ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~   作:UNIMITES

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どうも、UNIMITESです。
今回は体育祭というオリジナルイベント回です。
原作は学園のイベントに触れる会などはなかったですが、自分なりに描いてみました。
では、本編をどうぞ。


第14話 スクールイベント「合同体育祭・前編」

 2回戦から3日後、全ての2回戦に決着がつき対戦校も決まった。

 対戦相手は予想通りプラウダ高校とファークト高校。去年の優勝校であり、あの黒森峰連合の10連覇を阻止した学校だ。

 そんな強敵が3回戦の相手。勝機は薄いが、0%じゃあない。

 凛祢やみほのいる大洗連合はサンダース&アルバート連合にも、アンツィオ&アルディーニ連合にも勝利したんだ。

 きっと勝てるはずだ。そう勝てるはず。

 しかし、大洗男子学園と大洗女子学園では全国大会よりも優先して行うべきことがあった。

 それは……。

「体育祭?もうそんな時期だっけ?」

「そうだぜ、凛祢。やっぱり忘れていたか」

「もう来週なのに、なにやってんだ……」

 いつものように昼休み、学食に集まっていたヤブイヌ分隊の5人。

 大洗男子学園と大洗女子学園の体育祭は合同で行う。更に、競技も一緒に行ったりすることもあるわけだが。

 男子と女子が合同チームになるのは珍しくないが。

 チーム分けは男女混合の普通Ⅰ科A組、B組、C組と普通Ⅱ科A組、B組、C組。更にこれを学年ごとに分けると合計18チームに分けられる。

 よくよく考えれば結構チーム数が多い。

 競技の種類もテニス、バレーボール、バスケットボール、サッカーに野球、ラクロスと6種類ある。

 テニスは人数の都合上、1クラスで2、3チーム出さなければならなかったはず。

 1クラスで6つの競技全て出場と言うのは、男女の人数を足しているため人数的にはあまり問題にはならなかった。

「最近ずっと忙しかったですからね」

「俺ももう決めて提出したけどな」

 いつもと変わらずきつねうどんをすする俊也。

 ほぼ毎日同じきつねうどんでよく飽きないものだ。

「え?トシは何に出るんだ?」

「……野球」

「野球?お前が?」

 八尋は俊也の口から出た答えに聞き返すように横目で見る。

「一様、野球経験者だからな。中学で野球やってた」

「マジかよ!?本当かトシ?……よーし、チーム名はヤブイヌバスターズだ!」

「どっかで聞いたことのあるような名前はやめろ。ヤブイヌって、だいたい俺と塁は別クラスだろ」

 立ち上がり声を上げた八尋に俊也が珍しくツッコミを入れた。

 俊也が野球経験者であると言うのは凛祢も初耳だったため少し驚いていた。

 担任の先生にはなるべく楽な競技でいいですとは言ってたけど、どうなったのだろうか。

 

 

 そして、放課後。担任に呼び出された凛祢は1人で職員室に向かう。

「おう、来たか。葛城、体育祭の参加競技だけど……」

「えっと、どうなりました……?」

「こっちで決めたには決めた……参加競技は、テニス。2人1組なんだが相方が大洗女子の西住みほさんだ」

「はい、わかりました……え?」

 凛祢は返事の後にもう一度担任の顔を見返した。

 一瞬何を言っているのか理解できなかった。

 食い入る様に一歩踏み出して、担任に視線を向ける。

 相方が……西住みほ?なんで女子と?

