ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです。
投稿が少し遅れてしまってすみません。
最近忙しったので遅れてしまいました
今回は凛祢の記録の中編です。



第21話 リンカーネーションメモリアル・中編

~超人が生まれた日~

 

 念願の学校生活を送ることとなった凛祢は荷物を手に黒鉄中学校の校内、体育館で話を聞いていた。

 荷物と言っても必要最低限のもの以外は山梨の実家に置いてきた凛祢には、やはり鞄一つ程度しか荷物はなかった。

 他の荷物はほとんど段ボールで寮に送られているし、必要なものなら買えばいいと鞠菜は言っていたっけ。

 まだ中学生になったばかりの凛祢に自分のキャッシュカードを渡すような女だ。本当にムチャクチャな女だよ。

「……」

 校長の長い話を最後まで聞き終えると、生徒たちは一斉にそれぞれの寮へ向かうため散っていく。

 凛祢も少し遅れて校内から出ると、空を見上げた。

「本当に、学校に通うことになったんだよな……腹減ったな。寮に荷物置いて、どっかで飯でも食うか」

 時間は午後1時を回っている。

 昼のピークは過ぎているから、手短な店ならどこでも入れるだろう。

 凛祢は持っていた書類に視線を落とす。

 書類には注意事項や学校についての説明、入寮する学生寮の名前が書かれていた。

 地図を確認して早足に寮へと向かう。

 

 

 数十分ほどで学生寮に到着した凛祢は少し驚きの表情を浮かべていた。

 書類に載っていた写真とは似ても似つかぬ古めかしい建物がそこには建っている。

「まあいいか」

 気にしている時間も惜しかった凛祢は気にせず建物内に入る。

 寮母に書類を渡し、部屋の鍵を受け取ると、すぐに部屋へと向かった。

 部屋番は404号室。

 なんとも不吉な部屋番だな。そんな事を考えながら鍵を差し込み、扉を開ける。

 室内は思ったよりも広かった。

 だが、1つのことに気が付く。机も棚も、ロッカーも室内には2つ存在した。そして極めつけは2段ベッド。

「あー2人部屋か。相方は……まだ来てないのか?」

 納得したように呟く。

 凛祢も少し遅れてきたが、それよりも遅い者がいるとは思わなかった。

 部屋の鍵と一緒についていた小さい鍵でロッカーの鍵を開けるとロッカー内には毛布と枕が収納されている。

 もう1度、2段ベッドに視線を向ける。

「上でいいか……」

 枕と毛布を上のベッドに置く。鞄をロッカーに押し込み、鍵をかけた。

 段ボールに視線を向けて隅に運び財布だけを手に制服姿のまま部屋を後にした。

 

 

 学園艦は、とても広い。というか、乗る前からその大きさには驚かされていた。

 空母みたいな形状の学園艦の上には街が広がっている。

 嘘みたいだろう?だが、そんな嘘みたいな場所に自分はいた。

 街のことを知っておこうと商店街の方へと足を運ぶ。

 当てもなく商店街を歩いていると――

「君、可愛いな。新入生だよね?」

「俺らと遊ぼうぜ!」

 絵に描いたようなチャラい男2人が制服に身を包む背の低い女子生徒に絡んでいた。

 新入生と呼んでいるあたり絡まれている方は自分と同じ1年生なのだろう。

 足を止めて、視線を向ける。

 まったく中学生で制服を着崩している上に耳にピアスまでつけて。

 思わず呆れてしまう。

「ん?何見てんだ、お前!?」

 凛祢の存在に気づいた男は振り向いて歩み寄る。

 お互いに顔を見合わせた。

「なんか文句あるか!?」

「何も言ってねーだろ……」

 男の言葉に思わず返答する。

 しかし、男は不機嫌そうに凛祢の顔を覗く。

「ならどっかいけ!」

「ああ、わかったよ」

 凛祢はそう言葉を残して、その場を去ろうとするが――

「ちょっと!助けてよ!」

「は?」

 女子生徒の声に、振り返るとこちらをじっと見つめていたことに気づく。

「……はぁ。なあ、やめてやってくれない?嫌がってるだろ?」

 ため息をついて口を開くと

「んだと!?ごらぁ!」

「ぶっ飛ばすぞ!」

 2人は凛祢を睨んで強気に言い放つ。

「ぶっ飛ばすのはいいけど、抵抗するぞ」

「やっちまえ!」

 その言葉を合図に凛祢は仕方なく喧嘩をした。

 数分もしないうちに、その場にはボロボロになって倒れた男の姿があった。

「やっちまったー……」

 凛祢は倒れる2人を見て、頭を抱える。

 朱音だけじゃなく鞠菜も「安易に喧嘩をするな」と言われていたのに。

 1日目で喧嘩してしまった。

「強いねー、きみ」

「お前のせいで俺はお先真っ暗だけど。学校にバレたらやばいな……」

 凛祢は少女に視線を向ける。

 自分よりも背の低く、赤い髪を短いツインテール状にした少女。

「まあまあ、正当防衛だし。私、ミッコって言うんだ。よろしくね」

「自己紹介してる場合か。俺は逃げるぞ」

「待ってよ。私も行くって!」

 凛祢がいそいそと走り出すと、ミッコと名乗る少女は犬の様に後を追う。

 しばらく走り続けて、裏路地に入り足を止めた。

 後ろを振り向いてもミッコの姿はない。

「ようやく撒けたか。あー、走ったら余計腹減った……」

「本当だよ。私もお昼食べてないからお腹空いてるのに全力で走るんだもん!」

「……!」

 凛祢は驚きを隠せなかった。

 全力疾走したのにミッコは追いついたと言うのか?

