意志の強さ」であったり「美しさ」であったり。

 ワタルはその「何か」を「強さ」と、とりあえずは称し、ポケモンリーグチャンピオンこそがそれを持たなければと考えているのだ。

 

 

「―― だから、オレは……。……っ!?」

 

 

 そうしてカイリューの背に乗るワタルだったが、サイクリングロードの中心に座り込む1つの人影をその目に捉える。

 

 

「キミ! 危ないぞ!!」

 

 

 思わず声をかける。

 しかし目の前で強大なポケモン2体が戦闘を繰り広げていようと動じず、また巨竜に乗るワタルから声をかけられようが不動の男。

 

 ―― 地面に胡坐をかき、半裸で、しかし目はしっかり見開いている。

 

 その男は腰からモンスターボールを取り、ミュウツーの浮かぶ空へと突きつける。

 ワタルはその背格好、そして何よりその構えに見覚えがあった。

 

 

「……シバなのか!?」

 

「ああ。助太刀しよう、ワタル!」

 

 

 ついこの間、7番目のジムとしてヤマブキジムに挑んだ際。ワタルは隣の格闘道場でカラテ大王と一緒に訓練している凄腕トレーナーの話を耳にし、そのトレーナー……ホウエン地方から武者修行にやってきたこの男シバと、凄絶なバトルを繰り広げていたのだ。

 ワタルは考える。

 タイプ相性で考えればシバのポケモンは目の前の「コイツ」には相性が悪い。が、この数ヶ月カントー地方を旅したおかげでカントー地方のトレーナーのレベルも大体は把握しており……その中でもトップクラスのトレーナーであるシバの協力が得られるなら、それに越した事はない。

 ならば、

 

 

「頼む、手伝ってくれ! シバ!!」

 

「元よりそのつもりだ。……目の前の強者を前にしては、な!」

 

 

 シバは立ち上がり、目標をその目に捉えるとボールを投げ出す。追うワタルと立ちはだかるシバで、ミュウツーに対して挟み撃ちを仕掛けようとの試みだ。

 

 

「行け、カイリキー!!」

 

 《ボウン!》

 

「……ウー、ハー!! 『ちきゅうなげ』!!」

 

「リキィッ!!」

 

「カイリュー、叩きつける! プテラ、噛み砕く!!」

 

「リュー……ゥ」「グワォォンッ!」

 

 

 同時に3匹のポケモンが、地上2メートル辺りに浮かんだミュウツーへと飛びかかる。だが、

 

 

 《《ガガ、キィンッ!》》

 

 ――《ズドォォンッ》

 

 

 『バリアー』によって、物理攻撃2発は甲高い金属音をたてて弾かれる。その後にはカイリキーの『ちきゅうなげ』で地面に叩きつけられるのだが、

 

 

 ――《フゥッ》

 

「……ミュー」

 

 

 ミュウツーは再び、苦もなく宙へと浮かび直してしまった。

 

 

「さっきから手ごたえがないね。どれだけの強さなんだ、このポケモンは。底が見えないぞ」

 

「……オレ達のポケモンの攻撃を弾いたのは、コイツの纏っている光か。それにしても硬過ぎるが……む。来るぞ、ワタル」

 

 

 全てを受けきったミュウツーの反撃。

 空に手をかざすと、一面に歪みが現われ……

 

 

 《ヴヴヴ、ゥン》

 

 

 今度の攻撃は、ワタルのカイリューが受けていた先ほどまでのエスパー攻撃と違って、頭に「響いてこない」。

 それでも空気が震えているのは、物理的な振動によるものか。

 

 

「来るぞカイリュー! プテラ!」

 

「リュウ、リュー!」「グァァァン!!」

 

「可能な限り直撃を避けろ、カイリキー!」

 

「リキリキィ!」

 

 

 2人とそのポケモン達が共に、灰色の空に浮かぶ歪みへと立ち向かってみせる。

 しかしその歪みは段々と発光し……いつしかミュウツーの尻尾のそれと同じ、「紫色の光」となっていた。

 

