ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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Θ4 6の島にて

 

 

 ―― 6の島

 

 

 さて。

 予定通りに荷物を纏めた俺とカトレアは、昨日の内に6の島へと到着。俺の研究者IDでポケモンセンターに1泊し、旅行4日目を迎えていた。

 

 

「……星空は、綺麗でした」

 

「おー、そりゃあ良かった」

 

 

 ……ただし男部屋の区画は岸壁に面していて、空は見えなかったけどな。

 そんな俺の横に現在座っているのは、ワンピースに麦わら帽子と言う(ある意味信じられない)お嬢様スタイルのカトレアだ。動きやすさと言う点では確かに、悪くは無いのかもしれないが……流石は金持ちといった所か。お守り小判持ったヤツに狩られないように気をつけないとな。まぁ、まだトレーナー資格が無いから挑まれても拒否すれば良いんだけど。

 で、だ。実は周りには、別の人達もいてだな。

 

 

「ふーん。男部屋からは、空、見えなかったの?」

 

「えぇっ、そうなんですか? それじゃああたし達、お得でしたね~」

 

 

 目の前で駄弁るのは、フリフリした格好にキラキラした装飾品をつけたお2人。どうやらこの方々、人気絶頂のアイドルユニットらしい。スタッフ曰く旅番組的な企画で、ナナシマの自然保護区域のアピール番組に来ているとの事だ。

 現在カメラを抱えた人や仕切りの人なんかがポケセンで打ち合わせをしている最中で、この2人はどうやら暇を持て余しているご様子。宿泊部屋もカトレアと同室だったため、こうして喫茶スペースで朝食中の俺達に絡んできているのだった。

 因みに俺はコーヒーをすすりつつ、2人とカトレアのやり取りに適当に相槌を入れていたりなんだり。

 

 

「ところでカトレアさんは、どうしてこの島に?」

 

「……アタクシは、この人と……」

 

 

 話しかけられたカトレアが、俺の事を横目で見ながら名指しした。うん、間違ってはいないけど、確実に言葉は足りないだろう。

 そんな言い方もあってか、右側に座っているアイドルはぶんぶんと腕を振り、とても良いリアクションを取ってみせる。

 

 

「きゃー、お泊りデートですかー!?」

 

「……そうとも言うかも、……知れないです?」

 

「うーん、年齢的には頼りない気もするけど ――」

 

 

 アイドル2人組の左側、やさぐれ気味の方が俺へと視線を向けた。

 まぁ10才だからな、俺。その意見を否定する気はさらさらない……の、だが。

 

 

「……それは、アタクシが否定しておきます。ショウと並ぶほど頼りになる男性は、数少ないでしょう」

 

「全幅の信頼よねぇ……」

 

「きゃー! きゃー!」

 

 

 俺が何か言うより早く、隣に座るカトレアが頬を膨らませながら2人へと反論していた。

 あー……カトレアからの高評価は素直に嬉しいけどな。アイドル(右)のテンションは高過ぎやしないか?

 そんな無駄思考をしつつ。けれども、アイドル(左)は未だにこっちを見つめていたり。……えぇと、だな。

 

 

「えふん。何か俺にご用事がおありで?」

 

「ねぇ君、何歳?」

 

「ずばり10才」

 

「おっ、なぁーんだ。やっぱりあたしとミミィよりも年下じゃない」

 

「そーですね。あと俺、貴女をテレビで見たことがありますよ。あのソロデビュー曲の『はがねのつばさ』的な衣装は、大変にお綺麗でした」

 

「でしょ! ふふんっ、あの衣装はあたしもお気に入りなんだ!」

 

 

 腰に手をあて、年相応の胸を張るアイドル(左)。うむ、台詞選択はただしかったご様子で。

 ……でも、そんな俺の隣では。

 

 

「(……おー、緻密な情報収集で先輩を軽くあしらうどころか上機嫌にしてみせるとは。あのヒト、ショウさんでしたっけ? やりますね~)」

 

「(……ショウを甘く見てはいけません……)」

 

 

 おい、隣でこそこそ会話するミミィ(アイドル)とエスパーお嬢様。会話内容は聞かなくてもなんとなく判るぞ。褒められてるようで褒められてないよなっ!? それっ!!