 というか、よく制服で走り回れたものだ。

「どういうつもりだ?」

「何が?」

「なんで俺についてくるんだ」

「助けてもらったからだよ!感謝もまだしてないし!」

 ミッコは笑みを浮かべてそう言った。

「そうだ、君の名は?」

「……凛祢だよ」

 凛祢は素直に名を名乗った。

 聞き方が映画の題名みたいだな。

「凛祢くんか。可愛い名前だね!じゃあ凛祢くん、お昼まだなら一緒に食べない?」

「お前といるとロクなことなさそうだからやだ」

「まあそう言わずに!美味しい店に案内するからさ!」

 逃げるように歩き始めるが、ミッコは隣を歩いて離れてくれなかった。

 どういうつもりなんだ、この女。

 仕方なくミッコに案内された店で昼食を取ることにした凛祢。

 そこで凛祢は驚くこととなる。

 注文した定食がやって来るとミッコは乙女な顔にも関わらず勢いよく食べ始めたからだ。

「……まじか」

 更に驚きなのはミッコはご飯の追加を注文して食べ進めいた。

「あー、3日ぶりのご飯がおいしい!」

「3日ぶりって……」

 冗談のつもりなのだろうと思い、何も言わずに凛祢も定食に箸をつける。

 食事を終えたミッコが満足そうにしている。

「ご馳走様!じゃあ、私はこれで!」

「は?」

 ミッコはそう言い残して、全力で逃げた。

 お金を払うこともなく、店を出ていく。

「おい、ちょっと待て!」

 凛祢が後を追うように扉の取っ手を掴むが店員が引き留める。

「なんですか!?」

「お客さん!お勘定がまだですよ!」

「くっ!ふざけんなよ、あの女!」

 凛祢の声は店内に響き渡っていた。

 仕方なく、2人分の支払いを終えた凛祢は1人寮へと続く道を進んでいた。

「なんなんだよ、あのミッコの奴。今度会ったらただじゃ済まさねー」

 怒りに燃えた顔で404号室の扉を開いた。

「「ん?」」

 室内には初めて見る顔があった。

「えっと。もしかして相部屋にの周防、凛祢くん?」

「そうだけど。君が朝倉龍治(あさくらりょうじ)なのか?」

「うん。僕が龍治だよ。これからよろしく!」

「おう、よろしく」

 ルームメイトとなった龍治と自己紹介を得て、凛祢は室内に入室した。

 彼も、凛祢の数少ない友人であり、後に黒鉄中学の大歩兵世代を築く1人となる。

 

 

