ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです。
なんとか時間を確保して投稿しました。
今回からアンツィオ高校が登場します。
では本編をどうぞ


第11話 ノリと勢いのアンツィオ&アルディーニ連合

 学園艦、深部での捜索を終えて凛祢、英子、秋月の3人は大洗女子学園の校庭のガレージに戻ってきていた。

 すでにみほや俊也、他にもバレー&バスケ部、歴史男女チームの姿がある。

 他にも生徒会メンバー6人が見つけた銃火器の確認や戦車を輸送してくれた業者との手続きを行なっていた。

「もう、みんな戻ってきてるわね」

「俺たちが最下位か?」

 英子と凛祢が辺りを見渡す。

 そこで1つの事に気がついた。

 八尋と沙織、そして1年生たちの姿がない。

「お、凛祢。戻ってきたか。八尋たちを見なかったか?」

「え、見てないけど。戻ってないのか?」

「そうだ、何やってんだよあいつ。後輩たちも一緒だってのに……」

 凛祢が言うと俊也はイラ立った表情を見せた。

 いつも他人の事はどうでもいいような性格の俊也がそんな表情を見せたのは八尋や後輩たちを心配しているからなのかもしれない。

「凛祢さん!あの沙織さんと八尋君が……」

「話は聞いたよ。それで八尋たちは、どこに行ったんだ?」

「それが……船底の方に居るって連絡はもらったんですけど。会長たちも探してきてほしいって」

 凛祢の質問に心配した顔を見せるみほが答えた。

「船底か……」

 凛祢は頭を掻いた後、胸の内ポケットから取り出した携帯端末を操作する。

「凛祢さん?」

「船内に詳しい奴を1人知ってる。別れてすぐに頼ることになるとはな……」

 携帯端末を耳に当てて通話を始める。

 2回目のコールで相手が電話に出た。

「もしもーし。なんで照月さんじゃなくてお前が電話してくるんだよ」

「どんだけ英子のこと好きなんだよ……衛宮」

 通話の相手はさっき別れたばかりの衛宮不知火だった。

 英子に一目惚れして、結婚したいとまで言った船舶科の男子生徒だ。来週には普通科に転科してくるらしい。また歩兵道をやる予定の生徒でもある。

「で、どうした?」

「実は、友人が船底で迷子になったみたいでな。ちょっと手伝ってほしいんだが」

「えー、面倒くさいからパス」

 不知火は気乗りしなそうな声で返答した。

 やはり一筋縄では行かないようだ。

「……手伝ってくれたら英子が連絡先教えてくれるって」

「どの辺で迷ったんだ?すぐに見つけ出してやるよ」

 凛祢が提案すると不知火は即答した。

 冗談のつもりだったのだが、まあいいだろう。

「切り替え早いな。えっと……」

 不知火への説明の後、凛祢はみほや英治、杏から聞いた情報を元に捜索チームを編成し、学園艦の深部に向かった。

 捜索チームは凛祢と塁、俊也、みほと優花里、麻子の6人である。

 一方、ガレージ前に残った英子や秋月は捜索で発見した戦利品を確認していた。

「案外、残ってるものね。統一性はないけど」

「そうね。でも、優秀な戦車は、やっぱりないものね」

「ねぇ、あき……セレナ。そろそろ教えてくれない?なんで凛祢たちに本名を教えないの?」

 凛祢たちが居なくあった後、英子は問い掛けた。

「言ったでしょ。私にもいろいろあるの。葛城君や坂本君、秋本さんにはどうしても知られちゃ駄目なの、それに秘密のある女はモテるのよ」

「……なによそれ。まあ、いいけど」

 セレナは英子にウインクして言うと、英子も理解できぬままやれやれとため息をついた。

 

 

