ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです
いよいよプラウダ戦も終盤。
大洗連合は勝利できるのか?凜祢の先に道はあるのか?
では本編をどうぞ。



第19話 プラウダ&ファークト戦決着

 戦場ではそれぞれの戦いが続いていた。

 大洗連合のフラッグ車である八九式とM3、ルノーを追いかけるプラウダの戦車とファークトの駆動車。

 再びノンナがトリガーを引き、IS-2から放たれた砲弾はM3の右側面を掠めた。

「私たちはいいから、アヒルさん守ろう!」

「そうだね!桂里奈ちゃん!守って!」

「あいー!」

「礼!俺たちも盾になるぞ!」

「そうだ、何もせず逃げるのはもう卒業するぞ!」

「了解!」

 あゆみや紗季の言葉にM3は八九式の後方に回ると、続くようにヤマネコの搭乗するジープも後方に回る。

 

 

 そして凛祢は数メートル先に立つアルベルトを見つめていた。

 戦場に倒れる十数人の歩兵たち。葛城凛祢の奇襲作戦とワニさん&ヤマネコによる「くるりん作戦」で戦死させられた歩兵たちだ。

 自軍の歩兵であるアーサーとシャーロックも力なく倒れている。それはスナイパーエレンのデグチャレフによるもの。

 まさか対戦車武装を対人に向けて使うなんて……。

 対戦車ライフル『デグチャレフ』。単発式の大口径ライフルである。使用弾薬である14,5mm弾ならばⅣ号の装甲ですら貫通できる威力を持っている。アーサーの刀剣を正面からの狙撃で撃ち砕いたのだから間違いない。

 無残にもへし折られた刀剣武器『カリバーン』や刀身の破片が目に入る。

「……」

 凛祢は防弾加工外套を脱ぎ捨てるとホルスターからブローニング・ハイパワーを両手に引き抜く。

 非常にまずい状況だ。長距離で狙撃されてはこちらに防ぐ手立てはない。

 あの銃の欠点があるとすれば、その重量と弾数制限くらいだ。

 デグチャレフは普通の狙撃銃と違って、重い重量と長い全長によって取り回しが悪い。それゆえに狙撃地点の移動も容易ではない。

 そして弾数制限。デグチャレフほどの銃の弾薬はRPGなどと同様にルール上弾数に大きな制限がかかる。用意できる弾薬は精々7、8発程度のはず。

 よって、自分たちにできる事は有効射程外にまで逃げるか、残った弾薬をすべて撃ち尽くさせる……。

「アーサー!なっ、嘘だろ、剣が……」

 景綱は自分の目を疑った。目の前に倒れるアーサーの握る剣の刀身が折れていることを信じられなかった。

「駄目だ景綱。2人とも気を失ってる……おそらくさっきの狙撃だ」

「くそ!アーサーとシャーロックの敵討ちだ!」

「死んではないけどね」

 2人はワルサーMPを握り、敵に目を向ける。

「エレン。こっちはもういい。敵フラッグ車の狙撃に回れ」

「了解です」

 アルベルトは通信機で指示を出すとエレンは狙いを変更する。

「アルベルト!なに勝手なことしてるのよ!返事しなさい!」

「……」

 カチューシャが必死に通信を送るが返事は帰ってこない。

「あいつ通信切ったわね!アルベルトの馬鹿!」

 カチューシャは怒り燃えた視線を前方の八九式に向ける。

「ヤマネコ及びシラサギさん!何としてもフラッグ車を守ってくれ!敵には対戦車狙撃銃を装備している歩兵がいる!」

「「了解です!」」

 凛祢は他の歩兵を防衛に回し、ジルと景綱3人で戦場に立っていた。

「まさかこの人数をたった3人で相手する気か?」

「……」

「いいだろう……全軍、かかれ!」

「ウラーー!!」

 アルベルトが残存歩兵と共に凛祢たちに向かって行く。

 残る敵歩兵は、長距離狙撃に回る歩兵であるエレンも含めて24人。

「行くぞ、なんとしてもここを死守する!」

「「おう!」」

 凛祢たちとアルベルトの部隊は戦闘を開始した。

 

 

 翼と塁の偵察によって発見した敵フラッグ車の元へⅣ号とⅢ突が向かう。

「西住隊長、次はどうすんだ!?」

「ここからは時間との勝負です!敵よりも先にフラッグ車を討ちます!」

 みほの通信が大洗連合のインカムから響く。

 

 

 ノンナが迷いなく引き金を引くとIS-2から放たれた砲弾はM3の後方エンジン部に命中。

 更に、エレンの構えるデグチャレフから放たれた銃弾はヤマネコの搭乗するジープを撃ち抜き、横転させる。

 M3からは炎が上がり、白旗が上がった。

「ウサギチーム走行不能!」

「こちら、ヤマネコ分隊も狙撃でやられました!」

 梓と亮の通信が沙織の通信機から響く。

「みなさん無事ですか!?」

「「「大丈夫でーす」」」

「こっちもなんとか生きてまーす」

「いてー!頭打った!」

「ここはどこ?私は誰?」

「眼鏡われちゃったけど大丈夫でーす」

「よし、みんな戦死してますが生きてまーす」

 ウサギさんとヤマネコの声を聞いて翔は報告する。

『圧倒的矛盾』

 銀がメモを見せると翔が苦笑いしていた。

「「カモさん!シラサギさん!アヒルさんとオオワシをお願いします!」」

「了解!行くわよごもよ、ぱぞみ!風紀委員の腕の見せ所よ!」

「何としても死守しますよ!赤羽、黄場!」

「「はい」」「「勘弁しろよ」」

 緑子と青葉が強気に言い放つとそれぞれ最後の防衛に回る。

 