 それから一週間のオリエンテーションを終えて、凛祢や司、龍司の3人は歩兵道の初授業を迎えていた。

 1年生の中でも歩兵道選択者は50人を超えていた。

 流石は実力のある学校だ。

 リトル時代に見た顔も数人はいた。

「よし、新入生!一人ずつ番号と自己紹介しろ!」

 歩兵道中等部担当の教官、アンダーソンの声が響き、1人ずつ番号と名前を叫んで行く。

「兵籍番号37番、周防凛祢です!」

「兵籍番号38番、朝倉龍司です!」

「兵籍番号45番、萩風司です!」

 凛祢に続いて龍司、司も名を叫ぶ。

「いいか豚共!中学の歩兵道はリトルやサバイバルゲームの様な半端な競技とは違う!」

 再びアンダーソンの声が響くと新入生たちは圧倒されたように一歩後退する。

 サルミッド・アンダーソン。出身はロシア。中等部担当の歩兵道教官であり、軍人としてはゲイリーより上の1等陸尉。後に鞠菜の軍人だったころの同期だと知ることになる。

 見た目はゲイリーほどではないががっしりとした体つきではあった。だが、繊細な作業や精密狙撃を得意としている。

 歩兵道の教官は軍人ばかりだと、この頃から思っていたっけ。

「ここにいる大半は頭が空っぽなガキや、歩兵道が少しできるうぬぼれだ!俺は違うと言うものは手を上げろ!」

 アンダーソンの止むことのない声が凛祢や司たちに浴びせられる。

 だが、そんな問いに誰も手を挙げるものなどいなかった。

 アンダーソンは深く頷いた後に1人ずつ顔を見つめて行く。

 新入生全員の頬を冷や汗が伝って行く。

「兵籍番号37番、周防凛祢」

「はい!」

 アンダーソンの口から自分の番号が呼ばれ、反射的に姿勢を正して返事をしてしまった。

 隣にいた龍治も体をびくつかせる。

「んーフーフーフー」

 薄気味悪く、それでいて上機嫌であるかのように鼻で笑う。

 ここに居たかと言わんばかりにアンダーソンは凛祢に視線を向けて近づいてくる。

「フフフ、そうかお前が周防凛祢、周防鞠菜の弟子だな?」

「弟子ではなく養子であります!」

「くっくっく、嬉しいぞぉ?俺はお前の師匠と同期だ。あの女には散々世話になったからな……よし歓迎してやる!」

 アンダーソンは親の仇の様に視線を凛祢に向ける。

「よぉし、お前は特別に俺が直接可愛がってやる、感謝しろ!はっはっは!」

 すぐに笑みを浮かべて次の生徒に視線を向けて行った。

「大丈夫か?」

「まあ、死なない程度にしごかれるのは慣れているし……」

 心配そうに声を掛けた龍治に返事をすると凛祢は軽く息を吐いた。

 リトルインファンタリーで活躍していた凛祢や司の名前はそれなりに広がってはいた。

 目立つとは思っていたし、司や他の生徒になかにも目立った者はいた。

 しかし、自分とは無関係なところで、個人的に目を着けられるとは予想外だ。

 それからというもの、アンダーソンは何かにつけて、凛祢を目の敵にした。

 CQC戦闘訓練で勝利しても怒られるのは自分であり、たまに敗北しても怒られる。

 射撃訓練でも何故か怒鳴られる。

 トイレに行っても「トイレが長い」と怒鳴られる。

 そんなのが続き、数か月が過ぎた頃だった。

 いつものようにアンダーソンに怒鳴られ、耳に痛みを感じながら自室である404号室の扉を開く。

「おー、凛祢おかえりー」

「ああ」

「遅かったな、またアンダーソンに怒鳴られたのか?今日は何したんだ?」

 ルームメイトの龍治と別室にも関わらずいることが当たり前になっている司の声を聞いて凛祢はため息をつく。

 全館消灯までの自由時間は基本この2人の顔を見ていた。

「狙撃訓練で一発外した上に片付けの時、弾薬倉庫で銃弾をぶちまけた」

「あららー大変だったねー凛祢くん」

「で、なんでまたミッコがいるんだよ」

 凛祢が机に視線を向けると椅子に座り棒アイスを頬張る制服姿のミッコがいた。

 ここにいる4人はみんなクラスメイトであり、このメンバーが消灯時間まで404号室に集まるのはいつものことなのだ。

 というか、ミッコは他に女子の友人とかいないのか?いつもここに来てるけど。

「男だけだとつまらないでしょ?」