「あの、なんで女子とチームなんですか?」

「お前も知ってるだろ?イベント事は両校で協力して行う、それが学園長の方針だ。クラスのみんなはもう組み合わせが決まっているし、葛城と西住さんが組めば丁度チーム数が揃うと言うわけだ。それに他にも男女混合のチームは数チームある。嫌だったか?」

「……そう言うわけじゃないですけど。何でもいいっていたのは自分ですし」

 そんなこんなで凛祢の体育祭はみほとチームのテニスとなった。

 こんなことなら八尋たちと同じバレーを選択しておけば良かったかな。

 凛祢はほんの少しの後悔を感じながら校庭のガレージに向かう。

 

 

 開いていたガレージの扉をくぐると既に八尋たちの姿がある。

「おい、凛祢!みほさんと同じチームって本当か!?」

「あ、ああ。さっき先生から聞いたけど。そうらしい」

「なんだよ!お前ばっかり、俺もテニスしとけばよかったーー!」

 頭を抱え、本気で悔しそうな八尋を横目に凛祢がガレージ内に入る。

「お前はいつもうるせぇな」

「なんだと!?」

「いいから少しは静かにしてろって」

 俊也は呆れ顔で八尋を見る。

「あ、凛祢君聞いたよー。みぽりんとペアなんでしょ?がんばって勝ってよね!」

「あんまり自信ないけど」

「り、凛祢さん頑張りましょう!優勝目指して!」

 みほは少し恥ずかしそうにしていていたが、強気で凛祢を見た。

 凛祢も最善を尽くすつもりだった。

 だが、凛祢はスポーツはあまり得意ではない。いままで歩兵道くらいしかしてこなかったからだ。

「それで、練習はいつからしましょうか?」

「明日の放課後からでいいんじゃないか?」

「わかりました」

 みほも笑みを浮かべて返事をしていたが、内心では少し戸惑いを感じていた。

 予想外のことに凛祢も少々戸惑っていた。

 体育祭前は体育の授業が主に体育祭練習となる。休み時間も使って凛祢とみほは練習を進めていた。

 正直、勝てるかと言われれば自信はない。何せ、凛祢もみほもテニスは初心者同然。

 

 

