ハイスクール・フリート マーメイドと海の男達 作:SNAKE金城
少し長めに書きました。
それではどうぞ!
秋津はましろと幸子と一緒にシュペーの姿がなくなるまで見つめていた。
シュペーの姿が水平線へと消えた後、秋津は播磨に戻り艦長室に向かった。
すると、艦長室の入り口に金城がいた。
「おやっさん」
「艦長、一局やりませんか?」
「お、久し振りにやりますか」
そう言うと二人は艦長室に入る。
秋津はテーブルに将棋板を置き、駒を並べ準備する。
「今日こそ、おやっさんに勝つからな」
「そちらからどうぞ」
金城は、先手を秋津に譲った。
パチッと将棋の駒を打つ音が部屋に響く。
「そう言えば艦長、自分と最初にあった時の事。覚えてますか?」
「ああ、おやっさんと初めて会ったのは、俺が初めて艦長になった時だったな・・・」
遡ること、1965年の夏。秋津が27歳と言う若さで、大佐と言う階級につき、そして初めて艦長になった年である。
しかも、最初に艦長として乗る艦が。あの戦艦大和であった。
秋津は、大和の艦橋に上がり辺りを見渡すが、その顔は何処か浮かない表情であった。
(艦長として最初に乗る艦が大和か・・・本当に俺でいいのか?)
秋津は、最初に艦長として乗る艦が大和でいいのだろうかと、少し不安であった。
普通、まだ艦長としての経験のない艦長が最初につく艦の大体は、駆逐艦か巡洋艦くらいで、あの山本五十六と山口多聞が最初に艦長として乗った艦は、軽巡洋艦の五十鈴である。
艦長として、当時まだヒヨッ子の秋津にとっては不安であった。いつも明るく、即決断し、乗員からとても信頼されている秋津も最初の頃は、こうもなる。
すると、艦橋の扉が開き誰かが入ってきた。
「・・・あ、もしや艦長の秋津大佐ですか?」
「あ、ええ・・・艦長の秋津です」
「副長の金城雅治 中佐です」
お互い敬礼しながら自己紹介をする。
「なぁ、副長・・・」
「何でしょうか?」
「副長の事を・・・渾名で読んでいいか?」
「え?」
金城は突然、渾名で読んでいいかと聞かれきょとんとした顔になる。
今日、初めて会う人にいきなり渾名で読んでいいかと言われるのは初めてである。
「別に・・・いいですよ」
「じゃあ、おやっさんだな」
「おやっさん?」
「ああ、副長の顔。うちのおじさんにそっくりだし、これから同じ艦で共に暮らすから、渾名で読んだ方が親しみやすいかな~って」
「っ・・・アハハハ」
金城は思わず笑ってしまう。それを見た秋津は何故笑うんだと言った表情だった。
「さすが、秋津大将の息子さんですね」
「うちの親父。知ってるのか?」
「ええ、前まで秋津大将の部下でしたから」
「そうだったのか」
金城は、秋津の部下になる前。秋津の父である秋津源太郎(あきつ げんたろう)大将の下に居たのだ。
結の父。秋津源太郎は、海軍一明るい人物で知られており、年上の友人である山本五十六いわく「あいつと一緒に過ごしていても飽きない」らしい。
アメリカ軍が計画していた、東京への原子爆弾投下作戦を阻止した人物としても有名な海軍軍人である。
だが、秋津が後世に飛ばされる一年前に急病で亡くなっている。
金城は、結も源太郎も殆ど同じ性格だったので、さすが親子と思い、笑ってしまったのだ。
「あの時、初めて渾名をつけられたので、少し嬉しかったです」
「そんなに親父と俺はにてるんだなぁって思ったよ」
「最近はどんどん似てきてますよ・・・王手!」
「あっ!しまった~」
話している間にも金城はどんどん秋津を追い詰めていた。
「これでどうだ!」
「取って・・・王手!」
「くっ・・・参りました。やっぱりおやっさんには敵わないなぁ」