 

 

 ファークトの歩兵が銃を構えようとする瞬間、凛祢が煙幕手榴弾を起爆させる。

 凛祢たちは煙に紛れ前進していく。

「構うな!撃て!」

 軽機関銃『RPK軽機関銃』を構えたアルベルトの声と共にファークトの歩兵たちが持つアサルトライフル『AK-47』から銃弾が放たれる。

 煙幕の中でジルと景綱が手榴弾のピンを抜いて投擲する。

 手榴弾は煙幕抜けてファークトの歩兵の前方で誘爆した。

 衝撃波によって一瞬、ファークトの歩兵の動きが止まる。煙幕から飛び出した凛祢は両手に持つブローニング・ハイパワーの引き金を素早く引いた。

 続くようにジルと景綱も煙幕を抜け、ワルサーMPの引き金を引く。

 次々に放たれた銃弾はファークトの歩兵たちに命中する。しかし、敵の放った銃弾もジルと景綱に命中していた。

 互いに戦死判定は出ていないもののダメージが蓄積する。

「くっ……!」

 凛祢は直感的に動いて銃弾を回避しているが、それでも数発ずつ肩や足に被弾していた。

 それでも怯むことなく攻撃を続ける。

 近距離戦闘に切り替えてきた歩兵たちに凛祢もなんとか対応しているがそう長くはもたなかった。

 とうとうブローニングハイパワーのスライドがノックバックし弾切れを告げる。

「くそ!」

 凛祢は顔を歪ませているとアルベルトの持つRPK軽機関銃の銃弾が向かってくる。

 まだ予備弾倉は残っているがこの状況では……。

「葛城隊長!」

「ジル!?」

 ジルが盾になる様に前に現れる。

 銃弾がジルの背中に命中し、うめき声を上げて倒れた。

「ぐあー!」

 景綱も声を上げて雪原に沈む。

「っ……!」

 凛祢は右手に持つ拳銃をリロードするのではなく、投擲した。

 投擲されたブローニングハイパワーはファークトの歩兵の顔面に命中する。

「覇王流……」

「うえっ……」

 距離を詰めて腹部に烈風拳を放つ。敵歩兵もうめき声を上げる。

 瞬時にAK-47を奪い取ると撃つのではなく砲身を掴んだまま敵歩兵に投擲した。

 敵歩兵は投擲されたAK-47を難なく回避する。だが、隙をついて距離を詰めていた凛祢は敵歩兵の顔面を掴み、力任せに地面に叩きつけた。

 空弾倉を排出し、予備弾倉を装填し、銃を構えるがアルベルトの放った銃弾が凛祢の手からブローニング・ハイパワーを弾き飛ばした。

 すぐに立て直すために凛祢は対人戦闘に持ち込もうとする。

 アルベルトはすかさず引き金を引いた。

「……!」

 もう負けられないだ。みんなのために!

 凛祢は左右に動いて銃弾を回避する。

「なに!?」

 驚きを隠せないアルベルトに向けて蹴りを放つ。

 アルベルトもなんとか後ろに動き回避するが手に持っていたRPK軽機関銃は不覚にも蹴り飛ばされる。だが、左右のホルスターから引き抜いたナガンの引き金を引いた。

 危険を察知した凛祢は直感的に動き、銃弾を回避する。

「覇王流……」

 凛祢はアルベルトの顎に流星掌打を見舞う。

「この程度……!」

 気絶することなく踏みとどまるアルベルト。

 しかし、凛祢攻撃はいままでとは違った。

 続けて腹部に烈風拳を2発放つ。

「ぐっ!連続、技……だと?」

「うおおぉぉ!」

 最後に顔面を掴み地面に叩きつけた。

 凛祢は息を切らして、倒れるアルベルトを見つめた。

 覇王流『天山拳舞』。流星掌打と烈風拳の派生技であり、覇王流唯一の連撃技だ。

 特に一撃技ばかりの覇王流において、この技は多人数を相手にする戦闘においても有効である。

 敵歩兵の放った銃弾が凛祢に向けて飛んでくるが凛祢は素早く動き回避する。

 

 

