ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~ 作:UNIMITES
基本はガルパンの本編+αという形になります
時は近未来……世界の各地にて、『学園艦』と呼ばれる大型船艦が幾つも作られた。
大きく世界に羽ばたく人材の育成と生徒の自主独立心を養うことを目的として建造された、全長七キロ以上にも及ぶ空母にもよく似た大型艦は、その甲板に学園を中心として都市が広がっている。
学園以外にも大小の住宅やホームセンター、コンビニなどが在り道路には自動車も走っている。他にも広大な自然や森林が形成されているなど陸上と変わらない環境が形成されている。
大洗学園艦。大洗の街並みをもとに作り出された学園艦である。
学園艦都市の中心部から南部に位置する道路。
「……」
早朝六時。まだ薄暗い空の下、一人の青年が大洗の街並みを駆けていた。紺色のジャージに身を包み、若い顔立ちの青年は一定の息づかいで道路を駆けていく。大洗の商店街を抜けて住宅街を少し行ったところ、古めかしい平屋の住宅の前でゆっくりと足を止めた。
少々荒くなった息を整えながら、正門をくぐり庭に向かう。広めの庭には石造りの倉庫があるだけ他には何もない。
倉庫の中からコンバットナイフを持って出ると一息ついていつもの日課を始める。
相手がいることを想定し、コンバットナイフを振る。ナイフによる対人戦訓練の一環としてナイフの素振りはいつも行う。
「毎日精が出るわね、凛祢」
不意に聞こえた声に振り向きナイフを胸元で構える。しかし彼女の姿を確認すると手を下ろし、リラックスするように棒立ちする。
「おはよう朱音。今日も早いな」
葛城朱音(かつらぎあかね)。血のつながりはないものの、葛城凛祢(かつらぎりんね)にとって育て親であり唯一の家族である。
「早いって、もう六時四十分よ?そろそろ登校する準備しなさいよ」
「わかった、先にシャワー浴びてくるから朝ご飯は少し待ってくれ」
朱音から渡されたタオルで汗を拭うと、着替えを持って風呂場へ向かう。
十分後、シャワーで汗を流し着替えを終えた凛祢が畳部屋に行くとコーヒーを飲んでいる朱音の姿があった。
電源のついたテレビには朝のニュースが映し出されている。
「凛祢もコーヒー飲むでしょ?」
「ああ、もらう。朝はトーストと目玉焼き、サラダでいいか」
そう言って凛祢は台所で朝ご飯の準備に取り掛かる。
食パンをトースターにセットし電源を入れた。次にフライパンをコンロに置き温まってきたところで卵をいれたその時、朱音が口を開いた。
「凛祢。私、明日からしばらく帰れなくなるから」
「え?またかよ。半月前に戻ってきたばかりだったじゃないか」
「しょうがないでしょ。忙しいんだから、今は戦車道連盟も歩兵道連盟も大事な時期なのよ。それに全国大会の準備もあるし」
朱里は歩兵道連盟の理事長を務めており、仕事で学園艦から離れることも少なくない。今回のように家を空けることもいつものことだった。
それに戦車道連盟と歩兵道連盟は色々親密な関係にある。戦車道連盟の理事長はたしか西住……。
「凛祢、ご飯まだ?」
「少し待てって、先にサラダ食べてていいから」
冷蔵庫から小皿に盛られた野菜サラダとを取り出し、朱里の待つテーブルに置いた。
目玉焼きとベーコンを皿に盛り付けると同時にトースターが焼けたことを合図する音を立てる。
「朱里、テーブルに運んで」
テーブルには朝ご飯であるトースト、目玉焼き、野菜サラダが並ぶ。
二人は手をあわせて同時に「いただきます」とつぶやく。
三十分ほどで食事と皿洗いを終えると、凛祢は自室に向かう。
大洗男子学園の制服に身を包み、充電していた携帯端末をポケットに入れる。左手の腕時計は七時半を指していた。
鞄を持ち、玄関で靴を履くと朱里に聞こえるよう大きめな声で「行ってくるからな、朱音!」と叫ぶ。
「いってらっしゃーい!」
すぐに部屋の奥から朱里の声が返ってきた。
鍵を閉めて学校に登校する。何かいいことがありそうなくらい空は晴れ渡っていた。
道路には自動車が走っており、歩道には登校する自分と同じ制服姿の男子や白のセーラー服に身を包む女子が歩いている。
大洗学園艦には二つの高校が存在する。一つは県立大洗女子学園、文字通りの女子高。もう一つは県立大洗男子学園、凛祢や学園艦の男子の通う男子校である。どちらの学園にも必修選択科目として古来の文道や武術の授業がある。
昔は共学だったらしいがある出来事から女子校と男子校に別れたと朱音から聞いた。別れたといっても二つの高校は学園祭も一緒に行う上に建物自体ががそれほど離れていない。何かのイベントがある度にも一緒に行っている。
