ハイスクール・フリート マーメイドと海の男達 作:SNAKE金城
赤道祭も無事に終え、晴風では後片付けが行われていた。
そんな中、明乃は深刻そうな表情で海の方をジッと見つめていた。
「艦長・・・」
「あ・・・シロちゃん・・・」
「どうかしたんですか?」
「うん、赤道祭。楽しかったな~って・・・」
「それだけじゃ・・ないですよね?」
「艦の修理が終わったら、パーシアス作戦に参加することになる・・・」
「播磨は参加するかも知れませんが・・・晴風は、あくまで協力ですよね?」
「でも・・・もしかしたらまた・・・」
明乃の脳裏に戦闘の時に被弾した晴風の姿が過る。
「私・・・私ね、やっと晴風の皆と家族になれたような気がしたの・・・勿論、播磨の人達とも・・・なれたような気がしたのに・・・」
補修、補給が終われば晴風と播磨は、パーシアス作戦に参加する。
今まで晴風は数々の戦闘を重ね勝利してきたが、それは播磨もいたからこそ手にした勝利で、またシュペーとの戦闘で晴風は射撃指揮所を被弾している。
あの時は安全装置があったからこそ射撃指揮所にいた砲雷科三人組は助かったが、今度の相手は世界最大と言っても過言ではない46センチ砲を搭載している武蔵。
後方第二陣で予備戦力ではあるが、もし第一陣が全滅すれば、播磨と言う超戦艦が居たとしても晴風にも武蔵の砲弾が襲うだろう。
世界最大の主砲の砲弾を晴風が防ぎきれるわけがない。
明乃は、今度こそ皆を傷つけてしまう、最悪の場合は死なせてしまうのではないかと恐れていた。
5月5日、ブルーマーメイドの作戦指令本部では、富士山頂にある遠水平線レーダーが武蔵を補足していた。
ブルーマーメイドは東南アジアのフィリピン方面に武蔵が居ると予想していたが、それに反して武蔵は伊豆半島の沖合に居た。
「はい、こちら作戦本部」
「福内です。そちらの情報で変わりはありますか?」
「富士山頂の遠水平線レーダーが、武蔵を補足した」
「フィリピンに向かっていた筈では?」
「主力は間に合わない・・・貴方の艦隊で武蔵を止められる?」
「最善を尽くします。それでは・・・」
ブルーマーメイドは目撃情報のフィリピン方面に第一陣である主力部隊を配置していたが、それに反して武蔵は日本近海に姿を現した。
当然のフィリピン方面に居る主力は間に合わない為、真霜は日本近海に居る平賀の部隊に武蔵の対応を任せた。
だが、平賀の部隊はたったの四隻編成の部隊、インディペンデンス級沿海域戦闘艦四隻でも武蔵を止められると言う保証はない。
武蔵を横須賀に侵入を許せばどれだけの被害が出るか分からない、現在航行可能な艦艇の中でも最強クラスの播磨は最後の砦の為、簡単には向かわせる訳にはいかない。
現状の戦力で武蔵の足を止めるしかなかった。
その頃、播磨と晴風は連絡を受け武蔵の居る地点へと向けて、既に出航していた。
播磨の会議室では士官、各兵科の責任者達が集まっていた。
「まさか、武蔵が日本近海に居たとは・・・」
「武蔵の現在位置は?」
秋津は武蔵の現在位置は何処かと航海長に聞く。
「現在、武蔵は伊豆半島、南西10マイルを針路40度。速力18ノットで航行中と思われます」
「学校からの指示は?」
「学校からは、播磨、晴風共にブルーマーメイドの部隊が到着するまで、両艦の安全を優先しつつ武蔵を補足し続けよ、とのことです」
学校からの指示を通信長が説明する。
「晴風は分かるが、我々も追跡、補足しろと・・・」
「それほど播磨は、貴重な戦力と言う訳だ」
「・・・晴風の生徒達の様子はどうだ?」
「皆、武蔵を助けようと言って士気は上々。と内田が言ってました」
「うむ・・・だが晴風には砲弾一発も当てさせん。俺達、播磨が被弾覚悟でも晴風の生徒達を守るんだ。勿論、武蔵の子達もだ・・・」
「恐らく・・武蔵の生徒らもウィルスに感染しているだろう・・・ならば武蔵を救える。抗体は大量に用意してある」
「さすがは六黒さんだ」
晴風の生徒達も武蔵を助けようと士気は盛り上がっていた。
また、晴風は先の補修で主砲を新しく5インチ砲に変え、またシュペーとの戦闘で被弾した射撃指揮所も新しくなった。
艦橋では、水雷方位盤が新型に取りかえられ、水雷長である西崎は、よだれを出し新型方位盤をベタベタ触りながら「三角関数から解放される!早く撃ちたい!」などと大喜びしていた。
「我々、播磨は学校の指示通り。ブルーマーメイドの部隊が到着するまで、武蔵を補足し続ける!ただし、戦闘態勢のままだ。恐らく我々の出番は直ぐに来る可能性がある。その覚悟でいてくれ、解散!!」
