ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~ 作:UNIMITES
最近、暑い日が続いてますね。と思ったら大雨が降ったりと大変ですね。
今回からアンツィオ戦です、では本編をどうぞ。
対戦ステージである山岳島、荒れ地ステージに到着した大洗連合は早々と試合準備を始める。
前回と同様に観客席付近にはアンツィオとアルディーニ校の売店らしきものが見えた。今回はピザやパスタが食べられるようだ。観戦に来ていた不知火もパスタを手に観客席の方へと歩いていく。観客席には英子や秋月の姿もある。
対戦相手であるアンツィオ&アルディーニ連合も到着し準備を始めているそうだ。
他の歩兵隊も準備を進めている。
凛祢もバックパックにヒートアックスを入れていた。
ようやく準備を終えて、FiveseveNとコンバットナイフを腰のホルスターに収納して、バックパックを背負う。
「……」
凛祢は無言で手元を見る。
手元には前回も使った防弾加工外套があった。
凛祢は、これが嫌いだった。
一度しか使っていないが……何故かって?
確かに性能は前回使ってみて理解している。だが……。
だが、しかし。これは見た目が相当アレなのだ。
何と言うか……少し恥ずかしい。
ふと周りに目を向けると、一番防弾加工外套を装備すべきだと思う相手を発見する。
「アーサー!こっちきてくれ」
「なんだい?」
「これ、お前が装備しろ」
「嫌だよ、そんな黒いマントは騎士王らしくないから」
アーサーは首を横に振る。
「は?お前な、色とかより、まず性能だ」
「いやだいやだ、僕は白と青の服しか身に着けないんだ!ほら、青セイバーだから」
「意味わからないこと言ってないで、いいからつけろ!大体、特製制服だって紺色だろうが」
アーサーの答えを無視してアーサーに防弾加工外套を押し付けた。
「これで良し」
「ぐぁぁ……あ、アンリマユに、汚染されていく……オルタになってしまう」
「何言ってんだお前……てか、もう時間か。お前は剣使うんだからそれ付けとけよ」
「はいはい……」
防弾加工外套を装備したアーサーは膝をついて震えている。凛祢は少し引き気味にアーサーを見た後、腕時計に目を向けた。
思った以上に時間が経っていたことに気づき、みほや英治たちの元に向かう。
「遅いぞ葛城。って防弾加工外套は?」
「アーサーがどうしても欲しいって言うので譲りました」
「本当か、葛城?押し付けたんじゃないのか?」
「そんなわけありませんよ」
雄二にそう言われるが凛祢も嘘を言って返した。
アーサーは大洗唯一、金属剣を武器とする歩兵だ。防弾加工外套はあった方がいいだろう……多分。
「凛祢さん、そろそろ作戦の最終確認を」
「了解だ。えーと……」
凛祢はみほと共にステージの地図を確認しながら作戦地点を決めていく。
「ここはこうで……」
「ここはこうだな……」
すべての確認を終えようとした時、アンツィオとアルディーニが居る方の陣地から1輌の駆動車が向かってきた。
装甲車には映像で見たツインテールの女と長身の男の姿がある。
「頼もうー!」
「おう、チョビ子!」
「チョビ子と呼ぶな!アンチョビ!」
知り合いなのか、杏はいつものノリでアンツィオの隊長アンチョビをアダ名で呼んだ。
が、違ったようだ。チョビ子というのは杏の勝手な呼び方みたいだ。
「よう、三日月。元気そうじゃないか」
「お前さんたちもやる気満々じゃねーか。あと、今はメッザルーナで通ってるからよ。そう呼んでくれや」
英治もアルディーニの隊長、メッザルーナと挨拶を交わす。
「どうしたんだ?安斎、三日月」
「アンチョビと呼べ!」「メッザルーナって呼べって」
桃が言うと2人はまた呼び名にツッコむ。
「試合前の挨拶に決まってるだろ!私はアンツィオのドュ―チェ・アンチョビ!」
「で、俺がアルディーニのフェニーチェ・メッザルーナだ。よろしくな」
「そっちの隊長は!?」
アンチョビとメッザルーナが名乗りを上げると、続いて問いかけるように言った。
「西住!葛城!」
「「はい」」
桃に呼ばれ凛祢とみほがゆっくりと前に進む。
「ほう、あんたがあの西住流か」
「西住みほです」
アンチョビの前でみほが名乗る。
「ふーん、お前が隊長か……案外、男前な顔してんな」
「どうも……隊長の葛城凛祢です」
「え?周防凛祢じゃなくて?」
「あ、えっと周防は昔の苗字です。今は葛城で……」
「そっか……複雑なんだな。悪い悪い」
メッザルーナはそれ以上聞くのはまずいと思ったのか、詮索してこなかった。
時々、居るんだよな。超人だった頃の……周防鞠菜の弟子、『周防凛祢』って呼んでくる人が。
あまり、気にしないけど。
「ふん!相手が西住流だろうが島田流だろうが超人だろうが私たちは負けない!いや勝つ!」
「そ、そうだな。俺たちは勝つ!」
アンチョビに続くようにメッザルーナも意気込みを語る。
「「今日は正々堂々勝負だ!」」
「「はい!こちらこそよろしくお願いします」」
隊長同士が握手を交わす。
すると、さっきからずっと周りを見渡し歩き回っていたアンツィオの生徒がいるのを発見する。
金髪の長い髪が特徴的な少女。顔つきも美人なほうだった。
「ん?ひなちゃん?」
「たかちゃん!久しぶりー!」
