ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです。
最近、リアルが忙しく執筆の時間が取れず前回から2か月ほど空いてしまいました。
申し訳ありません。
今回は継続戦part2です。
では本編をどうぞ


第25話 戦士たちよ、その心のままに

 全国大会準決勝。大洗連合VS継続&冬樹連合の試合が開始され、先に仕掛けたのは大洗連合だった。

 奇襲作戦によって数的有利を手にした大洗連合は継続高校の戦車4輌と冬樹学園の歩兵20人を相手に交戦していた。

 しかし、戦場は生き物。刻一刻と変化し続けるもの。凛祢たちはそれを知ることとなる。

 交戦する中、突撃していくヤブイヌ分隊所属の突撃兵である八尋と俊也が引き金を引く。

 短機関銃『FN P90』と自動小銃『FN FAL』の銃口から次々に放たれる銃弾は、空中を舞っている。

「八尋、俊也、前に出過ぎだ!少し下がれ!」

「ちっ!やっぱ経験や技術はあっちが上か……」

「だからって、引くつもりはねぇよ!」

 敵の射程外から狙撃銃『FN バリスタ』で牽制する翼を無視するように2人はズンズンと前に出ていく。

 俊也の放った銃弾が敵歩兵に命中し、戦死させる。

「やるねー、みんな。じゃあ、僕もいこうかな!」

 岩場に身を隠し短機関銃『キャリコM950』を連射していたヤガミ。

 右手で懐のホルスターから自身の主武装である大型拳銃『トンプソン・コンテンダー』を引き抜く。

 体の前で構えると、コンテンダーの引き金を引いた。

 銃弾は敵歩兵の右胸に命中、被弾者は悶絶するようにうずくまる。追い打ちをかけるようにヒムロがAR-57の5.7mm弾を撃ち込み屠っていく。

 ヤガミが扱っているコンテンダーから放たれた弾薬は『.308ウィンチェスター弾』。通常はライフルの銃弾として使用される弾薬であり、翼の扱うバリスタもこれと同じ弾薬なのである。

「よし!次弾の装填っと……」

 ヤガミは再び岩場に身を隠し、コンテンダーのトリガー・ガードを引き込む。

 銃身が露出すると今撃ったばかりの空薬莢を排出し、ベルトに下げた弾薬ケースから同じ弾薬である.308ウィンチェスター弾を一発抜き取ると銃身に装填した。

 素早く、トリガー・ガードを戻して発砲可能にする。

「ヤガミの奴、あんなところでコンテンダーの装填しやがって!ヤマケン、グレネード撃て!」

「はいっす!」

 牽制するヒムロの隣にいたヤマケンはMGL-140のサイトを覗き込み、狙いとつけると引き金を引いた。

 銃口から空中へと放たれた榴弾は弧を描くように飛んで行き、地面に落ちると誘爆して敵歩兵の進軍を阻んだ。

 その一瞬。再び八尋とヤガミが零距離で敵歩兵を屠っていく。

「撃て!」

 みほの叫びを合図にⅣ号から放たれた砲弾はT-34/85に命中。走行不能を現す白旗が上がった。

 凛祢やアーサーも後方から敵を狙い撃っている。

「敵が突撃兵や偵察兵だけとは珍しいですね」

 アーサーがワルサーMPの弾倉を交換すると視線を向ける。

 凛祢も左手に持つブローニング・ハイパワーの弾倉を排出し予備弾倉を差し込むと、取り出した手榴弾のピンを抜き取り力一杯投擲する。

「確かに……アルディーニと同様に砲兵がいないって話は聞いてたけど。司とヴィダールたち狙撃兵はどこに?それにBT-42は……まさか、みほ――」

 気づいたように目を見開き、通信を送る。

「アーサー。ここからは更に激しい戦いになるぞ」

「了解です……」

 アーサーたちワニさん分隊もワルサーの引き金を引いてアイコンタクトを取っていた。

 

 