「艦長も前より強くなりましたよ」
「そう言ってくれるとありがたい」
この一局は、金城の勝ちに終わった。
翌朝、播磨と晴風は予定の通り明石と間宮の合流地点に到着し、早速補修と補給作業に入る。
作業の間、特になにもすることも無かった為、播磨乗員は作業する者と見張り員以外は、暇していた。
晴風も同様であった。そんな中、晴風艦橋では、
「て~へんだぁ、て~へんだぁ!て~へんで~い!!」
背中に「大漁」と書かれたあさぎ色の法被を着た麻侖が叫びながら飛び込んできた。
「何事だ!?」
「機関部で何処か壊れてた?」
「ちがーう!」
「じゃあ、機関科の誰か体調が?」
「皆、元気でい!」
「誰かいなくなったのか?」
「それもちがーう!」
麻侖が慌てた様子で飛び込んできたので、機関科に何か問題が起きたのかと思ったのだが、麻侖いわく違うらしい。
「だったら何?」
「晴風と播磨はもう赤道こえてるじゃあねぇか!」
「赤道・・・?」
「お、とうとう赤道を越えたのか」
麻侖は、赤道を越えた事に目を輝かせていた。内田は呑気に赤道を越えたのかと言う。
「うん、確かにそうですね」
幸子がタブレットで調べると、今補給している地点は既に赤道を越えた地点にあった。
「赤道祭だぁー!!」
『赤道祭?』
「祭りだ!祭りだー!」
「よく、赤道祭の事を知ってるな」
麻侖は、赤道を越えているのだから赤道祭をやろうと言う。
現在、補給と補修作業中で見張りと警戒以外なにもやることのない晴風と播磨乗員。
あのオーシャンモールでの出来事の後、室戸岬で休息を取って以降、比叡やアドミラル・シュペーとの戦闘もあり、休息をろくに取っていなかった。
そこで、明乃は麻侖の提案を了承し、赤道祭をやることを伝える為、晴風のクラスメイト全員を教室に集めた。
秋津も明乃に呼ばれ晴風の教室に来ていた。
クラス全員は何も知らない為、何が起きるのだろうと言う声が上がる。
「本艦と播磨は、補修中でもありますし赤道祭を行いたいと思います」
「ほぉ、赤道祭か。やるとしたら初めてだな」
「赤道祭?」
「また適当に名前つけたッスねー」
赤道祭を知らないのか青木は適当な名前がついた祭りだなと言う。それを聞いた麻侖は反論する。
「なぁにいってんでい!赤道祭は由緒ただしいお祭りでい!」
「何処が由緒ただしいのですか?」
楓が赤道祭について麻侖に質問する。
「それわなぁ、クロちゃん説明してくれい!」
(自分、知らんのかい!)
麻侖は赤道祭について、隣に立っていた黒木に説明するよう促した。恐らくこの為に黒木を隣に立たせたのだろう。
自分から赤道祭をやろうと言った本人がその由来を知らないと言う事に内田は、内心つっこんだ。
「風が吹かないと航海できなかった大航海時代に、赤道近くの無風地帯を無事に通過できるよう。海の神に祈りを捧げたのが始まりだったそうよ。そして赤道通過の時に乗員が仮装をしたり寸劇を演じたりと、まさにお祭り騒ぎだったと言う記録が残っているは」
「付け加えると、元々は岬を通過する際の儀式に由来するんだよ、因みに日本海軍も赤道を越えた時はやる艦もいたらしい」
黒木が説明した後、さらに詳しい説明を内田がした。
「ふーん」
「へー」
「そーなんだー」
小笠原、武田、日置の砲術科三人組は赤道祭の説明を聞いて「どうでもいいわ」と興味がないと言った様子。
その他の生徒達も興味があまり無さそうであった。
秋津は初めてやる事だからか、やる気満々と言った表情をしている。
「実行委員には、機関長の柳原さんが立候補してくれました」
「やっぱり・・・」
「まじか~・・・」
機関科メンバーの若狭と留奈は予想していたのか「やっぱりうちの機関長が言い出したな」と言った表情をする。