「あのな、女子生徒が男子生徒の部屋に押し掛けること自体が問題だからな?」

「わかってるってー。ちゃんとバレないようにしてるし」

 ミッコはそう言って笑みを浮かべると再び棒アイスを口に突っ込む。

「まあいいけど。ミッコ、お茶」

 凛祢もいつもの様に鞄を置くと、床に座り喫茶店で注文するように言い放つ。

「はいはーい」

 ミッコは慣れた手つきで急須から湯飲みに緑茶を注ぐ。

「どうぞー」

「……あー、お茶がうまい」

 ミッコが入れた熱い緑茶を飲んで一息つく。

 すると龍治が口を開いた。

「そういえば、合流って明日だっけ?」

「そうだな。凛祢、アンダーソン教官から何か聞いた?」

「聞いてねーよ。ようやく教育機関も終わりかー」

 凛祢が天井を見上げる。

 この数か月、凛祢たち一年生は教育期間ということで歩兵道の基本をみっちりと仕込まれた。

 新人大会ではなんとか勝利したもの、中学歩兵道はリトルインファンタリー以上に激しく厳しい戦いだであったものの凛祢たちの第7班はそれなりの成績を残していた。

 近いうちに実戦投入もあり得ると言う話も合ったくらいだ。

「まったく。ゲイリーの方が百倍はいい教育者だったよ」

「本当にな。ゲイリー優しかったから」

「ゲイリーって?」

 司と凛祢が話始めると龍治も興味深そうに問い掛ける。

「リトル時代の教官だよ。結構いい人だった」

「へー。会ってみたもんだね」

 龍治は笑ってそう言うと、湯飲みに口をつける。

「凛祢くんたちも苦労してるんだね。私も戦車道をやってるけど。これが厳しくてねー」

「お前、戦車道を履修してたのか?」

「うん。ミカって先輩と戦車乗ってる」

 ミッコは食べ終えたアイスの棒を銜えたままそう言った。

 黒鉄中学には歩兵道だけでなく戦車道も存在する。

 しかし、歩兵道に優先的に力を入れていたため、戦車道はそれほど有名ではなかったのだ。

「あれ。言ってなかったけ?」

「言ってないだろ」

「聞いてないね」

「聞いてないよ」

 ミッコの言葉に凛祢が視線を向けると2人も同じように苦笑いしていた。

 戦車道。婦女子を育成するための武道だってことぐらいは知ってる。

 歩兵道と似たようなものであるが、違うもの。

 似て非なるものであることは確かだ。

 というか、ミカって誰だ?聖羅なら知ってるかもな。

「ふぁぁ」

「凛祢眠そうだな」

「まあな、疲れもたまってるし。じゃあそろそろやるか」

 そう言うと鞄から参考書とノートを取り出す。

 凛祢たち3人は歩兵道の成績は良かったものの、他の教科では授業についていくのもやっとであった。

 そのため、こうして週に3回ほどの勉強会を行っていた。

「私は帰るねー」

「待て。お前はこの中で一番成績がいいんだから勉強を教えろ」

「えー。またー?」

 いつもの事であるにも関わらずミッコは嫌そうな表情を浮かべていた。

 だが、凛祢にも秘策はあった。

「えーじゃねー。明日の昼はハンバーグだぞ」

「まっかせてーよ。流石凛祢くん!」

 ミッコは満面の笑みで鞄から参考書とノートを引っ張り出す。

 彼女は食べ物が好きだ。だから食べもの、特に肉などは彼女を引き付けるいいエサなのだ。

「はいはい」

 凛祢も湯飲みに残った緑茶を飲み干して、ペンを手に取る。

 そんないつもの日課をこなして時計が24時を回った頃、凛祢と龍治はそれぞれ二段ベッドに横たわっていた。

「凛祢。起きてる?」

「もう寝てる」

「起きてるじゃん」

 思わず龍治はツッコミいれた。

 消灯時間を過ぎた部屋内に凛祢と龍治の小さな会話だけが響いている。

「僕は2人の足手まといになってない?」

「なってないよ。龍治にだってここまでちゃんと残っただろ」

 龍治の言葉に凛祢もこれまでのことを思い出すように返答する。

 黒鉄の歩兵道を始めた当初は50人を超えていた新入生も今は半分ほどしか残っていない。

 みんなついてこれずに辞めてしまったのだ。

「そうだけど。僕はあんまり自信ないよ」

「大丈夫だ。俺や司も支えてやるから」

「うん、そうだね。僕頑張るよ」

 龍治がそう言うと凛祢は瞼を閉じて深い眠りについていた。

 

 