 そして、別地点。

 継続高校のフラッグ車、BT-42突撃砲と一個中隊は大洗連合の戦車4輌と4分隊と対峙しようとしていた。

「ミッコ、まずは八九式ね!」

「……!」

 アキが砲撃準備にはいるとミッコは笑みを浮かべて、アクセルを踏み込む。

 BT-42は速度を上げて走行していく。

 森林から飛び出し、八九式との距離を一気に詰めた。

「撃て(トュータ)!」

 滑り込むように隣に現れたBT-42は、ミカの合図で砲弾を放った。

 砲弾は八九式の右側面に命中。

 瞬時に白旗が上がり、走行不能にさせた。

「「うそ!?」」

 典子とあけびは思わず、顔を見合わせる。

 辰巳たちオオワシ分隊もまた驚きを隠せなかった。

「がっ!」

「げふっ!」

 そんな隙をついて、突撃していたアンクと数人の突撃兵は零距離で銃を発砲し、辰巳と迅を屠った。

 すでに大洗の主力の歩兵、戦車を調べ尽くしていた継続&冬樹連合は的確に結果を残していた戦車、歩兵を潰しにきていたのだ。

「ふん!こんなもんかよ!やっちまえ」

 アンクの突撃に続くように他の突撃兵も大洗の歩兵を屠っていた。

 そして司やヴィダールも後方から支援狙撃をしている。

 ヴィダールの対戦車銃『ラハティL-39』から放たれた銃弾が九七式の履帯に命中。

「こんなことって……」

「セレナ、にげて!」

「駄目よ。完全に履帯をやられた!」

 セレナが必死に操縦桿を動かすが、九七式は停車したまま動かない。

 行動不能にされたのだ。

 続けてKV-1から放たれた砲弾が正面装甲に命中する。瞬時に白旗が上がる。

「マジかよ……!おいおい、なんだよあの戦車!」

 茂みに身を隠し、狙撃していた不知火も思わず苦虫を噛み潰したような表情を受かべる。

 立て続けに襲撃を受けて、陣形が崩れた大洗連合は一気に戦力を失っていく。

「何やっているのよ!敵はたった1輌でしょ!」

「わかってますよー。でぎゃー!」

 後方で手榴弾が誘爆し、青葉の体が吹き飛ばされ地面を転がる。

 間も無くして戦死判定のアラームが響き渡った。

「なんとしても戦車を守るんだ!葛城先輩たちと合流するまでは!」

「うん!そうだよ!みんな落ち着いて!敵の数は2輌だけだから!」

 崩れ始める大洗連合を立て直そうと亮と梓は通信を送る。

 再び、周りに視線を向けるとチームに指示を出す。

「坂本先輩!本隊に連絡をお願いします!」

「翔、衛宮先輩!援護をお願いします!」

 梓の指示に塁はインカム越しに報告する。そして、亮は銀と共に前線に立つ。

 そんな2人に導かれるように、大洗連合の戦車道履修と歩兵道履修者は次々に戦闘態勢に入る。

 

 