 聖羅は凛祢の姿を見て、笑みを浮かべた。

 隣にいた朱音も驚きを隠せない顔をしている。

「「超人、直感……?」」

 2人の言葉が重なり、しほとまほは思わず聖羅に視線を向けた。

「……」

「聖羅?」

「あいつに眠る超人としての本能は俺たちが思っている以上に目覚めが早かったようだな」

「聖羅君それって……」

 朱音の言葉に聖羅は続けて口を開いた。

「まほも超人の名前くらいは聞いたことあるだろ?」

「うん」

 聖羅は再び視線をスクリーンに向ける。

「超人直感とは凛祢の持つ直感的な危機察知能力だ。あいつは自分への危機を直感的に察知できる」

「しかし、その程度で……銃弾を回避なんてこと、できるのか?」

 聖羅の言葉にまほは再び質問を投げかける。

「それができちゃったのよ、凛祢は……直感なら他にも持ってる人間はたくさんいるわ。でも、凛祢のそれは常人とは違う。あまりにも研ぎ澄まされていた」

「そう、第六感なんて呼ぶ奴もいたが俺たちは常人離れしたその直感を『超人直感』て呼んでいた。そして今凛祢は無意識に戦場で超人としての力を揮っている」

 聖羅の言葉を聞いてまほも視線をスクリーンに戻した。

「でも、どうして。せっかく戦場から離れていたのに、これじゃ」

 朱音は悲しそうな表情を浮かべていた。

 

 

 Ⅳ号とⅢ突、ヤブイヌ分隊搭乗するジープが敵フラッグ車のT-34/75とGAZ-47を追いかけていた。

「カチューシャ隊長、こちらフラッグ車!発見されちゃいました!そっちに合流してもいいですか!?てか、合流させてください!」

「単独で広い雪原に出たらいい的になるだけよ!」

「ほんの少しだけ時間を頂ければ必ず……仕留めます」

「こっちも後2回。ギリギリ有効射程で仕留められる」

 フラッグ車からの通信にカチューシャが答えるとノンナとエレンが報告を行う。

「そう言うわけだからちょこちょこ逃げ回って時間稼ぎして!頼れる同志の前に引きずり出してもいいんだから!」

 言われた通り、フラッグ車が逃走していると前方からフラッグ車を守る様にKV-2が顔を出した。

「きた!」

「ギガント!」

「頭でっかちだろ!」

「大丈夫!」

 KV-2がその大きな砲塔を動かし照準を合わせると砲弾を発砲する。だがⅣ号は華麗に回避した。

「停止!KV-2は次の装填まで時間があるから落ち着いて」

「はい……最も装甲の弱い所を狙って」

 みほの声に照準器を覗いていた華が狙いを絞る。

「八尋、俊也。一瞬だけ時間稼げ!」

「なに?どうしろってんだ!」

「適当に弾幕張ればいいんだよ!」

 翼の声に八尋と俊也はそれぞれの銃を構えて発砲する。

 放たれた銃弾がRPGを構えた歩兵の攻撃を封じる。

「……」

 スコープから敵砲兵の姿を捉えた翼は素早く引き金を引いた。

 銃弾は敵砲兵の右胸に命中し、戦死させた。

「撃て!」

 みほの合図にⅣ号とⅢ突の砲が火を噴いた。

 2発の砲弾はKV-2の正面装甲を貫通し、白旗が上がった。また、八尋と俊也の射撃によって随伴の敵歩兵を全て屠っていた。

 

 

 再びノンナとエレンが発砲。

 放たれた砲弾と銃弾はルノーとシラサギ分隊の搭乗するキューベルワーゲンに命中。

 2輌とも一撃でリタイアさせていた。

「「あと1つ」」

 ノンナとエレンは照準をフラッグ車である八九式に向けた。

「こちら、ワカサギ!撃墜されました!」

「こちらカモチーム、やられました。アヒルチーム、健闘を祈る!」

「はい!」

 青葉と緑子の通信にアヒルさんの4人が返事をする。

 

 

 再びインカムから響いた声に凛祢は表情を歪ませた。

 防衛線は崩壊。残る八九式がやられるのも時間の問題だ。

「うあぁぁ!」

 凛祢は奪ったAK-47を零距離で発砲し、また敵歩兵を屠る。

 次の歩兵が凛祢の脚部に銃弾を放つ。

 もろに受けた痛み凛祢は思わず、膝をついた。

 次の瞬間。顔へと与えられた鈍い痛みに凛祢は一瞬何が起きたのか分からなかった。

 だが、すぐに敵歩兵に殴られたことに気づく。

「くっ!」

 地面を転がったと同時にベルトに下げていた最後の手榴弾を左手で握る。

 ピンを抜いて手榴弾を投擲すると、続けて握っていたコンバットナイフを投擲した。

 ナイフは空中で手榴弾へと突き刺さり、瞬時に手榴弾が爆発する。

「よし!」

 敵歩兵を屠り、凛祢が次の歩兵の元へと向かおうとした時だった。

 2発の発砲音と共に銃弾が背中に命中し抉るような痛みが走る。

「な、に……?」

 耐えきれずその場に倒れこむ。

 必死に首を動かし、視線を向けると膝をついて銃を構えるアルベルトの姿があった。

「いいぞ、周防!こうでなくてはな。この感覚、歩兵同士の駆け引き、勝つか負けるかのギリギリの戦い!もっとお前の力を見せろ!」

 アルベルトは丸で戦いを楽しんでいるように笑みを浮かべていた。

「……時間がねぇってのに。さっきの組合いで気絶してないなんて本当にタフな奴だな」

 凛祢は苦しそうな表情を浮かべると再び立ち上がり、身構えた。

 