 まったく。

 ……それにしても。エスパーお嬢様とミミィとかいうアイドルは、年が近いこともあってか、大分打ち解けている様子だ。エスパーお嬢様にとって友人が出来るのは悪い事じゃあるまい。これは良い傾向だな。このままにしとくか。

 

 そのまま暫く、30分ほど4人で駄弁ったりなんだり。

 そんな感じに時間つぶしに付き合っていると、正面にあった談話室の扉が開いた。中からサングラスをかけたちょび髭のおじさんが出てくる。

 

 

「―― さん、ミミィさん! お待たせしました! 読み合わせするので、お願いしまーす!!」

 

「ん。ようやくのお呼びがかかったみたいですね、お2人さん」

 

「ああ、そうね。それじゃあ、ショウ、カトレア。お元気で」

 

「名残惜しいですが……カトレアさんも、またお会いしましょー!」

 

「……はい、ミミィさん……」

 

 

 俺が「ミミィ」って我が幼馴染と似たり寄ったりの名前だよなぁ……なんて無駄に考え始めていると、アイドル達がスタッフに呼ばれる事となった。俺とカトレアは手を振り、ポケモンセンターの中心部へ歩いていく2人を見送る。

 さぁて、と。ここでトレーナーツールを見てみると、時間も良い頃合。俺は腰を上げ、カトレアへと視線を向けつつ口を開く。

 

 

「そんじゃ、俺達も行きますか」

 

「……師匠。ご指導ご鞭撻、お願いします」

 

 

 ま、いいけどな。師匠なんて呼ばれるのも慣れてきたトコだし。

 んじゃ、散策兼ねた特訓へと向かいますか!

 

 

 

 ――

 

 ――――

 

 

 

 只でさえ自然の残っている6の島の北側に存在する通行路、『緑の散歩道』。

 水路を渡しの船で通過した俺とカトレアはそこを通って、更に北西にある『しるしの林』の中にいた。

 さて。この6の島の南側には、『てんのあな』等が存在する「遺跡の谷」なんてものも存在するのだが ―― 俺とカトレアが北側を選んだ理由は、至極単純。あのアイドル達が南側を目指していたからだ。

 

「(行き先が被っても番組的には困るだろうし)」

 

 自然と遺跡を撮りに来ているらしいからな。それに、緑の散歩道のほうが歩きやすいと言うのも理由としてはある。

 カトレアはお嬢様お嬢様しているその癖、……トレーナー教育の一環として身体活動も行われているからだろう……意外と体力はある。ついでに言えば俺としてもカトレアには体力をつけるよう指導をしているし、カトレアは素直に従ってくれているからな。その成果もあってか順調に体力は付いているようで、何より何より。

 ―― けれどそれは、あくまで『10才それ相応程度に優秀な体力』でしかない。

 遺跡の谷へ行くとすれば、険しい山道が続く。それよりポケモンのバトル練習に集中するとすれば、平坦な草原地帯の続く「緑の散歩道」や「しるしのはやし」の方が相応しいと考えたのだ。

 

 

「……お願いです、ムンナ!」

 

「ムミューン!」

 

「いっけぇ、マリル! 『みずでっぽう』!」

 

「リルルゥ!」

 

 

 相手トレーナーたる浮き輪少年のマリルが『みずでっぽう』を構える。迎え撃つカトレアは手を編んで指示を(念波で)飛ばすと、空中を漂う花柄ピンクのポケモン ―― ムンナがそれに応えた。『みずでっぽう』を受けきった後に身体をプルプルと揺らし、

 

 

「ムーッ、ナーァ!」

 

 ――《グミョォオンッ!》

 

 

 指示に従い、七色の色彩を放つ『サイケこうせん』を前方に飛ばす。

 沢山の輪っかがマリルへと直撃し、次々とはじけていく。最後に大きく光ってマリルが吹き飛ばされ、相手トレーナーの足元へ向かってころころ転がった。

 審判役を務めていた俺はマリルの状態を確認し、判定を告げる。

 

 

「んー……マリルは戦闘不能だな。勝者、カトレアで!」

 

「くっそー……戻って、マリル!」

 

「……お手合わせ、有難うございました」

 

「ああうん。こちらこそ、ありがと! お姉ちゃん!」

 

「ミュムーン♪」

 

 

 ボールにマリルを戻した後でカトレアと握手を交わすと、浮き輪少年は林の中にある広大な草原を、街のある方向へ向かって走っていく。家に戻って、回復を待つつもりなのだろう。

 んでもって、対するカトレアは此方へと走って来て……無表情にブイサインをしてみせた。もしかしたらこの無性に頭を撫でたくなる無表情は、褒めてーってな顔なのかも知れないな。そうじゃないかも知れないけれど。