 ナカジマやツチヤたち、レオポンチームの搭乗するポルシェティーガーが砲撃すると敵戦車T-34/75に命中。走行不能を現す白旗が上がった。

「やった!」

「よし!1輌撃破っと!」

 砲手のホシノと装填手のスズキがポルシェティーガーの車内でハイタッチする。

 そして、車長であるナカジマも通信機で通信を送る。

 銃撃戦を行う凛祢たち本隊は少しずつだが継続&冬樹連合の本隊の戦力を削っていた。

「よし、これならいける!」

「……っ!」

 優勢になり始めていた戦況に一瞬雄二が笑みを浮かべた時だった。敵歩兵の投擲した手榴弾が英治の数センチ右に転がる。

 2人が気が付くが、遅かった。

「しまっ――!」

「英治会長!」

 雄二の声を爆発音が掻き消した。

 瞬間的に動いたが英治は爆風を受け、近くの樹木に背中を叩きつけられるように激突する。

「英治会長!くっ!」

 そんな様子に気づいた凛祢も英治の元に向かおうと一歩踏み出すが、敵歩兵の放つ銃撃に阻まれる。

「葛城君!英治なら大丈夫です!だから、今は自分にできる事をしてください!」

 インカムから訴えるような声が響く。

 宗司も敵と撃ち合いながらも、通信を送っていたのだ。

「英治ー、大丈夫ー?」

「杏会長……。お前、心配してないだろ……」

 いつもの様に38tの車内で干し芋を齧っていた杏が通信を送る。

 英治もよろよろと体を起こす。

「おい!英治会長は無事なのか!?」

「生きてるから俺たちだって生存してんだろ!」

 同じように38tの車内で照準器を覗く桃と、MGL-140で榴弾を撃つ雄二が強気に叫ぶ。

「凛祢殿、こちら奇襲部隊!申し訳ありません!敵の攻撃を受けて、立て続けに戦力を失ってしまいました!」

 激戦中であることを感じさせるようにインカムからは発砲音が響き続けている。

「なに!?」

 凛祢は再び弾倉を交換して、ノックバックしていたブローニング・ハイパワーのスライドを戻す。

「坂本君、それは本当ですか!?」

 みほも思わず通信機に手を当てる。

 報告を聞いて驚きを隠せなかった。

 予想はしていた。だが、想定外だった。

 こんなにも早く敵が数的有利を崩してきたからだ。

 ミカや司たちの実力は知っていた。しかし、彼女たちの実力は凛祢の想定を遥かに超えていたのだ。

「敵のフラッグ車BT-42はKV-1と共にこちらの戦車を2輌も倒しています。生き残っているM3やルノーもいつやられてしまうか――!それに敵の狙撃隊も確認しました!」