留奈の場合「えー、やるのかよ」と言った表情だった。
「皆の衆!盛り上がっていくからなぁ!それぞれ出し物を考えといてくれよ!秋津教官も播磨の皆さんに出し物を考えといてと言ってくれよ!」
「了解!」
「祭りは明日の明日だからな!」
麻侖は、やる気満々であった。対して、
「めんどくさいッス~・・・」
青木は赤道祭には積極的でないようだ・・・と言うより生徒の大半がやる気がない様子だった。青木の隣にいる和住は、何か考えがあるのか、表情から赤道祭には積極的な様子だ。
赤道祭を開催すると伝え、生徒達は解散した。
そんなの中でも補修作業は続けられており、明乃と秋津は作業の状況を聞きに杉本と藤田の所に来ていた。
「必要な物は両艦とも補充しておいたわ」
「晴風の主砲の完装は、後2日ぐらいかかる。播磨の高角砲は、何とか1日で完装できます」
「ありがとう」
「すまんな、また手間かけさせてしまって」
「いいえ、播磨と晴風の奮闘ぶりは、私達も聞いてますから。晴風は比叡を座礁させたり、播磨はシュペーの乗り込み作戦を成功させたり」
「変わり者を寄せ集めたって印象だったけど凄いね~」
「アハハハ・・・ありがとう・・・」
「ハハハ、確かに晴風もうちの乗員も、俺も含め変わり者が多い。うちの播磨は変わり者じゃないと扱えん艦だからな。只でさえ大和より大きいしな・・・」
変わり者を寄せ集めた・・・それを聞いた明乃は苦笑いしながらありがとうと言う。
秋津の場合はごもっともと言う感じで高笑いをし、自らも変わり者だと言い、播磨は変わり者を寄せ集めないと扱えない艦だと言った。
「そう言えば播磨っていつ出来た艦なんですか?」
杉本が播磨はいつ出来た艦なのかと聞く。
彼女らからすれば、いきなり現れ聞いたこともない艦である為、聞くのも無理もない。
「すまんな・・・それは教えられないんだ」
「そうですか・・・」
秋津は眉をハの字にし笑顔で杉本に教えられないと言う。
それもそうだ、播磨が別の世界の1970年代から来た日本国海軍の戦艦などと、教えられる筈もない。
ましてや、この事は機密事項である。
杉本は少し残念そうに言う。
その頃、晴風艦橋では、
「出し物なにやります!」
「ええ!?」
幸子が出し物は、何がいいかとましろに聞く。
幸子は赤道祭の参加に積極的のようだ。
また、何故かましろと幸子との距離が凄く近い・・・
「やんなきゃいけないの~」
「うぅぅ・・・」
立石と西崎も大半の生徒達と同様に、赤道祭には積極的でない様だ。と言うよりめんどくさいと言った感じである。
「私、考えてもいいですか!?」
「ダメだ」
「えー!」
任侠物が好きな幸子が考える出し物は、恐らく任侠関係の演劇になるだろうと思い、ましろはキッパリと却下する。
「ココちゃんの考える事に私達、きっとついていけない気が・・・」
知床もましろと同様の意見らしい。
いつのも幸子を見れば大体どんな演劇になるかは、予想がつく。
「じゃあシロちゃんも一緒に考えてくださ~い!」
「離せ~!」
「いつの間にか凄くなついてるね?」
「何、このうっとうしい距離感・・・」
「うぃ・・・」
「あれ?いきぴったり・・・?」
「うーん・・・」
そう言って幸子はましろの片腕に抱きつく。
ましろは、離せと幸子を振りほどこうとするが、両手でガッチリと抱きついてるため、ほどこうにも、ほどけない。
知床は、幸子がいつからましろと仲良くなったのかと疑問に思い、西崎は幸子とましろとの距離感を見て、うっとうしさを感じる。
すると、秋津が晴風の艦橋に来た。
「内田、お前は一旦・・・」
「あ、秋津きょ~か~ん!」
