ハイスクール・フリート マーメイドと海の男達   作:SNAKE金城

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第21話 シュペー救出作戦! 前編

 

 

武蔵の捜索を行っていた播磨と晴風は、途中。行方不明だった比叡に遭遇。その比叡の生徒達はRATのウィルスに感染しており、学校からは比叡を捕捉し続けろと言う指示を受けるが。比叡がこのまま航行し続けると、トラック諸島に到達することを知る。そうなれば、ウィルスが世界に感染拡大する恐れがあるため、明乃の提案で比叡の足止め作戦を決行した。作戦は見事成功し、晴風は比叡の生徒とトラック諸島の住民を救った。

座礁した比叡はブルーマーメイドに任せることにした。

 

 

「比叡は面倒は、三原の支援隊が見ることになった」

「よろしくお願いします」

 

真冬に対し明乃は深く頭を下げる。

 

「我々は引き続き、武蔵以外の不明艦の捜索を続ける。お前達、晴風はどうする気だ~?」

「どうしますか、艦長?」

「学校からの指示は、武蔵探索です。皆の異存がなければそのまま続けたいと思います」

 

明乃はクラス全員の異存がなければ、学校からの指示どうり。武蔵の捜索を続けると言う。

 

「よーし!よく言った!秋津さん達はどうするんですか?」

「俺達も学校の指示どうり、武蔵の捜索を続ける。勿論、晴風と共に」

「わかりました!ただし、無理はしないでください。何かあったら連絡を入れてくださいよ!」

「了解した。晴風には俺達がついてるから。心配しないでくれ」

 

すると、八木が駆け足で此方に来る。どうやら通信が入ったようだ。

 

「艦長!広域通信に正体不明の大型艦目撃情報が多数入っています」

「南方120マイル、アドミラルティ諸島と北東300マイル、トラック諸島方面か・・・」

「どちらかに武蔵がいる可能性があるな・・・」

 

アドミラルティ諸島と先程と晴風が救ったトラック諸島で大型艦の目撃情報が多数入っている。恐らくどちらかに武蔵がいる可能性があると秋津はみた。

 

「よし!我々はトラックに向かう!すまぬが近場のアドミラルティ諸島を確認してもらえるか?」

「わかりました!」

「俺達も晴風と共にアドミラルティ諸島に向かう」

 

真冬はタラップで弁天に戻る。

弁天はトラック諸島。播磨と晴風はアドミラルティ諸島に向かうことにした。

晴風の生徒達は弁天に向かい手を大きく振り、播磨乗員も数人が弁天に向かい敬礼した。それを見た真冬は制帽を振って答える。播磨と晴風は急ぎアドミラルティ諸島に向かう。

晴風の艦橋では、

 

「よーし!やるぞ~!」

「単位よーけぇもらえるぞな!」

「ねぇ、ねぇ!ひょっとして私達って結構やるんじゃない!?」

「そうそう!比叡ってすっごい艦なんだよね?それを止めたって凄くない!?」

「下克上・・・」

 

比叡の事もあってか艦橋組は自信に溢れていた。そんな皆を明乃、ましろ、ミーナは、仕方ないなと言った表情で見る。

そんな中。内田は、

 

「自信をつけるのはいいけど・・・慢心は、してはいけないよ。そこで慢心してたら痛い目にあうからね・・・」

 

内田は自信をつけるのはいいけどと笑顔で言い。間を開けると一気に真剣な表情になり、慢心をしてはいけないと続けて言った。

その内田の顔を見て艦橋組は何処か引き締まった表情をする。すると八木からアドミラルティ諸島で目撃された大型艦の正体がわかったとの報告が入る。

 

「目標がわかりました!」

「報告!」

「識別帯は白と黒。ドイツのドイッチュラント級直教艦。アドミラル・シュペーです!」

『えっ!?』

 

八木の報告を聞き艦橋組は驚いた。その中でも最も反応したのはミーナである。

この報告は播磨にも伝わっていた。

 

「アドミラル・シュペーか・・・また相見えるか」

「スクリューシャフトを一本壊しただけでは、止められないと言い訳か・・・」

「恐らくシュペーも例のウィルスに感染しているのでは?」

 

会議室では、救出を前提にシュペーの対応について話し合われていた。

 