士官と各兵科の責任者達は、会議室を後にする。
その頃、横須賀女子の会議室では武蔵に対する対策本部が開かれていた。
モニターとパソコンで映像回線を通して作戦指令本部の真霜、校長の真雪と真冬部隊の真冬が連絡を取っていた。
「我々の部隊は、石垣島南方を40ノットで航行中。急行します」
真冬との映像回線が切れる。
真冬部隊も武蔵の居る地点へと急行しているようだ。
「はぁ・・・主力の殆どがフィリピン方面。戦力を集中する作戦が裏目にでたわね」
「間に合うのは、最低限の備えとして九州沖に残しておいた平賀部長の別動隊だけよ」
ブルーマーメイドは武蔵がフィリピン方面に居ると思い、主力の殆どをフィリピン方面に向かわせていた。
だが、武蔵はブルーマーメイドの予想を大きく覆し、伊豆半島沖合に姿を現した。
最低限の備えとして残しておいた、ブルーマーメイドの部隊で武蔵に一番近い平賀隊で武蔵を止めるしかなかった。
「他に動かせる艦は?」
「ドックでメンテ中の艦が一隻・・・出せるかどうか・・・」
「うーん・・・約三時間で、武蔵は浦賀水道に入ります」
「・・・播磨と晴風は?」
「およそ二時間後に武蔵に追い付きます」
(秋津さん・・・晴風の生徒達をどうか守って・・・)
真霜は祈るようにモニターを見つめ、心の中で呟く。
その頃、播磨艦橋では艦長室に居た秋津が戻ってきた。
その腰にはベルトをつけ日本刀を吊り下げていた。
「艦長、それはまさか・・・」
「ああ、そうだよおやっさん。親父もつけていた軍刀だよ」
「似合ってますよ、秋津大将そっくりです」
「ありがとう、おやっさん」
暫く、航行していると、防空指揮所の見張りから艦橋に報告が入る。
「左10度!艦影視認!その数1!!」
「電探でも探知!!」
「艦影からして恐らく武蔵と思われます!!」
「やっと会えたな・・・」
秋津は不適な笑みを浮かべてそう言う。
「閃光視認!目標、発砲した模様!!」
「回避する!面舵一杯!!」
「面舵いっぱ~い!!」
「お~もか~じいっぱ~い!!」
秋津の指示を航海長が伝声管で操舵手に伝え、操舵手は思い切り舵を回す。
晴風も播磨に隠れるように後に続く。
武蔵が放った砲弾は、播磨の近くに着弾し、大きな水柱を上げ、その衝撃が播磨に伝わる。
「くっ・・・さすが大和型戦艦だ・・・」
「艦長!攻撃した方が・・・!!」
「ダメだ!任務は武蔵の補足、攻撃は絶対に許さん!!航海長!晴風を守りつつ距離を取れ!」
「りょーかい!」
航海長は何故か、いつも以上に興奮していた。
「武蔵発砲!主砲弾6!此方に向かってきまーす!!」
「晴風には、一発も当てさせん!」
武蔵の主砲弾は播磨の周りに着弾、大きな水柱を上げる。
すると、艦橋の見張りが何かを発見した。
「あ、あれ噴進魚雷!?と言うことは・・・」
「艦長、ブルーマーメイドの平賀隊が到着した模様!!」
ブルーマーメイドの平賀隊が到着したことを通信長が艦内放送で報告する。
「来たか・・・平賀さん・・・」
播磨と晴風の左舷の方向から平賀率いる四隻のインディペンデンス級沿海域戦闘艦で構成された平賀隊が姿を現した。
秋津は平賀の無事を祈るような表情で平賀隊を見つめていた。
「此方、電信室。ブルーマーメイドから、播磨と晴風は至急退避せよ。とのことです」
「撤退ってことか・・・分かった」
播磨と晴風はブルーマーメイドの指示通り、撤退を始める。
一方、平賀隊の旗艦みくらでは、
「本艦隊は、これより。右舷前方の武蔵に対し、強制停船オペレーションを実施する。突入チームは、武蔵乗員が学生であることを留意し、極力格闘は避けるように」
このオペレーションの指揮官である福内が平賀隊の各艦に指示を送る。
「オペレーション開始」
「オペレーション開始します!」
平賀隊による武蔵の強制停船オペレーション。パーシアス作戦が開始された。
その頃、播磨格納庫では特警隊、全隊員が第一種装備、言わばガチ装備で待機していた。
「始まった様だな」
「隊長、俺達の出番はありますかね?」
「無いわけではないから、いつでも行けるようにしておけ!」
「了解!」
特警隊全員も、いつも以上にやる気満々であった。
今まで任務に出られなかった隊員達は、それ以上に気合いが入っていた。
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