 

 ――《ゥヴヴッ、ズズゥッ!!》

 

 

「……、……!!」

 

「……これは……」

 

 

 カントー地方においても指折りの実力者2人ですら、知らず息を飲む。

 灰色の空の中にあって尚、圧倒的な光と威圧感を放つその技。その存在感は既に特殊攻撃という概念を何処ぞへと捨て去り、立ち向かう両トレーナーとポケモンへ「物理的な脅威」すら与えてしまう。

 

 

「……ミュー!」

 

 

 空に浮かぶポケモンは気持ち高めの鳴声と共にその手を振り下ろし ―― 着弾と同時に、紫色の光が辺り一帯を襲った。

 

 

「くっ!! カイリュー、プテラぁぁ!」

 

「……やはり強者、か」

 

 

 《ヴゥ ―― オッ!!》

 

 2人の繰り出していた3体のポケモンは当然の如く包み込みこまれ、

 

 

 《ズズズズ、ゴゴゴッ――》

 

 しかしそれでも広がりの勢いは失われず、

 

 

 ――《ヴヴッヴヴヴヴォォォッ!!》

 

 

 いつしか紫色の光は、サイクリングロード全てを包み込んだ。

 

 

 

 

ΘΘΘΘΘΘΘΘ

 

 

 ―― Side ミィ

 

 

 『テレポート』と「あなぬけのヒモ」の中継を使い、グレン島にて回収したフジ博士をミュウツーの予想進行ルートから外れた町へと送り届け……丁度、町に着いたという頃合。

 夜はとうに明けたというのに、嵐を予感させる湿り気を含んだ風と曇天の空がカントー地方一帯を包み込んでいる。

 それは私達がたどり着いたここ……「シオンタウン」も例外ではない。

 

 

「……、……」

 

「↑キュィィ↓」

 

 

 フジ博士をその体に乗せ宙をふよふよと飛んでいるレアコイルを背に、この老人が目を覚ましたら面倒な事になりそう、などと考えてしまう。

 蛇足だけれども、シオンタウンは原作においてフジ博士が滞在していた町。となれば、こうして……ミュウツーは人の多い場所を無意識に目指している節があるために……進行ルートから外れた位置にシオンタウンが「あってしまう」のも、仕方がないこと。

 

 そんな事を思いながら人気の極端にない町中を進み続けていた私達は既に、町の南東側へと差し掛かっている。

 ……目的地は、見えてきたわね。

 

 

「ぅ、……ぁ……」

 

「そして、丁度良くお目覚めね。……御機嫌いかがかしら、フジ博士」

 

「……あ、……!? こ、ここは!?」

 

 

 目が覚め、慌てて辺りをキョロキョロと見回すお人。とりあえずは、現状把握が必要かしら。

 

 

「現在地は、シオンタウン、ポケモンハウス前。貴方はグレン島のポケモン屋敷裏で倒れていたの」

 

「き、きみは!?」

 

「キュ↓ キュ→」

 

「有難う、レアコイル。戻って頂戴。……そして、ええ。私はシルフの使いよ。……貴方のような研究職者が私を知っているのは好ましいことではないけれど、多少なりともロケット団に関わっていたのならば、この格好のトレーナーの噂くらいは耳にしたことがあるかも知れないわね。主に悪名という形で、なのだけれど」

 

「……黒の全身コート。きみが件の黒尽くめ、か」

 

「御名答。……さ、貴方の懺悔でも聴かせて貰おうかしら」

 

「……こんな老人の話を聞いても、得られるものなどないよ」

 

 

 事ここに至って、流石のフジ博士にも元気がない様子ね。ショウから聞いていた「研究熱心で猪突猛進なお元気爺さん」なんていう雰囲気は、微塵も感じられないもの。

 ……けれども。 

 

 

「意味が、あるのかないのか。それは私が決める事よ。貴方はただ、貴方の為に話しをなさい。何にせよ、今すぐ出来る都合の良い贖罪なんて存在しないわ」

 

「……」

 