「六黒さん。どう思う?」

「シュペーの子達もウィルスに感染している可能性は大と言える」

「そうか・・・」

 

会議室にいる全員が悩みに悩む。

救出とは言え、シュペーはドイツの学生艦。シュペーが攻撃してくるのは確実で。その攻撃に対して応戦した時にシュペーの生徒達に負傷者、最悪の場合死者が出れば、国際問題になりかねない。救出と言っても簡単には手を出すことは出来ない。

 

「この作戦は、明日。晴風の意見も聞いてから決定する。以上」

 

秋津がそう言い、会議室に居た全員がその場を後にする。

翌朝、晴風の教室ではクラス全員が朝食を取っていた。そんな中。ミーナは浮かない顔で朝食を取っていた、それもそのはず。今から向かうアドミラルティ諸島には、ミーナが乗っていたアドミラル・シュペーが居るのだ。シュペーには、ミーナの大切な友人である艦長と仲間が居る。艦に残してきた仲間達が心配で仕方なかった。

 

「今度はシュペーか・・・」

「ミーナさんが乗ってた艦っすよね~?」

「あの時大変だったな~」

「そうすっよね~!」

 

シュペーと最初にあった時の事を思い出したのか。青木と和住はその時の話をしていた。

 

「艦長どうします?」

「・・・作戦は・・えっと・・・」

 

ましろがシュペーの対応について明乃に問う。明乃が答えようとすると、教室の出入口に数名のクラスメイトが立っていた。

 

「カチコミです!」

『おおー!』

「助けに行きましょう!」

 

皆、シュペーの救出作戦に気合いが入っていた。いつでも行けますよと言わんばかりに皆、準備を万全にしている。

 

「わしの為に・・・」

 

それを見てミーナは申し訳なさそうに言う。すると、教室のドア開き、秋津が入ってきた。

 

「俺達、播磨もこの救出作戦に参加させてもらうよ」

 

と笑顔で言いう。播磨でもシュペーの救出作戦に播磨の乗員達も気合いが入っていた。すでに特警隊は、救出隊の編成もしており、播磨もいつでも救出にいけるよう準備が万全であった。

 

「播磨も居れば百人力です!」

『おおー!』

 

播磨も作戦に参加すると聞いて更に気合いが入る。

朝食を終えた後。秋津と内田を含む晴風クラス全員が教室に集まり、シュペー救出作戦の概要の説明に入る。

 

「具体的な手順は?」

「ミーちゃん、前に聞いたシュペーを足止めする方法。教えてもらえますか?」

「本気なのか?ド本気か?」

「当然です!」

「もう決めたことだ、うちの乗員はシュペーの子達を助ける気満々だよ」

 

ミーナは、自分一人の為に晴風の皆を危険に晒すような作戦に気が進まなかったが、晴風の生徒達と播磨乗員はすでにやる気満々。それを見たミーナはシュペーの足を止める方法を説明する。

 

「燃料中間タンクを加熱するための蒸気パイプが甲板上に露出している。播磨の主砲なら簡単に破壊できる。晴風の主砲でも可能じゃ。蒸気パイプを壊せば足止めできる筈じゃが・・・」

「確かに、シュペーは比叡に比べて砲力も装甲も速力も下だ」

「楽勝ぽいの~」

「そう簡単にはいかないぞ。シュペーは巡洋艦級の船体に晴風の主砲では抜けない装甲に強力な28センチ砲を搭載している。晴風に当たれば一撃で沈む可能性だってある。また小型と言うことは小回りも効く。推進機が一基破損しているが、それでも速力はある。甘く見てはいけない」

 

秋津の言葉に皆、真剣になる。

確かに比叡に比べるとシュペーは砲力、装甲、速力は下だが、28センチ砲は口径は違うがドイツ海軍。戦艦シャルンホルストも搭載している主砲。巡洋艦級に戦艦級の主砲。それ故、シュペーはポケット戦艦と呼ばれている。

また、シュペーは小型直教艦。と言うことは小回りも効く。比叡の様にうまく行かないだろう。

 

「でどうします、艦長?」

「・・・ミーちゃんはどうしたい?」

「この作戦はミーナさん、君の同意が必要だ・・・どうする?」

 

明乃と秋津はミーナにどうしたいか尋ねる。

 