 その頃、凛祢たちはまるで迷宮の様な学園艦の深部を目指して船内を歩いていた。

「ったく。普通、迷うか?」

「そう言うなよ、俊也。俺たちだって少し迷ったりしたんだよ」

「あいつは馬鹿だからな。迷って当然か」

 俊也は相変わらず、八尋を馬鹿と呼んでいた。

「俊也殿、流石に言い過ぎでは?」

「沙織殿や八尋殿だって戦車を探して迷ったわけですから!」

「そ、そうだよ。学園艦って広いし迷ったりもするよ!」

 塁や優花里に続くように、みほが力強く発言する。

「あ?文句あんのか?」

「「ひっ!」」

 俊也は鋭い眼光をみほと優花里に向ける。

「俊也……男なら女に手を上げるなよ」

「っ!冷泉に言われなくてもわかってるよ……」

 俊也は舌打ちした後、前方を見る。

「で、どこを探すのですか?」

「そろそろ衛宮が……ほら居た」

 凛祢が不知火の姿を確認する。同様にみほたちも不知火を見た。

「遅いぞ……」

「悪い悪い。準備に手間取ってな」

「30秒で支度するのが常識だろ……てか、なんで照月さんは居ないんだよ」

 不知火は凛祢やみほたち全員に目を向けた後に、小声で声を掛けてくる。

「英子は忙しいんだって。それより貨物第7倉庫って知ってるか?」

「貨物第7倉庫?行ったことはないが場所なら知ってる。Gブロックの奥だな、ついて来い」

 不知火は考える仕草を見せた後、歩き始める。

 やっぱり、船舶科なら船内については詳しいようだ。

「本当に大丈夫なのか?」

「凛祢殿の知り合いなら大丈夫だと思いますが……」

「凛祢さん、あの人と知り合いなんですか?」

 少々不信感を抱く麻子や優花里に続くようにみほが凛祢を見た。

「知り合いかと言われれば知り合いかな?さっき会ったばかりだけど」

「それは知り合いとは言わねーだろ」

 凛祢が自信なさそうに答えると俊也がため息交じりに言った。

「ま、来週から歩兵道をしてくれるし。悪い奴ではないよ……多分」

「なにやってんだ!?置いて行くぞ!」

「今行くよ!あいつは戦車探しも手伝ってくれたんだ。みんな、俺に免じて信じてくれ」

「凛祢さんがそう言うなら……」

 凛祢が頭を下げるとみほや他のメンバーも納得したのか不知火の後を追う。

 数分ほど歩き続けていると道の明かりはなくなりどんどん薄暗くなっていた。

「あの、本当に大丈夫なんですか?」

「どんどん、暗くなっていますよ……?」

 ライト付きのヘルメットを被っていた塁と優花里が先頭を歩く不知火に向けて言う。

「……」

「おい、なんとか言えよ」

「俊也さん。一様、先輩なんですから。衛宮さん、本当にこっちであっているんですか?」

 俊也の言葉にみほが続く。

「うるさい奴らだな、あってるって。船内のことは何でも知ってる衛宮さんだぞ」

 不知火はそんな事を言って笑って見せる。

 その時、大きな金属音が道中に響く。

「「きゃー!」」

 同時に驚いたみほと優花里が悲鳴を上げて、凛祢と塁の背中に抱き着く。

 麻子も悲鳴こそ上げていなかったが俊也の制服の袖を右手で力いっぱい掴んで、小刻みに震えていた。

「お前らな……そういうラブコメは別でやってくれよ」

「違う!」「違います!」「ちげぇよ!」

 凛祢や塁、俊也が同時に叫ぶ。

「「す、すみません」」

 ようやく落ち着いたみほと優花里は2人から離れて謝罪する。

「気にするなって」

 凛祢も2人を落ち着かせるように言った。

「おい、お前もさっさと離せ」

「無理……」

「は?歩きづらいんだよ。離れろ!」

「オバケは早起きよりも無理なんだ!もう少しこのままで……」

「っ!面倒くせぇな、勝手にしろ……」

 俊也も麻子の涙を浮かべる顔をみて仕方なくそのままで歩く。

「なんなんだ、こいつら。俺への当て付けか?」

「違うんだって、衛宮。誤解するな」

「はいはい、さっさと片付けて帰るぞ」

 不知火はそう言って急ぎ足に進む。

 

 

 その頃、Gブロック内貨物第7倉庫内では沙織、1年生たちが座り込んでいた。

 八尋は亮や銀と共に地図を見直している。

「先導先輩、今ってこの辺ですか?」

「そうだと思うが、完全に迷ったな」

 亮と八尋が現在位置を見つけ出すことに必死だった。

『今日はここで野営ですか?屋内ですけど』

「銀、縁起でもないから」

 銀のメモを見た亮が呟く。

「お腹、空いたね」

「うん」

「今晩は、ここで過ごすのかな……」

 不安になり始めたあや、桂里奈、梓が呟く。

「先輩、どうします?」

「……大丈夫だ!俺が居るんだぜ!?大船に乗ったつもりで行くぞ!……しっかりしろ、八尋。俺は先輩であり、男だろ」

 弱音を吐かぬまいと八尋は強気で胸を張る。

「八尋君……そうだよね。みんな、私チョコ持ってるからみんなで食べよう」

 八尋の様子を見た沙織も続くようにみんなを励ます。

 

 

 ようやく貨物第7倉庫付近に到着した不知火や凛祢たち。

「この扉の先に……げっ!鍵付けられてる。下の連中か……余計な真似を」

 古めかしい鎖と錠前でしっかりと施錠された扉を見た不知火が苦虫を噛み潰したような表情で言った。

「そんな!」

「どうするんですか!?」

「ここまで来て……回り道してる時間なんて」

 みほや優花里もまさかの出来事に声を上げる。塁も続くように呟く。

 そんな時、俊也が一歩前に出た。

「……凛祢、手伝え」

「え……?」

「時間が無いから、扉を蹴破るぞ。冷泉、少しだけ離れろ」

 俊也は凛祢に耳打ちすると麻子にも声を掛ける。

「……」

 麻子は無言で首を横に振る。

「冷泉、いや麻子。大丈夫だ、オバケなんているはずがない。お前だって沙織が心配だろ?だから少しの間だけ離れてくれ」

「……わかった」

 俊也は麻子の頭を撫でてやりながら言うと、麻子も素直に手を放す。

 その様子は、まるで兄と妹……本物の兄妹の様だった。

「正気か?」

「やるしかねーだろ。同時にいくぞ」

「わかったよ、みんな扉から離れてくれ」

 凛祢も選択の余地なしと考え、不知火やみほを扉から遠ざける。

「「オラ!」」

 2人は力いっぱい蹴りを放つ。

 辺りに凄い音が響く……が、扉は開かない。

「次、行くぞ!」

「「オーラ!」」

 2撃目を放つ。また、音が響くが扉は開かない。

「凛祢さん、俊也さん無理だよ!」

「そうです、いくらなんでも無茶です!」

 みほと優花里も強く叫ぶ。

「いえ、少しですが扉が歪んできている気が……」

「いやいや、無理だろ」

 塁が呟くが不知火はあまりに非現実的過ぎる行動に諦めたようにツッコむ。

 しかし、凛祢と俊也は次の攻撃準備に入る。

「「オラ!!」」

 凛祢と俊也が再び扉を蹴ると、扉は物凄い轟音と共に奥へと飛んで行く。

 2人が蹴破ったことで扉は歪み、くの字に似た形で地面に横たわっている。。

「なんだよ、案外脆いじゃねーか」

「本当に突き破れるなんてな……」

「嘘……」

「超人ですね、本当に……」

 みほや優花里たちも驚いていたが、扉を突き破った凛祢と俊也が一番驚いていた。

「でも、足痛いな」

「確かに……いってー。ふざけんなよ、まじで」

「俊也がやるって言ったんだろ……」

 凛祢と俊也はそれぞれの痛む足に触る。

「あーあ、これは破損届だな。緊急事態ってことで楯無教諭にもみ消してもらおう」

 不知火は破損した扉を見た後、大げさに声を上げて言った。

 

 