 

 2人の戦いを見て、観客席にいた蝶野亜美が口を開いた。

「葛城くん凄いわね……ファークトの歩兵を相手にして一歩も引かないなんて」

「そうか?私にはあいつが本来の自分の戦いをしているように見えるが?」

「嘘?確かに爆弾を使った戦術は工兵っぽいけど、あの対人戦闘能力はどう見ても工兵としての戦いじゃないでしょ」

 亜美は思わずそんな言葉を口にした。

「確かにそうだな。だが、本来超人と呼ばれていた周防凛祢の戦いはアレだったんだぞ?」

「そうなの?」

「ああ。そして、ここからは正真正銘一騎打ちだ」

「そうね。それにしても、あなたって葛城くんのことになると、口数が増えるわよね?」

「違う、馬鹿!私は葛城凛祢という男の姿を口にしたに過ぎない」

「馬鹿とは何よ!敦子は意外と年下が好きだったりしてね。流石に10代に手を出すのは不味いわよ」

 敦子の言葉に亜美は視線を向ける。

「本当に怒るぞ……亜美」

「じょ、冗談だって……ほら葛城くん写ってるわよ」

 亜美が指さすと2人は再びスクリーンへと視線を戻した。

 

 

 通信を聞いた沙織は車内で声を上げた。

「あとはアヒルさんとオオワシさんだけだよ!」

「同じ所をぐるぐる回っているだけ?だったら」

 ようやく敵の意図に気づいたみほは通信機に手を回す。

「くそ!」

「回る砲塔が欲しい!」

 Ⅲ突の車内でもエルヴィンとカエサルが車体への文句を口にしていた。

「カバさんチーム追撃を中止してください!」

 みほが勝つために指示を出した。

 

 

 雪を進む車内でオオワシ分隊は必死に銃を放つ。

「なんでもいい!どうせ戦車には対抗する手はない!なら、敵歩兵を1人でも多く道ずれにするぞ!」

「「はい!」」

 辰巳の指示に漣と迅も射撃を続ける。

 だが、次々に放たれるプラウダの戦車砲撃は少しずつ大洗のフラッグ車を追い込んでいく。

「もう駄目かも……うう」

「泣くな!涙はバレー部復活まで取っておけ!」

「そうだ、それに俺たち歩兵が守り抜いて見せる!全身全霊をかけて!」

「はい!」

 目に涙を浮かべるあけびに典子と辰巳が叫んだ。

「こんな砲撃、強豪校の殺人スパイクに比べたら全然よね!」

「そうね、でも今はここが私たちにとっての東京体育館あるいは代々木体育館だ!」

 妙子と忍も笑みを浮かべてそう言っていた。

「本当に大丈夫なんですか?」

「おい淳、それでも男か!典子たちを見習え!守ってやりたくなるだろ?」

「漣、君は一体何を言っているのだ?」

 漣の発言に迅は呆れていた。

「とにかく俺たちにできる事をするぞ!」

 辰巳はそう言うと百式軽機関銃の弾倉と予備弾倉を交換する。

 

 

 凛祢とアルベルトは戦場を駆けていた。

 アルベルトは両手に持つナガンの引き金を引くと7.62x38mmナガン弾が次々に放たれる。

 銃弾は凛祢に掠ることもなく前方、後方へと飛んで行く。

「……」

 しかし、アルベルトは笑みを浮かべる。

 銃弾は走行不能になっていたT34/74の装甲を跳ね返り凛祢の右足に命中した。

「なに!?」

 右足に走った激痛に態勢を崩す。だが、踏みとどまる。

「跳弾か……」

 ようやく先ほどの攻撃の正体に気づいた。

 忘れていた。リボルバー・アルベルトは拳銃を使っているときに自身本領を発揮する。それが「跳弾」だ。

 銃弾を壁や金属製の装甲板などによって反射させ軌道を変える。ライフルの弾などでも起きる現象だが、アルベルトは意図的に跳弾を起こし、銃弾の軌道を変えて奇襲する。一見、地味だが、これが相手にすれば非常に厄介だ。

 自分の直感は跳ね返る前ならば反応できるが跳弾になったら避けるのは極めて難しい。

 そのとき刺すような頭痛が走る。

 くそ、頭が回らない、体力の限界か……。

「……」

 凛祢はマガジンケースから取り出した予備弾倉を強く握る。

「もう少しだけ持ってくれよ」

 視線を戻すと予備弾倉を投擲し、アルベルト目指して走り出す。

 冷静に狙いを定めたアルベルトはナガンの引き金を2回引いた。

 放たれた銃弾が予備弾倉を空中で撃ち抜き予備弾倉内の銃弾がバラバラと空を舞う。

 これで6発目、さっきの射撃と合わせて合計12発。2丁とも弾切れのはず!

 あいつに勝つには今しかない!