 そして迎えた体育祭当日。

 教室内で担任の注意事項などを聞いた後、グラウンドで学園長や教員の長いお言葉を聞いて、ようやく朝会が終わろうとしていた。

「みんなー、今日は楽しんでいこうー。でも、怪我はないようにねー」

「では、これより、大洗女子学園と大洗男子学園の合同体育祭を開催します」

 生徒会長の2人が最後の挨拶を終えると生徒たちは一斉に散っていき、競技場へと向かう。

「じゃあ、後でな」

「がんばれよ」

「おう、そっちもな」

 凛祢や八尋たちも一斉に別れて、それぞれの会場へと向かう。

 練習はした。やるだっけやったから大丈夫だろう。

 学園指定のジャージ姿の凛祢に対してクラスで用意したと言うフード付きのTシャツにピンクのミニスカートのみほの姿が大洗女子学園のテニスコート内にあった。

「……」

 凛祢は無言のまま、まじまじとみほのほうを見つめるとみほは恥ずかしいのか頬を赤く染める。

「あ、あまり見ないでください。その、恥ずかしいので」

「あ、悪い……俺、ラケット取って来るわ」

「はい」

 凛祢は逃げるようにテントの元に向かい、テニスラケットを手に取る。

「お、凛祢。お前もテニスだったのか?」

「衛宮か。そうだけどそっちもか?」

「フッ、今年の優勝は俺たちだぜ。精々がんばれよ」

 不知火は手短に挨拶をすると、ラケットを手に去って行く。

 あいつもテニスだったのか。英子もテニスだって言ってたけど。

 凛祢もテニスラケットを手に戻る。

 数分後、凛祢とみほの試合が開始される。対戦相手は……

「あら、葛城君じゃない」

「凛祢……それに西住さんね」

 対戦相手は英子と秋月のチームだった。

「……」

「照月さん、秋月さんが相手なんですか?」

 最悪の対戦カードであることは言うまでもなかった。

 なぜって?英子の部活動はテニス。ただでさえ初心者の2人では勝つことは難しい。

 勝ち目はないだろうが、覚悟を決める。

 試合が始まれば凛祢もみほも必死に食らいついていった。

 数十分の奮闘の末、15-14で凛祢とみほチームの敗北。

「なかなかいい試合だったわ」

「はい、ありがとうございました……」

「次の試合も頑張れよ」

「私が負けるわけないでしょ!」

 秋月と英子はウインクをしてクラスの元へと歩いて行った。

「負けちゃいましたね」

「そうだな……」

 負けたことで肩を落とすみほを横目に凛祢もベンチに腰を下ろした。

「まあ、英子はテニス部だし」

「そ、そうですよね!でも少し悔しいです」

「そうだよな、でも楽しかったな」

「はい!」

 凛祢とみほは共に向き合い笑みを浮かべる。

 みほは気づいていないようだが、英子は手を抜いていた。

 わざと接戦を演出していたのだ、15-14という点数結果によって。

 やろうと思えばワンサイドゲーム……15-0と言う結果にもできただろうに。

「俺たちはもう試合はないし、八尋や塁たちの試合でも見に行かないか?」

「そうですね。私も沙織さんや優花里さんの試合も見たいですし」

 2人は意見が一致すると素早く、移動を開始する。

 

 

 まずは大洗女子学園・体育館。体育館ではバレーボールが行なわれていた。

 室内を2つに分け、2つの試合を同時進行している。

 現在行われている試合は凛祢とみほのクラスである男女普通Ⅰ科A組と辰巳、典子のいる男女普通Ⅰ科C組。

 コート内には八尋と翼、沙織、華。その他2名の姿がある。

「お、ちょうど八尋と翼の試合か」

「沙織さーん、華さーん頑張って!」

 凛祢とみほは壁際に腰を下ろす。隣のみほも声援を送る。

 今のところは八尋たちが優勢だった。

 すると隣にから独特の声援が響く。

「おい、見ろ!くー、やっぱりブルマはええなー。ブルマこそ健全なる男子高校生のロマン!更に言うなら華!いや!至宝の極致である!」

 あまりの騒々しさに横目で確認すると、その男は同じクラスの佐藤だった。隣には仲のいい伊藤の姿もある。

 あまり話したことはないが、顔と名前くらいは知ってる。

 てか、こいつは他に考えることはないのか?