 その頃、八尋や沙織たちは外から響いてきた轟音に驚いていた。

「さっきの音って、なんですか?」

「合計3回も響いていたけど」

「最後の音は1番すごい音だったよね」

 音を聞いていたアキラや礼、歩が言った。

「みぽりんたちかな?」

「多分……な」

「八尋君、ごめんね。私が闇雲に進んだりしなければ迷うこともなかったのに……」

 座り込んでいた沙織は下を向いて八尋にだけ聞こえるように言った。

「いいや、そんなことないよ。沙織さんがいなければ戦車を発見できなかったじゃないか」

「戦車を見つけたとか見つけなかったじゃないよ。私のせいで1年生のみんなやみぽりん、八尋君にまで迷惑かけて……」

「気にするなよ。迷惑かけたってなら俺と沙織さんは共犯者だろ?1人で抱え込むことないよ」

 沙織を元気づけようと八尋は言葉を続ける。

「それにさ、俺は沙織さんのこと結構好きだよ」

「え!?……好きって、それ!」

「あ、いや。沙織さんの頑張る姿とか裏で努力してるところが好きだってことで!ほら、料理とかもうまかったしさ」

 沙織と八尋はお互いに頬を赤くする。

『先輩方、アツアツですね』

「銀!?」「銀君!?」

 近くにいた銀のメモを見た八尋と沙織は更に赤くなった。

 すると多数の足音と共に、扉が勢いよく開く。

「八尋ー!」

「沙織さん!」

 凛祢とみほが2人の名前を呼んで室内に踏み込む。

「凛祢!」

「みぽりん!」

 八尋と沙織も名前を呼ぶ。

「先輩!」

「遅いっすよー!」

 1年生たちも塁や優花里の元に集まる。

「ったく、何やってんだよ。心配かけやがって、馬鹿が」

 俊也も八尋の元に行き、声を掛ける。麻子は、まだ俊也の制服の袖を掴んでいる。

「うるせーな。仕方ねーだろ……」

「……沙織も怪我が無くてよかった」

「ありがと麻子。でも、いつの間に俊也君と仲良くなったの?」

「「……仲がいいわけじゃない」」

 沙織の質問に2人の声が重なる。

「仲いいじゃねーかよ……」

 八尋は苦笑いして言った。

「まあ、怪我もないようだしみんな無事でよかったよ」

「そうだね、急いで戻ろう」

 凛祢とみほが言うと全員で外を目指す。

「へー、ここにも戦車があったんだな。他の貨物倉庫にもあるのかな……?」

 不知火もそう言いながら室内の分解されている戦車を見た後、凛祢たちを連れて外を目指した。

 

 

 船内から再び帰還した凛祢たちは不知火と別れ、ガレージ前に集まっていた。

 凛祢はそれぞれのチームが発見した戦車や歩兵用の武装についてまとめられた書類に目を向ける。

 今回の戦車と歩兵用武装の捜索結果。

 1.凛祢、英子、秋月チームが発見したものは日本製の戦車『九七式軽装甲車』1輌。軽装甲車のため車体の重量が八九式よりも軽い。装甲はいい所で12㎜、砲身は九八式三十粍戦車砲であり2人乗りである。戦車道で運用するには軽すぎる気もするが。別名「テケ」と呼ばれている。

 歩兵用の武装は『トンプソン・コンテンダー』と『キャリコM950』、『AR-57』がそれぞれ1丁。『MGL-104』と『スプリング・フィールドXD』がそれぞれ2丁。これらはどれもアメリカで製造された銃火器だ。コンテンダーは拳銃と言ってもライフルの弾でも撃つことのできる銃だが装弾数が一発であり、リロードも面倒であり癖がある為、扱う人間は相当マニアックだ。そんなコンテンダーの最大の特徴は砲身の取り換えが可能であること。倉庫には砲身が元々付いていた砲身を含めて3種類あった。キャリコやAR-57、MGL-104、スプリングフィールドXDは比較的扱いやすい。AR-57なんかはP90と同じ銃弾を使える上に使用弾倉も同じだ。そしてMGL-104、これは回転式の弾倉を利用したリボルバー拳銃のような形状のグレネードランチャーだ。アルバート校では採用されていなかったが、これはこれで十分に利用価値がある。これなら今までいなかった砲兵の枠を埋めることができるだろう。そして軽機関銃『RP-46』と『トカレフTT-33』がそれぞれ3丁。どちらもソ連製の銃である。

 2.俊也とみほと麻子にバスケ部&バレー部が発見したものは、どこかの部の物干し竿代わりに使われていたと言う戦車用砲身『43口径75mm砲』。Ⅳ号用の長砲身らしく、7.5㎝KwK40とも呼ばれている。Ⅳ号の改修パーツと言ったところだ。

 他には自動拳銃『FN ブローニング・ハイパワーDA』が2丁。ブローニング・ハイパワーはFiveseveNやP90と同様にFN社製の銃である。FiveseveNはP90と同じ5.7x28mm弾を使用していたが、こちらは幅広く使われている9x19mmパラベラム弾が使用弾薬である。また、これは近代化されているDA(ダブルアクション)仕様であり、ブローニングの技術の集大成ともいえる自動拳銃である。

 3.塁と優花里、歴史男女チームが発見したものはフランス製の戦車『ルノーB1bis』1輌。形式上は重戦車であり、装甲は60㎜、砲身は車体に17口径75㎜戦車砲と砲塔に32口径47㎜戦車砲が使われている。砲はM3のように2本付いている。

 歩兵用の武装はアサルトライフル『SIG SG550 Sniper』、自動拳銃『SIG SAUER P220』が1丁。どちらもスイスのSIG社が開発した銃火器である。こちらも性能に関しては問題ない。アサルトライフルであるSG550の狙撃用バージョンであるSniper、アサルトライフルとしても運用できるため1人で狙撃兵と突撃兵2役の兵科を行える。

 4.八尋と沙織、1年生チームによって発見された分解された戦車。現在、自動車部と整備部が部品を組み立てている途中だが、Ⅳ号の改修やルノーと九七式の修理と整備を優先しているため、いつ完成するかも未定だそうだ。