 

 

「やりました、ショウ」

 

「おう、勝利おめでとう!」

 

「……ぅん……相手の少年には申し訳ないですが、負けようがありません。アタクシのムンナとは、そもそものレベルが違うでしょ……?」

 

「はは! やっぱり判るか!」

 

「……伊達でリーグチャンピオン(アナタ)に師事している訳では、ありません」

 

「確かにな。でもま、ナツメに教わってた技術の復習にはなったんじゃないか? 対人戦の連携確認にはなったし、何より場数ってのはそれだけで大きな経験だ。御家にいちゃあバトルもロクに出来ないだろ」

 

「……それもそうですね。このコもバトルを楽しみにしてくれています」

 

「ムンミュー♪」

 

 

 肩口辺りにフワフワと浮かぶムンナを撫でながら、カトレアが納得の意を示す。

 確かに経験値的には不十分だとは思うけど、ナツメから教わっている『テレパシーによる指示』を試していたんだからな。エスパーである事の利点は、活かすべきだと思うし。

 暫く撫でられていたムンナは気持ち良さそうな鳴声を上げると、カトレアの腕の中にすっぽりと納まった。特性は『ふゆう』じゃあないから、『テレキネシス』的なアレで自らの体重を軽減しているのかね。流石はエスパーポケモン。

 さて、と。

 

 

「そんじゃ講評が1つだけ。……別に全ての指示をテレパスで出す必要はないんだからな。それは覚えておいたほうが良い。今のは練習含めてテレパスを使う場面だったからいいけど、技名を隠す必要がないなら、カトレアの場合は口頭で喋った方が早いんだし」

 

「……ナルホド。ナツメお姉様ほどまでに習熟していれば、別なのでしょうけど……」

 

「でも、ナツメもたまに口頭で出す事はあるな。まぁ、相手トレーナーのリズムを乱したいだとか、主に自分の状況を変えたい時の一手管としてだけど。……カトレアの場合はまだ、そこまで考えなくてもいいと思うぞ?」

 

「はい。……後はありませんか?」

 

「んー、攻撃技の選択……は、マリルなら物理で攻めたいトコだけどムンナの能力的には特殊で間違いじゃあないし。マリルのHPからして、サイコウェーブで攻めなくって正解だし。催眠術してる暇があったら攻撃でオッケーな場面だったし。いいんじゃないか?」

 

「……有難うございます、シショウ。……でも、褒めてくれるのは嬉しいのですが、……撫ですぎです」

 

「いやゴメン」

 

 

 脊髄反射もかくやという速度で、慌てて手を離す。「おう、勝利おめでとう!」の後辺りから撫でっぱでした。スイマセンっ!

 ……いや。カトレアって同年の筈なのに年下風味な気がして、右手が、思わず、こう……な?(意味不明) 

 因みに、頭上の自由を得たカトレアは、もう……とか言いながら軽く髪を整えている。あー、

 

 

「あー……ほんとスマン」

 

「いえ。ショウに撫でられるのは、嫌ではないのです。けど、……」

 

 

 カトレアのムンナを抱えていない方の腕が動き、俺の後ろをピッと指差す。

 指された方へと振り向くと、

 

 

「挑戦者です」

 

「えーと……オレもポケモンバトルしたいんだけど、いい?」

 

 

 モンスターボール片手に、ザ・典型的な短パン小僧が立っていたのだった。

 ……この「しるしのはやし」は、木々に囲まれていながらも広大な草原地帯となっているため、ポケモントレーナーが良く集まる場所となっているらしい。その噂を聞きつけて俺もカトレアの練習場所として選択した訳なのだが……成る程。相手には事欠かなさそうだな、こりゃ。

 でもって、待たせてしまったみたいで申し訳ないので、

 

 

「そんじゃあカトレア。もう1戦いっときますか!」

 

「……はい。アタクシがバトルをお受けします。どうぞ、よしなに」

 

「お、おう! 行くぜっ!」

 

 

 うん。頑張れよー、未来の四天王!