「武器を失えばCQC戦闘に持ち込む。お前ならば必ずそうすると思っていた!」

「!」

 アルベルトは右足で力いっぱい蹴りを放つ。

 凛祢も右手で拳を放つ。

「「ぐっ!」」

 凛祢の拳はアルベルトの蹴りとぶつかり合う。

「覇王鉄槌……震電返し!」

 反撃するようにアルベルトの腹部に力いっぱいの掌打を放つ。

「がは……」

 悲痛に思わず声を上げた。だが、アルベルトから戦死判定のアラームは鳴っていない。

 辛そうな顔をしていながらもアルベルトは立ち尽くしている。

「嘘、だろ……」

 凛祢がそう呟くと体が限界を迎え、膝をついた。

「呆気ない幕引きだったな……だが、周防。お前は確かに超人であり強敵であった」

「みほ、ごめん……」

 アルベルトはリロードを終えたナガンの引き金を数回引いた。

 力なく崩れ地面に倒れた凛祢の制服からアラームが響いていた。

「アルベルト隊長!やりましたね」

「いや、本当にギリギリだった。始めから一騎打ちで戦っていたら負けていたのは俺だ」

「そうですか?結局超人が居たとしても我々の勝利は揺るぎなかったと思いますが」

 駆け寄ってきたファークトの歩兵は凛祢を見つめて首を傾げていた。

「それに、よく見てみろ。そいつ戦死じゃなくて気絶によるリタイアだ」

「え?」

 アルベルトの言葉にファークトの歩兵は凛祢の様子を調べると確かに気絶していることに気づいた。

「まさか、気絶する瞬間まで戦い続けていたってことですか?」

「恐ろしい執念だよな。勝利のためにたった1人で俺たちに挑んできたのだから。カチューシャたちを追いかけるぞ、後が怖いからな」

「了解です」

 再び凛祢に視線を向けたアルベルトは引き金部に指を通し回転させていたナガンをホルスターに差し込むと、大洗のフラッグ車とカチューシャたちの車両が向かった方に歩き出す。

 

 

 観客席で2人の激闘を見ていた照月玄十郎と麗子は静かにその様子を見つめていた。

「よき戦いであった」

「凛祢くん凄かったですね」

「震電返しは未完成のようだが、これはワシも重い腰を上げる時が来たようだ」

 玄十郎は寒さに体を震わせ、そう呟いた。

 

 

 一方、追撃を中止したⅢ突とヤブイヌ分隊はみほの指示で敵の次に通る地点に先回りしていた。

 そしてⅣ号は敵フラッグ車の追撃を続けている。さきほど撃破したKV-2が現れる、敵フラッグ車はやはり同じ場所を走り回っていた。

「あれ?Ⅳ号しか追ってこないぞ?」

「変更したんじゃね?」

 敵フラッグ車内で車長と操縦手がそんな会話をする。 

 

 

 ついに八九式に向けてデグチャレフの銃弾が放たれる。

「きた!淳、車体を八九式の後方に回せ!」

「了解!」

 九五式小型乗用車が八九式の後方に回るとデグチャレフの銃弾が後方から撃ち抜いた。

 更にカチューシャが搭乗しているT-34/75が放った砲弾が九五式を吹っ飛ばしていた。

「辰巳君!オオワシのみんな!」

 典子は通信機に向けて叫ぶが返事はなかった。

「「「そんな……」」」

 アヒルさんチームは弱気な声を漏らす。

「オオワシのみんなの頑張りを無駄にはしないよ!」

「「「はい!」」」

 典子の声が再びアヒルさんチームを奮い立たせる。

 次々に放たれる砲弾を回避し前進を続ける。

 

 