少女を見たカバさんチームの装填手、カエサルが名前を呼ぶと少女も同様に名前を呼んだ。
「「たかちゃん!?」」
ワニさんチームの景綱、ジルが思わず叫んだ。
「たかちゃんって誰だ?」
「カエサルの本名だよ。鈴木貴子だそうだ」
アーサーが呟くとシャーロックがパイプ煙草を銜えながら答えた。
「良く知ってるな」
「生徒の名簿に書いてあったよ、小さくね……それにしても似合ってるじゃないか、アーサーオルタ君」
続けてシャーロックはそう言うと携帯端末で写真を撮る。
「あ、おまえ!てか、オルタとか呼ぶな!」
アーサーは逃げるシャーロックの後を追う。
一方、カエサルと陽菜は感動の再開を果たしたかのようにお互いの手を握り合う。
「ひなちゃん、久しぶりー!」
「たかちゃん、本当に戦車道始めたんだね。びっくりー、ねぇどの戦車に乗ってるの?」
「秘密ー」
「えー、まぁそうだよねー。敵同士だもんね」
カエサルとひなは周りの事を忘れ、2人の世界で話を始める。
「たかちゃんって誰ぜよ」
「カエサルの実名――だっ!」
「やっと捕まえた!」
おりょうの質問に答えようとしたシャーロックをアーサーが後ろから押し倒した。
「なにやってるんだ、2人とも」
ジルがやれやれと呟いた。
「でも、今日は敵でも私たちの友情は不滅だからね」
「うん、今日は正々堂々戦おうね」
「試合の前に会えてよかった。もう行くね、ばいばい」
「ばいばい!」
カエサルと陽菜は別れの挨拶をしてそれぞれの陣地に戻る。
「たーかちゃん」
「カエサルの知られざる一面発見だな」
「ヒューヒュー」
「なにが、何がおかしい!」
エルヴィンたちも茶化すようにカエサルに言った。カエサルも赤面して叫ぶ。
それから数分後、試合開始を告げるアナウンスとサイレンがステージ中に響き渡った。
「戦車前進(パンツァーフォー)!」
「全軍、歩兵疾走(オーバードライブ)!」
みほと凛祢の声を合図に大洗連合の戦車5輌とキューベルワーゲン、ジープ、九五式小型乗用車が前進を始める。
今回は整備や修理の都合上、それぞれ1輌を投入している。大洗女子学園のガレージにはもう1輌ずつ置かれている。
そのため比較的敏捷性に長けたヤブイヌ分隊とオオワシ分隊は前回同様徒歩だった。
「なんで俺たちは徒歩なんだよ!」
「比較的、訓練慣れしてるからだ」
「葛城隊長!速攻はいつからいいですか?」
「無闇な速攻は逆効果だが。さて、どう出てくる……?」
凛祢も真剣な表情で戦場を駆ける。
「「アーヴァンティー!」」
アンチョビとメッザルーナの掛け声と共にアンツィオ&アルディーニ連合も前進を始める。
「いけいけ!どこまでも進め!勝利を持ち得るものこそパスタを持ち帰る!」
「行くぞ、お前ら!勝利の炎で、ピザを焼け!」
更にアンチョビとメッザルーナの掛け声に士気を上げていくアンツィオ&アルディーニ連合。
「最高っすよ、アンチョビ姉さん!メッザルーナの兄貴!いくぜ、お前ら!」
「イタリアの伊達男たちの力が伊達じゃねーってこと見せてやるぜ!」
チームのムードメーカー的存在の副隊長であるペパロニとチェーザレが通信機越しに叫ぶ。
「イタリアの伊達男って別に強いとかいう意味じゃないんだけど……」
「そうですよね……」
マリーダがやれやれと言うと陽菜も苦笑いしていた。
「テメーらモタモタすんじゃねーぞ!このペパロニに続け!」
「俺たちが一番槍だ!地獄の果てまで進めー!」
「おー!」
2人の掛け声に合わせて、歩兵や戦車部隊員も叫びを上げる。
「よし、このままマカロニ作戦開始!」
「もうやるのか、アンチョビ姉さん!面白れぇ、工兵部隊は俺と来い!」
アンチョビの指示に、チェーザレも数人の歩兵を連れて別れる。
「カルロベローチェ各車及び歩兵隊はマカロニ展開してください!」
「オーケー。マカロニ特盛で行くぜ!」
陽菜の指示を聞いて、カルロベローチェに乗車していた戦車部隊員と歩兵部隊が慣れた手つきで、作戦準備を始める。
機動力の高いカルロベローチェとバイク『ベスパ』で陣地を確保し、作戦を始めるようだ。
一方、山道を進んでいた大洗連合も八九式と凛祢、オオワシ分隊を偵察に出していた。
「葛城隊長、どうする?」
「そうだな……ここにも敵兵はない。流石に一直線に突撃はしてこないようだ」
オオワシ分隊の分隊長、辰巳と凛祢が単眼鏡を手に周辺を偵察しながら八九式を追いかける。
単眼鏡は双眼鏡を真っ二つにした、狙撃銃のスコープの様な形状している道具だ。
凛祢も最近、この道具を知ったのだが、歩兵道に置いて双眼鏡よりも持ち運びが便利な単眼鏡の方が使いやすいらしい。
「先行するアヒルさん、オオワシ状況を教えてください!」
「十字路まで、あと1キロほどです」
「今のところ敵兵はなしです」
みほの通信に、典子と辰巳が応答する。
「わかりました。十分注意しながら開道の様子を報告してください。開けた場所に出ないよう気を付けて」
「了解。……ずっとコートの外行くよ!」
「「「了解」」」
典子が言うと、アヒルさんチームのメンバーも返事をする。
開道に到着した八九式のキューポラから上半身を乗り出した典子が双眼鏡で周辺を偵察する。
「はっ!セモベンテ2輌、カルロベローチェ3輌。もう十字路に配置済みです!」
「十字路の北側だね」