 塁の言葉を遮るように爆発音、発砲音が響く。

 振動音が、塁や英子たちのいる地点が激戦であることを物語っていた。

「くっ!ミカ、ミッコ……やってくれるな」

 凛祢はこの状況で、笑みを浮かべていた。

 思わず、口元に手を当てる。

 自分がなぜ、この状況で笑みを浮かべたのか分からなかったからだ。しかし、すぐにその正体を理解する。

 それは……この戦場を、歩兵道を楽しんでいる凛祢がいる証拠だったのだ。

「了解しました!みなさん、これより敵フラッグ車とウサギさん、カモさんのいる地点に向かいます!」

 みほの指示に大洗連合の戦車は移動を開始する。

 Ⅳ号を前方に38t、Ⅲ突、ポルシェティーガーの並びで走行していく。

 そして、歩兵たちも駆動車に乗り込み後を追って行く。

「待て、逃がすな!」

「フラッグ車を討て!」

 継続&冬樹連合も残存戦力を結集してフラッグ車を仕留めようと砲撃する。

 敵戦車は。歩兵も残りは7人まで減っていた。

「アーサー!」

「了解した!いくぞ!」

 凛祢の声を合図にアーサーやカバさん分隊の3人が煙幕手榴弾を投擲する。

 投擲された煙幕手榴弾は誘爆すると大量の煙幕が立ち込める。

「……東藤、一番後ろに」

 速度を調節し、後方を走行していたヤブイヌ分隊のジープの車内で凛祢はバックパックから2個のヒートアックスを取り出すとネジって小さく加工する。

 それぞれに電管を刺してヒートアックスを地面に転がす。

「凛祢、あんな少ない量で倒せるのか?」

「いや、あの量じゃせいぜい履帯を切断するのがやっとだろう……」

 凛祢はリモコンを操作し調節するとすぐに起爆できるようにする。

 ふと視線を向けると八尋と翼はそれぞれの武器の弾倉を交換していた。

「え?」

 八尋は思わずキョトンとした顔を見せる。

「工兵の目的はあくまでも進路の確保と敵の足止めだ。無理して戦車を撃破する必要なんてないんだ」

「いつも戦車バンバン撃破してた、お前がそれを言うか?」

 凛祢が八尋に説明すると皮肉を言うように操縦席から俊也の声が響く。

「まあ、そう言うな俊也」

「翼、俺の銃も弾倉を交換しておいてくれ。あと数発しか弾が入ってないんだ」

「わかったよ」

 助手席に座っていた翼は慣れた手つきでFALの弾倉交換を始める。

「塁の奴はまだ生きてるといいがな」

「ああ、見えて塁は慎重な奴だから生存率は高いんだぜ。俺たちと違って――おーやるー。さっすが工兵!」

 話の途中でヒートアックスを起爆させたことで、轟音が響く。

 八尋も後方を確認すると思わず呟いた。

 ヤブイヌ分隊の搭乗するジープがⅣ号に追いつき、横を並走しているとみほが声をかける。

「凛祢さん、今後の作戦に意見はありますか?」

「そうだな……」

 凛祢は考え込むように自軍の戦力に視線を向けた。

 戦死した者はいないとはいえダメージは蓄積しているはず。

 八尋や俊也といった突撃兵、もろに手榴弾の爆風を受けた英治会長だって何時戦死してもおかしくはない。

 それに盾役になってもらっているポルシェティーガーだって装甲に多くの被弾跡が見受けられる。

 他にもⅢ突とⅣ号も38tを守りながら戦っていたからKV-1の砲撃を受ければ簡単に白旗を上げてしまうだろうな。

 合流できても全滅したらお終いだしな。

「作戦はみほの立てた作戦で構わない……でも無理はするなよ、みほ」

「はい、凛祢さんも……生き残ってくださいね」

「ああ、生き抜いてみせるさ」

 お互いに言葉を交わし、頷くと前方に視線を向ける。

 

 