 以上、戦車3輌、歩兵用の銃火器合計17丁が発見された。

 凛祢は書類を桃に返すと大きく息を吐く。

 100点……とまではいかないが、これなら可能性はある。

「それで、割り振りはどうしますか?」

「そうだな……」

「ルノーはこっちで人を見つけておくからー。九七式は見つけてくれた照月ちゃんと秋月で」

 雄二の質問に、英治が銃や戦車を見ていると杏が横から声を掛ける。

「……こっちも人を集めないと」

「委員会長組に声を掛けましょうか?」

「そうだな、委員長組ならやってくれるだろう」

 英治と宗司も考えをまとめると解散の準備をする。

「みんな、ご苦労様。今日はこれで解散だ。気をつけて帰れよ」

 英治の号令でみんな帰宅の準備をしていく。

「すまないな、ヤガミ。あっちの自動車部にも迷惑かけるが整備は頼んだぞ」

「了解でーす」

 整備部所属のヤガミとヒムロ、ヤマケンの3人と、自動車部所属のナカジマ、スズキ、ホシノ、ツチヤの4人がガレージ内の戦車と銃の整備や修理を始める。

「毎回、よく見つけてくるねー」

「確かにな。まあ、やりがいもあって楽しいからいいけど」

 ナカジマとヤガミがルノーと九七式の修理、整備作業を始める。

「整備する方の身にもなってほしいぜ」

「まあまあ、ヒムロ君。そんなこと言わないで」

「ヒムロー。六角レンチ取ってー」

「はいはい」

 ヒムロが六角レンチを軽く投げるとホシノは右手でキャッチし作業する。

「でも、あのMGL-104って銃。使ってみたいなー……榴弾を撃ちだすなんて今までなかったし、面白そうだから」

「そう?私はドリフトしてる方が楽しいかなー」

 転輪周りの整備をしているヤマケンとツチヤがそんな言葉を呟く。

「俺たちも、戦車道と歩兵道に参戦しようか?俺はあのコンテンダーとかいいなー。相当マニアックな一品らしいし」

「いいかもね。あっちの分解戦車は人が居なかったら私たちが乗ってもいいかな?」

 ヤガミの言葉にナカジマも乗り気でいた。

「でも、あっちの整備は最後だからねー」

「俺たちが参戦するのはいつの日になるかもわからないけどな」

 スズキとヒムロがそう言ってボルトをスパナで締める。

 

 

 その頃、アンツィオ高校とアルディーニ学園の学園艦では両校による屋外での会議が始まっていた。

「全員、気を付け!」

 金髪ロングに小さなハットを被った少女、アンツィオ校の副隊長の1人、伊多利陽菜(いたりひな)の号令に一同が敬礼する。

 黒いリボン付きの見事なツインテールを揺らしている少女と黒髪の長身長の男が隊員たちの前に立った。

 この2人こそ、アンツィオ&アルディーニ連合の隊長。安斎千代美ことアンチョビ。三日月咲夜(みかづきさくや)ことメッザルーナ。

「きっと奴らは言っている!ノリと勢いだけはある!調子に乗ると手ごわい……」

「おー」

「強いだって!」

「当然だろ!」

「照れるなー」

「でも、姉さん。だけってどういうことすか?」

 アンチョビの言葉に、盛り上がっている中、隊員の1人が不満そうに問い掛ける。

「つまり、こういうことだ!ノリと勢い以外は何もない。調子が出なけりゃ総崩れ!……ひどく言われたもんだ」

 メッザルーナが腕を組んで仁王立ちする。

「なんだとー?」

「野郎!許せねー!」

「なめやがって!」

「言わせておいていいんすか!?」

「戦車でカチコミ行きましょう!」

 隊員たちはよほど気に入らなかったのか怒りを露わにしていく。

「みんな、落ち着いて。実際、言われたわけじゃないから」

「あくまで、ドゥーチェとフェニーチェによる冷静な分析だ」

 アンチョビの隣にいた陽菜ともう1人の副隊長、ペパロニが言い放つ。

 ドゥーチェ(イタリア語で統師などの意味)とはアンチョビの事であり、フェニーチェ(イタリア語で不死鳥という意味)はメッザルーナの事である。

「そうだ、熱くなっても意味はない」

「確かにな」

 メッザルーナの隣にいたマリーダとチェーザレも続くように言い放った。

「そう、私とメッザルーナの想像だ」

「なんだー」

「あーびっくりした―」

 アンチョビの言葉に、隊員は安心したように胸を撫でおろす。

「いいか、お前たちー。根も葉もない噂に惑わされるな。私たちはあのマジノ女学院とクルトガ学院に勝ったんだぞ!」

「そうだ、アンツィオとアルディーニの強さは伊達じゃない!」

 アンチョビとメッザルーナは自信満々に叫ぶ。すると、更に隊員の士気が上がる。

「「苦戦しましたけどね」」

「「勝ちは勝ちだ」」

 陽菜とマリーダ、ペパロニとチェーザレが続くように言い放つ。

「そう。ノリと勢いは何も悪い意味だけじゃない。このノリと勢いを2回戦に持っていくぞ!次の相手はあの西住流率いる大洗連合だ」

「確か『凛祢』って奴も、凄いって聞いたぜ!」

 強気のアンチョビと冷静なメッザルーナが言うと隊員は不安そうな表情を見せた。

 西住流と聞いて自信を無くす者。

 凛祢という名前に、過去に超人であったことを知るものも居た。

「心配するな……いや、ちょっとしろ。なんの為に3度のおやつを2度に減らしてコツコツ倹約して貯金をしたと思っている!」

「お前らはおやつが多すぎるんだよ。1日何回食ってんだ……今回だって3割以上も俺たち持ちさせただろ」

 アンチョビの言葉に、メッザルーナは思わずツッコミを入れた。

「あれ?なんで倹約したんだっけ?」

「知らねー」

「前に話しただろ!それは秘密兵器を買うためだ!」

 流石のアンチョビも少々取り乱す。

「ウチにもスゲーやつが来たってことだ!」

「おー!」

 メッザルーナの言葉に次々に歓声が上がる。

「ごほん。秘密兵器と、諸君の持っているノリと勢い……少しの考える頭があれば。我々は必ず悲願の3回戦出場を果たせるだろう!」

「みんな驚け!これぞ俺の……俺たちの、アンツィオ&アルディーニの!」

 2人は隊員たちの後方にシートを被せた『秘密兵器』を指さす。

 隊員も後方に目をやる。

「「必殺秘密兵器だ――」」

 2人の叫びは昼休みを告げるチャイムによって遮られた。

 同時に隊員たちは食堂と売店に向かって一直線に向かう。

「あらら……やれやれだな」

「おい、お前ら。それでいいのか!?」

 アンチョビが言うが、帰ってきた言葉は「売り切れが早いから」という言葉だけ。

 その場に残ったのは両校の隊長と副隊長のみだった。

 アンチョビとメッザルーナは、みんなを見てため息をついた。

「自分の気持ちに素直な子が多いのがこの学校のいい所なんだけどな」

「確かにみんな食べることが好きだからな……特にアンツィオの女子は。ウチも負けてねーけどさ」

 アンチョビもメッザルーナも隊員の事はよく理解している。

 だからこそ、強く怒ったり、厳しくする事は言わない。

 そんな優しい隊長である2人だからこそ、チーム内で信頼され、愛されているのだ。

 