 翌日。午前の授業と昼食を終えた凛祢たちは午後の授業を迎えていた。

 特製制服に着替えを終えた凛祢たちはアンダーソンの指示でマラソンのために校庭を走っている。

 自分の経験から走ることは歩兵道にとっては必須だと思う。

 彼の軍人は言ったそうだ。

「軍隊ではとにかく走らされる」

「朝起きたら走らされる」

「重い武装しては走らされる」

 そんなことが多々あったと聞いたことがあった。

 昔から暇つぶしのように走っていた自分は、走ること自体はさほど嫌いではない。

 なにより走るだけなら金も友達も必要なかったのも理由の1つだ。

 ただしこうして誰かに言われて走らされるのはあまり好きではない。

 走るのと走らされるのとでは全然違うからだ。

 ここには自分を褒める鞠菜はいない。

 こう考えると自分は金をもらって戦う傭兵みたいだと思ってしまう。我ながら単純だな。

「凛祢ー、司ー。待ってよー」

 声の方を振り向けば我がチームメイトの龍治がヘロヘロになりゆっくりの速さで走っていた。

 凛祢と司は顔を見合わせた後、ペースを落として龍治の隣を走る。

 2人よりも訓練慣れしていない龍治はやはり音を上げるのも早かった。

「もう少しだから頑張れ!」

 司がそう声を掛け続け、ようやくゴールした3人は校庭に座り込み、肩で息をしていた。

 まったく、特製制服で長距離を走るのは楽ではない。

 本当の軍人はよくもあんな戦闘服で走り回れるものだ。

 そんなことを考えていると

「よーし、新入生。これからお前たちは黒鉄中学の歩兵道履修者たちと合流する!」

「はい!」

 アンダーソンの声に返事をする。

 全員が同じ方向に視線を向けると自分たちと同じ特製制服に身を包む生徒たちの姿があった。

「隊長!さっさとあいさつしろ!」

「隊長の黒咲聖羅だ!新入生、歩兵道は遊びじゃねぇぞ!これからお前たちは立派な紳士として恥じないよう、自分を鍛えろ!」

「はい!」

 2年でありながらもう隊長の座についていた聖羅の言葉に新入生はより大きい返事をした。

「よし!じゃあ分隊ごとに別れろ。それと周防、萩風。お前たちは次の公式戦隊長分隊に投入する」

「「え?」」

「了解です」

 アンダーソンはそう言い残して他の部隊の訓練を見て回る。

「実戦投入ってマジかよ」

「聖羅。久しぶりだね」

「今はそんな話してる場合じゃねー。公式戦まで時間ないから、さっさと行くぞ」

 聖羅の後を追い、本格的な歩兵道訓練が始まった。

 マラソンに射撃訓練、CQC戦闘訓練はもちろん、中学歩兵道からは「学科」っという頭を使うものまであった。

 学科と言っても歩兵道にとっては常識的なものばかりだったが、凛祢が最も驚いたのは兵科によって訓練内容が変わると言うことだ。

 偵察兵に狙撃兵、突撃兵はそれぞれ訓練内容が分かれるがリトル時代とはそれほど変わらなかった。

 大きく異なったのは砲兵と工兵だった。この2つの兵科はかなり高火力の武装を扱うため、学科資格が必要らしい。

 だが、すでに突撃兵で通っていた凛祢や司にはそれほど関係なかった。

 ビスマルクは砲兵であり、グラーフも狙撃兵になっていたものの、聖羅は変わらず突撃兵である。

 それから凛祢たちは幾度の戦場を駆けた。どの試合でも凛祢は仲間と共に勝利を手にしていく、止まることを知らず次々に黒鉄中学の戦績を伸ばすこととなる。

 

 

 