「ん?・・・うわっ」
秋津は内田に何かをいいかけた時、幸子が秋津の名前を呼びながら、何と抱きついてきた。
しかも、秋津の体に思い切り抱きついてきた。
それを見た、艦橋いる全員が唖然とした。
「秋津教官も私の出し物に出てくださ~い!」
「の、納沙さん・・・出てもいいが、抱きつくのはやめようか?」
「え?・・・あ!/////」
秋津は幸子の肩を叩き苦笑いをしながら、抱きつくのはよしてくれと言う。
それに気づいた幸子は、すぐに抱きつくのをやめて顔を赤くした。
どうやら無意識に抱きついたようだ。
播磨と晴風が補修、補給作業と赤道祭の準備をしている頃、横須賀にあるブルーマーメイド庁舎の会議室では、ブルーマーメイドの各艦の艦長、副長などの隊員が集まり、ある会議が行われていた。
今は、ラットウィルスの感染に関する調査状況の報告、説明が行われていた。
「検査の結果。ウィルスに感染した生徒は正常に戻ったわ。播磨と晴風がシュペーに行った作戦は成功よ」
「すごいですね・・・(秋津さん、無事で良かった・・・)」
「表彰ものです」
スクリーンには、作戦の状況を伝えるための写真が映し出されていた。
播磨の特警隊員がヘルメットに付けていたカメラで撮影された物を播磨が送っていた。
平賀は秋津が無事であることを確認できて少しホッとした。以外に心配性なところがあるらしい。
「学生と同じブルマーである播磨の隊員達に負けてられないわよ!秋津特務監察官達にばかり、頼ってはいられないわ!我々もこれから、パーシアス作戦を展開するわ。抗体の増産は急ピッチに進んでいる。播磨の衛生長の六黒さんのお陰で短期間での増産が可能になった。完了と共に一斉に行動開始よ」
真霜の言葉に皆、一瞬で真剣な表情に変わる。
「鳥海、摩耶、五十鈴は、既に真冬部隊が制圧済み・・・残るは涼風、天津風、磯風、時津風、それから・・・武蔵」
スクリーンに武蔵の写真が映し出されると、全員に緊張が走る。
今回、行方不明及び感染している学生艦の中で、最も対処が難しいのが武蔵である。
今、ブルーマーメイドで動かせる艦は、インディペンデンス級くらいで、巡洋艦級や駆逐艦級の対処ならインディペンデンス級でも十分ではあるが、46センチ砲搭載の武蔵相手には完全に力不足である。
また、武蔵に対抗できる主力艦艇は現在もドック入りしており、51センチ砲搭載の天照もまだ機関の修復の目処が未だに立っていないとまさに最悪な状況である。
播磨に関しては、主力艦艇が動けない状況のなかでは貴重な存在、このパーシアス作戦の最後の砦にする為、現状の戦力で作戦を実行するしかなかった。
また、インディペンデンス級の装甲は武蔵の46センチ砲からしたら紙も同然、現に東舞校の教員艦隊の最新鋭の艦艇をたった一隻で一網打尽にしている。
大きな危険を伴うが武蔵を救うには実行するしかない。
パーシアス作戦では、艦艇の数で勝るしかない。
「真冬部隊によると武蔵の最終確認地点は、ウルシー南方、進路は西、恐らくフィリピン方面に向かったと思われるわ。ただし、現在位置は不明よ」
武蔵の位置は未だに不明のままだった。
すると、隊員の一人が真霜にある質問をした。
「宗谷監督官、播磨に搭載されている。海鳥と言うオートジャイロ・・・今後のブルーマーメイドにとっても必要になると思います。海鳥と同じオートジャイロの製造はするのでしょうか?」
隊員の一人が海鳥と同じオートジャイロは今後のブルーマーメイドに取っても必要で、今後、製造はするのかと言う。
「ええ、その予定よ。播磨の海鳥機長の菅野さんからも製造を進めるように言われているわ、天照の搭載機も同様よ・・・でも、この事は今起きている事態を収束させるのが優先。オートジャイロの件はその後よ」