 

 戦車を探し出した日から数日の時が過ぎた。大洗男子学園の会議室ではヤブイヌ分隊とあんこうチーム、かにさん分隊、カメさんチームによる作戦会議が行われていた。

「河嶋ー、次のステージどこ?」

「はっ!アンツィオ&アルディーニ連合との対戦は山岳島、荒れ地ステージに決まりました!」

 杏の問い掛けに、桃が気をつけして答える。

「はーい、質問。アンツィオとアルディーニってどんな学校?」

「えーと、確かどちらも創始者がイタリア人だったかな。今のアルディーニの隊長はその創始者の子孫であり、27代目だったはず」

 沙織の質問に英治が答えた。

「イタリアの文化を日本に伝えようとしたイタリア風の学校だ。だから戦車道と歩兵道もイタリアのものが中心。さきの対戦では快速戦車CV-33と突撃砲セモベンテM41。歩兵用の武装はピエトロベレッタ火器工業の銃ばかりですね」

「CV-33って私大好きです。小さくて可愛くてお花を活けるの花卉にぴったりです」

「花卉には大きいだろ。ヒマワリでも活けるのか?……それにしてもファブリカ・ダミル・ピエトロ・ベレッタなら拳銃やアサルトライフルが中心だな」

「ベレッタシリーズか……」

 雄二の説明を聞いた華が嬉しそうに言うと翼がツッコんだ。隣にいる八尋も携帯端末でベレッタ社のデータを見る。

「CV-33……うまく良ければヒートアックス1つで撃破できるな、C-4なら3ついや……エンジン冷却部を狙えば2つで。みほはどう思う?」

「うーん……」

 凛祢とみほはお互いに意見を出し合い、作戦を立てる。

「新型戦車と銃を取り入れたって聞きましたが……」

「ちょっとわからないです」

 宗司の言葉にみほは言葉を濁して言った。

「1回戦には出なかったもんね」

「だからこその秘密兵器か……ま、いっか」

「「それも、すぐに分かると思うけど」」

 珍しく凛祢と杏の声が重なった。

「どうして?」

「なんでだ?」

 そんな2人を見て、全員が問い掛ける。

「秋山優花里!」

「坂本塁!」

「「ただいま帰還しました!」」

 勢いよく会議室の扉が開き、塁と優花里がコンビニの制服姿で現れる。

「「ほら来た」」

 また、凛祢と杏の声が重なる。

「おかえりー」

「おお、待っていたぞ」

「お疲れ様」

 杏と桃、柚子が2人の傍に歩み寄る。

「2人とも、その格好……また?」

「ま、そういうことだ。お疲れさま塁、優花里」

 2人の格好を見て、みほも理解した。

 元々、知っていた凛祢も声を掛ける。手違いととはいえ、凛祢も1回戦の相手、サンダース&アルバート連合の情報収集に参加していたからだ。

「はい!」

「今回は2人でしたが、やってきました!」

 2人は満面の笑みを浮かべてUSBメモリを見せる。

 

 