 黒鉄中学に入学して半年とちょっとが過ぎた頃、大会に参加していた凛祢は試合中にある違和感を感じた。

 一瞬。ただの一瞬だけ、直感的に危機を察知して動けたような気がする。感じただけであって、だから何かできるわけでもなかった。

 そんな小さな「才能」という名の芽は戦いを重ねるごとに成長し、ある日の戦場で覚醒したのだ。

 戦場は森林地帯。現在は使われていない小屋とほぼ崩れているレンガ造りの壁。

 他にもドラム缶が倒れていたり、折れた鉄骨なども置かれていた。

「……!」

 戦闘中、凛祢は直感的に動いて、死角から放たれた銃弾を回避して見せた。 

「なに!?」

 敵歩兵は驚きを隠せずにいた。凛祢は左手で引き抜いた自動拳銃『ルガ―P08』を零距離で発砲する。

 数発、銃弾を撃ち込まれた敵歩兵からは戦死判定のアラームが響く。

 凛祢はルガ―をホルスターに差し込むと、すぐに走り始める。

 右手に持つ、アサルトライフル『StG45』を両手で持ち直し、次の敵歩兵に向けて構える。

 狙いを定めるとすぐに引き金を引く。銃口から吐き出された数十発の銃弾は敵歩兵に命中し、また戦死判定のアラームが響いた。

「よくやった凛祢!」

 ビスマルクがそう叫び、対戦車擲弾発射器『パンツァーファウスト』を放つ。

 放たれた擲弾は敵の部隊に向かって飛んで行き、数人を巻き込むように爆発する。

 戦死判定のアラームが重なる様に響いていた。

「くそ!」

 再び敵歩兵が凛祢を狙うが不意に飛んできた銃弾が手に持つ武器を弾き飛ばした。

 続けて放たれた銃弾が上半身を撃ち抜き戦死判定のアラームが響く。

 それがグラーフの援護であることに気づくと同時にインカムから声が響いた。

「まったく君たちは敵を屠るたびに油断するのが悪い癖だよ」

「うるせー、お前の分を残してやったんだろうが!」

「援護感謝するよ、グラーフ」

 ビスマルクは強気に言い放つが凛祢は感謝するように通信を送った。

「ほら、凛祢を見習って感謝の一言でも行ってみなよ」

「お前は狙撃兵なんだから援護するのは当たり前の事だろうが!」

「なら僕は、もう君の援護は絶対しない」

 インカム越しに喧嘩を始める2人。

「お前のヘボ援護なんているか!離れた場所から狙うしか能のない臆病者が!」

「っ!」

 舌打ちが聞こえた。

 その時、発砲音と共に銃弾がビスマルクの右肩を撃ち抜いた。

 ビスマルクは衝撃でその場に倒れこむ。

「うっ、グラーフ!テメェ!」

「黙れよ、脳筋野郎!僕はいつでも君を後ろから撃てるって事を覚えておけ!」

「野郎!上等だ!ぶっ殺してやる!」

 グラーフとビスマルクは本格的に喧嘩腰の声を上げた。

 凛祢はやれやれとため息をつく。

「ビスマルク、グラーフもやめろ!試合中だぞ!」

「うるせー!あいつは俺を撃ったんだぞ!撃ったってことは撃たれる覚悟があるってことなんだよ!」

 ビスマルクは頭に血が上っているのか声を荒げている。

 その時、再び「直感」が危機を察知した。

「!」

 凛祢は後ろからビスマルクに向かってタックルをかました。

「うげ!」

 ビスマルクが倒れこむと、銃弾が空を舞っていた。

 凛祢もすぐに銃弾が飛んできた方にむけて銃を構えて発砲する。

「敵襲!」

「ちっ!」

「……」

 凛祢の声に、ビスマルクとグラーフも再び戦闘態勢に入る。

「グラーフ!」

「わかってるよ!」

 この2人だって聖羅と同時期に隊長分隊に投入された実力者だ。

 こうして喧嘩することもあるが、やはりお互いの実力を認め合う仲なのだ。

 現れた敵歩兵は全部で8人。

 人数的な有利は敵にある。だが、2人がいれば――

 凛祢のそんな思いを裏切る様にことは起きた。

 グラーフが狙撃銃『Kar98K』を構える。その時、手榴弾が投げ込まれた。

 瞬時に気づき、走り出す。だが、それこそが敵の狙いだった。

 茂みから姿を現したと同時に銃弾の雨を浴びせられグラーフが悲鳴を上げる。

「ぐぁぁーー!」

「なにっ!?グラーフ!」

「くそ!凛祢そいつを貸せ!」

 悲鳴を聞いたビスマルクは凛祢のStG45を奪い取ると1人で出ていく。

「ビスマルク!」

 凛祢も声を上げるがビスマルクは聞く耳持たずに戦闘を開始していた。

 馬鹿が!1人で勝てるわけないだろ!

 主武装を失った凛祢はホルスターからルガ―とコンバットナイフを引き抜く。

 援護しようと壁に隠れてルガ―の引き金を引く。

 しかし、なかなか命中しない。

 ビスマルクは1人で突撃している。

「くっ!」

 思わず表情を歪ませた。

 拳銃では距離の空いた敵を狙うのは難しい。

 やはり突撃して一気に敵歩兵を叩くしかない。

 その時だった。

 ビスマルクは敵歩兵を2人屠っていたが、不意に銃弾がビスマルクの右足を撃ち抜いた。

「くっ!」

 走る痛みに思わず、膝をついた。

「ビスマルク!」

「俺は狙った得物を逃がさない」

 ビスマルクの前に現れたその男はソ連が好きなのか、目立つであろう赤い軍帽を被っていた。

 しかし、その手には武器がなかった。ベルトのホルスターには拳銃が収納されているが。

 なぜ武器を持たないのか凛祢には理解できない。

「だが!」

 凛祢がルガ―を構えると、軍帽の男はホルスターから自動拳銃『トカレフTT⁻33』を引き抜き手動で初弾を排莢すると凛祢の方に発砲した。

 その動作や手の動きに違和感を感じつつも直感的に、壁に身を隠す。

 だが、銃弾は凛祢の隠れた壁には当たらず、後方の鉄骨に命中した。

 そして――跳ね返った。

 跳弾は凛祢の右太ももに命中する。

「うっ!……な、なんだ今の?」

 声にならない声を上げた凛祢は何が起きたのか分からなかった。

 いや、たとえ誰であっても理解できないだろう。

 まさか「跳弾」で狙ったのか?

 いや、ありえない。跳弾を狙って当てるだと?