「先ずは、この中に入りましょう。……貴方がグレン島開発の資金源をロケット団に頼らざるを得なかった、1つの理由。個人で稼いだ私費の殆どを費やしていたポケモンと人の共同孤児院……この、ポケモンハウスでなら。『あのポケモン』についても話せるでしょう」

 

 

 多少……というよりは華美に偉そうな言葉を語って扉を開き、この施設の本当の主を招き入れる。

 自分でも酷い口調と言い様だとは思うのだけれど、今の博士を焚きつけるにはこのくらいは必要なのだと思う。

 事実、フジ博士はポケモンハウスの中へと歩き始めていた。

 

 

 

 ―― 数十分後。

 簡素な造りの決して広くはない部屋の中、子供たちは遊具スペースでポケモン達と戯れている。

 中心に置かれたテーブルに付けられている木製の椅子に座ったフジ博士は、意外にも、自らあのポケモンについて語り始めてくれる様子らしい。

 

 

「……きみ……えぇと、黒尽くめ君は、」

 

「その、呼び方は不本意が過ぎるわね。……さぁ、これでどうかしら。そして、私としては『ミィ』の名前呼びでお願いしたい所だわ」

 

「お、女の子だったのか。……そりゃあそうか。只でさえ背格好が小さすぎるからね」

 

 

 名乗りと共にフードを取りボイスチェンジャーも切った此方へ、意気消沈しているにも関わらずリアクションを取ってくれるフジ博士。これは、あり難いわね。

 

 

「……ま、別にリアクションが欲しかった訳ではないのだけれど……それは良いわ。それで、フジ博士。話の続きを」

 

「……あ、あぁ。ところで、つかぬ事をお伺いするが、キミは……ショウ君と知り合いかい?」

 

「えぇ、幼馴染」

 

「そうか……いや。何となくだけど、同じ眼をしているね。幼馴染というのも頷ける ―― ってああ、これもどうでもいいのか。えぇと、それで、ジュニア……ミュウツーについての話を聞いてくれるんだったね」

 

 

 話し始めた博士は、言葉数が増えてきているみたい。少しは勢いが戻ってきたのかしら。

 そんな事を頭の端で考えてみる私へ、フジ博士は語りを続ける。

 

 

「あれはそう……何時だったかな……ああ、そうそう。もう詳しく覚えてはいないけれど、確かわたしが大学院生の頃の話です。世間ではポケモンバトルが流行り始めていましてね。子供たちと……何より、戦わされているはずのポケモン達すらも楽しそうだというのが印象的でした」

 

「……、」

 

「あの頃はまだぼんぐりボールが主流だった。おかげでポケモントレーナーというのは羨望の眼差しで見られたもので……恥ずかしながら、わたしはこのムーブメントの仕掛けに一役買っていたのです。知っているでしょう? シルフによるモンスターボールの大量製品化計画を」

 

「……、」

 

「昔のわたしはポケモン遺伝子学者における活動として、よりにもよって新しいポケモン……その中でも特に『珍しいポケモン』を見つけるのを生業としていました。勿論これだけがブームを作り上げた訳ではないでしょうが、それらを発表し続けたのが1つの要因となり、今現在におけるポケモン探検ブームとなったのは事実でしょう。ミニリュウの噂についても、伝説と呼ばれるポケモンについても……そして、そうです。人々が最も心をくすぐられるであろう、未だ世界のどこかに潜む未発見の、幻と呼ばれるポケモンについても」

 

「……、」

 

「未踏の探検ブームに火をつけたことは、ポケモンの捕獲を促進します。それはモンスターボール大量製品化をも後押しし、さらには国の推し進めるポケモン事業を潤沢な資金源と成しました。……結果としてわたしも、自らの科学的好奇心を十分に満たす事の出来る、贅沢で身に余る資金を得ることとなります……いえ。『得てしまった』のです」

 

「……、」

 