通学路である県立大洗女子学園の正門前を通るといつものように風紀委員と書かれた腕章をつけたおかっぱ少女が立っていた。毎日校門の前にいるが遅刻でも取り締まっているのかもしれない。その姿を横目に見ながら、凛祢は大洗女子学園の前を通り過ぎようとする。
「おーい凛祢!」
「おはよう凛祢」
聞き覚えのある声に凛祢は足を止める。後ろから県立大洗男子学園の制服を着た生徒が二人走ってくる。
一人は茶髪に制服のネクタイをつけていない先導八尋(せんどうやひろ)。もう一人は高身長に眼鏡が印象的な坂上翼(さかがみつばさ)。
「おはよう。八尋、翼」
挨拶をした後、三人で通学路を歩いていく。男三人で毎日登校するなんて今どきの高校生としてどうかと思うのだが、残念なことに三人とも彼女いない歴17年の男子高校生だから仕方ないのだが。
「は~、毎日男だけで登校とかどうなのよお前ら?」
「八尋、彼女のいないお前が言える立場ではないだろ」
八尋の発言に凛祢が瞬時に言葉を返す。それを聞いて八尋は少々むっとした表情をしていた。
「は~、なんか楽に彼女のできる方法ねーかな」
「彼女作ることよりも勉強したらどうなんだ?八尋成績あまりよくないんだろ」
「いいんだよ勉強なんて、赤点取らなきゃどうにでもなる。それに高校生活は人生で一度きりだぞ、俺は後悔したくないからな」
翼が心配してやっているのに八尋は聞き耳持たずといった感じだった。
『高校生活は人生で一度きり』
確かに高校生活は人生で大切な時期かもしれない。勉学に励む者や部活に力を入れる者、高校生活には高校生の数だけ青春があるというものだ。
八尋にとってはそれが恋愛だったというだけのこと。翼にも卒業後に外国留学という目標があって勉学に励んでいる。
ならば葛城凛祢にとってそれはなんだ?今の自分にはわからない。目標があるわけでも好きな女がいるわけでもない、自分にはどんな青春生活があるのだろう……。
「んね…りん…おい、凛祢ぼーっとしてどうした?」
「あ、いやなんでもない。考え事してただけだ、さっさと行くぞ」
「どうしたんだ?あいつ」
速足で歩いていく凛祢の後を八尋と翼走っても追いかけていくのだった。
県立大洗男子学園に響くチャイムと共に勢いよく教室を出ていく数人の男子生徒たち。他にも弁当を持って教室を出ていく者もいる。
午前の授業を終え、昼休みになったのだ。
「凛祢ー、翼ー学食にいくぞー!」
「お前はいつでも元気だな」
「まあな、授業中は寝てるかスマホいじってるし」
平然と不真面目発言をする八尋とは裏腹に翼はまだ赤ペンで印などをノートにつけている。
翼の真面目さを見習うべきだろと思いながら教科書やノートをしまい学食へ行く準備をする。
「失礼する、葛城凛祢はいるか?」
自分の名を呼ぶ声にドアの方へと目を向ける。身長は自分たちとそれほど変わらない三人組。
しかし、制服のネクタイの色は赤……三年生だ。
「……!」
真ん中に立っていた男と目が合ってしまう。隣にいた八尋が「生徒会長と副会長、広報だ」と小声で耳打ちする。
ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。すぐに自分の机の前まで来た。
「葛城凛祢だな」
「少し話があるんだがいいかな?」
「……」
「ちょっと待てよ、なんだよ急に来て。生徒会がいじめか?」
生徒会の言葉に無言でいる凛祢の隣にいた八尋が口を開いた。
しかし右にいた男に睨まれ、八尋は少々ひるむ。翼もノート閉じて凛祢の隣に来た。
「そう闘争心をむきだしにしなくてもなにもしません。私は副会長の石田宗司(いしだそうじ)、彼は会長の相川瑛治(あいかわえいじ)、こっちの強そうなのが緑間雄二(みどりまゆうじ)です」
「そう、話がしたいだけ。ここではなんだし食堂に行かないかい?昼食まだだろう?」
左にいた宗司とが名乗る男が笑いながら紹介してくる。そして会長である瑛治という男も場所を変えるように促してきた。
別に喧嘩をする気もなさそうな感じだったので凛祢も話に応じることにした。
「わかりました、二人も一緒でも?」
「かまわないよ」
凛祢の発言に少々驚いていた八尋と翼だったが二人も来ることとなり六人で食堂に向かう。
廊下を歩いていると八尋と翼が小声で話しかける。
「本当に大丈夫なのか?」
「まあ、生徒会がいじめやカツアゲなんてしないとは思うがどうして凛祢に?」
「そんなこと俺が知るか。生徒会と親しくないんだから」
そもそも生徒会が自分に何の用だ?彼らは自分の名前を知っていた。
今まで話したこともないし大洗で目立ったこともしたことない。なのに一体なぜ?