 もう一度凛祢が壁から顔を出すと、軍帽の男はこちらを確認し笑みを浮かべる。

 そして再び引き金を引いた。

「マジか!」

 凛祢は地面を転がり、跳ね返った跳弾を回避する。

 どうやら彼は跳弾を意図的に起こして狙い撃てるセンスを持っているようだ。

 まさか、そんな歩兵がいるとは……。

「お前、何もんだ?」

「名乗らせてもらおう。そこの歩兵もよく聞け。俺はアルベルト、歩兵道界最強になる男だ」

 アルベルトと名乗る男は宣言するように声を上げた。

「……」

 数秒間の沈黙が流れる。

 するとアルベルトは指を通したトカレフを回転させる。

「ふん、声もでないか?」

「ふ、はははは!おもしれーよ、お前!」

 ビスマルクは思わず笑い声を上げた。

 だが、アルベルトそんなビスマルクに向けて一発発砲した。

 すると戦死判定のアラームが響いた。

「こっち向け!」

 気が付けば凛祢はルガ―とコンバットナイフを構えて立っていた。

 ビスマルクとグラーフがやられて、自分も頭に血が上ったのかもしれない。

 まったく何やっているんだ。ここは隠れて本隊が合流するのを待つべきだっただろ。

 だが、間に合うかどうかも分からないなら結局は1人で戦わなければならない。

「なんだその構え方?」

 アルベルトは小馬鹿にするように呟いた。

 凛祢の構え方は周防鞠菜の構えと同じ癖のある構え方である。

「その銃、ダサいな」

 続けてアルベルトは笑ってそう言った。

 ルガーの事を馬鹿にしているのだろうが関係ない。

 まだ動く必要もない。

「ふん!死ね!」

 アルベルトがトカレフを構えて、引き金を引いた瞬間――

 トカレフのスライドはノックバックしたまま、停止する。

 銃弾が弾詰まりを起こしたのだ。何が起きたのか分からないと言わんばかりに焦りを見せるアルベルト。

「……」

 凛祢はその隙を見逃すはずもなく、ナイフの逆刃を首元に当てると右足に向けて発砲する。

「ぐっ!」

 痛みに声を上げるアルベルト。

 流れるように体を地面になぎ倒すと、ルガ―のグリップを叩きつけてトカレフを弾き飛ばす。

 他の敵歩兵も一瞬反応が遅れたものの銃を構えようとする。

 だが、凛祢はさせまいとアルベルトの首を両足で挟んだままルガーの引き金を引く。

「構わん!撃て!」

 1人、また1人と敵歩兵に銃弾が命中する中で、アルベルトが声を上げる。

 凛祢は銃口をアルベルトに向けて一発発砲した。

「ぐっ!」

 痛みに声を上げたアルベルトの戦死判定を確認することもなく、踏み出して敵歩兵の元に向かう。

 接近するとまずは軍用小銃『モシン・ナガンM1891』を封じるために手を狙って発砲する。

 すぐに立て直す暇を与えず、ルガ―のグリップで首元の後ろを力いっぱい叩く。

 ナイフを鞘に収納すると同時に敵歩兵のモシン・ナガンに手を回し奪取する。

 その敵歩兵を盾にするようにもう1人の敵歩兵に近づくと、隠れていた凛祢が姿を現し腹部に向けてモシン・ナガンから放たれた7,62mm弾をお見舞いする。

 敵歩兵の持つStG45から銃弾が放たれるが、凛祢はその直感で銃弾を回避して見せた。

「嘘だろ!?」

 ナガンを投げ捨て、ルガ―の引き金を数発引くとルガ―も弾切れを告げる。

 だが、凛祢は歩みを止めずに敵歩兵の首に手を回し、空いていた右手で左手の手首を掴んで固定する。

 次の瞬間、凛祢は足と腕を使って敵歩兵の体を持ち上げ、投げたかのように地面に叩きつけた。

「あれは、訓練でやってた……」

 倒れていたビスマルクはその様子を見て、驚きを隠せなかった。

 凛祢は自分より体重のあるであろう相手を投げたからだ。

 立ち上がり、弾倉を交換すると引き金を引いた。

 すぐに倒れた敵歩兵から戦死判定のアラームが響き、凛祢は深く息を吐いた。

「後は……」

 視線を辺りに向け、警戒するがすでに現れた敵歩兵はすべて戦死していた。たった1人を除いて。

「くそ!なんなんだお前は!?」

 凛祢と他に生存しているのは赤い軍帽を被った男、アルベルトである。

 その視線は凛祢をしっかりと見据えていた。

 凛祢はそんなアルベルトに勝負はついたと言わんばかりに背を向けた。

「くっ!は!」

 弾き飛ばされたトカレフを握ると凛祢に向かって走って行く。

「……」

 そんなアルベルトの攻撃を両手で受け止めると、腕を一回転させるように動かしルガーのグリップを顎に叩きつける。

「ぐぁっ!!」

「はっ!」

 更に鞠菜に習ったCQC戦闘術で柔道技の如くアルベルトを転倒させる。

「うえ!」

 倒れこんだアルベルトは悲鳴を上げる。

 手に持っていたトカレフは後方へと飛んで行き、弾詰まりを起こしていた銃弾も空を舞って地面に落ちる。

「なん、で……!」

「初弾を手動で排莢していたな。考え方はおかしくはない、だが聞きかじっただけで実戦で試すものじゃない。だから弾詰まりなんて起こすんだ。そもそもお前オートマチックは向いてないよ。リコイルの衝撃をひじを曲げて吸収する癖があるみたいだけど、どっちかと言えばリボルバー向きだよ」

 凛祢はどこぞの工作員の様な言葉を並べる。

 実際に説明通り、アルベルトの撃ち方には違和感を感じていたし、現にこんな状況で「弾詰まり」なんてミスを犯していた。

「くそ!たかが一年野郎に!」

「……」

 コンバットナイフを引き抜くが凛祢はそんなアルベルトの足に向けて発砲する。

 銃弾は狙った通り右足に2発、左足に1発命中した。

 膝から崩れるように倒れこむ。

「いってー……」

 痛みに表情を歪ませていたアルベルトに視線を落とすと凛祢は口を開いた。

「早撃ちは凄かったし、意図的に跳弾を使った戦い方は俺や他の歩兵にはできない技だ。いい才能を持っていると思う」

「いい……才能か。お前のその直感も十分凄いよ。まるで超人染みた力だった……」

 返答するようにアルベルトが呟くとそのまま大の字に倒れる。

 凛祢もようやく一段落した戦闘に一息ついた。

 武器をホルスターに収納してインカムで通信を送ろうとしたのと同時にアナウンスが響いた。

「赤山中学、残存歩兵戦力0!黒鉄中学、残存歩兵戦力4名!黒鉄中学校の勝利!」

 勝利したことを確認し凛祢やビスマルク、グラーフもハイタッチする。

 黒鉄中学歩兵道チームで生存したのは凛祢と聖羅、司に龍治の4人だった。

 今回も勝利した。そう心で復唱すると凛祢は再び喜びを表すかのように拳を握る。

 その日、「才能」は完全な形となって覚醒した。

 常人を上回る危機を感知する直感力、後に「超人直感」と呼ばれる才能を得た凛祢はこの日から超人の異名で呼ばれることとなる。

 その後も凛祢は超人呼ぶにふさわしい技術と才能を行使して黒鉄中学は全国大会2連覇を果たした。

 