 なんて風に、日が暮れるまでポケモンバトルを繰り返していくのであった。

 

 

 

 

ΘΘΘΘΘΘΘΘ

 

 

 

 

 長かった日は沈み、夜。

 「しるしの林」で連戦に次ぐ連戦を勝ち抜いたカトレア(と、ついでにお目付け役の俺)は6の島のポケモンセンターへと戻ってきていた。

 一旦はシャワーだの着替えだのの時間を取り、ロビーの隅にある休憩室で待ち合わせとしていた、の、だが。

 

 

「―― と言う訳なのです。ご、ご存知ありませんか?」

 

「……申し訳ないですが、俺達は北側にある『しるしの林』に一日中居たもので。直接はお力になれそうにないですね。……ですが」

 

「な、なにか知っているのですかっっ!?」

 

 

 目の前で身を乗り出してくるのは、朝にもアイドル2人組の番組を仕切っていたお人。サングラスの奥の眼は、既に半泣きだ。

 ……この人がこんなんなってるのには、勿論理由があってだな。

 俺は異常に近い顔を腕で押さえ、奥へと押しやりつつ、説明を開始。

 

 

「と、と。……『アイドルお2人と一部テレビクルーの失踪』なんて大事件ですが、どうやらこの島だけに限らないそうなんです。俺の友人が他の島にいまして、そこでも大勢の子供達が失踪 ―― 『神隠し』に遭っていると連絡が来ています。それに……5の島でも、同じ様な事件がありました」

 

「……旅番組が、一気にサスペンスドラマに路線変更ですか……」

 

「分野的にはむしろ報道番組ですよね……ああ、コーヒー飲みます?」

 

「はぁ。どうも……」

 

 

 俺の目の前で仕切りの人が座り直し、勧められたコーヒーに口をつけつつ、大分落ち込んだ様子を見せている。

 だが……そう。どうやら「遺跡の谷」に収録に向かっていたあのアイドル2名とテレビクルー数名が、失踪してしまったらしいのだ。この人曰くつい先程まで捜索していたが、結局痕跡すら発見できなかったとか。今も捜索は続いているみたいだが、暗くなってしまえば効率は段違いに落ちる。ポケモンセンターのロビーに実に重たい葬式ムードすら漂っている感じがするのは、そのせいだ。

 ……で。同じくナナシマに来ていた数少ない旅トレーナーたる俺にも、雲をも掴むような想いで聞いてみた、と。

 

 さて。

 その返答の際に語った様に、実はこの事件は「6の島」だけの事ではない。

 ついさっき、3の島にいるミィから「孤児院の子供達とレッド・グリーン・リーフの3人、あとショウの妹が姿をくらましているわ」とかいうとんでもない連絡が来ていたり。

 昨日は「5の島」でコクラン達『御家』や協会員、地元の人達が必死に捜索しているのにも関わらず、未だ行方不明の人が見付かっていなかったり。

 

 ―― つまりはこれ、ナナシマ全体で「何か」が起こっているのだろう、と。

 

 

「まぁ、一応記録として撮っておくべきかと思います。ナナシマなんて片田舎の事件ですが……規模が規模ですから。世間の注目も集まるとは思いますよ」

 

「はぁ。とはいえ、アイドル2名とテレビクルーの行方を捜すのが先決です。……無事で居てくれるといいのですが……と、ああ、そうでした。ご協力有難うございます。これ、名刺です。何かあれば連絡をお願いしたいのですが」

 

「勿論。……はい。こっちが俺の名刺です、どぞ」

 

「あ、はい、ご丁寧にどうも。……って、オーキド博士の研究班っ!?」

 

「はい。研究班は捜索に狩り出されますんで、俺はこれから3の島へ向かいます。何かわかれば、その時に連絡させてもらいますよ」

 

「どうか、是非! 宜しくお願いしますっっ!!」

 

 

 そこそこガタイの良い男性だというに、俺の手をがっしり掴んでくる。

 ……局としてもアイドルが、なんて大事件なんだし、この人にとっては責任問題だ。そもそも「行方不明」なんだから ―― 心配でもあるんだろうな。必死なその気持ち自体は、ひしひしと伝わってくる。

 ……さぁて、と。

 宣言した通り、俺も妹やらレッド達やら孤児院の子供らを捜しに行く。5の島はコクランが探しているし、まずは失踪したと言う3の島から……なのだ、が。

 

「(……ぶっちゃけ、3の島だけなら元凶に予想がつく事件なんだよなぁ……)」

 

 ゲームでもあったからな、こんな感じのイベント。だがそれは2の島3の島を挟んだイベントであり、5の島や6の島は関係していなかった。これが事態をややこしくしているのだが……ふぅむ。

 あいつの生息地的にも……やっぱり3の島だよなぁ。

 5の島で失踪……一応、思い当たる部分も無いではない。

 ―― だが、6の島。ここは全く思い当たらない。

 