結局考えても何もわからぬまま食堂に到着してしまった。
六人全員が日替わりランチを注文し席に着く。隣の翼だけは量が大盛であった。こう見えて翼って意外と大食いなんだよな。
食事を始めて、すぐに生徒会と凛祢たちの会話が始まる。
どうでもいい話から学園のイベント話、部活や生徒会の話。
本当にこの人たち何のために自分たちの元に来たんだろう?こんな話をするなら自分たちじゃなくてもいいはずなのに。
食事を終え、温かいコーヒーを飲み始めた時だった。
「ここからが本題なのだが……葛城凛祢、今年の必修選択科目は歩兵道を選択してほしいんだ」
「なっ……」
『歩兵道』その言葉を聞いて一瞬凛祢の表情は固まる。
なぜ、今ここでその言葉が出たのか凛祢にはわからなかった。
「歩兵道?なんだそれ?この学校にそんな選択科目ねーだろ」
「確かに、選択科目にあるのは古来の文道や武術などだろう?」
隣の八尋と翼が疑問を抱き、生徒会に質問を投げかける。
「今年から復活することになったんだ。よって今年から全学年の必修選択科目には例年までの科目以外に歩兵道が選択可能になった」
「主な詳細は六時限目の後の全校集会で説明を行う予定です」
広報の雄二と副会長の宗司が答える。
「というわけで選択科目は――」
「ちょっと待ってくれ、俺は歩兵道をやるなんて言ってないぞ」
「いいや、君は必ず歩兵道をやることになる」
英治は今までの表情とは違う鋭い目線を向ける。
「俺は――」
凛祢がしゃべるのを遮るように昼休み終了五分前を告げるチャイムが響く。
八尋と翼に急かされ凛祢も急ぎ食堂を出て教室に戻った。
結局、五時限目と六時限目は会長の言葉が引っ掛かり集中できなかった。
「凛祢大丈夫か?」
「生徒会の事は気にすることない、選択科目を選択するのは自由だ。だからこそ選択科目なんだ」
ため息をついたところを見られてしまったのか、授業後に八尋と翼が声をかけてくれた。
「ああ、大丈夫だ」
「別に歩兵道なんてやんなくてよくね?弓道とか選択しちまえばいいんだよ」
「その通りだ、こんな時は八尋の様に軽く考えればいいんじゃないか」
「失礼な、俺だってモテるように日々努力してんだよ!」
「はいはい、そうだな」
そんな二人のやり取りを見ていると教室のスピーカーから放送を告げる音が聞こえた。
「全校生徒に連絡する。これから全校集会を行うので生徒は体育館に集合せよ」
聞き覚えのある声が放送で流れる。雄二の声だ。
すぐに体育館は男子生徒と教員によって満たされる。
前方ステージの奥にはスクリーン。後方扉側には大きめのプロジェクターが用意されていた。
「さっきの話本気だったんだな」
「うちの生徒会って何考えてるかわからねーからな」
「同感だ」
去年の生徒会もそうだが、毎年生徒会には驚かされる。今回の騒動には自分も含まれているわけだが。
「みんな静かに。それでは、これから新必修選択科目『歩兵道』についてのオリエンテーションを行う」
全校生徒がそろったことを確認すると体育館の明かりが消灯され、スクリーンに映像が映し出される。
スクリーンには歩兵道入門とだけ書かれている。
すぐに宗司が説明文を読み上げると映像が流れていく。
――歩兵道。
それは伝統的な文化であり世界中で男子の嗜みとして受け継がれてきました。
礼儀を弁え、信義を重んじ漢らしい教養の高い立派な紳士を育成することを目指した武芸であります。
歩兵道を学ぶことは、男子としての道を極めることでもあります。
剣の様に強く鋭く、閃光の様に輝かしい。
そして銃弾のようにまっすぐで必殺命中。
歩兵道を学べば、必ずや良き夫、良き父、良き職業夫人になれることでしょう。
健康的で優しくたくましい貴方は多くの女性に好意を持って受け入れられるはずです。