「多少はこのポケモンハウスの様に慈善的な事業にも使いはしたのですが……金のある所には、さらに金が集まってしまいます。……それがロケット団です。彼等は、わたし共科学屋とは全く違った形態の技術力と科学力を持っていました。それはわたしの金に糸目をつけぬ、科学的好奇心という名の悪魔をも揺り動かします。彼等の力があれば、わたしは『ポケモンを創る事が出来る』と確信していました」

 

「……、」

 

「では何ゆえ、そしてどんなポケモンを創りたかったのか」

 

「……、」

 

「……孤児院とはいえ、この子達を見てください。非常に楽しそうです。……そして、そう。あの日わたしが本当の意味で科学者を志した際に見た子供達も、ポケモン達も、非常に楽しそうだったのです」

 

「……、」

 

「それでもわたしは、1つの疑問を捨てきれていませんでした。……ポケモン達は……そして、子供達は。『自ら(ポケモン)を戦い合わせる事を、本当に楽しめているのか』、とね」

 

「……、」

 

「だからこそ考えてしまった。ポケモンバトルはもう既に、なくなりはしないモノだ。ブームを後押ししたのも、わたし自身だ」

 

「……、」

 

「ならば、どうせ戦うのなら。……『戦いを楽しめるポケモンがいてくれたら』良いのではないか。そう考えまして。思えばここが間違いの始まりなのでしょう」

 

「……、」

 

「創るということは、技術の限り何にでも出来るという事を意味します。その限界に、科学者たるわたし達が挑戦せずにはいられないことなど……判っていた筈なのに。結果としてわたし達は『最強であり、戦いをこそ最も楽しめるポケモン』を創ろうとしていました。……そして、創りあげてしまいました」

 

「……、」

 

「ヒトにとってポケモンが戦いを楽しんでいるなどという姿は、戦いに狂っているようにしか見えないでしょう。それこそかのポケモン博士が作っている図鑑などに載ってしまえば、協会員の書いた文章なのでしょうし、凶暴なポケモンであると紹介されてしまうに違いない。それはわたしの望む形ではないなどという事も、頭のどこかでは容易に予想がついていたのですが」

 

「……、」

 

「だからこそ最後にはあの有様です。皮肉にもロケット団の救出作業によって死人こそ出ていないものの、屋敷は焼け落ちました。わたしなんかを慕ってくれた多くの研究員に怪我をさせ、そして何より研究員のポケモン達を傷つけてしまいました。……燃えつきるのはわたしの愚かな夢……『ポケモンバトルを楽しんでくれるポケモンを創りあげる』なんてものだけで良かったのです。ついでにわたし自身が燃えてしまえば、後腐れはなかったのでしょうけどね……はは、面目ない」

 

「……、ねぇ」

 

「なんでしょうか」

 

 

 思わず声をかけた私に、断罪を待つかの様な表情で返答をするフジ博士。けれど私が聞きたいのはそんなに大げさな事ではないわ。

 

 

「貴方に、融資を持ちかけたのは。ロケット団側から、という認識に間違いはないかしら」

 

「そうだ」

 

「……ロケット団は、創りあげたミュウツーの力を何に使おうとしていたのかしら。彼らにも利益があったからこそ、出費したのでしょう」

 

「それは……ああ。そういえばロケット団の技術者は言っていたよ。最強のポケモンを創れるという箔こそが必要なのだと。ボスはあんまり興味を持っていなかったようだけど、研究員達はジュニアの力を熱心に研究していたからね」

 

「……自分達には御す事が不可能だと判っていても、なの」

 

「ふむ。彼らのマッドサイエンティストぶりは、わたしと良い勝負なのだよ?」

 

 

 苦笑いを浮かべながらそう話す。どうやら目の前の博士は先程から、自らを卑下する事に余念がない御様子ね。ここまで来ると正直面倒、というレベル。

 

「(……さて。聞きたい部分は、あらかた聞けたかしら)」

 

 そう思い立った所で私は椅子から立ち上がり、玄関までを一息で歩くと施設の扉を外へと開く。そこから中を振り返り、

 

 