 

「まずはその辺を整理してみるべきかねー」

 

 

 3の島に行ったついでに、とかで。

 おーしおし。そんじゃあ……

 

 

「―― ショウ、何かあったのですか?」

 

「……おおっと、そうだった」

 

 

 この湯上りお嬢様も、連れて行かなきゃいけないんだよなぁ。まったく。狙ったような時期に面倒な事件が起こってくれるな。

 で、辺りの喧騒を察知しているのだろう。カトレアは俺に事情を聞きたいご様子。

 

 

「ああ、確かに。何かあったといえば、あった。……結局はカトレアの力も借りる事になりそーだ。ゴメンな」

 

「……問題ありません。アタクシの力が必要とされるのであれば」

 

 

 うーん、流石は我が弟子と言うべきか。ナツメの弟子でもあるけど。……とりあえず、お人よしなのには違いない。

 そんなことを考えつつ、事情をかい摘みつつ説明する事に。

 

 

「―― と、言う感じだ」

 

「……本当、なのです?」

 

「お、おう。ほんと、ほんと。嘘じゃあない」

 

「……」

 

 《《 ズォオオオ!! 》》

 

 

 ……えぇと、落ち着けカトレア。お前エスパーなんだから、可視オーラ(特殊物理)が出てる。やる気を出すのは良いけど、暴走すんなよー。

 

 

「……ミミィは、アタクシの友人です。探し出してみせましょう、ショウ」

 

「勿論、当たり前だ。俺だって妹がいなくなってる。それに、マサラや孤児院の友人をこのままにしておく気もない」

 

「はい。……それでは」

 

 

 お嬢様はクルリと優雅に回ると、ポケモンセンターの入口めがけて一直線。滑るように歩き出して行く。

 ……って、オイ。

 

 

「待て待て、今日はもう船が出てないぞ? 明日の朝一で(りょう)船にでも乗せてもらって向かうから、今は休んどくべきだ」

 

「……むぅ……」

 

「むくれてもどうにもならない。朝4時発だぞ、さっさと寝た寝た!」

 

「……」

 

 

 島と島の間は潮の流れが速い。人間を乗せて『なみのり』で渡れる様な環境ではないし、『そらをとぶ』だって今の俺達には使えないんだから。

 そう考えてジョーイさんにカトレアの連行をお願いすると、カトレアは渋々のむっつり顔で女性区画にある部屋へと入っていった。

 見届けて、ロビーへと返ってきた準夜勤務のジョーイさんにお礼を言う事に。

 

 

「ども。ありがとうございました、ジョーイさん」

 

「いえいえ。元気のある子は嫌いじゃないので、全然構いませんよ!」

 

「ラッキーっ!」ポフポフ

 

「ああ、うん。お前もありがとな」

 

 

 ジョーイさんの天使の笑み。と、ついでに奥から出てきたラッキーがポフポフと俺の肩を叩きつつ、よく朝食バイキングだのに出てくる「ラッキー産ゆでタマゴ」を差し出してくれた。俺は今、「がんばれよ」とか言われたんだろう。流石はラッキー、実に良いヤツ!

 一仕事終えたジョーイさんとラッキーは俺に手を振りながらカウンターへと戻っていき、別のトレーナーの対応をし始めた所で、と。

 

 さぁて、明日からは大変そう……というか、事件は既に起こっているのだからして、大変なのは確定事項だ。

 

「(うっし。……とりあえず……)」

 

 自室に戻るなりポケセンのPC弄るなりして、色々と準備をしておく事にするか! 

 ……つーか、ラッキーのゆでタマゴ美味っ!!

 

 






 なでぽ……というか、それ以前に……

 とまぁ、今回は閑話中の閑話ですので、嵐の前の静けさということでどうか1つ。

 以下、まさかの元ネタ解説

>> ミミィ
 (少なくとも)Ptで出ていたコンテスト審査員のお一人。立ち絵はアイドル。
 ヨスガシティ突入時に固有イベントも存在します。

>> アイドル(左)
 イメージは、HGSSでリーグゲートからシロガネ山へ向かう際にポツンと立った民家にいる、元人気アイドル(自称)。
 「はがねのつばさ」の技マシンをくれます。衣装については、原作中彼女の発言まま。
 ……鋼の翼をイメージした衣装とは、いったい……?


 では、では。
 今回はここまでです。
 次回更新でナナシマ編を終了させることが出来そうです。

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