典子の報告に、通信手の沙織が敵の位置を復唱する。
「カルロベローチェが3に、セモベンテが2か」
「でも、歩兵は何処にいるんですか?」
「よく見ろ、セモベンテの近くの木陰から少しだが頭が見えてる。全員茂みにでも隠れているんだろ」
漣が問い掛けると、凛祢が単眼鏡で確認しながら呟く。
「あんな的、スリーポイントを決めるより的がデカいぜ。狙い撃つ!」
「待て、敵戦車は5輌いる。それに歩兵の数がわかっていない以上、この戦力で攻めるのは危険だ」
「それはそうだけど……」
狙撃準備に入ろうとする迅を凛祢が止めに入った。
「みほ、どうする?」
「攻撃は待ってください!もしかしたら全集警戒の可能性があります!」
凛祢の問いにみほが通信機越しに答える。
「アンツィオだぞ!?ありえん、ここは速攻だ!」
「突撃いいねー」
通信を聞いた桃と杏が言った。
「突撃か、やってやるぜ!」
「雄二、訓練中そう言って28回も死亡したじゃないですか」
「うるせっ!」
やる気の雄二に、宗司が苦笑いして呟く。
「わかりました。十字路に向かいましょう。ただし、進出ルートは今のまま行きます」
「直行しないんですか?」
近くで通信を聞いていた優花里が問い掛ける。
「ウサギさんチームとヤマネコ分隊のみ、ショートカットで先行してもらいます。まだP40の所在も分かりませんから」
「フィールド抑えつつ行くってことか」
「はい!」
みほの指示の元、部隊が別れていく。
「ウサギさん、十分気を付けてください」
「ヤマネコもな。無理はするな、できる事をすればいい」
「「はい、がんばります!」」
みほと凛祢が通信を送ると、梓と亮が返事をする。
「こちらアヒルさん、変化なし。指示を下さい」
「本隊が向かいますので引き続き待機でお願いします」
典子の報告を聞いた沙織が返答する。
「動きがないな」
「エンジン音もないし、切ってんのかな?」
「……!」
偵察を続ける辰巳と漣が呟く。
そこで凛祢はある事に気づく。
おかしい。いくら陣地を確保しているとはいえエンジンまで切るか?
そもそも、頭だけを覗かせている歩兵達だってまったく動かないのはなぜだ?
凛祢は違和感を感じずにはいられなかった。
その頃、ウサギさんチームのM3とヤマネコ分隊のジープは猛スピードで森林内を走行していた。
操縦手の桂里奈と礼は真剣そうに操縦している。
「速い、速い!練習の成果だね!」
「いやー、もっと飛ばして!」
「イケイケー!」
「アクセルシンクロだ!」
走行速度にテンションの上がるあゆみや優季、続くようにアキラと歩が叫ぶ。
「お、おいスピード落とせ!止まれ止まれ!」
「出過ぎ出過ぎ!もう、開道だよ!」
亮と梓が叫ぶと開道に顔を出した後にM3とジープは停止する。
「後退しろ!」
亮の指示に2輌は素早く後退し、森林内に戻る。
「開道南側敵発見!すみません、見られちゃったかも」
「申し訳ありません!」
「発砲は?」
2人の通信に素早くみほが問い掛ける。
「「ありません」」
「くれぐれも交戦は避けてください」
みほがアヒルさんチーム同様の指示を出す。
「了解」
「わかりました」
返事をした、ウサギさんとヤマネコも偵察に取り掛かる。
すると、地図に目を向けた優花里が口を開いた。
「1番の要衝を完全に抑えるなんて流石、アンツィオとアルディーニですね!」
「持久戦に持ち込もうというのでしょうか?」
地図に目を向けた華も呟く。
「わざと中央突破させて包囲しようとする作戦かもしれません」
「ノリと勢いを封印して、手堅い作戦に出ましたね」
「ある意味予想外」
優花里が言うとみほも少し驚いていた。
「おーい、コソコソしてないで打って出ようぜ!」
「駄目だろ。凛祢とみほ隊長の指示なんだから」
文句を言い始める八尋に翼が言った。
「こんな事なら俺もアヒルについて行けばよかったぜ。凛祢はきっとバンバン撃ち合ってるぜ」
「それはないですよ。アヒルさんの通信には戦闘してるとは一言も……」
「でも、このままだと時間だけが過ぎていくのは確かだな」
塁が言うと、俊也がそんな言葉を口にする。
「だろ?分かってるじゃねーかトシ。つーわけで行くぞ!」
「だからって突撃するな」
「えー」
翼に引き留められ八尋は声を上げていた。
「ウサギさん、敵の正確な情報を教えてください」
「はい……って紗希、銀君出過ぎ!」
「こんな時にドジっ子属性出すなよ」
茂みから敵を確認しようした銀と紗希の頭を強引に下げる。
「カルロベローチェ4輌。セモベンテ2輌が陣取っています。歩兵の姿はありません」
梓が報告する。
「……おいおい、数が合わないじゃないか」
「どうなってんだ!?」
翼や八尋も不信感を抱く。
「合わせて11輌もいます」
「P40も居ません、2回戦のレギュレーションでは10輌までと」
華と優花里も同様に不信感を抱いていた。
「インチキしているのでは?」
「イカサマしてんのか」
すると、塁と英治が呟いた。
数の合わない戦車たち。そして、一向に姿を見せない歩兵たち。
どうもおかしい。発砲もしてこない上にエンジンまで切っている。
その時、凛祢の不信感が1つの仮説にたどり着いた。
もしかしたら……
「みほ、アヒルとウサギに攻撃準備をさせろ。出来たら発砲して構わない」