 逃走を始めていたウサギさんチームのM3とカモさんチームのルノーもみほたちのいる方向へと向かっていた。

 残存歩兵はヤマネコ分隊所属の亮、翔、礼、銀、そして塁と不知火だけであった。

「で、塁ちゃんよ。どうするよ?」

「どうすると言われましても、今は逃げるしかないですよ」

 ルノーに掴まっていた塁と不知火はお互いの顔を確認した後に後方へと視線を向ける。

 後方にはこちらを追撃しようとするBT-42とKV-1、他には歩兵たちが移動に使っているジープが数輌確認できた。

「おめぇ、工兵だろ?凛祢みたいに敵戦車をやっちまえよ!」

「無茶言わないでくださいよ!工兵って言っても僕だって初心者なんですよ!」

「んだよ!役に立たねぇな」

 不知火がぼやくように塁に悪態を吐く。

 するとインカムから緑子の声が響く。

「じゃあ、衛宮くんが何とかしなさいよ!」

「俺は……狙撃兵だし。戦車相手は無理だ」

「結局、駄目じゃないですか……」

 塁も思わずツッコミを入れる。

 その時、KV-1の放つ砲弾がルノーの横に落ちた。

 大きく地面を抉っているのが確認できる。

「あー、まじで死ぬって!あれはまじでやばいって!」

「プラウダのKV-2はもっとすごかったですけどね!やはりKV-1もいいですよねー」

 塁は優花里と話しているときと同様のテンションで話始める。

 そんな様子を横目に亮は短く深呼吸した。

「……」

「亮隊長、これからどうする?」

 後方に視線を向けるヤマネコ分隊の亮が考え込むように腕を組むと、それに気づいた翔も残っていたヒートアックスを手に声をかける。

「先輩たちもこっちには向かっているはずだけど……俺たちはどうするべきなのかな?」

『どうするべきって?』

「俺は先輩たちの役に立ちたい。だから……あの突撃兵に、勝ちたい!」

 亮は先ほど対峙したアンクの事を思い出していた。

 彼も黒鉄中学出身だとは言え、1年生だったが実力差は歴然。

 先ほどは油断していたことで、大洗連合は奇襲を受けてしまい戦力の多くを失った。

『なら、やろうか』

「お前がやりたいようにしていいぜ!俺たちは亮と葛城隊長の指示に従うしな」

「そういうこと」

 3人も同意見だと言わんばかりに笑みを浮かべる。

「ありがとう、みんな。梓さん、次の作戦を」

「うん。先輩方と合流したら一気にフラッグ車を狙うから。歩兵の皆はなるべく敵の注意を引いてほしいんだ。先輩方もお願いします」

 亮も再び視線を向けると、梓も頷いて説明する。

「了解です」

「わかってるって!」

 塁と不知火も返事をする。

 

 

 大洗連合を追撃していたBT-42の車内でカンテレを引いていたミカのインカムに通信が入る。

「ミカ隊長!こちらFチーム履帯を切られてしまったので合流には時間がかかりそうです!」

「そうですか。なるべく急ぎで戦線復帰をお願いします」

「了解です」

 短く通信を終えると再び指をカンテレに当てる。

「大丈夫なの?こっちの戦力は私たちとKV-1だけ、歩兵隊だって少ししか残ってないのに……」

「多ければいいってもんじゃない。勝利するためにはそれぞれがどうするかが大切なんだよ」

「大洗はまだ2輌しか走行不能になってないのに、このままじゃ負けちゃうよ?」

 ミカの言葉にアキは思わずそんな言葉を投げかける。

 するとミッコが割り込むように口を開いた。

「大丈夫だよ!私たちが先にフラッグ車を倒しちゃえばいいんでしょ?」

「そうなんだけどさ……」

 そんな言葉を聞いてアキは不満そうな表情を浮かべる。

「ミカさん。きみはフラッグ車を撃破してください。他は僕たちとヴィダールで仕留めます」

「あまり期待するなよ。司やアンクと違って黒鉄出身じゃないからな」

 司が強気に言い放つとヴィダールは少々弱気なのかそんな発言をする。

「大丈夫ですって!ヴィダール先輩は黒咲先輩にも劣らないほどの実力を持ってますよ!」

「そう言ってもらえるとありがたいがね」

 アンクの言葉に、ヴィダールは笑みを浮かべた。

「……」

 司は再びスコープ越しに大洗連合を見つめる。

 

 

 そして数秒後、Ⅳ号のキューポラから身を乗り出すみほはM3とルノー、ジープの姿を確認して再び通信機に手を当てる。

「先輩!」

「なんとか合流できた……」

 梓と亮は安心したように胸を撫でおろす。

「みなさん、このまま旋回するのでついて来てください!森林内で敵フラッグ車と決着をつけます!」

「「了解!」」

 みほの指示通り合流した大洗連合は旋回して森林内へと侵入していく。

 大洗連合は移動しながら、再度作戦を確認する。

「まさか、最後に正面からBT-42とKV-1を相手にするなんて……」

「でも、やるしかないでしょ?これが2人の作戦なんだし」

 後方の敵に向けて狙撃を行なう英治の声を聞いて、杏は再び干し芋を銜えた。

 しかし、その目はプラウダ&ファークト連合で戦った時の様に真剣なものであった。

「凛祢、本気なのか?」

「ああ、いくら狙撃兵でも司は実力者だ。長距離狙撃が相手じゃ近接戦闘しかできない俺とは相性が悪いから」

 八尋は不満そうにため息をついた。凛祢は過去の戦闘データを思い出し、再び作戦を確認する。

 と言っても、今の戦闘スタイルでは砲兵でも相手にはしたくはないがな。

「だからって、歩兵が直接戦車を潰しに行くのが本当に最善策とは思えねーけどな」

「仕方ないだろ。こっちだって後がない」

「翼の言う通りだ」

 俊也が無茶だということはわかっていた。大洗連合の生徒が誰でも同じように思っているだろう。

 しかし、ミカたちのBT-42の戦闘を見れば無茶をしなければ勝てないと悟っていた。ミカは3回戦で対決したBC自由連合との試合で、たった1輌で戦況をひっくり返してしまったのだ。