「近づいてきます!」

「距離、あと100メートル!よし、右折した!」

 高台でスコープを覗く翼と単眼鏡を覗く塁が報告する。

 敵フラッグ車のT-34/75は予想通りの道を走行していく。

「次の角を右折すれば!」

「わかりましたありがとうございます。華さん、機銃で誘い込めますか?」

「やってみます」

 みほの指示に華は機銃を撃つ。

 すると放たれた銃弾は雪原を抉り、敵フラッグ車は右へと方向転換する。

「入りましたH43地点まで50メートル!」

「これがラストシューティングだ!」

 高台で見つめる塁と翼が叫ぶ。

「打ち方用意!」

 みほの声にⅢ突内の左衛門座が照準器を覗き敵フラッグ車に狙いを定める。

 そして、同じくフラッグ車を狙うIS-2内のノンナが狙いを定めていた。

 ほぼ同時に、発砲音が戦場に響き渡る。

 車高の低さを生かして雪の下に隠れていたⅢ突は正面からフラッグ車を撃ち抜いた。

 そしてIS-2が放った砲弾も前方の八九式を撃ち抜く。

「……」

 お互いのフラッグ車に放たれた砲撃に、会場は沈黙に包まれていた。

 雪原を走っていたアルベルトやファークトの歩兵も足を止めて、携帯端末を覗く。

 黒い煙の中からところどころボロボロになった大洗のフラッグ車、八九式がゆっくりと現れる。

 車体からは白旗は上がっていない。現在も走行不能にならず生存していることになる。

 そしてⅢ突がほぼ零距離で撃ち抜いたプラウダのフラッグ車、T-34/75からは白旗が上がった。走行不能ということになる。

 スクリーンに映っていた大洗連合の名前が大きく映し出された。すぐにWINという文字も映し出されるとアナウンスが響いた。

「試合終了!大洗連合の勝利!」

「よっしゃー!」

「なんとか勝てたか」

「「「やったー!」」」

 八尋と俊也、エルヴィンとカエサル、おりょうの5人もスコップを手に喜びの声を上げた。

「うん!」

「やってくれたな、あいつら」

「「やったー!」」

「よかったー」

「肝が冷えましたね」

 生徒会役員たちも歓喜の声を上げてガッツポーズをしていた。

「よかった……」

「ふーよかったよかった」

「勝ったんだ。これでまだ戦車道続けられるんだ」

 オオカミチームのメンバーも笑みを浮かべていた。

「ばんざーい!」

 カモさんとウサギさん、シラサギとヤマネコのメンバーたちも連盟に回収されたところで万歳して勝利を祝っていた。

 同じように回収されたワニさんのジルと景綱も喜んでいる。

「塁、俺たちも行くぞ!」

「はい!僕たち勝ったんですよね!」

「そうだ、勝ったんだ!」

 翼と塁もⅣ号の元へと足を進める。

「やりましたね!」

「すごーい!」

 車外に出ていた沙織や華も勝利したことを喜んでいる。

「凛祢さん、勝ちました!私たち勝ったんです!」

 みほも凛祢に向けて通信を送るが返事がない。

「凛祢さん?凛祢さん!?」

「どうした西住さん?」

 みほの様子に麻子が問い掛ける。

「凛祢さんの応答がないんです」

「なに?」

「それ本当!?」

「本当ですか!?」

 みほの言葉に沙織や華も驚きの顔を見せていた。

 

 

 まだ状況を呑み込めていないのかカチューシャは開いた口が塞がらなかった。

 ようやく追いついたアルベルトはその様子を見て、やれやれと首を横に振った。

「おい、同志カチューシャ」

「う、うう。ある、べると……」

「おいおい、泣くなよ」

 アルベルトは戦車に上るとカチューシャにハンカチを渡す。

「泣いてないもん!そもそもあなたが勝手なしなければ!」

「それはすまなかったと思っている。正直、試合に負けるとは思っていなかった。俺は敗戦の責任取らなくちゃならないな」

「……それで超人には勝ったの?」

 アルベルトが申し訳なさそうに空を見上げるとカチューシャがそんな言葉をかけた。

「ああ、勝ったさ。勝負に勝って試合に負けたとは正にこのことだな」

「ならいい……帰ったら歩兵の皆も含めてお仕置きくらいで許してあげる」

「それはどうも……カチューシャは優しいな」

 アルベルトがカチューシャの頭を撫でるとカチューシャは不機嫌そうだがやめるようには言わなかった。

「……負けたな」

「はい。私が正確に敵フラッグを狙っていたら」

「自分を責めるなよ、それに今回はアルベルトの独断が過ぎたからな。ま、止めなかった俺にも非はあるが」

 エレンとノンナはお互いに反省を言い合う。

 

 

 