オートジャイロの製造と増産は予定されている様だ。
また、菅野もオートジャイロの製造と増産を強く進めているらしい。
会議が終わり解散した後、通路を歩いている平賀に隊員の一人が声をかけてきた。
「平賀さん、秋津特務監察官とは、うまくいっているんですか?」
「な、何よいきなり・・・/////」
「もう一線は越えたんですか?」
「そ、そんなこと教えられるわけないでしょ!/////」
平賀は顔を赤くしながら、駆け足でその場を去った。
今回のパーシアス作戦の概要は、横須賀女子にも伝えられたの校長、真雪にも伝えられた。
「今後はブルーマーメイド主導の下で作戦を展開するとのことですが、学生艦にも協力の要請が来ております。勿論、教官艦の播磨にも」
今回はブルーマーメイド主導で作戦を行うようだ。
同盟国であるアメリカ海軍にも要請はできる。が、アメリカ海軍が動けば、他の国が牽制してきたなどと刺激を与えかねない特に、仲の良くない。中国とロシアは必ず出てきて、厄介ごとになりかねない。
そこで、国際機関であるブルーマーメイドが主導で行えば大きな外交問題に発展することもないからである。
横須賀女子に何故、ブルーマーメイド所属の播磨に協力要請が来ているのかと言うと、現在の播磨は横須賀女子所属の特別教官艦である為、横須賀女子の校長真雪の承諾が必要だからである。
「生徒に負担はかけたくないけど・・・感染の拡大はなんとしても防がなければ・・・艦の現況は?」
「風早、秋風、浜風、舞風は学校に戻ってきております。長良、浦風、萩風、谷風は依然偵察中。そして晴風と教官艦 播磨は現在間宮、明石により修理中です」
「晴風の生徒達の様子は?」
「秋津教官の報告によると、赤道祭の準備をしているとの報告が来ています。また、播磨も同様であると」
「フフッ」
それを聞いた真雪は笑みを浮かべ、その表情からは何処か安心した様子も伺える。
「修理が完了したら作戦に協力するように伝えて」
「はい、また播磨はこの作戦では最後の砦だそうです」
「播磨の艦長、秋津さんは前の世界では「洋上の狂気」と呼ばれていて、一国の海軍の艦隊を大和一隻で全滅させた人・・・また、播磨はあの大和もしのぐ兵装を搭載しているわ・・・最後の砦になるのも納得ね」
「「来島の巴御前」とも言われている貴女をこえる人が、今は存在するんですね」
(秋津さんには、色々と苦労をかけるけど・・・今は播磨の力が必要不可欠・・・もしかしたら今の武蔵を止められるのは秋津さん、貴方と播磨しかいないかもしれない・・・秋津さん、生徒達を頼みます)
真雪は晴風だけでなく、今回の作戦の主目標である武蔵の生徒達のことも守ってくれるように願った。
その願いが、現実になろうとしている・・・
晴風と播磨が補給、補修作業に入ってから2日が立った。
空が晴々としている中。黒木は甲板上ではしごにのぼり、提灯を紐にかけぶら下げる作業をしていた。
赤道祭に向けて作業は進んでいるのかと思いきや、周りを見ると砲術科三人組は水着に着替え水鉄砲で水遊びをしているし、野間は前の休息日同様、パラセイリングを楽しんでいるわ、機関科メンバーは、砲術科三人組同様に水着に着替えデッキチェアで日光浴をし、今日の運勢を占っているわで、全然作業は進んでいなかった。
ただ一人、赤道祭に積極的な様子を見せていた和住は木箱に座り何かスケッチブックに書いているようだ。
「あなた達も手伝ってよ!」
「暑いから動きたくな~い!」
黒木は、日光浴をしている同じ機関科メンバーに手伝うように言うと、暑いから動きたくななどと返答をする。