 確かに沙織や華、典子はブルマだけど。

「おい、佐藤やめろって」

「だってほら!あの武部さんや五十鈴さんのブルマ姿を見ろよ!そんじょそこらの職人なんかじゃ真似できねぇ……圧倒的リアリティだぜ!?」

「いったい何と比べてるんだよ?」

 佐藤の訳のか分からない解説が始まると、伊藤もやれやれとため息をついた。

「いいからいいから!応援しようぜ!そーれ!頑張れ頑張れ!ブ・ル・マ!頑張れ頑張れブ・ル・マ!」

「なあ、マジでやめてくんね?お前サボってるんだからさ、応援くらいちゃんとしろよ」

「堅いこと言うなよ伊藤!俺の応援がどれほど彼女たちの尻に火をつけるか見てろ!そーれ、いけいけ!ブルマ!押せ押せ!ブルマ!」

 何と言われようと変な応援を辞めない佐藤。伊藤も流石に呆れていた。

 だ、駄目だこいつ、本格的に……。

 他人のふりしとこ……。

 凛祢が試合に再び試合に目を向ける。

 するとちょうど翼がボールを拾う。

 八尋と翼は守備中心のリベロって言ってたけどなかなか様になってるな。

 攻撃せずボールを拾うことに徹している。

「八尋と翼は攻撃してないな」

「それはリベロだからだろ?それにあいつらが全力でスパイク打ったら体格的にバレー部の磯部くらいしかとれないだろ」

 伊藤も説明するように教えると再び佐藤は質問を返した。

「リベロ?なんだそれ?」

「お前本当に知らないのか?」

「もちろん!バレーボールの時はブルマしか見てないからな!」

 佐藤は自信満々に胸を張った。

 威張ることでもないのに、よくはっきりと言えるものだ。

「あはは……変な人もいるんですね」

「あれは、頭がおかしいだけだ」

 笑いを溢すみほの隣で凛祢はため息をついた。

 すると、伊藤も面倒だなといいながら説明をしていく。

「リベロって地味だな。まあ、俺はブルマが拝めれば何でもいいけな!フレーフレーブルマ!レッツゴー!ブルマ!」

「うるせーぞ、佐藤!少し黙ってろ!」

 痺れを切らした八尋の声がコート内に響いていた。

 沙織がボールを上げると跳躍した華が綺麗にスパイクを決めた。

 その姿は戦車が砲弾を撃ち放つが如く鋭い一撃だった。

 八尋と翼は基本防御で華が攻めと言った感じか。戦車道や歩兵道の時と似てるな。

 そして試合は順調に進み十数分後、試合が終了した。

 結果は15-13でA組の敗北。最後はバレー部の典子とあけびの連携攻撃に翻弄されて負けてしまった。

 しかし、それでも周りからは多くの拍手が響いていた。

「……?あ、そういうことか」

 凛祢もようやく理解する。

 お互いベストを尽くして戦った。

 凛祢やみほも会場に響く、鳴り止まない拍手に負けないほどの惜しみない拍手を送った。

 チームのために戦った八尋や翼、沙織や華を称えるように。

「負けちゃいましたね」

「惜しかったなー、あと一歩だったのに」

 凛祢とみほはバレーの結果にまたも肩を落とした。

 結果は結果だ。仕方あるまい。

「くっそー悔しい」

「本当だよ!」

「あれ、凛祢さん?みほさんも……」

「2人とも来てたのか」

 凛祢やみほの存在に気づいた八尋や沙織も急ぎ足でやって来る。

 八尋と沙織は同時に凛祢とみほの肩に手を置いた。

「「そっち結果は!?」」

「えっと……」

「負けちゃいました……」

 凛祢が目を泳がせるとみほが答える。

 よっぽど悔しかったのか、八尋と沙織は凛祢やみほ以上に悔しそうに頭を抱える。

 なんで自分たちよりも悔しがっているのか分からないが。

「で、どうするよ?俺たちも凛祢たちも負けちまったってことは普通一科A組の総合優勝はなくなっちまった」

「楽しめたからいいだろ?」

「そうだよね、楽しむことが1番だよねー」

 八尋や沙織が笑みを浮かべる。

「優花里さんはバスケットボールでしたから、男子のほうの体育館行ってみましょうか?」

「いいかもな。塁もバスケだって言ってたし」

 華の提案に全員が賛成し、大洗男子学園体育館へと向かうこととなった。

 総合優勝はなくなってしまったが、やはりこういうイベントは楽しむべき。

 凛祢も急ぎ足に大洗男子学園の体育館へと向かう。

 

 