「……ところで、フジ博士。何故私がこんな町まで移動してきたのか、判るかしら。あぁ、貴方のためではないというのは先に言っておくのだけれども」

 

「……なら、わたしには判らないね」

 

「今、ミュウツーは貴方が創りあげたその通り、カントー中を飛び回っているわ。より強いトレーナーとポケモンを求めて、ね。けれどあんな力を持つポケモンが力を振るいつつ飛び回れば、野生のポケモン達も黙ってはいない。……そう」

 

 

 外へと一歩踏み出し、空を見上げる。

 目の前に広がるのは入ったときと変わらぬ灰色の薄暗い空なのだが、しかし、後から続いて外へと出てきたフジ博士も空を見上げて思わず口を開く。

 

 ―― なにせ見上げた先では、空を黒く覆い尽くすほどの無数のポケモン達が飛び交っているのだ。

 

 

「……これは!? ……そうか! 野生のポケモン達がミュウツーから逃げ出しているのか!?」

 

「半分は、正解。けれど、よく見なさい。空に浮かんでいるのは、鳥ポケモンだけじゃあないの」

 

 

 東の空へと飛び去っているのは、ポッポやオニスズメといった鳥ポケモン達。

 しかし空に『浮かび』、向こうからミュウツーのいるであろう西側の……恐らくは先程私が依頼したワタルが戦っている……サイクリングロードへと『近づく』ため、ここシオンタウンの上空を通過せんと近づいているのは ―― 鳥ではない、別のポケモンの集団。

 

 

「ここ、シオンタウンの東には廃棄された工場群があるでしょう。その内の兵器工場には、ドガース等の毒ポケモン達が多く住まっていたのだけれど……そこに溜まった光化学スモッグから、逞しい事に。ゴーストポケモンが生まれているなんて言う事実が判明しているの」

 

「じゃあ、あれは……」

 

「えぇ。これは、フヨウ……幽霊ポケモンに詳しい私の友人が言っていたのだけれどね。多くの争いが『生まれるであろう』場所へ、ゴーストポケモン達はむしろ喜んで近づいていくのよ。まるで人々の感情の揺れ動きが最も美味しいとでも言う様に」

 

「……キミは……」

 

 

 此方を見つめるフジ博士を横目にフードを被りなおし、腰にかかったホルダーからボールを取り外す。

 いつの間にか空に浮かぶ黒い幽霊集団は、手始めとばかりに、シオンタウンへと降下し始めている。

 

 

 ――《ォン、、ォォ》

 

 ガス状のポケモン達は発音しづらそうな音と共に、人気のないシオンタウンの町中にポツンと立っている此方へと一斉に狙いを定める。

 そう。私の本当の目的は、このポケモン達を食い止める事にこそあるのだから。

 

 

「行きましょう、レアコイル、ミニリュウ……カクレオン……ニドリーノ……ポリゴン、ダンバル」

 

「キュキュキュ」

 

「リューゥゥ!」

 

「レ、レォ~ン」

 

「ギュィーン!」

 

「ピロリーン♪」

 

「バルバルバルバル」

 

「皆、作戦通りにお願い」

 

 

 私の掛け声で、飛び出したポケモン達が手筈通りにゴーストポケモン達へと戦闘を仕掛け始める。

 ……さぁ。開戦、ね!

 

 

 

 ――

 

 ――――

 

 

 ―― Side フジ

 

 

 わたしは家の入口を開けたその場に立ち尽くし、何故か動けないでいる。この少女の成す事を見届けなければいけないという強迫観念からか……もしくは単に『わたしが見届けたい』などという、またもや身勝手な想いからなのか。

 

 

「カクレオン、『だましうち』。ダンバル……は、その辺で浮いていてくれるだけでいいわ」

 

 

 黒衣を纏った少女は私の目の前で、今の所ゴーストポケモン達を1匹残らず追い返して見せている。

 鉄アレイのようなポケモンと姿を消して(ただし、ギザギザ模様以外)攻撃を仕掛けているポケモンには彼女が直接指示を出しているものの、驚く事にそれ以外のポケモン達は殆ど指示を仰がない。