 必死にみほと沙織が通信機に呼びかける。

「凛祢さん!」

「凛祢くん!」

 しかし、通信機から凛祢の声が響くことはない。

「なんで!どうして!」

「ん?どうしたどうした?」

 八尋たちもⅣ号に合流してみほはみんなに状況を伝える。

「おい、ちょっとまずくねーか?」

「この天気で戦場のど真ん中に放置されてたらやばいだろ」

 八尋や翼は最悪の状況を想像していた。

「……!」

 みほも顔を青ざめる。

「よう大洗連合と西住みほ」

「え?」

 声の方を振り向くとGAZ-47の車内からカチューシャとノンナ、アルベルトとエレンが現れる。アルベルトとエレンが肩を貸しながら凛祢を支えていた。

「凛祢さん!」

「「「凛祢!」」」

「凛祢殿!」

 凛祢の姿を確認しみほや英子、大洗連合は駆け寄る。

「安心しろ、気を失ってるだけだ。じきに目を覚ます」

「凛祢さん……」

「凛祢……」

 気絶している凛祢の姿を確認し、みほと英子は安心したようにその体を支えた。

「やろう!凛祢に何しやがった!」

「ことによっては乱闘も避けられないぞ」

 八尋と俊也は一歩踏み出す。

「気絶してたから回収してここまで連れてきたんだろうが」

「妙な誤解はやめてもらいたい」

 アルベルトとエレンは両手を上げて答えを伝える。

「2人の言い分は本当よ、私が保証する」

 カチューシャは手を腰に当て、胸を張って言い放つ。

「まあ戻ってきたんだし」

「そう言うことにしておきましょう」

 不知火と宗司は八尋と俊也をなだめる。

「それにしてもせっかく包囲の一部を薄くして、そこに引き付けてぶっ叩く作戦だったのに」

「包囲網の正面を突破してくるなんてすごいなお前たちは」

「私たちも驚いてます。あのまま一気に攻撃されてたら負けてたかも」

 カチューシャとアルベルトの言葉にみほは先ほどの戦いの事を思い出していた。

「それはどうかしら。あなたたちなら……とにかくあなたたちなかなかのもんよ!悔しくなんてないんだから!」

「同志カチューシャの言葉を訳すと大洗連合はなかなか強い。今回負けてとても悔しいけど次は負けない、とことです」

「ノンナ!」

 カチューシャの声にノンナはそれ以上何も言わなかった。

「ん!」

 カチューシャが手を差し出す。

「ふふ」

 みほも笑みを浮かべて握手に応じた。

 そして気絶している凛祢の手を掴み握手を交わす。

 再びみほに視線を向ける。

「決勝戦、見に行くわ。準決勝で負けたら許さないんだから!」

「確かに、俺たちに勝ったのだから優勝してもらわねば困るな、西住みほさん」

「はい!」

 2人の隊長の言葉にみほは返事をした。

 

 

 観客席には朱音の姿はすでになかった。

「勝ったのは相手が油断したからよ」

「いえ、実力はあります」

「実力?」

「まだわからねーのか?西住妹と凛祢たちは俺たちとは全く違う強さを持っている」

 まほに続くように聖羅も言葉を続ける。

「みほと葛城凛祢はマニュアルに囚われず臨機応変に対処する力があります。みほの判断と」

「凛祢の仲間を導く力と」

「「心を一つにして戦ったチームの勝利」」

「あんなものは邪道。そんなもので次も勝てるかどうか。たとえ決勝戦で当たることになっても王者の力を見せてやりなさい」

 2人の言葉を聞いてもしほの答えは変わらなかった。

「西住流の名にかけて、必ず叩き潰します」

「……やるさ。あいつとは決着付けなきゃならねーからな。俺たちが叩き潰す」

 まほも鋭い視線をスクリーンに映るみほと凛祢に向けた。

 

 

 重い瞼を開き、目を覚ますと最初に目に入ったのは白いタイルの天井だった。

「……」

 左右に目を向けると右にはすぐ窓がある。空には既に陽が昇り青空が眩しかった。左には清潔そうな白いベッドが並んでいる。

「びょう、院か?」

 室内の様子からそんな言葉を口にして体をゆっくりと起こす。その時、腹部に痛みを感じた。

「うっ!ってー。アルベルトから受けた銃弾の痛みが残っているのか?」

 腹部を抑えながらも、ふと視線を向けるとデジタル時計の文字は7時30分を現していた。

「日が昇るまで眠ってたってことか?試合はどうなったんだ?」

 朝刊を確かめようと1階の売店へと向かう。

 見慣れていない売店から朝刊を探し出し、目を通す。

「戦車道と歩兵道の記事は……お、あった」

 朝刊には『大洗連合、前年優勝校に勝利。準決勝進出!』との文字が目に入った。

 記事を読めば確かに、Ⅲ突とⅣ号による追撃によって勝利したと記事には書かれている。

「そうか。勝ったのか」

 安心して思わず深く息を吐いた。

 すると肩を叩かれ振り向く。

 そこには見覚えのある男の顔があった。

 同じ大洗男子学園の生徒、アーサー・ペンドラゴンである。

「葛城隊長もこの病院にいたんですね」

「アーサーこそ、体は大丈夫なのか?」

 凛祢はそう口にして昨日の戦いを思い出す。

 アーサーとシャーロックはデグチャレフの射撃をもろに受けていた。

「うーん。僕は、ね。でもシャーロックのほうはそうとう効いたみたいで」

 アーサーは頬を掻いて口籠ったように続ける。

「肋骨骨折したみたいなんだ」

「なにー!?」

 アーサーとシャーロックの病室に凛祢の声が響く。

 ベッドに横たわるシャーロックは相変わらずパイプ煙草のレプリカを銜えていた。

「じゃあ、次の試合は」

「準決勝はどう頑張っても無理だって」

「マジかよ……大洗はただでさえ人手不足だってのに」

 凛祢は頭を抱える。

 やはり、デグチャレフのような対戦車ライフルを対人相手に使用したのは歴代の全国大会でも今回が初めてだったようだ。

 いくら特製制服でも14,5㎜弾の直撃なんて想定していなかったのだろう。むしろ、これくらいで済んだのは奇跡なのかもしれない。

「すまない。私がもっと注意して行動していれば」

「いや、シャーロックは悪くないさ。俺の指示が悪かったんだ」

「といっても僕だって剣を折られてしまったからね。正直、次の試合に参加できたところで満足に戦えないだろう」

 アーサーとシャーロックはお互いにため息をついていた。

「そっか。じゃあ俺はそろそろ行くよ」

「葛城隊長」

 凛祢が病室を出て行こうと扉に手を駆けた時、シャーロックの声が響く。

「次の準決勝は無理ですが、決勝戦には間に合わせます。だから」

「ああ、絶対勝ってみんなで優勝しよう」

 凛祢はそう言い残し、病室を後にした。

 シャーロックの件は、驚いたが考えてみればアーサーだって剣を盾にしたとはいえ直撃を受けたのだから無理はさせられない。

 やはり、自分が頑張るしかないのか……。

 そういえば、次の対戦相手ってどこの学校なんだ?