「え、わかりました。ウサギさんとアヒルさんは退路を確保しつつ砲撃準備!準備出来次第発砲してください!」
「反撃されたら退却して構わない!」
凛祢とみほの声が通信機から響く。
「葛城隊長、大丈夫なんですか?」
辰巳は思わず凛祢に問い掛けた。
すると、八九式とM3が発砲を始める。
「俺の仮説が正しいなら……敵は絶対に反撃してこない。するわけがないんだ」
凛祢が呟くのと同時に砲撃が敵に命中した。
その瞬間、砲撃を見ていた者すべてが驚きを隠せなかった。
砲弾が命中したセモベンテやカルロベローチェは爆風で倒れたり、砲撃によって貫通、砕け散った。
セモベンテとカルロベローチェは……ハリボテによるデコイだったのだ。
「なにっ!?」
「こんなことが!?」
次々に驚きの表情を見せる大洗連合の生徒たち。
誤射によって、薙ぎ払われた茂みや木々の陰からはカツラを被った案山子が倒れている。
「偽物だ!」
ウサギさんチームとアヒルさんチームが同時に叫んだ。
「やりますね、欺瞞作戦なんて」
「それより、デコイでの欺瞞作戦なら敵はもうかなり動いてるんじゃねーか?」
「八尋の言う通りだ。全員戦闘準備はしておいてくれ!」
凛祢の声が大洗連合全員の通信機、インカムから響いた。
「ということは、おそらく十字路に私たちを引き付けておいて、機動力で包囲か。ウサギさん、アヒルさん、ヤマネコ分隊――」
みほがアヒルさんチームとウサギさんチーム、ヤマネコ分隊に指示を出す。
「典子、辰巳たち借りるぞ。俺たちの移動力じゃカルロベローチェには無意味だからな」
「了解です!辰巳君、根性だよ!」
「分かってる。後で落ち合おう!」
典子と辰巳が言葉を交わすと凛祢を含めたオオワシ分隊の4人は八九式と別れる。
「具体的にどうするんだ、隊長?」
「俺たちは、敵工兵部隊を狙う。辰巳たちはいい動きしてるからな」
「「「「了解です」」」」
漣の問いに凛祢が答える。
その頃、ペパロニのカルロベローチェ部隊とベスパに搭乗する歩兵部隊は森林内を高速で移動していた。
「はっはっはっは!」
「今頃、あいつらビビッて十字路で立ち往生してるぜ!戦いはおつむの使い方だ」
「ペパロニ姉さん!」
ペパロニは勝ち誇った顔で笑っている。
すると、1人の男子生徒の声が響いた。
「大変です!ティーポ八九が……」
「なんでバレてんだ?……まあ、いいや。ビビってんじゃねぇ!カルロベローチェの機動力にはついてこれぇよ!」
ペパロニの部隊はそのまま前進を続ける。
そに後方を八九式が追いかけていく。
「敵戦車4輌と歩兵隊を発見しました。ポイントF24地点を東に向かっています!」
敵を発見した典子が報告する。
時を同じくして偵察に出ていたM3も敵戦車を発見していた。
「2時の方向に敵影!」
「セモベンテとカルロベローチェが1輌!さっきと同じだ、撃て!」
「ちょっと!」
梓が亮たち歩兵を止めようとする。
「おりゃ!」
が、梓を無視してあやは足元の砲撃用スイッチを押した。
M3の放った攻撃はセモベンテの装甲によって阻まれた。
そう、それは正真正銘本物のセモベンテとカルロベローチェだったのだ。
「げっ!」
「本物じゃん!」
「逃げろ逃げろ!」
ウサギさんチームとヤマネコ分隊は声を上げて逃走を始める。
後方からはセモベンテの砲弾とカルロベローチェ、ベスパに搭乗したアルディーニ歩兵隊の銃弾が飛んでくる。
「こちら亮。ポイントA23地点、セモベンテとカルロベローチェそれぞれ1輌発見。今度は本物です!」
「攻撃してしまい、交戦始まってます!」
「大丈夫、おかげで敵の作戦がわかりました。セモベンテとは付かず離れずの距離で交戦してください」
報告を聞いたみほも指示を出す。
そして、凛祢とオオワシ分隊も罠を仕掛けていたアルディーニの工兵部隊10人を発見した。さらにセモベンテが1輌停車している。
「よし、俊也たちに突撃は任せる。開戦後の指揮は辰巳が取ってくれ。俺は後ろからセモベンテをヒートアックスで仕留める」
「「「「了解!」」」」
オオワシ分隊も返事をして、銃の安全装置を外す。
「こちら凛祢とオオワシ分隊。敵工兵部隊を発見した、これより交戦に入る」
「わかりました。くれぐれも無理はしないようにお願いします、出来る限り時間を稼いでください……凛祢さん、無事に合流してくださいね」
「……了解だ」
みほとの通信を終えて、凛祢とオオワシ分隊は一度深呼吸をした後、戦闘を開始する。
「これよりあんこう、カメさん、カバさんチームとヤブイヌ、カニさん、ワニさん分隊は直進します。包囲される前にフラッグ車を叩きましょう。当然こちらのフラッグも標的になりますが逆に囮としてうまく敵が側を引き付けてください。それでは皆さん、健闘を祈ります!」
みほの通信がそれぞれの通信機とインカムから響いた。
茂みから飛び出した辰巳、漣、淳は敵歩兵との戦闘している。
百式軽機関銃から放たれた銃弾がアルディーニの歩兵に命中する。
「よし、3人倒した」
「止まるな!動き続けろ!」
敵歩兵を倒して油断した漣に辰巳が声を掛ける。
「おっと!当らなければどうってこともないな」
「辰巳、後ろだ!」
淳の視線の先にいた辰巳が後方の歩兵から狙われていた。