 

 1年目の全国大会も終わり、凛祢や聖羅たちは本土の山梨県に帰還していた。

 長期休暇によって実家に帰るものは多い。凛祢たちも例外ではない。

 1年も離れていないと言うのに山中に建てられた小さな小屋、鞠菜の家に戻ってきたのが懐かしく感じた。

「凛祢、おかえり」

「ただいま鞠菜」

 鞠菜の顔を見て、安心したように凛祢は笑みを浮かべた。

 自分にとっての家族は鞠菜と朱音だけだ。ここにいると安心できる。

「少しデカくなったか?」

「そんな変わらないよ」

 鞠菜の言葉に静かに返答する。

 荷物を家に運び入れると、凛祢は鞠菜に黒鉄中学での歩兵道について報告した。

「そっか。黒咲や萩風ももう隊長分隊に投入されたのか。本当に成長が早いな」

「ああ。それにアンダーソンって教官にもあったよ。鞠菜のせいで苦労したんだから」

「下村か。あいつ中学の歩兵道教官やってたのか。あいつも長い付き合いだったけ」

 鞠菜は思い出すように頷き、コーヒーの入ったカップに口をつけた。

 早朝、凛祢はマラソンのために山中を走り回っていた。

 実家に帰ったからと言って日々の日課を休むことはない。

 休めば3日分は衰えると鞠菜は言った。

 肩で息をして玄関に腰掛けると――

「凛祢。久しぶりに私とガチンコで勝負してみるか?」

 鞠菜がダミーナイフを手に窓から顔を出した。

 彼女との勝負は本当に手抜きなしの駆け引きをする。

 凛祢にとっては最も自分を鍛えるのに適しているかもしれない。

 そして、鞠菜も準備運動を終え、お互いにダミーナイフを構える。

「そうだ、鞠菜。負けた方が勝った方のお願いを聞くって条件を付けよう」

「は?なんでだよ面倒くせーな」

「いいから!」

 そう言うと凛祢は鞠菜に接近しダミーナイフを振る。

 だが、鞠菜も簡単に防御して反撃した。それを凛祢も直感で回避してナイフを振る。

「なっ!」

 なんとか鞠菜も回避する。

 しかし、ダミーナイフの刀身が私服に掠ったことに気づく。

 1年前は当てる事どころか、回避することすらできなかったと言うのに今は互角に渡り合えていた。

 鞠菜も凛祢の直感的な動きに違和感を感じている。

「はっ!」

 攻撃でダミーナイフを弾き飛ばされた凛祢は一瞬驚いたが冷静になる。

 鞠菜がダミーナイフを振ると凛祢は再び回避して鞠菜に力いっぱいタックルして転倒させた。

 そのままナイフを奪い喉元にナイフを突き立てた。

「お前の勝ちだ、凛祢」

「なら!」

「なんて言うか!」

 鞠菜は頭突きして怯んだ隙を狙ってナイフを奪い返し、凛祢の腹部を蹴り飛ばす。

 倒れた凛祢にすぐさま近づきナイフを首元に当てた。

 動けなかった、本当の戦場ならこの時点で死んでいる。

 鞠菜は笑みを浮かべてナイフを離した。

「いったー。ずるいよ、今のは」

「油断したお前が悪い。だが随分強くなったな、いいよお前の願いを聞いてやるよ」

「マジで?」

 凛祢は少し驚きつつ視線を向ける。

「ほら、さっさと言え」

「鞠菜の使ってる格闘術を教えて」

 凛祢は真剣な眼差しを向けた。

 格闘術を学ぼうと思ったのは理由は1つ。鞠菜の直伝のCQC戦闘術だけは得意だったがそれ以外は何もない。

 自分は射撃も苦手であり、どうしてもCQC戦闘に持ち込んでしまう。

 だが、正直言って有効打を与えるのは難しい。

 だからこそ――

「格闘術?ああ覇王流の事か、私は教えられないぞ?これは照月って流派の技だからな」

「え?そうなの?」

「んー。照月玄十郎は頑固だからな、頼んで教えてくれるかな?確か今は大洗に住んでいるはず」

 鞠菜は少し考えるように腕を組む。

 すぐに仁王立ちすると口を開いた。

「よし、凛祢。休暇中は大洗に行くぞ!」

「え?」

 鞠菜はそう言って笑っていた。

 彼女は嬉しかったのだろう、凛祢は欲がない。そんな凛祢が何かを学びたい、こうありたいと望むなら叶えてやりたかったのだ。

 凛祢は少し驚いていたものものの、少しでも強くなるために大洗に行くこととなった。

 鞠菜の扱う覇王流格闘術とも呼ばれる……照月流格闘術を皆伝してもらう為に。




今回も読んで頂きありがとうございました。
凛祢が超人としての力、超人直感を始めて行使した記録です。
そして覇王流を学ぶため大洗を目指す凛祢。
戦いの先にある運命とは……。
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