「うーん、なかなか。大変、大変」
和住は、楽しそうにスケッチブックに何かの設計図を書いていた。
食堂では、麻侖と炊事委員三人と北条が赤道祭で出す。屋台などの出店を考えていた。
「やっぱり屋台は欲しいよな~」
「焼きそばとかたこ焼きとか?」
「カルメ焼きにいか焼き・・・?」
「定番もいいけど・・・スカッぽい感じも欲しいよな!」
「スカ~?」
「横須賀のことじゃない?」
「わかった、色々考えてみる」
麻侖のスカッぽい感じと言う要望に少し困った笑みで色々と出店を考えると言った。
北条は紙に何か色々と書いている。どうやら色々と屋台のアイディアが浮かんでいるようだ。
「王手」
「むむ・・・参りました・・・あー!これで昨日に続きて3連敗だよー!」
食堂の端の席では、播磨副長の金城と西崎が将棋を打っていた。どうやらおとといから勝負しているようだ。
「ハハハ、詰めが甘いな」
「金城さん、強すぎだよ~」
「あれ?西崎さん知らなかったけ?」
「何が?」
悔しがっている西崎に内田が話しかける。
すると、内田は何故金城は将棋が強いのか説明する。
「副長は、元プロ棋士だよ、しかも竜王戦にも出た実力者だし」
「ええー!!」
内田は、金城が元プロ棋士だと言う。
そう金城は前の世界では、現役海軍軍人のプロ棋士として有名で、段位も9段で王将のタイトルも持っており、名人戦と竜王戦にも出るほどの実力者である。
この世界に来る2年前に引退し元プロ棋士となった。
それを聞いた西崎は戦意喪失したような顔をした。
西崎も将棋アマチュア一級を持ってはいるが、各が大きく違った。
すると、食堂に和住がやって来た。
「ねぇねぇ、主計科でいらない木箱とかな~い?」
「あるよ」
「うちの播磨にもいっぱいあるぞ・・・」
「お!出し物で使うのか!?」
「ううん、ちょっと個人的に作りたい物があるんだ」
「なぁんだよ個人的って!」
「な、い、しょ」
「むぅー」
和住は、自分が作ろうとしている物を秘密にした。
「なんでぇい、なんでぇい!内緒ってのはきにいらねぇ!」
和住の内緒にするふるまいに納得がいかないのか、不機嫌そうに甲板を歩いていた。
赤道祭の準備が確認している中、甲板で八木と宇田、楓がスイカ割をしていた。
「何やってんでぇい?」
「スイカ割りだよ~」
「万里小路さん凄いの!絶対は外さないの!」
「赤道祭はどうした?出し物何やるか決めたのか?」
「まだ~」
やっぱり赤道祭の準備は進んでいないようだ。
因みに播磨の乗員は晴風の生徒達に受けるような出し物を真剣に考えている。金城は沖縄を舞台にした喜劇を考えたようだ。
しかもあの2日間で内容も全部終わらせた。
播磨の乗員いわく「おやっさんは、余興や喜劇など演出を考えるのが得意だし、何より面白い」そうだ。
「だったらスイカ割りしてねぇで・・・」
「参る!!はああぁぁ!!」
楓は木刀を振り下ろすと、見事スイカの中心に入り綺麗に割れる。
「おおー」
「すごーい!」
「万里小路さんて色々、達人だね!」
「凄いな、さすが万里小路さんだ」
すると、そこに武藤がやって来た。何故か片手には日本刀を持っていた。
「武藤さん、それ本物の刀ですの?」
「そうだよ」
「どうしてここに?」
「いや、刀で素振りしていた時に、君達がスイカ割りしているのが見えてね、急いで来たんだよ・・・八木さん、そのスイカこっちに投げてみて」
「えっ?は、はい・・・」
そう言うと武藤は誰も居ないことを確認すると、目を瞑り、刀の鍔に親指をかけいつでも刀を抜ける体勢になる。
「投げて!」
「はい・・・えい!」
八木は綺麗に割れた半分のスイカを武藤に向けて投げる。
すると、武藤は、
(今!!)