しかし、その歩兵の銃を一発の銃弾が撃ち抜く。続けて放たれた銃弾が右肩に直撃したことで逃げるようにその場を離れる。
狙撃の正体は迅によるものだった。
「淳、セモベンテに向けて煙幕手榴弾を投げろ!」
「え?了解」
淳は言われた通り、煙幕手榴弾を投擲した。
煙幕が立ち込めてセモベンテの視覚を奪う。
辰巳たちを狙おうとしていたセモベンテの砲手は堪らず驚いた。
その隙を狙っていたように凛祢が茂みから現れ、跳躍する。
セモベンテの上に着地すると同時にヒートアックスをバックパックから取り出し、仕掛けていく。
「なんだ?」
「おい、上に誰かいるのか!」
セモベンテの乗員も凛祢の存在に気づき急発進し始める。
油断していた凛祢は態勢を崩し、地面に落下して数回転がった。
もう仕掛け終わっていた凛祢は倒れたまま、リモコンのスイッチを押した。
瞬時にヒートアックスが起爆し、数秒後にセモベンテからは白旗が上がった。
「よし……」
すぐに凛祢は立ち上がり、戦闘態勢に入る。
「大洗連合には工兵が1人いるって聞いてたけど。お前が工兵だったんだな」
「……」
凛祢の視線の先にはアルディーニ学園の副隊長、チェーザレの姿がある。他に残存する敵歩兵は2人。
倒れているアルディーニの歩兵やオオワシ分隊の漣と淳からは戦死判定のアラームが響いていた。
辰巳と迅は木陰に隠れて、生き残ってはいるようだった。
「実は、俺も工兵でな。でも、お前みたいに捨て身の工兵は今まで見た事ねーよ。あんな方法でウチのセモベンテを倒すなんてな」
「俺は自分の戦い方ををしているだけだ」
「そうか……でも、お前にはここで退場してもらうぜ!」
凛祢は右に走ると同時にチェーザレはベレッタM12Sを発砲する。
銃弾は凛祢の進んだ地面を次々に抉っていく。
凛祢もホルスターからFiveseveNを引き抜き応戦する。動き回りながらリモコンのスイッチを押した。
セモベンテに攻撃する前に樹木に仕掛けておいたヒートアックスを起爆させる。
樹木がチェーザレの方に倒れるがチェーザレも走ってそれを回避した。
その瞬間、距離を詰めていた凛祢は大きく踏み込む。
「覇王流……」
右掌打をチェーザレの胸に打ち込んだ。
チェーザレは何が起きたのか分からなかったが、痛みが体に走るのを感じる。
「あ、がっ……」
「浅いか……」
うめき声を上げるメッザルーナを確認しながら、凛祢は一歩後退する。
「お前……工兵なのに、なんで……」
「……!」
「凛祢、後ろだ!」
『直感』と辰巳の声で凛祢は振り向き、敵歩兵の手首を右手で掴み取る。
更に、左手のFiveseveNのグリップを敵歩兵の顔面に叩きつけた。
敵歩兵も思わずうめき声を上げる、続けてグリップで腕を叩くと敵歩兵はコンバットナイフを手放した。
追い打ちをかけるように腹部に5発、発砲すると敵歩兵からアラームが響いた。
「くっそー!」
チェーザレはやけくそで自動拳銃ベレッタM93Rをホルスターから引き抜くが、凛祢はベレッタを左足で蹴り飛ばした。
「覇王流……」
凛祢はもう一度、掌打をチェーザレの胸に打ち込んだ。
「うっ……あ」
チェーザレはその場に倒れると凛祢はFiveseveNを数発撃った。
FiveseveNが弾切れとなりスライドが後退すると同時にチェーザレからもアラームが響いた。
「葛城隊長!やっぱ凄いですね」
「流石、凛祢だな」
辰巳と迅が褒めるように声を掛ける。
「り、凛祢?……まさかあんたが周防凛祢!?」
「間違ってないけど今は葛城凛祢だよ」
「それは強いわけだ!くっそー相手が悪かったな、これは」
チェーザレは負けてしまったのに笑って口を開いた。
「でもさ、こんなに早く奇襲したってことは俺たちの作戦がバレたってことだよな。なんで分かったんだ?」
「理由は2つ。まず数の合わない戦車たち。お前たち、戦車のデコイを間違った数置いたんじゃないか?」
「え?間違えるわけねーだろ。用意していた奴全部置いたんだぜ?」
「それって、何枚かは予備とかだったんじゃないか?」
「あ……ああーー!」
チェーザレは如何にもやってしまったっという顔で声を上げる。
「次に音がしなかったこと。これは前者が証明されたからこそ分かったことだ、戦車のエンジンを切るなんて、まずあり得ない。それと歩兵が姿を見せなかったこと。せめてエンジン音を録音でもして随伴歩兵の1人でも見せておけばもっとリアリティがあっただろうに」
「おお。そうか、エンジン音や歩兵が姿を見せないとやっぱり不自然なのか……」
チェーザレは納得したように頷いていた。
「葛城隊長!呑気にアドバイスしてる場合ですか!」
「そうだよ、早く八九式やⅣ号と合流しないと!」
「おっと、悪い悪い。行くぞ!」
凛祢はサンダースの時と同様に敵の乗り物であるベスパを奪い急ぐようにⅣ号の元へ向かう。辰巳や迅もサイドカー付きのベスパで八九式との合流地点に向かった。
一方、アヒルチームの八九式は、カルロベローチェ4輌の部隊を追撃していた。
砲と機銃での攻撃を続けるが、カルロベローチェはその機動力を活かしてことごとく回避している。
「くそ、しゃらくせぇ!反撃だ!」
ペパロニの指示にカルロベローチェ1輌が八九式の後方に回り込む。
「バックアタック!」
「はい!」
典子の指示に砲手のあけびが後方の機銃を発砲する。が、やはりカルロベローチェはすべて回避する。