「わしは・・・」

 

クラス全員がミーナに視線を向け、彼女の意見を待つ。

 

「我が艦、アドミラル・シュペーの乗員の皆を・・・そして艦長テアを助けて欲しい・・・晴風と播磨を危険に晒すことになってしまうが・・・」

 

ミーナは自分が乗る艦。アドミラル・シュペーを助けて欲しいと言ったものの、晴風と播磨を危険な目に遭わせる事に負い目を感じていた。

すると、ミーナの「助けて欲しい」と言う言葉を聞いた秋津は、不適な笑みを浮かべると席を立ち言った。

 

「よく言った!!」

「やろう!やろう!」

「うぃ!!」

「一度なめられたら終生取り返しがつかんのがこの世間よのぉう。時には命張ってでもっちゅう性根がなけりゃあ。女が廃るんだわ!」

 

どんな危険な目に遭おうとも、友達の為なら助ける。晴風の皆はシュペーを救おうと燃えていた。

 

「岬さん」

「何ですか、秋津教官?」

「シュペーを確認後、晴風は播磨と並行してくれ」

「えっ?」

「並行と言ってもシュペーから隠れるように並行してくれ・・・」

「それは、つまり・・・」

「そう、我々を盾にしながら航行してくれ」

 

秋津はシュペーを確認後、作戦が行われている間は並行し、播磨を盾にしながら航行するように言った。

 

「そんな!それでは、播磨が危険に晒されることに・・・!」

「大丈夫さ、播磨の装甲は硬い。シュペーの主砲を食らってもかすり傷程度ですむ。だけど晴風はそれでは済まされない。君達を危険な目に遭わせるわけにはいかない」

「ですが・・・!」

「危険な事は、教官である。俺達に任せてくれないか?勿論、晴風に何もするなとは言わない、君達にしか出来ないことはやってもらう。それでいいかな?」

「・・・わかりました」

 

明乃は秋津の要求を受諾した。ましろも渋々ではあるが受諾した。

 

「では・・・作戦開始!!」

 

シュペーの救出作戦が開始された。秋津は急ぎ播磨に戻り、急ぎ艦橋に上がった。播磨と晴風はシュペーが居るアドミラルティ諸島の海域に針路を向けた。

 

数時間後、播磨と晴風はシュペーと居る海域に到着した。播磨の見張りは目を凝らしながら双眼鏡を覗きシュペーを探す。すると、一人が

 

「前方に艦影視認!アドミラル・シュペーです!!」

「電探。シュペーの位置は?」

「前方。10マイルです」

「シュペーの様子はどうだ?」

「反応ありません。主砲を動かす様子も見られません」

「此方に気づいてないようです」

「うん。総員!対水上戦闘用意!!」

「対水上戦闘よ~い!!」

 

秋津の号令を金城が艦内放送で伝える。戦闘用意の号令がかかると、数分もしない内に配置が完了した。主砲一番から二番には模擬弾が装填される。高角砲群、機銃群にも弾が装填された。

晴風でも明乃が戦闘用意の号令をかけた。晴風は直ぐに播磨の左舷に舵を取り、シュペーから死角になるように並行する。

 

「第4戦速!」

「第4戦速!!」

 

秋津が速力を上げるよう指示を出す。播磨は速力を上げ、シュペーの左舷に舵を切る。

晴風の艦橋ではミーナがドイツ語で「テア、今助けに行く」と呟いていた。

 

「戦闘、右魚雷戦!30度、アドミラル・シュペー!」

 

播磨の艦橋付近に搭載されている右舷側の魚雷発射管が稼働する。

 

「魚雷は無誘導にしろ」

「無誘導ですか?」

「誘導だと確実に当たる。いいから無誘導するんだ」

「・・・了解、魚雷、誘導から無誘導に切り替えます」

 

水雷長は秋津に言われた通り伝声管で戦闘指揮所に魚雷を誘導から無誘導に切り替えるよう伝える。

魚雷発射管担当の乗員は魚雷を誘導から無誘導に切り替えたと艦橋に伝えた。

 

「敵針180度、敵速20ノット、雷速52ノット、斜進角0度!」

「距離2万!遠距離雷撃!!」

「一番管、雷撃3!」

 