 数分ほどで大洗男子学園の体育館へと到着。凛祢たちが到着した頃、午前の部、最終試合が始まろうとしていた。

 バスケも大洗女子学園と同様にコートを2つに分けて試合を行っている。

 一方は普通Ⅱ科A組の3年生対普通Ⅰ科C組の1年生。もう一方は塁や漣のいる普通Ⅱ科B組対優花里や迅のいる普通Ⅱ科C組。

 開始早々、ボールはB組に渡った。B組が攻めるがC組も守りを固めている。

 お互いの攻防が続き、残り時間が半分となった頃、動いたのは迅だった。

「そろそろ、いこうか」

 迅は仲間からパスを受け取ると、ドリブルで切り込むのではなくスリーポイントを狙って放つ。

 ボールはゆっくりと空を舞った後、リバウンドする様子も見せず吸い込まれる様にゴールへと入った。

「ひょえー。スリーなんてよく決められんなー」

「迅はスリー外したことないらしいぞ」

「まじで!?嘘だろ!?」

 八尋は驚くようにコート内の迅へと視線を向ける。

 凛祢も、流石にあり得ないだろう、と思いコート内に視線を戻す。

 しかし、それから迅はボールを受け取ると必ずスリーポイントを放った。

 スリーポイントを放った回数は7回。そのすべてをしっかりと決めた。しかも、ただの1度もゴールにぶつかりリバウンドする様子を見せなかった。

 本当にボールがゴールに吸い込まれる様に入っていたのだ。

「おいおい、あいつバケモンかよ。スリーを何本決めれば気が済むんだよ?」

「言ったとおりだろ?迅はスリーを絶対に決めるんだよ」

 凛祢を含めた全員が驚いていた。

 まったくスリーを外さないって、それじゃあ大洗男子学園のバスケ部は相当強いんじゃないか?

 迅の奴、そのうち自軍コートの端から放って決めたりするんじゃ……流石にないよな、うん。

「ゆかりんのチームと塁くんのチームとの点差がどんどん縮まっていくよ!」

「おい!塁、漣頑張れよ!」

 沙織と八尋が声援を送る。

「くっそー。おい迅。もうスリー打つな!お前、バスケ部なんだから少しは手を抜けよ」

「ちゃんと手を抜いてるだろ?それに時間半分はなにもしなかった」

「はぁ?それでも残り半分ずっとスリーを打つ馬鹿が居るかよ!」

「ここにいるのだよ」

 不満そうに視線を向ける漣。しかし、迅は何食わぬ顔で試合を続けている。

 試合は圧倒的に塁たちのチームの不利になってきた。

 漣や他の生徒が点を取っても、迅のスリーのほうが入る点は大きい。

 すぐに逆転されていた。

 あーこれは塁たちの負けかな。

 試合も残り、数秒。パスを受け取った塁がシュートを決めると同時に試合終了のブザーが響いた。

「試合終了です。47対43で普通Ⅱ科C組の勝利です!」

「負けたー」

「迅、マジでお前死ねー!」

 アナウンスと一緒にスリーを打ち続けた迅に飛ぶヤジ。

 わからなくもないがB組にも漣が居て、半分以上は1人で点を取っていたわけだし、どっちもどっちって感じかな?

 まあ、今回は迅がスリーを得意としていたことが不運だったな。

「ゆかりん、おめでとー!」

「沙織殿?それに華殿や西住殿!それに凛祢殿まで」

「八尋殿ー、翼殿ー。負けてしまいましたー」

 凛祢たちが優花里や塁の元に行くと2人もこちらの存在に気づいた。

「凄かったね!」

「はい!迅殿のおかげです!あ、でも、なんかずるい感じもしますよね、部活動部員を入れるなんて」

「別に部活動部員を入れるのはいいんですが迅殿はやり過ぎですよ!スリーをあんなに決めて」

 やはり迅の存在が最も普通Ⅱ科C組の勝利に貢献していたようだ。

 まあ、学校側も了承の上でやってるわけだしルール違反ではないが。

 バレーの時も典子……一年生のチームで忍やあけびも出てたな。なんで部活動部員が自分の部活の競技に出ることを了承したんだろう?

 まあ、普通Ⅰ科A組にはバスケ部やバレー部は居ないがテニス部がいる。凛祢とみほチーム以外のチームは勝ち進んでいるから、もしかしたらテニスは優勝できるかもしれないな。