 そして、生徒会の準備のもと、映像をスクリーンで映し出す。

 まず最初に『秋山優花里と坂本塁のアンツィオ&アルディーニ連合潜入大作戦』というロゴが表示された。

 前回も思ったが、よく短時間でこれだけ編集できるものだ。

 すぐに映像が切り替わり、アンツィオ高校とアルディーニ学園の日常生活の様子が写る。

「ワンパターンで申し訳ありませんが、潜入を開始します!」

「やけに良い匂いがしますね。チーズとかバジルでしょうか?」

 優花里と塁の声がスピーカーから響く。

 すぐにお手洗いでアンツィオとアルディーニの制服に着替えた2人は行動を始める。

「それにしても賑やかですね。屋台がたくさん出ています」

「学園祭か、なんかでしょうか?」

「あのー!」

 辺りを見渡した後、優花里がアンツィオ高校の生徒に声を掛けた。

「私たち転校してきたばかりでよくわからないんですが。今日って何かのイベントでしたっけ?」

「……?いつもの日だよ」

 優花里の質問にアンツィオの生徒が答える。

「随分と出店多いですね」

「ウチとアルディーニはいつもこんなもんだって。色々な部とか委員会が片っ端から店出してんの。どっちも貧乏だからねー」

 続くように質問した塁に、もう1人答える。

「そうそう、少しでも予算の足しにしないといけないわけよ」

 ジェラートの出店の男子店員も続いて教えてくれた。

「そうでしたか、どうもであります!」

「なんか、賑やかで楽しそうな学校ですね!」

「はい!」

 カメラ越しに塁と優花里が言った。

 すると、優花里が戦車の形を模した屋台を発見しカメラで映し出した。

「あれって戦車ですね!セモベンテに似てます!」

「行ってみましょう!」

 2人は急ぎ足に屋台に向かう。

「アンツィオ名物ー、鉄板ナポリタンだよー!美味しい美味しいパスタだよー!お、そこのカップル食べてきな」

「か、カップル?私たちは別に!」

 店主をしていたコック姿のペパロニは優花里と塁を見て声を掛ける。優花里も少し驚きながら否定する。

「隠すな隠すな。美味しいピッツァもあるぜー!」

「いや、本当に違うんですけど……とりあえずその鉄板ナポリタンとピザを1枚下さい」

 続くように奥からピッツァを両手に持って現れたコック姿のチェーザレが笑いながら言うが、塁が苦笑いして否定した。

「「了解!!」」

 ペパロニとチェーザレは元気いっぱいに返事して調理を始める。

 あっという間にパスタとピザが出来上がり2人は同時に皿を前に出した。

「はい、300万リラ!」「はい、500万リラ!」

「「えぇ、いつの為替レートですか!?」」

 ペパロニとチェーザレの言い放った金額に優花里と塁が戸惑いを見せる。

「「いや、300円と500円だけど」」

「そ、そうですよねー。あはは」

 塁は財布から千円札を手渡し、お釣りを受け取る。

「では、さっそく……おいしいです!」

「こっちのピザもすごくうまいです!」

「「だろ!?」」

 優花里と塁が夢中で食していると、ペパロニとチェーザレは満足そうに見ていた。

「ところで、戦車と言えば新型が入ったって聞いたんですけど……」

「優花里殿!?それは早いですって」

「「なに?それをどこで聞いた!?」」

 さっきまでの営業スマイルとは異なり一瞬にして塁と優花里を睨んだ。

「ひっ!すみません……」

「お前ら通だねー!ここだけの話っつーか。超秘密なんだけどー、重戦車を手に入れたんだよ!」

「そうそう、聞いて驚け!ええーと、イタリアのなんだっけ?」

 だが、すぐに笑顔に戻りペパロニとチェーザレはフライパンを手にハイテンションで話始めるが、戦車を名前を忘れたのかお互いの顔を見合った。

「わすれたんですか?」

「イタリアの重戦車と言えば『P40』ですか?」

 塁と優花里が言った。

「そう!それそれ!P40をそりゃあ、気も遠くなるくらい昔から貯金しまくって、ようやく私たちの代で買えたんだ!」

「アルディーニも少しだけ金出したけどな」

「それは、言うなよチェーザレ。お前らの鉄砲と違って私たちの戦車は値段が高いんだよ!」

 ペパロニとチェーザレは平然と戦車や武器の話をしていた。

「アンチョビ姉さんとメッザルーナの兄貴……ウチとアルディーニの隊長なんだけど。もう喜んじゃって、毎日コロッセオのところ走り回ってるよ!」

「燃料もあんまないのに、よくやるよな!ウチもたしかベレッタの新型アサルトライフルを買ったって言ってたぜ!奮発しちゃってさ!」

「「へー、そうなんですか」」

 ペパロニとチェーザレのトークをしっかりと映像データに残す優花里と塁。

「じゃあ、僕たちはこれで……」

「ありがとうございましたー」

「「アリーヴェデルチー!」」

 ペパロニとチェーザレは最後まで笑顔で手を振っていた。

 そんな2人に優花里と塁も手を振って別れ、コロッセオに向かう。

「気持ちのいい人たちでしたね」

「はい。あ、カルロベローチェであります!箱乗りしてますよ、まるで小さいカバさんチームみたいであります!」

 隣を走行していくCV-33を見て優花里は目を輝かせていた。

 言われた通りコロッセオの階段を上り、中に進むとそこには多くのアンツィオ校とアルディーニ校の生徒たちの姿があった。

 中央にはさきほど話していたイタリアの重戦車P40も停車している。

「これが、我々の秘密兵器だ!」

「見ろ!ベレッタの新型!ARX-160だ!」

 P40の上に立ち鞭を振るアンチョビとベレッタARX-160を見せるメッザルーナが居た。

「うおー、P40の本物初めて見ました!」

「ベレッタARX-160といえば、かなり新しい銃ですよ!これを2丁も持っているなんてすごいです!」

 塁と優花里も興奮を隠しきれずに夢中でP40とベレッタARX-160を撮影していく。

「「はははは!!」」

 更にアンチョビとメッザルーナは高笑いして見せる。

 すると次々に歓声が上がっていく。

「これさえあれば、大洗連合など軽く一捻りだ!」

「お前ら、ノリと勢いで行くぞ!最後まで、ついて来いよ!」

「ドューチェ!」

「フェニーチェ!」

 2人の言葉に、アンツィオとアルディーニの生徒が歓声を上げた。

「現場は大変な盛り上がりです!」

「このノリと勢いを聞いてるとこっちまで盛り上がっちゃいます」

 優花里と塁がカメラ越しに笑みを見せる。

「ドューチェ!」

「フェニーチェ!」

「ドューチェ!!」

「フェニーチェ!!」

「ドューチェ!!!」

「フェニーチェ!!!」

 全員がその名を呼んで片手を上げたり下げたりしていた。途中から塁と優花里も混ざって歓声を上げていた。

「「以上、秋山優花里と坂本塁がお送りしました」」

 その言葉のあと、出演や撮影、編集などほとんどが秋山優花里と坂本塁と書かれたエンドロールが流れた。

 

 

「ちょっと、強そうですね」

「俺はあのテンションにはついて行けないよ」

 映像を見終えた後、最初に華と翼が口を開いた。

「ちょっとじゃないだろ!」

「案外、アンツィオやアルディーニも侮れない相手だ!」

 桃や雄二は危機感を感じたのかそんな事を言った。

「私、P40初めて見ました」

「これはちょっと真面目に考えないとだめだねー」

 みほや杏も同じように感想を漏らした。

「P40が1輌とセモベンテが3輌。CV-33は今回は6輌だとするなら敵歩兵の編成は……」

 そんな中、凛祢は1人、敵戦力の分析をしていた。

 

 

 

 後日、アンツィオ&アルディーニ連合との試合に向けた訓練が行われることとなった。

 大洗女子の戦車は、エルヴィンやカエサルたち歴女のシェアハウスでP40のデータを調べたみほの資料を元に対P40の模擬戦。

 一方、歩兵隊は凛祢と塁、淳、翔を相手に疑似工兵戦をする。

 セレナという女の情報より、歩兵用の武装はベレッタシリーズの拳銃やアサルトライフル、軽機関銃が中心であることがわかった。そして、もう1つ、敵にも工兵が数人いると言うことだ。正直言って工兵は対人戦闘が苦手なため、白兵戦に持ち込めば簡単に倒せるが、爆薬による奇襲をかけられれば逆に何もできぬまま戦闘不能にされる恐れがある。そのための工兵対策だ。