 凛祢はようやく自分の病室に到着し、扉を開いた。

 ベッドに座り、購入したスポーツドリンクを一口飲んだ。

「あー、学校行きてー」

 横になり再び天井を見上げるとそんな言葉を口にしていた。

「あ、凛祢さん!」

 名前を呼ばれ視線を向けると制服姿のみほがいた。

 時間的にも登校前であることが分かった。

「みほ」

「よかった、目を覚ましたんですね。昨日の試合からずっと眠っていたから私心配で……」

「心配かけて悪い。でも、もう大丈夫だ。ありがとうみほ。試合のほうも」

 凛祢はみほを見て感謝の言葉を述べた。

「いえ、みんなが、凛祢さんが居てくれたから勝てたんです。私は凛祢さんに助けてもらってばかりです。今回だって」

「そうか、そう言ってもらえると俺も歩兵道やっていてよかったと思う」

「凛祢さん。私――」

 みほの言葉をそこで止まった。

「西住さん、ちょっといいかしら」

「げっ!」

「葛城、朱音さん……」

 凛祢とみほの目の前に現れたのは葛城朱音だった。

「私と凛祢の2人で話をさせてほしいの」

「……」

 凛祢は目の前にいる朱音の姿に思わず顔が引きつっていた。

「……いや、みほにはいてほしい」

「凜祢さんいいんですか?」

「いいんだ。どうせ大洗のみんなにだって伝える予定だったんだろ?」

 朱音は仕方なくみほの立ち合いの下、話を切り出した。

「どうして歩兵道を始めたの?この学園には歩兵道なんてなかったはずでしょ?」

「今年から復活したんだよ。そういうのはそっちで把握してるんじゃないのかよ」

 凛祢は目を逸らして口だけを動かす。

「凛祢、今すぐ歩兵道を辞めなさい」

「嫌だ」

 朱音の言葉に凛祢は強く言い放った。

「凛祢!」

「俺は決めたんだ!もう逃げない。自分の、この思いに嘘をつかないって!」

 凛祢は拳を握り、言葉を述べる。

「凛祢、このまま歩兵道を続ければ、必ず昔と同じ道を歩むことになるわ」

 朱音の言葉に凛祢は奥歯を噛み締めた。

 わかっているさ、そんなこと。戦場に戻ってきたときから感じていた。

 でも、今は違う。

「もう昔とは違う、本当に大事なものと自分を認めてくれる人間ができた」

 凛祢はみほを見つめた。

 かつて、鞠菜以外に自分にとって大事なものはなかった。今は確かに傍にいる、そんな存在が。

「朱音さん……この全国大会の結果で、凛祢さんと私の答えを証明します!だからそれまで待ってほしいんです!」

「西住さんまで何を!」

 みほの言葉に朱音も驚くが2人は言葉を続けた。

「頼む朱音!全国大会で朱音が歩兵道を続けるべきでないと思ったのなら俺は転校でもなんでもするから」

「私からもお願いします!」

 凛祢は必死に言葉を述べて頭を下げる。みほも同じように頭を下げた。

「……本気なの、凛祢?」

「ああ」

「こんなのは、最後のだからね。凛祢」

 朱音は鋭い視線を向けた。

「ありがとう、朱音」

「ありがとうございます!」

 2人は再び頭を下げると朱音は病室を後にした。

「みほ、ありがとう。君が居なければ俺は……」

「いいんです、私は凛祢さんが居てくれたからもう一度戦車道を始められたんです」

 みほは凜祢を見つめ優しく微笑んだ。

 思わず顔が熱くなる。女の子を見てこんな風に感じるのはなぜだろう。

 いや、分かってる。自分はみほのことが……。

 だからせめてここを去ることになっても、彼女が大好きなこの学園だけは守って見せる。

「みほ、今日は学校を休んでもらっていいか?」

「え?」

「ちょっと付き合ってほしい」

 凛祢は朱音の置いて行った着替えの紙袋に視線を向けた。

 大洗の制服に着替え、凛祢とみほは病院を後にした。

 そのまま2人が向かったのは大洗女子学園校庭に建てられたガレージだった。

「あの凜祢さん?」

「みほは気にならないのか?超人について」

「それは……凛祢さんにとっては辛い過去なんじゃないですか?」

「あれだけ超人のことが知れ渡っているのならもう隠すつもりはないよ。それにみほにはちゃんと知っておいてほしい。凜祢という男の事を」

 凛祢はⅣ号に背中を預けると視線をみほに向ける。

「はい、わかりました。凛祢さんが話してくれるなら」

「ああ、かつて超人と呼ばれた1人の男の、そこに至るまでの話をしよう」

 凛祢は思い出すように語り始めた。




激戦を繰り広げながらも勝利を飾った大洗連合。
凜祢が戦うことを嫌う朱音の存在。
明かされる凛祢の過去とは!?
次回からは3,4話ほど使ってキャラ紹介編をやります!
といってもキャラ設定などですが。
それが終わったら凛祢の過去編『リンカーネーションメモリアル編』を数話ほどつかってやります。
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