更にもう1輌のカルロベローチェも後方に回った。
「スパーラ!!」
ペパロニの合図に前方の。カルロベローチェは走行しながら車体をターンさせると4輌は一斉に機銃を発砲する。
「「「いてててて!」」」
「痛いのは戦車ですから、とりあえず落ち着いて反撃しましょう!」
被弾した八九式の車内の3人に妙子がツッコむ。
そして、八九式が再び発砲を始めるとカルロベローチェは逃げるように速度を上げる。
八九式の放った砲弾は命中こそしていないものの衝撃で軽量なカルロベローチェをひっくり返していく。
「よっしゃー!」
「バレー部の時代来てるぞ!次だ次!Bクイック!」
ようやく勢いを取り戻したアヒルさんチームは次々に攻撃をしていた。
「こちらオオワシ分隊の辰巳。八九式のアヒルさんチーム、無事か?」
「え?辰巳君?こっちは大丈夫だよ!」
妙子の通信機から辰巳の声が響く。
「そうか。漣と淳がやられたが、こっちも敵工兵部隊は潰したから。すぐ合流するぞ!」
「漣君と淳君が?うん、わかった!ポイントR45地点だね」
典子が言うと通信を終えた。
そして、ウサギさんチームのM3とヤマネコ分隊のジープは敵戦車セモベンテとカルロベローチェ、敵歩兵部隊と距離を取りつつ逃走していた。
「逃げてるだけじゃ勝てないぜ!」
「撃てぇ!」
アキラの声に続いて歩や翔がトンプソン・サブマシンガンを発砲する。
次々に放たれる銃弾はセモベンテに命中するがその装甲に阻まれ、まったく効いていなかった。
「「「効かねー!」」」
「俺たちの銃でセモベンテの装甲を突破できるわけないだろ!」
「だってさー、展開的に勝てそうじゃね?」
亮の言葉に歩が言った。
「おい、礼。回り込んじまえ!」
「無茶言うなよ……逃げるので精一杯だよ!」
アキラの言葉に操縦を担当している礼がため息交じりに言った。
「あ、そうだ。考え方次第だよ。あっちは1輌1つの砲、こっちは砲が2本。あいこじゃん!」
「あーなるほど!」
「なるほどじゃない!」
優季の言葉にあゆみが納得していると梓が思わずツッコんだ。
一方、アンツィオ&アルディーニ連合の本隊は森林の奥で報告が来るのを待っていた。
なかなか報告が来ない中、痺れを切らしたアンチョビが通信機を手に取る。
「おい、マカロニ作戦はどうなっている?」
「すいません!今それどころじゃないんで、後にしてもらえますか?」
通信機からペパロニの声が響く。
「ん?なんで?」
「ティーポ八九式と交戦中です!」
アンチョビの問いにペパロニが答える。
「なに!?おい、チェーザレ。お前の部隊は!?」
「すまねぇ兄貴。俺たちは全滅しちまった!作戦失敗です!」
「嘘だろ!?お前ら本当に十字路にデコイ置いたのか?」
メッザルーナは耳を疑った。こんなにも早く自軍の部隊が1つ潰されたからだ。
デコイを置いて欺瞞作戦まで計画していたのにも関わらず、行動が早かった。
「置きましたよ。全部!」
「「は?」」
「11枚全部置いたら数合わないからってことで、即バレちゃいました。さっき敵に指摘されましたから、あの凛祢って奴賢いっすね!」
ペパロニが自信満々に言うと、続くようにチェーザレが答える。
「あいつら本当にアホだったのか……だが、凛祢がチェーザレの方に行ったならこっちに来るまで時間がある。過ぎたことを気にしてもどうにもならないか。アンチョビ!」
「分かっている。あいつらは……もうペパロニとチェーザレのアホ!出動だ、敵はそこまで来ている!2枚は予備だってあれほど言ったのに」
メッザルーナはため息をついた後にベスパのエンジンを掛ける。
「「はい」」
アンツィオ&アルディーニ連合のP40、セモベンテ、カルロベローチェの3輌と25人の歩兵たちは急いで前進を開始する。
そして、2分も経たないうちに大洗連合とアンツィオ&アルディーニ連合の本隊がすれ違う。
「ん?」
「お?」
「隊長車とフラッグ車発見!」
お互いに姿を確認した両チームはすぐに方向転換する。
「あのパーソナルマークは……たかちゃんの」
Ⅲ突のエンブレムを見たセモベンテの装填手、陽菜はある事に気が付く。Ⅲ突のエンブレムであるカバのイラストは友人、カエサルのチャットアプリのアカウントの画像と同じだったからだ。
「75㎜長砲身は私に任せてください!」
「任せた!」
陽菜は自ら志願し、Ⅲ突の相手を引き受ける。
そして、大洗連合のⅣ号と38t、随伴歩兵のカニさん分隊、アンツィオ&アルディーニ連合のP40とカルロベローチェ、随伴歩兵の7人がベスパで後を追う。
「八尋、塁、Ⅳ号のほう任せた。俺と翼はアーサーたちを援護する」
「お前が指示するな!副隊長は俺だぞ!」
「行きますよ、八尋殿!というかいつの間に副隊長になったんですか」
俊也と翼はワニさん分隊の援護に回り、八尋と塁はⅣ号に飛び乗る。
開道から外れ森林を突っ切る様にⅣ号、38t、八尋と塁、カニさん分隊とP40、カルロベローチェ、アルディーニ突撃部隊の砲身間射撃が始まる。
Ⅲ突とセモベンテの突撃砲対決も同時に開始される。Ⅲ突の砲は43口径75㎜戦車砲40型であり、この砲ならばセモベンテの装甲を抜くことは容易であり、戦車砲ならばⅢ突が上だった。