 

 ……しかし、それにしても、数が多過ぎる。このままでは恐らく、近いうちに突破するものが出てくるだろう。

 

 だが、わたしがそう思ってしまった瞬間。幽霊ポケモン達の大行進が空いた、一瞬の間。

 黒衣の少女はこれまで指示を出していなかったポケモンの方向を向くと、

 

 

「……ニドリーノ、博士に張り付いて守って頂戴」

 

「ギュイン!」

 

 

 なんていう指示を出した。

 指示を受けたポケモンは素早くわたしの傍へと走り寄り、入口付近を警戒し始めている。

 そして、さらに。

 

 

「……実力の、差を。見せ付けてやりましょう。ポリゴン ―― 薙ぎ払って『サイケこうせん』よ」

 

「カタカタ、ピコリーン♪」

 

 ――《ズバババ、ズウォーン!》

 

 

「……!?」

 

 

 ――《ォ……ゾ……》

 

 

 青と赤の色をしているカクカクパカパカのポケモンが、辺りに浮かんでいた大量の幽霊ポケモンを『サイケこうせん』の一薙ぎで一気に減らしてしまった。

 多少は残っていた幽霊ポケモン達もその一撃に怖気づき、ジリジリと退いていく。

 更に、更に。

 

 

「……さぁ、そこにいるトレーナーさんも、出て来るといいわ」

 

 

 非常に挑発的な態度で、誰もいないと思っていたポケモンハウスの裏側へと声をかけた。

 

 

「……ひっひ」

 

 

 ……そして姿を現すのは、杖をついて歩く1人の老婦。しかし、ただの老婦ではない。その足元には「不気味に笑う大きな影」を落としているのだ。

 

 

「嬢ちゃん。あたしは協力者だよ。協力者を捕まえて、その言いザマは酷いんじゃあないかい?」

 

「……キクコ……」

 

「おやおや、こんなババァを御存知とは。……ひひ! あたしも捨てたもんじゃあないね!?」

 

「トレーナーなら、知っていても不思議ではないでしょう。……それにしても協力、ね。……でもそれを貴女がとなると、ただただ不気味なのよ」

 

「かっ。あぁあぁ、言いたい放題だねぇジャリンコが。まぁあたしも、面倒なお役所仕事に就いているからには、幽霊達をみぃんなアンタにぶちのめされる訳にゃあいかないのさ」

 

「……、」

 

「アンタはその博士……いや、既にただのジジィだね。ま、そんなジジィに言いたい事が残っている筈だよ。その間にも町の中を逃げ惑っている幽霊達を引っぱたくお役目は、あたしが引き受けてあげようじゃあないかってんだ!」

 

「……、お願いするわ」

 

「……ほっほう。確かに引き受けた。なら、先に行かせてもらうかね。あたしならもっともっと、向こう側で幽霊達を引き受けられる。……同族は惹きあうものさ。幽霊同士じゃあ、効果は抜群だからねぇ! ひっひっひ!!」

 

 

 不気味な声と共に文字通り幽霊達を惹き付けながら、老婦とそのポケモン達が北東へと進撃を開始する。足元からは2体の影が飛び出し……あれは先程の会話から推測するに、幽霊ポケモンなのだろう。

 その挙動からも、また黒尽くめの少女がおとなしく役目を任せたことからも、トレーナーとしての実力が窺える。

 

「(そして、わたしに……言いたい、か)」

 

 ポケモンハウスの前にあるこの空間は、老婦が辺りの幽霊達を惹きつけながら歩き去っていったことで、わたしと少女の2人きりとなった。

 ……この少女は恐らく『そう』しないであろうという予感はある。

 だがしかしわたしは……黒を一身に纏った死神のようなこの少女に、断罪の言葉をこそ求めてしまうのだ。

 あの少年にどこか似ている事も、要因なのかも知れないが――

 

 

「……貴方」

 

「なにかね、ミィちゃん」

 

「いい、かしら。これから話すのは全て私個人の勝手な意見。……私は、貴方の理想は嫌いじゃあないの」

 