「んで、むこうの装甲はどんな感じ?」

 パイプ椅子に座っていた杏がみほに問い掛ける。

「P40の全面はカバさん(Ⅲ突)なら相手の有効射程距離の外から貫通可能です」

「心得た」

 みほが説明するように言うとカエサルがマフラーを揺らして返事した。

「んじゃ。ピヨピヨ(P40)の相手はカバさんチームだね」

「ピヨピヨ?」

「P40の事ですか?」

 杏の言葉に梓と柚子が質問するように呟く。

「だから、ピヨピヨか」

「可愛い名前ですね。重戦車なのに……」

「重戦車つっても、P40ならⅣ号とそう変わんねーだろ」

 英治や宗司、雄二も苦笑いしながら言った。

「こっちも、対工兵戦闘訓練をするぞ」

「ちょっと待ってください。なんで俺にSG550を使わせるんですか?」

 ベルトのホルスターにベレッタM92Fを差し込む英治を見て、凛祢が手を上げる。

 凛祢の手には整備が完了したSIG SG550 Sniperがある。英治が整備部に急いで整備と修理をさせたものだ。

「敵が工兵だとしても銃は使ってくるだろ?凛祢の戦闘スタイルが例外なだけだ」

「あのー最初にも言ったけど、俺射撃は苦手なんだよ。拳銃以外撃つのが本当に下手なんだよ」

「それでも、アルバート戦でバンバン撃ってただろ?狙撃まで決めて」

「あれはたまたま当たっただけだよ」

 続くように辰巳やアーサーが言ってくるが凛祢は否定するように返答した。

「いいじゃないですか。あくまで模擬戦なんですから」

「まあ、そうなんだけど……ライフルか……」

 亮にまで言われ、仕方なくSIG SG550を手に準備する。

「ピヨピヨ役はどれがいい?」

「P40ならⅣ号が比較的近いかと……」

「んじゃ、ピヨピヨはⅣ号。アヒルさんがカルロベローチェ、歩兵は葛城君を含めた工兵部隊。んー、もう少し歩兵の敵役が欲しいなー」

 杏はみほに聞いた後、考える仕草を見せる。

「それなら、俺たちでいいですか?」

「そうだな、オオワシなら数的にも問題ない。じゃあ、始めよう」

 志願した辰巳を見て、英治が決定する。

 いよいよ、アンツィオ&アルディーニ連合対策の模擬戦が始まった。

 Ⅳ号の側面には「ピヨピヨ」と書かれた大きなシールを貼っている。

 八九式も側面に「かるろべろーちぇ」と書かれたシールを貼っていた。

 その後を、凛祢と塁、翔の搭乗するキューベルワーゲンとオオワシ分隊の4人の搭乗する九五式小型乗用車が走行している。

 更に、100メートルほど後方を38t、Ⅲ突、M3の戦車3輌と、キューベルワーゲン、九五式小型乗用車、ジープが走行している。

「どんな作戦でいきますか?」

「工兵はどれだけ短い時間で陣地を確保し罠を仕掛けるかが重要だ。おそらくアルディーニは過去の試合では、砲で抜けない装甲をヒートアックスでカバーしていたはず。英治会長、俺たちは森林の方に行きましょう。試合のステージは森林もあるらしいですし」

 塁に聞かれ凛祢は説明した後、英治に通信を送る。

 CV-33の数を見る限り、工兵が居なければ勝つことは難しかったはず。実際、セレナの情報でアルディーニは結構な数の工兵を用意していた。

「わかった。歩兵隊は旋回して森林へ」

「「「了解」」」

 すると、歩兵隊は戦車から離れ、森林へと侵入していく。

 それから一日中森林ではC-4による爆発音が響いていた。

 

 

 日も傾き始め、ようやく訓練が終了した。

 凛祢や塁、辰巳が訓練での戦死判定の回数をまとめる。

「死亡回数言うぞー。八尋22回、翼14回、俊也18回。アーサー19回、シャーロック17回、景綱16回、ジル19回。英治会長7回、宗司副会長16回、雄二広報30回、亮やヤマネコ分隊の4人はそれぞれ26回、25回、24回、26回、20回……いくらなんでも死に過ぎです。特に雄二広報です」

「お前ら何度も爆殺するからだろ!」

 凛祢の報告を聞いて、それぞれが反省点を出し合っている中、雄二が叫ぶ。

「緑間先輩、爆殺!」

「「「爆殺!!」」」

「やめろ!」

 笑いながら歩が言うと続くようにアキラや礼、翔が言った。そんな1年生に対して雄二がまた叫ぶ。

「爆殺するのが、工兵だし」

「ですよねー」

「工兵って楽しいですね!俺も兵科を工兵にしようかなー」

 凛祢と塁が平然と答える横で、翔がそんな言葉を口にした。

「やめとけ。工兵と砲兵は特別な座学が必要なんだ。前にも言っただろ?ヒートアックスやC-4爆弾が工兵しか初期装備にできないのはそういう理由なんだ」

「へー、そうなんですか」

 凛祢の説明に納得したように亮や銀といったヤマネコ分隊のメンバーが首を縦に振る。

「凛祢さん、こちらはそろそろ訓練を終了するんですけど……」

「了解。こっちも終わったからすぐガレージに戻るよ」

 みほからの通信に答え、凛祢たち歩兵隊もガレージへと帰還した。

 

 

 翌日、凛祢と八尋、翼は次の授業に向けて教室を移動していた。

「なー凛祢ー。どうしたら被弾率って減るんだー?」

「避ければいいんだよ。八尋の腕なら無闇に突撃しなければ十分減らせるぞ」

「あ、あの……」

 八尋の質問に凛祢は淡々と返答した。

 目の前で声かけようとしていた生徒に気づかぬまま。

「簡単に言うんじゃねーよ。避けて、被弾率を減らせたら苦労しないんだよ!」

「八尋はサバゲ―の感覚が抜けてないからだろ?」

「だよなー。どうするかなー」

 翼の言葉に八尋は考える仕草を見せる。

 八尋は、動き自体は悪くはないが、どうしても被弾率が高いという問題があった。

 サバイバルゲームの癖だと言っているがサバイバルゲームをしたことのない凛祢には分からなかった。

 強いて言えば、サバイバルゲームは被弾しても痛いだけで失格にはならない。

 しかし、歩兵道は被弾によって失格になるという違いがある。だからこそ、八尋は被弾しやすいのかもしれないな。

 翼はそんなに被弾率は高くないのだが、それも兵科や立ち回りの違いだろう。

「ま、次の授業までアドバイスを考えておくよ」

「サンキュー」

 凛祢が言うと八尋もそう言って笑みを浮かべた。

「はぁ。今日も話しかけられなかった……いや、へこたれるな、アイン!」

 アインという男子生徒は誓うように言った。

 