突撃砲であるセモベンテの砲は18口径75㎜榴弾砲を搭載している。Ⅲ突の側面なら貫通可能であり、正面からならば防楯を狙うことで有効である。
「あの戦車まさか陽菜ちゃん?……ワニさん分隊、悪いんだけど随伴歩兵頼んでもいい?」
「カエサル?」
「お願いだ、あのセモベンテとは1対1で戦いたいんだ!」
カエサルは真剣な顔でエルヴィンの顔を見る。
「……初歩的なことだよ、友よ。親友とは全力でぶつかり合いたいと言うことさ」
「シャーロック。それ言いたかっただけだろ」
「そう言うことか。了解した」
シャーロックの言葉に他の随伴歩兵やⅢ突車内の隊員も理解する。
「坂本と東藤は俺の指揮に従ってくれ。いくぞ!」
アーサーたちもアルディーニの歩兵と戦闘を開始する。
すぐにⅢ突とセモベンテの激しい撃ち合いが始まった。
「敵は側面は晒さないはず!正面なら防楯を狙って!」
「どこでもいいから当てろ!Ⅲ突の主砲ならどこでも抜ける!」
装填手である陽菜とカエサルが叫ぶ。お互いに正面からぶつかり、ほぼセロ距離で撃ち合う。
どちらかが引けば、引いた方が確実に負ける。そんな怒涛の撃ち合いだった。
「みんな行くよ!」
「さっさと目標を殲滅し、陽菜の援護に行くぞ!」
シャーロックはパイプ煙草を銜える、マリーダも身構えると歩兵隊も戦闘を開始する。
森林内に入ったⅣ号とカニさん分隊のキューベルワーゲンはフラッグ車である38tの盾になる様に横を走行する。カルロベローチェと随伴歩兵部隊のベスパも小さな車体でP40の盾になる様に横を走行している。
お互いの砲が空を裂き、轟音が鳴り響く。雄二も必死に狙って銃を発砲するが激しい揺れに照準が合わず銃弾は空を舞うだけだった。
「へへ!そんなのじゃ当たらねーよ!」
メッザルーナは肩にかけていたベレッタARX160の銃口をキューベルワーゲンに向けると発砲をする。彼にもバイクの揺れと言うディスアドバンテージがあるにも関わらずメッザルーナの銃弾は次々にキューベルワーゲンの側面に命中していく。
「あいつ、相当戦い慣れてるな……バイクに乗りながら当ててくるなんて。マズイな」
「宗司、どうにかしろよ!」
「無茶言わないでください。転輪を狙われないように操縦するので精一杯です!」
英治はメッザルーナの腕を高く評価していた。射撃の腕も相当だが、バイクの操縦もかなり慣れているようだった。
そして、これだけの技術を持ちながら、彼も凛祢と同様に突撃兵ではなく……工兵なのだから。
「見せてやるぜ、アルディーニ工兵の実力。アンチョビ――」
メッザルーナはインカムで指示を出す。
カルロベローチェ4輌と対決していた八九式だったが、カルロベローチェの不死身っぷりに翻弄されていた。
「ああーー」
「また来た!」
撃っても撃ってもカルロベローチェは次々に目の前に、そして後方に現れる。
「もうキリがない!」
「豆戦車が不死身ですー!」
忍やあけびが悲鳴を上げる。
「安心しろ、カルロベローチェは不死身じゃない!白旗判定の出てない車両を立て直してるだけだ!」
「うおー、オオワシ参上!」
妙子の通信機から声が響いたかと思うと、後方からサイドカー付きのベスパに搭乗したオオワシ分隊の辰巳と迅が現れる。
「ほえー?」
「つまりだな――」
驚いているあけびに説明しようとするが。
「車体の軽さで衝撃を緩和してるんですね」
「回転レシーブ……」
「要するに根性だ!」
「説明は最後まで聞けよ……まあ理解してるようだからいいや」
全員理解しているのかそんな言葉を呟いていた。
「ウィークポイントを的確に狙って撃てば倒せる。それくらいスリーポイントを決めるより楽なもんだ、アヒルさんチームならやれる!」
「そうだ!俺はスリー打たねーけどな。援護するために乱れ撃つぜ!」
ベスパの操縦をしていた迅の言葉に辰巳は後方からカルロベローチェの履帯を狙う。
「よっしゃ!佐々木、もう一度最初からだ!」
「バレー部!」「バスケ部!」
「「ファイト!」」
「「「「おー!!」」」」
アヒルさんチームとオオワシ分隊は気合を入れるように叫ぶ。
「砲を支えれば、戦車が揺れても照準は安定する!」
「はい!」
「気合入れろ!佐々木さん!」
「ウィークポイントは……エンジン冷却部!」
あけびが照準器を操作しカルロベローチェに照準を合わせた時だった。
「ああ!」
「ええ!?」
前方から大洗連合のM3とジープが現れる。
瞬時に忍やが操作し、正面衝突することなくすれ違う。
「あっぶねー!」
「まじで死んだかと思った……」
お互いに後方を走行していた辰巳たちと亮たちも流石に驚いた。
気を取り直してあけびは再びカルロベローチェに照準を合わせる。
「撃てぇ!」
「はい!」
あけびがトリガーを引くと八九式から砲弾が放たれる。
砲弾は1秒にも満たない間にカルロベローチェに命中し、空中を待った後に地面を滑る。被弾し、横転したカルロベローチェから行動不能の白旗が上がった。
「次、フロントライト!」
「はい!」
すぐに装填を終えた八九式から砲弾が放たれた。立て続けにカルロベローチェに命中。ひっくり返ったカルロベローチェからも白旗が上がる。
「すっげー、俺たち必要なかったんじゃないか?」
「そんなことないぜ!」
辰巳の放った銃弾が履帯に命中しようやく1輌の動きを止める。
「ダンクシュートだ!」