 気が付けば時計の針は12時半を指していた。

 もう昼か。見ているだけでも、あっという間に時間が経つものだな。

「さーて、そろそろ昼休みだけど……どうする?」

「そうだねー……ねぇ、今日は屋上で食べない?」

「いいですね」

「あの私たちも……」

「一緒してもいいでしょうか?」

 沙織の提案に華が賛成する。横にいた優花里、塁が気まずそうに声を出す。

「当たり前じゃん!」

「ここまで来て、一緒じゃないわけないだろ」

 沙織や八尋も笑顔で答える。

 2人の言う通り、ここまで来てのけ者にするのも後味が悪い。

 それにご飯は大勢で食べた方がおいしいってアルディーニの連中も言ってたしな。

「そういえば麻子ってどこ行ったか知らない?私、朝会の後、別れてから見てないんだよね」

「冷泉さん?そういえば俺たちも見てないな」

「私たちも見てないですね」

「……となると外の競技に出てるんじゃないか?」

 携帯端末を操作する沙織の声に八尋や優花里が答える。

 翼も少し考えた後に眼鏡をくいっと少し上げた。

「麻子が?ありえないよー」

 幼馴染の麻子の事をよく知っている沙織は信じられないのか、疑うように声を上げる。

 確かに、麻子の性格を考えれば、外の競技に出場することは考えにくい。精々、室内競技の補欠ぐらいにしかなっていないはず。

 そんな様子を見ながら凛祢も携帯端末を操作する。

 画面をスライドさせると通話開始を選択した。

 数回のコールの後通話相手の声が響いた。

「もしもし?」

「東藤か?」

「そうだ、当たり前だろ。俺の番号に電話してきて何言ってんだ?」

 通話に答える俊也はさっきまで試合に参加していたのか、荒い息づかいがかすかに聞こえた。

「これからみんなで昼飯食うけど、お前も一緒に食わないか?」

「あー、うん。わかった。で、集合場所は?」

「大洗男子学園の屋上だ」

「ふーん、そうかよ。少し遅れるかもしれないけど」

「わかった」

 凛祢が通話を終えて振り返ると、ちょうど沙織も通話を終えたのか携帯端末を耳から離した。

「東藤は少し遅れるけど来るって言ってたよ」

「麻子も少し遅れるって言ってたんだけど……」

「2人揃って珍しいな」

 2人とも遅れるというのは確かに珍しかった。

 俊也は野球だって言ってたけど、さっきまで試合に参加していたとしたら多分勝ち進んでいるのだろう。

「案外冷泉さんとトシが同じ競技に出てたりしてな。あははは」

「東藤は野球だぞ?流石にないだろ」

「うーん。案外あり得るかもしれないよ?俊也くんと麻子、仲良さそうだったし」

「なに?もしや付き合ってるのか!?あいつ、いつの間にリア充ルートに入った?」

 八尋が焦ったように頭を頭を抱える。

「とにかく行くぞ。昼休みは限られてるんだから」

「「了解です」」

「分かってるっつーの」

 翼が歩き始めると、塁や優花里、八尋も歩き出す。

「麻子大丈夫かな?」

「心配ですね。今日は暑いですし熱中症とかも心配です」

「お!」

 心配そうにしていた沙織と華、みほの隣で凛祢が携帯端末に視線を落とす。

 俊也から「麻子と一緒だから連れて行く」というチャットが返ってきた。

「やっぱり麻子さんは東藤といっしょみたいだ」

「よかったー。俊也君がいっしょなら安心だね!」

 凛祢の知らせに沙織は胸を撫でおろした。

 よっぽど心配だったのが見てわかる。

「そうですね」

「私たちも早くいきましょう!」

「うん」

 凛祢やみほたちは教室から弁当箱を持ち寄り、屋上に向かった。

 

 