 

 一方、大洗男子学園の会議室には英治とそれぞれの委員会役員3人が集まっていた。

「今日集まってもらったのは他でもない。図書委員長『赤羽(あかば)』、風紀委員長『青葉(あおば)』、保健委員長『黄場(きば)』。君たちにも歩兵道をしてもらうよ。委員長組としてね」

「「「はー!?」」」

 英治の言葉に納得が行かないのか赤羽、青葉、黄場の3人は声を上げる。

「ふざけるなよ、生徒会長!」

「いくらあなたの頼みでも!」

「限度があるってもんだ!」

 続くように3人が言った。

「委員長方……やってくれるよな?」

「いっ!」

「ぐっ!」

「うっ!」

 英治が睨むと委員長組の表情は引きつっていた。

 3年間、同じ学園にいた彼らは知っている。今の英治は本当に怖いと。

「もう一度聞きます。やってくれるよな!?」

「「「……はい」」」

「ありがとう。感謝するよ」

 委員長組の答えを聞いて英治は席を立つと、感謝の言葉を述べて去って行った。

 会議室には赤羽、青葉、黄場の3人だけが残る。

「たぶん杏会長の影響だろうが、まさか英治が俺たちまで巻き込むなんて」

「杏会長は無茶ばかり言いますからねー。可愛い顔してね」

「勘弁してくれ。歩兵道なんて野蛮な競技したくないよ」

 赤羽に続くように青葉と黄場もため息をついた。

「ま、まあ歩兵道やってるといい男になって、モテるって聞きましたし!これを気に僕たちも心身ともに成長できるんじゃないですか?」

「そこじゃねーよ、青葉」

「やるしかないのか……クソ生徒会役員共が」

 青葉の言葉にあからさまに嫌そうな黄場が返すと赤羽も頭を掻いた。

 

 

 数時間後、訓練後のガレージ内では大きな轟音が響いていた。

 その正体は、整備と修理途中の分解された戦車だった。ワイヤーで持ち上げているところを機械の操作ミスでガレージ内の棚に転落させたと言ったところだ。

 幸いケガ人はなく、他の戦車や駆動車にも被害はなかった。

「馬鹿野郎!殺す気か!」

「あー、悪いヒムロー」

 あと少しズレていたら潰されるところだったヒムロが怒りを露わにして叫ぶと、戦車の車内に居たヤガミが顔を出す。

「あらら」

「なにやってるんですか……」

「「貴様ら徹夜で修理だ!」」

 柚子や宗司が呟くと、桃と雄二が叫ぶ。

「それは無理ってもんですよ!ゆっくり時間かけて直させてください!ねぇヤガミ?」

「そうですよ!俺たちもようやく戦車の整備に慣れてきたんですから!」

 ヘルメットを被って車内にいたナカジマとヤガミが仲良さそうに答える。

「なにー!?」

「まあまあ、自動車部と整備部が言うんだからしょうがないよ」

 杏がやれやれと呟いた。

「そのかわり、修理が完了したらこの戦車私たちで動かします!どうも相当マニアックな気がしますよ、これ」

「その時は、俺たちも歩兵道やりますんで!」

 ナカジマとヤガミがそう言うと整備に戻って行く。

 

 

 それから数日経ち、ようやくやってきた2回戦当日。

 早朝、薄暗い空には日が登り始めていた。

 学園艦の自宅で特製制服に着替えた凛祢は携帯端末を胸の内ポケットしまい、腕時計をつける。

 淹れたてのコーヒーを飲んで一息つく。

「鞠菜、行ってくるよ。……あんたなら楽しんで来いって言うだろうけどさ」

「凛祢ー!」

 仏壇の前で鞠菜の写真に向かって話しかけていると、英子の声が玄関から聞こえてきた。

「じゃあ、行ってきます」

 最後にそう言い残して玄関へと向かう。

 靴を履いて、鞄を持って外に出る。

 外には英子の姿があった。

「遅いわよ。寝坊でもしたの?」

「寝坊なんてするわけないだろ。それにまだ十分、余裕があるだろ」

「早めに行動しないとお姉ちゃんがうるさいの」

「そうだな、照月教官怖いから」

 英子の言葉を聞きながら大洗女子学園に向かう。

「今回は間に合わなかったけど、次の試合から私や秋月も九七式で参加できるって」

「ふーん。そうなのか」

「だから、勝ちなさいよ。参加しないで終わるなんてゴメンなんだから!」

「わかってるよ。流石に勝たなきゃ衛宮も怒るだろ」

 英子に釘を刺すような言葉に凛祢は頭を掻いた。

 負けるつもりはないが、どうするか。

 アンツィオ&アルディーニ連合はいままで戦った連合とは全く異なる戦闘になるはず。

 臨機応変に対応する聖グロ&聖ブリ連合。戦力で圧倒的な力を持ったサンダース&アルバート連合。

 比べてアンツィオ&アルディーニ連合は、こちらと同様、戦車の性能が特別いいわけではないため、歩兵の立ち回りが大きな力となる。もしかしたら、こちらと似た戦術を取ってくるかもしれない。

「不知火なんてどうでもいいのよ!あんな奴……」

「よっぽど嫌いなんだな……俺たちは負けないよ、それに覇王流は最強の流派だしな」

「ふふ、なんだか奇妙な気分ね。自分の家の流派を誰かが使っているなんて」

「そうか?俺は覇王流が最強の流派だって信じてるよ」

「ありがと。しっかりね!」

 凛祢と英子はそう言い合って大洗女子学園の校庭に建てられたガレージ前に到着するのだった。




いつも読んでいただきありがとうございます。
今回のオリキャラの隊長メッザルーナに副隊長のマリーダとチェーザレの3人です。
カルパッチョは最初、陽菜ちゃんって名前だったらしいんですが苗字はわからなかったでイタリアにかけて伊多利という安直なものになってしまいました。
感想や意見があったらどんどん下さい。次回は8月中で上げるつもりです。
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