武藤は心の中で呟くと刀を一気に抜き、見事半分のスイカを綺麗に真っ二つにし、華麗に刀の刃を鞘に納める。
それを見た、楓は目を輝かせ八木と宇田、麻侖は唖然としていた。
「お見事ですわ」
「凄い!!万里小路さん以上の技を見ちゃった~!」
「機関長もスイカ食べる?」
「いらねぇ!いらねぇ!んなもん!」
スイカなんていらないと言い、麻侖はその場を後にした。
「たっく・・・時間がねぇってのに・・・何のんびりしてんでぇい、播磨の人達は皆考えたってのによ・・・っ!?」
播磨の乗員は、既に赤道祭で何やるか決めているのに、準備もせず、遊んでばかりいる晴風のクラスメイト達に対して愚痴る麻侖のイライラは募るばかり。
そんな愚痴をこぼす麻侖の顔に、砲術科三人組の水鉄砲の水が直撃し、更にイライラが募る。
「うわぁ!ゴメン機関長!」
「遊んでいる暇があったら祭りの準備しろってんでぇい!!」
「えー全方位、盛り上がってないんですけど~」
「盛り上がっているのは・・・播磨の人達だけ?」
「も・・盛り上がって・・ない・・・!!」
「水鉄砲大会の方が面白くない?」
武田の言葉は麻侖の胸にグサッと刺さった。
盛り上がっているのは播磨の乗員だけ・・・と言うことは、晴風のクラスメイト達は赤道祭に興味もないしやる気ゼロですと、言っている様なもの。
また、日置が赤道祭より、水鉄砲大会の方が盛り上がると、まるでトドメの一発の様に言う。
麻侖は次に同じ機関科メンバーがいる甲板へと向かう。だが、機関科メンバーの黒木以外は赤道祭の準備もせず、日光浴を楽しんでいた。
日光浴をしながら雑誌を読んでいる若狭に影が差す。
何かと思いその影が差す方を向くと、其処には「お前らもか・・・」と言うオーラを出し、立っている麻侖の姿があった。
「うえっ!?み、皆何やってるのよー!!」
「うぅん?」
「「げえっ!?」」
「きゅ、休憩終わりー!!」
「え、えーと。これ何処につけるんだっけ~・・・?」
「祭りだー!祭りだーい!」
皆、麻侖を見た瞬間。一斉に立ち上がり、一人準備をしていた黒木を手伝う。
若狭は無理してよさこいの様な踊りをしている。
だが、誰が見ても無理してやっており、その場しのぎで麻侖のご機嫌取ろうとしているのは、誰が見ても分かるくらいである。
「わざとらしいことしなくていいんだよ・・・」
『うっ・・・!』
「よーく分かったよ・・・皆、赤道祭なんかどうでもいいんだな!播磨の人達はちゃんと考えてるってのによ!!晴風の皆はどうでもいいんだな!!!」
とうとう募っていたイライラが爆発した。
「麻侖・・・そ、そんなことないってば。晴風の皆も楽しみにしてるから赤道祭・・・」
「めちゃ楽しみー・・・!」
「わい!わーい!」
皆、必死に麻侖の機嫌を直そうとするが、それがかえって火に油を注いだ。
「無理すんな・・・おめぇらに慰められたくねぇやい!」
「あ、麻侖!」
完全にぶちギレた麻侖は何処かに走り去ってしまう。
その途中、秋津は幸子に自分の出し物に出てくれとお願いされていた為、どんな役になるのかと考えながら、晴風の甲板を歩いていた。
「一体どんな役になるのかやら・・・」
秋津は、少し楽しそうな表情をしていた。
すると、前から麻侖が走ってくる。
「うわっ!?」
麻侖は何も言わず走り去ってしまう。が、秋津は一瞬麻侖の顔が見えた、その表情は完全にぶちギレた顔をしていた。
「柳原さん!どうかしたのか!?」
声をかけるが、そのまま走り去っていった。
秋津は、何かあったなと思い麻侖の後を追った。
誤字、脱字変なところがありますが、ご容赦ください。
感想お待ちしています!
次回もお楽しみに!