 凛祢たち8人が屋上に集まり、昼食を広げる。

 今日は凛祢も大きな重箱に弁当を詰めてきた。

 別にイベントだからというわけではない。

「おー、流石凛祢!料理のできる男は違うねー!」

「悪いな凛祢。八尋が無理言って作らせちまって」

 興奮している八尋の隣で翼が静かに謝罪する。

 そう、翼の言う通り、この弁当は八尋の無理強いから仕方なく凛祢が作った弁当だった。

 その費用を出したのは八尋と翼なわけだが。

 正直、楽ではなかった。そもそも凛祢は弁当を作ったことがなかったからだ。

 朝食や夕食を作ることがあっても昼食は学食で食うのが当たり前だった。

 わざわざ、弁当の作り方を調べてまで作ってみたわけだが。

「いいよ、別に。この弁当の食材は八尋と翼たちが金出したんだし。味はまずくはないはず……」

「凛祢殿、これ一人で作ったんですか?」

「当たり前だろ。これ作ってたせいで今日は朝練ができなかったからな……。みほたちも遠慮せず食っていいからさ」

 凛祢は愚痴る様に言うが、すぐに話を戻すため、みほたちにも自作の弁当を進める。

「凄ーい」

「凛祢君って本当に料理上手だよねー」

「お味も、とてもおいしいです」

「ウチの母にも見せてあげたいです!」

 みほたちも驚きながら重箱を覗いている。

 早速、おかずに手を伸ばした華と優花里。

 沙織は携帯のカメラで撮影までしていた。

「凛祢君って女子力高いよねー。名前も女の子っぽいし本当は女の子だったりして」

「うっ……ゲホゲホ」

 沙織のそんな一言に凛祢はむせ返ってしまう。

「だ、大丈夫ですか?」

 みほが心配するように声を掛ける。

 八尋もお茶を差し出し、ゆっくりと口の中にお茶を運ぶ。

「沙織さん、凛祢の前で『名前が女っぽい』は禁句だぜ。こいつ、そう呼ばれるの嫌ってるから。確かに女の名前っぽいけどさ」

「え?そうなの?凛祢君、ごめんね!」

「でも、確かに男の名前としては珍しいですよね?」

 塁も疑問を持ってしまったのかそんな言葉を漏らした。

「いいんだよ。俺は凛祢って名前を気に入ってるんだから」

「まあ、そういうことだからさ」

 ようやく落ち着いた凛祢が卵焼きを口に運ぶと翼もおにぎりを口に運ぶ。

 すると、屋上から校内に戻るための階段に続く扉が開いた。

「悪い、遅くなった」

「遅くなった……」

 扉を開けて現れたのは東藤俊也と冷泉麻子だった。

「トシ、おせーぞ」

「麻子もだよ!」

 2人の名前を呼ぶ八尋と沙織。

 凛祢も視線を向ける。

 そして、2人は何事もなかったかのように輪の中に入り、食事を始める。

「これが凛祢の弁当か……卵焼きはもう少し塩を掛けた方がいいぞ。甘すぎる」

「え?いや、これくらいが普通だろ」

「運動してるんだぞ?塩分と水分は失われて行くんだから食事も少し塩分多めでいいんだよ」

「あ、ああ。そうなのか?わかったよ」

 俊也の説明に思わず返事をしてしまう。

 意外と説得力のある事を言ってくるんだよな、俊也って。

 本当にこんな奴が元不良だったなんて、誰が信じるだろう。

「ところでトシたちは勝ち進んでんのか?」

「ああ、次はもう準決勝だからな」

「なになに?俊也君は何に出場してるの?」

「……野球だよ」

 沙織や八尋の質問に俊也は答えながら食事を続ける。

「凛祢……」

 隣にいる麻子もいつもの様に眠そうな顔で不意に名前を呼んだ。

「どうした?」

「この弁当、うまいぞ」

「お、おう。お粗末様」

 麻子の急な誉め言葉に凛祢も少し戸惑いながら答えた。

 そして、昼休みの時間は過ぎていくのだった。




今回も読んでいただきありがとうございます。
今回は凛祢たちが戦場から少し離れた回でした。
学園の設定上、男女を混合しないと相当クラス多いと思いました。
普通Ⅰ科と普通Ⅱ科で別れてるってことで、クラス数倍になるというのは自己解釈ですが。もしかしたら間違ってるかも。
次回も体育祭の話になると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
意見、感想も募集中です。
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