魚雷発射管は、水雷長の指示した方向へ向けられる。

 

「一番管、発射準備よし!!」

「攻撃始め!」

「撃ぇー!!」

 

水雷長の指示で魚雷発射管から3本の魚雷がシュペーに向けて放たれた。

 

「シュペー!主砲旋回!」

 

見張りはシュペーの主砲が旋回していることを報告する。シュペーの主砲は、播磨に向けられる。

 

「やっと気づいたか・・・」

「回避する。面舵!」

「おも~か~じ!」

「おも~か~じ!!」

 

航海長の号令を復唱しながら操舵手は右に舵を切る。

 

「向こうが魚雷を回避し、速度が落ちたところを主砲で狙う!シュペーの動きを見逃すなよ!!」

『はっ!!』

 

見張りはシュペーの動きを一瞬でも見逃さないと、目を見開き集中してシュペーをジッと見る。すると、シュペーの後方の主砲から砲弾が放たれる。

 

「シュペー、発砲!」

「もど~せ~!」

「もど~せ~!!」

 

操舵手は舵を中央に戻した瞬間。播磨の周辺に三つの水柱が立った。

 

「魚雷!シュペーに向かっています!」

「魚雷に合わせ晴風と共に突入する!」

 

シュペーに向かっている魚雷に合わせ晴風と共に突入すると秋津が指示する。が、思いもよらぬ事が起きる。

 

「シュペー、回避せず!」

「何だと!?」

 

シュペーは魚雷への回避行動を取らず。魚雷の直撃コースをそのまま進んでいた。

 

「っ!戦闘指揮所、魚雷を自爆させろ!」

 

秋津は魚雷の自爆を戦闘指揮所に指示する。シュペーに向かっていた魚雷はシュペーの左舷付近で自爆し水柱を上げる。

 

「まさか、魚雷を確認できなかったのか?」

「回避行動を取らないのは予想外だった・・・」

「危うく国際問題に発展するところだったな」

 

播磨に積んでいる。魚雷は全て実弾である。しかも播磨の使っている魚雷は前の前世の一式誘導魚雷を使用している。一式誘導魚雷は、通常の魚雷の何倍もの威力がある魚雷で、前世の太平洋戦争でアメリカ海軍のアイオワ級戦艦のニュージャージーをたった5発で沈めた程。

そんな魚雷がシュペー当たったら死傷者を出す上に確実に沈んでしまう。そんなことになれば国際問題になりかねない。一式誘導魚雷には、自爆装置が備えられているため、シュペーに当たる前に自爆させることが出来た。

 

「二番管、発射準備よし!」

「攻撃始め!」

「撃ぇー!!」

 

二番魚雷発射管から3本の魚雷が再びシュペーに向けて放たれる。シュペーは副砲を播磨に向け発砲する。放たれた砲弾は、播磨に降り注ぐ。

すると、一発の砲弾が播磨に当たらず晴風の三番主砲に被弾する。晴風の三番主砲は当然使用不能になった。

 

「晴風の三番主砲に被弾!」

「右舷後部甲板に被弾!損害軽微!」

「三番高角砲大破!」

 

各部から被害報告が上がる。シュペーは主砲を播磨に向けどんどん撃ってくる。播磨の周辺に多数の水柱が上がる。

 

「夾叉されました!!」

「回避せよ!」

「よーそろー!」

 

操舵手は急いで舵を切る。

シュペーに向けて放たれた。魚雷はシュペーの艦底を通過した。先程よりも魚雷の深度を深く設定していたため当たらずに通過した。

 

「魚雷、シュペーの艦底を通過!」

「回避行動を取らないとは・・・これでは弱点を狙うのは不可能だ」

(回避行動を取らない以上、砲撃戦に持ち込むか?いや、そんなことをしたらシュペーに大きな被害が出る可能性がある・・・やはり、予備で考えた作戦でいくか!)

 

秋津はもしもの時のために晴風の生徒達も知らない予備の作戦を準備していた。それを今、決行することにした。

 

 

 




この物語のアメリカ海軍の戦艦ニュージャージーを前世の太平洋戦争で沈んだことにしました。
実際は、今現在も博物館として公開されています。

誤字、脱字や変なところがあると思いますがご容赦ください。 感想お待ちしています!

次回もお楽しみに!


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