さあ皆さんもぜひ歩兵道を学び、心身ともに健やかで輝ける男性になりましょう。
説明が終了するとともに来たれ男子という画面がスクリーンに映し出されたと思うと急に煙幕が発生し爆発音が体育館に響いた。
歩兵道の話を聞きて驚く者、すごいと憧れる者と感じ方は人それぞれであっただろう。
煙幕が晴れるとスクリーンには必修選択科目を記入する用の用紙が映し出されていた。
書道、弓道、忍道、長刀道、茶道、仙道など選択科目があるが、なにより目立っているのは用紙の半分を使っている歩兵道という文字である。
「すげー……」
「これはしびれるな……」
「え、え?」
隣にいる八尋や翼の顔を見ると他と同様、歩兵道の虜になっている。
前方のステージには生徒会三人が立っていた。
「実は数年後に戦車道&歩兵道の全国大会が日本で開催されることとなった。そのため文科省から全国の高校、大学に戦車道と歩兵道に力を入れるよう要請があったのだ」
「よって、うちの学校は歩兵道を大洗女子学園は戦車道を復活させることにした。そして、歩兵道を選択したものにはいろいろと特典を与えようと思う。副会長説明を」
「成績優秀者には食堂の食券百枚、遅刻見逃し二百日、大学進学、海外留学の援助さらに通常授業の三倍の単位を与えます!」
生徒会の説明を聞いて次々と生徒たちが顔を上げていく。
「というわけだ。みんなよろしく頼む」
説明を終えた生徒会がステージを降りていき全校集会は終了した。
生徒会の説明を聞いた八尋と翼は全校集会前とは異なる表情でこちらに目を向ける。
「俺やる!」
「なに?」
八尋の急な発言に言葉が出ない。そんな凛祢に追い打ちをかけるように続ける。
「だって最近の女子って強くて頼れる男が好きなんだろ?だったらこれしかないぜ!歩兵道やりゃモテモテなんだろ?」
「えっとそれは……」
「もしかして凛祢って歩兵道の経験者なんじゃねーの?だから生徒会も誘ってきたんじゃねーか、つーわけでやろうぜ凛祢!」
八尋は凛祢の話を聞かずにどんどん話を進めてしまう。
そんな凛祢をフォローするように翼が話す。
「よせよ、凛祢がやりたくねーなら強要するのは悪いだろ。代わりに俺も歩兵道やるからよ」
「なんですと?!」
翼もやるという発言に声にならない声が出てしまう。言葉使いも少しおかしいと自分でもわかった。
「おークソ真面目な翼が歩兵道かー」
「そりゃあ海外留学の援助してくれる上に単位三倍のおまけ付きならやるだろ。それにアクティブな歩兵道は俺たち向きだろ?」
「あったりめーよ」
二人の話を聞いているとよくわかる。あの説明だけを聞けば誰でも歩兵道を選択したくなるというものだ。
だが、あれには、歩兵道にはもっとたくさんのルールがある。それを聞いて二人は今のようなことを言っていられるのだろうか。
「はあ。わかった、やってやるよ歩兵道」
「まじか、凛祢?」
「いいのか?無理することないぞ」
凛祢は頭を抱えた後に出した答えに驚きを隠せない二人。
正直、二人がこの選択科目を選ぶとは思っていなかった。翼なんかは歩兵道よりも書道なんかを選択すると思っていたからだ。
「いいんだ、二人がやるなら付き合ってやるよ」
「よし!経験者いれば百人力だ!ぶっちぎりで成績トップだぜ!」
「色々教えてくれよな、凛祢」
その日の夜。凛祢は朱音のいない静かな家で一人横になっている。朱音は昼にヘリで歩兵道連盟の方に行ってしまった。
家にいるのは自分だけ、ふと思い立ったように自室の仏壇に目を向ける。小さな仏壇には一つの写真が立ててある。
写真には一人の女性が笑って写っている。周防鞠菜(すおうまりな)、朱音と同様に自分を育ててくれた女。軍人であった彼女の性格はガサツで料理も下手ですぐに無茶苦茶なことを言う、終いには酒癖が悪いときた。だが自分に歩兵道を、初めて全力で打ち込めることをさせてくれた。