「……」

 

「理想の、結果として。貴方とあのミュウツーが成した事は確かに面倒ね。いくら『捕獲が成されていない野生ポケモンが引き起こしている事』だからといって、多くのものを壊しているのは事実よ。……だからといって後悔ばかりしているのでは、報われないのだけれど」

 

「……」

 

「人間によって、生み出されたポケモンなんていうのは数多くいるの。例えば、先程の幽霊ポケモン。あれらは光化学スモッグなんていう物質を人間が多量に生み出さなければ、存在し得なかったでしょうね。例えば、ビリリダマ。人間がモンスターボールをデザインしなければ、あんなものに擬態しようなどと思わなかったでしょう。……これはちょっと違うけれど、例えば、全てのポケモン。人間の為に草むらから……なんてね」

 

「さ、最後の例えだけはちょっと分からないんですが」

 

「……あら、……そうね。最後のはロマンがありすぎるから伏せておきましょうか。御免なさい、気にしないで頂戴」

 

「あ、あぁ」

 

「……さて、話を戻すわ。つまり元々、ポケモンと人間の関係は生みだす、生まれるという部分まで深いものだったという事よ。貴方がミュウツーを生み出した、なんていうのは2番煎じどころの話じゃあないのがお判りかしら。まぁ、始めから、創ろうと決めて生み出したのでは規模が違うというのも感覚としては判るのだけれども……それでも、それは貴方自身の問題。結果は一緒よ」

 

「……そうかもね」

 

「それでは、本題。ミュウツーが何のために生まれたのか。……答えは、戦う事を楽しむため。実にシンプルで良いじゃない。いくら周りから滑稽に思われようと、貴方があのポケモンを気にしていると(うそぶ)く限りは、あのポケモン自身が楽しめているという部分によって反論されてしまうわ。クオリティーオブライフという意味でなら、ミュウツーは最初から満点に近い点数を叩き出しているのよ」

 

「……だが……。あぁ、そうか。……そうなのか」

 

 

 この少女との問答によって、わたしの引け目がハッキリと形作られていくのが判る。

 わたしは他を傷つけてしまった事とジュニアを生み出してしまった事に、「勝手に」罪悪感を感じているのだ。

 ……そうだ。『あのポケモンに』ではなく、『わたし自身が』。

 

 

「そう。……結局、貴方は自分を満足させたいのだと思うわ。何しろ、ミュウツー自身は既に世界を楽しむ事が出来ている。他ならぬ貴方の願いでね。と、すれば」

 

「贖罪はわたし自身によってしかもたらされない……か」

 

「えぇ。貴方が、真に償いたいのであれば。これから何を成すか、が重要という事。それはとてもとても難しいでしょうけれど……私にはこの言葉以上何も出来ないわ。それは私だって、未だ悩んでいる部分なのだから」

 

 

 少女は言い切ると、老婦の向かっていった方向へと振り向く。

 すると……うん?

 

 

「……ギュイン?」

 

「……お前は……はは。御主人に叱られたわたしを、慰めてくれるのかい」

 

 

 足元に暖かさを感じて見下ろすと、彼女の手持ちである紫色の身体をしたポケモン……ニドリーノが足元に擦り寄ってくれていたのだ。どうやら先程わたしを守るために近づいた後、ずっと気にかけてくれていたらしい。

 わたしはその身体をそっと抱き上げ、確かな熱を腕の中に感じ……お礼と共に頭を撫でてやる事にする。そうしたいと、思ったのだ。

 

 

「……ありがとう」

 

「ギュギュウン♪」

 

 

 どうやらこのニドリーノは、大層人に懐きやすい性分であるらしい。

 するとその様子を目の端に止めた黒尽くめの少女は再度わたしの側へと振り返り、

 

 

「あら、懐いてしまったわね……。……。……ねぇ、ニドリーノ」

 

「ギュウン?」

 

 

 主からの数秒の間があった後の問い掛けに、腕の中で可愛らしく小首をかしげるニドリーノ。

 