続けて持っていたC-4爆弾を投げると、C-4爆弾はエンジン冷却部に張り付く。
「爆破!」
リモコンを押すと起爆しカルロベローチェから白旗が上がる。
「ナイスシュート!」
迅と辰巳は思わずハイタッチする。
「調子に乗りやがって!」
唯一残っていたペパロニのカルロベローチェはなんとか逃げ回っていた。
「セモベンテ1輌、カルロベローチェ3輌走行不能!」
アナウンスがフィールドと観客席に響き渡った。
「なんだって!?おい、包囲戦は中止!とか、言っているうちにCVがやられた!」
アンチョビが頭を抱えていると並走していたカルロベローチェが被弾し白旗が上がった。
「やべぇ、丸裸じゃねーか!一同、フラッグの元に集え!戦力の立て直しを図る!分度器作戦を発動する!」
「もらった!」
「やらせるか!」
英治がメッザルーナの一瞬の隙を狙うが、放った銃弾はまたもアルディーニの歩兵によって阻まれる。
被弾した歩兵は態勢を崩し盛大に地面に倒れ、戦死判定のアラームが響く。
「くっそ、これで4度目だぞ!」
「ようやくだ!食らいやがれ!」
「させるか!」
メッザルーナがリモコンのスイッチを押そうとした時だった。
茂みからベスパに乗って現れた凛祢がメッザルーナのベスパ目指して突撃した。
「凛祢!?」
「凛祢殿!?」
「「葛城!?」」
「凛祢さん!」
衝突の直前にベスパから飛び離れた2人はお互いに地面に投げ出される。
「無茶しやがる……」
「工兵を止めるならあれくらいしないとな……」
無傷とはいかなかったが、戦死判定を受けていない2人。
凛祢とメッザルーナは起き上がり、お互いに歩兵武器を構える。
「おもしれぇ。お前とはタイマン張りたくなった。アンチョビ、俺はバイクをやられた。あとのことは任せる」
「うぅ……わかった!その代わり負けるなよ!」
「おうよ!」
メッザルーナは通信をして、凛祢を見た。
凛祢も身構えてメッザルーナを見る。
「分度器作戦ってなんでしたっけ?」
「んー知らん」
ペパロニのカルロベローチェは逃げるようにP40の元へと向かう。
「あれ?」
「逃げちまったぞ?」
「ここらが限界だな……」
辰巳がため息をつくと、迅がベスパを停止させる。
「辰巳君、どうしたの?」
「燃料が、もうない」
辰巳の言う通り、ベスパの燃料メーターはEを指していた。
「……」
仕方なく2人は八九式の上に飛び乗り、掴まると八九式はカルロベローチェを追った。
同様にM3を追っていたセモベンテとカルロベローチェも同様に追撃を辞めて、P40のいる地点を目指すのだった。
観客席では真剣そうな英子と秋月、不知火が試合を観戦していた。
「なあ、葛城ってなんで格闘で戦ってるんだ?」
「彼は英子の家の流派、照月流格闘術を習っているからよ。それでも彼の戦闘スタイルは変わってるけどね」
不知火の質問に、秋月が答える。
「へー。歩兵って言うくらいだからもっとバンバン撃ち合うものだと思ってたけど」
「あれでも結構撃ち合ってるわよ。葛城君は銃よりCQCに長けてるからね。照月流もあるし」
「照月流はお爺様の先々代から歩兵道を視野に入れた流派になったからね。さっきの凛祢が使った技は『流星掌打』と『彗星封じ』って技だけど『彗星封じ』なんかは元の技から歩兵道用に改良された技なのよ。そんなのを繰り返しているうちに最強流派だとか、『覇王流』なんて呼ばれるようにもなったけど……」
英子は説明の後にため息をついた。
覇王流・彗星封じ。またの名を火縄封じとも呼ぶ。武器を持った相手に対して用いる技であり、武装解除の技だ。ナイフや刀と言った刃物なら手首を、拳銃や小銃ならば砲身を掴み取り、攻撃を封じた後に顔や腹に攻撃をして怯んだ隙に武器を奪い取るのが主流。昔は火縄銃や銃火器に対して用いられた技だが、現在は改良されいて刃物に対しても用いられる。
覇王流・流星掌打。烈風拳と同様に足から練ったエネルギーを乗せて打ち込む場合と急所を目掛けて素早く打ち込む場合と言う2つのパターンで使い分けられる技。汎用性が高く、他の技へと応用される技。彗星封じに織り込むことも可能。凛祢にとって最も得意とする技。
「俺も照月流を習うことできるのか?」
「やめておきなさい。格闘術はすぐに習得できるようなものじゃない。現に凛祢だって照月流の技をすべて習得できてるわけじゃないもの。それに私はあなたに教えるなんて御免だしね」
「そっか。どちらにしても習得は無理か……」
英子が釘を刺すように言うと、不知火は空を見上げる。
「セレナ、凛祢たちは勝てると思う?」
「現状の勝機は大洗にあるけど、アルディーニの隊長さんは葛城君と同じタイプだからね……戦闘スタイルは違うけど」
「同じタイプ?」
「……今は工兵だけど、元突撃兵なのよ、彼」
英子の問いに、秋月は笑みを浮かべて言うのだった。
今回も覇王流の技が2つ登場しました。登場予定の技は残り3つあります。
黒森峰戦の前にオリジナルキャラの紹介回なんかをしようとも思ってます。
アンツィオ戦は次で決着する予定です。
1対1の対決をすることになった凛祢はメッザルーナに勝てるのか?
原作だと大洗はアンツィオに圧勝するんですけど……。
今回も読んでいただきありがとうございました。
何でもいいので感想や意見を頂けると嬉しいです。