「鞠菜、俺もう一度歩兵道やろうと思うんだ。初めて本気で打ち込んだことだからさ、今度は最後までやり遂げるよ」
きっと彼女も歩兵道をやることを許してくれるはずだ。
凛祢はすぐに布団に戻ると眠りについた。
歩兵道のオリエンテーションから一週間。いよいよ必修選択科目の授業が開始されることとなった。
歩兵道選択者はグラウンド集合ということで校庭には制服姿の男子生徒が集まっている。凛祢や八尋、翼の三人。その後ろに生徒が一人。バスケのユニフォーム姿のバスケ部が四人。噂の歴史好きの同級生が四人。一年生の生徒が六人。そして生徒会の三人。計二十一名。
「思ったより集まりませんでしたね」
「まあいいさ、ここに集ってくれた者たちでやるしかない。みんなよく集まったねこの歩兵道の授業は大洗女子学園の戦車道の授業と合同で行うこととなる、主な説明はあっちの校庭で話す。行くぞ!」
「きたー!合法的に女子校に入れる!」
「八尋、気持ち悪いからやめろ」
凛祢たちを含め集まった二十一人の男子生徒は駆け足で大洗女子学園の校庭に向かう。
校庭には二十一人の男子生徒、大洗女子学園の女子生徒二十一人が立っている。
こっちの生徒も大概だがあれはなんだ?体操着やバレーのユニフォーム?を着た生徒が四人いる。手足の露出が多く目のやり場に困る。
「やーよく来たね。男子校の生徒諸君、英治会長」
「久しぶりだな、杏会長」
英二と話しているのは角谷杏。女子校の生徒会長だ、中一のような小さい身長と赤髪のツインテールが特徴的。
合同イベントで何度か見たことはある。よく干し芋を食べていたな。
「全員で四十二人ですか。少々厳しいですね」
「厳しいのは人数だけではなく、戦車や武器も……」
杏の隣で生徒会と話す女子。広報の河嶋桃、副会長の小山柚子。
様子をうかがうにあんまりいい状況とは言えなそうだった。
「まあ、とりあえずはじめようか」
「これより戦車道と歩兵道の授業を行う」
桃の合図で全員が列になり並ぶ。
「あの、戦車はティーガーですか?それとも……」
「おい凛祢、ティーガーってなんだ?トラかなんかか?」
生徒会に質問を投げかける女子生徒。ティーガーという名前に反応する八尋。
「うーん、なんだったけ?男子たちーガレージの扉開けるの手伝って」
あまり真面目そうに見えない杏の言葉にいち早く動く八尋。
あいつはモテるために必死だな。やれやれと凛祢、翼も扉に手をかける。
錆びれたガレージの扉を男子生徒たちが協力し開く。
ガレージの奥には一台の戦車と地面に転がる粘土状の小さな塊。小さなテーブルには拳銃や予備弾倉などが置いてある。
「なにこれ」
「ありえない」
「死んでいる、まるで屍だ」
「わびさびでいいんではないでしょうか」
「これは鉄錆びではないか?」
中を覗いた生徒たちはその悲惨な光景に言葉が出ないようだった、ただ二人を除いて。
その内の一人である少女は錆びつき動きそうのない戦車に触れる。
「装甲も転輪も大丈夫そう」
小さな声でつぶやいた。彼女の顔には見覚えがある、まさかと思っていたが間違いない。
西住みほ。戦車道において最強と呼ばれる黒森峰女学院の元副隊長。前回の全国大会の後、転校したとは聞いたが大洗だったとは。
そしてもう一人、葛城凛祢はテーブルの拳銃を手に取る。
「少々手を加えたものだが、整備した後はこのままのようだし大丈夫そうだ」
「これならいけそう」「これならいける」
二人の声が重なり男女ともに生徒たちは驚きの顔を見せていた。凛祢とみほもお互いの顔を数秒見つめた後に目を逸らした。
ここから、大洗の……凛祢やみほたちの戦いが始まるのだった。
呼んでいただきありがとうございます。
初投稿なので感想などあったら言ってもらえると光栄です