 

「暫く、その人についていてあげて」

 

「……ギュウ」

 

「いつも、私が自分に言い聞かせているでしょう。それは貴方も同じ。大切なのは貴方がどうしたいか、なのよ」

 

 

 説き伏せるような、また、言い聞かせるような……確かに優しい口調で話しかける少女。

 またも数秒見つめあった後に、ニドリーノはわたしの腕から飛び降り、彼女の足元へと擦り寄る。

 

 

「……ギュウン」

 

「別に、これが今生の別れじゃあないわ。……寂しくなるのは、確かなのだけれどね」

 

「……ギュ、ギュウッ!」

 

「えぇ。これからは貴方の思うまま、その人と一緒に、しっかりやりなさい……それでは」

 

 

 少女は腰から見慣れぬ白塗りのモンスターボールを取り外すと、なにやら手元の機械を操作し始める。

 

 

「これで、完了。……はい、これを持って」

 

「あ、ああ。ええと、」

 

 

 そしてそのボールをわたしへと押し付け、

 

 

「……『譲渡』」

 

「――ギュウン!!」

 

「わわっ!?」

 

 

 《シュン》

 

 ――《コン、コン、ココン》

 

 ――――《ボウン!》

 

 「ギュギュウン!!」

 

 

 モンスターボールが1度消え ―― いつの間にか、わたしの手元にあるボールへとニドリーノが収まっていた。

 少女は暗いフードの内から僅かに転送されたボールへと視線を向け、しかし殆ど間を置かずに振り向き直す。そして、

 

 

「あれ、おじーちゃん?」

 

「どしたのー、おじーちゃん」

 

「あ、モンスターボールー!」

 

「新しいポケモンー?」

 

「白いモンスターボール!? 見せて、見せて!」

 

 

 開いたままだった玄関から子供達が駆け寄ってくる。

 その音を捉えた少女が背を向けたまま、少しだけ此方へと顔を傾けると、最後の言伝を……ボイスチェンジャーによって聞き取り辛い声に戻した後、口にした。

 

 

「あなた達も、その子を宜しくね」

 

「……? よくわからないけど、いいよ!」

 

「おねーちゃんがくれたの?」

 

「え、コイツおとこじゃねぇの?」

 

「ふふ、それは秘密。そして、フジ博士……いえ、フジ老人も。その子はきっと、貴方のなくてはならない『力』になってくれる筈。……それじゃあ。私はこれで失礼させて貰うわ」

 

「あ……」

 

 

 呼び止める術は、無い。少女は足早に駆け去り、後にはシオンタウンのもの寂しい喧騒だけが残った。

 ……そう、か。

 

 

「わたし自身、自らが立ち止まる事を望んでいないんですね。……なら、きっと……」

 

 

 手元には、わたしについて来てくれる事を「自ら決めてくれた」ニドリーノ。

 後ろには、わたしが守っていく事を……これはいつの間にか、知らず知らずにではあるが……「自ら決めていた」、子供達。

 この子らがいてくれることで、今度こそ道を違える事はないと、信じることが出来るかも知れない。

 

 

「……まずは、グレン島に戻りましょう。残してきたものが沢山ありますし……それに、あの島を、今度こそ愛してみせます。あの人達とは、いくら罵られようとも分かり合ってみせます。そして……いつかは、」

 

 

 これはただの、自己満足の絵空事。

 

 ―― いつかは、自らが勝手に幻と決めてしまったあのポケモンの仲間を探しに行こう。たとえそこが、世界の果てであろうとも。

 そして出来るなら再び出会う時には、自分で自分を誇れるような心優しき人であらん事をこそ……自分勝手に願ってみせるのだ。

 

 






 ポリゴン=パカパカ。
 爪あとは深く、癒えません。


 ……どうでもいいですね。
 では、お待たせいたしました。ここからが移転含めた最新話です。

 因みにニドリーノに会いたくなったら、FRLGなりHGSSなりを起動していただき、シオンタウンはボランティアハウスまで御足労いただければと。


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