 ミッコの操縦技術の高さもあるが、ミカの指示は的確であり、彼女からは自分と同じものを感じていた。

「凛祢殿、僕たち工兵はどうしますか?」

「塁と翔はそれぞれ自分で考えて動いてもらって構わない。数少ないヒートアックスの使い方も任せる」

 指示を出す中で凛祢も準備を進める。

「翼、もしも敵の銃を奪ったとしてお前は何発で命中させられる?」

「え?……うまく扱えたとしても最低でも3発は試し撃ちでもしなきゃ当てられないよ。そもそも狙撃はほいほい決められるほど簡単なものじゃない。それに――」

「じゃあ、3発は試し撃ちしていいから、4発目で絶対決めろよ」

「おい、俊也どうするつもりだ?」

「銃を奪えたらあとは任せるってことだ……」

 操縦席に座っていた俊也は不敵に笑みを浮かべた。

 

 

 その頃、会場観客席で試合を観戦していた風香と華蓮。

「凄いねぇ凄いねぇ!大洗ってなかなか強いんじゃん!」

「確かに、4月にできたばかりなのに準決勝に参加してたのは伊達じゃないってことかな」

 2人は試合の内容に驚きを隠せなかった。拍手していた風香は身を乗り出すように試合を見つめる。

「それはそうですわ。みほさんと凛祢さんはここまで大洗連合を引っ張ってきた方ですもの。実力だけでなく、2人からは信念を感じますわ」

「みほさん?あー西住さんね!聞いたことある!転校生の子だよね!?」

「うん、名前くらいは知ってる……葛城くんと体育祭で出てたしね」

 ダージリンの説明に風香は思い出したように声を上げた。華蓮も頷いて呟く。

 

 

 一方、別地点にて試合を観戦していた照月玄十郎。

 その元に、1人の女性が現れていた。照月敦子である。

「「……」」

 何も言葉を発することなく、敦子は玄十郎の隣の席に腰を下ろす。

 数秒ほど経ち、ようやく敦子が口を開いた。

「どうして、今頃になって凛祢に修行をつけたのですか?」

「……」

「数か月前はあれほど修行する気はないと言っていたのに」

「……」

 敦子の言葉に玄十郎は何も言わなかった。

 何故凛祢に修行をつけようと思ったのか。

 それは、玄十郎自身が見たいと思ったからかもしれない。

 自分の流派を皆伝した者である凛祢が歩兵道という武道で頂に上り詰める姿を。かつて玄十郎がたどり着けなかった頂を。

「超人、周防凛祢は伝説などではない。今も歩兵道という戦場で生き続けている姿を変えてな。ワシだってすでに相応の歳だ……弟子の1人くらいは最後まで育てたいと思っただけだ」

「ふふ、まさかジジイからそんな言葉が出るとはな!」

「……ふん」

 思わず笑い声を上げた敦子を見ると玄十郎もその厳しい顔に笑みを浮かべていた。

 

 

 継続&冬樹連合も大洗の後を追いながら戦闘準備を進めていた

「次が最後の戦闘になりますね」

「こっちも後がないからね」

「ミッコ。もう少し真面目になってよ」

 ミカがカンテレを鳴らすとミッコが上唇をペロッと舐めた。

 アキはやれやれとため息をついた。

「こちらKV-1!どうしますか?」

「敵チームにはポルシェティーガーいるのでそちらの相手をお願いします。ヴィダールもそっちの援護に回ってください」

「了解でーす!」

「了解した」

 ミカの指示で継続&冬樹連合も隊を再編成する。

 数的有利は再び大洗連合にあるが、継続&冬樹連合にはそんな状況を覆せるほどの腕がある。

 ここからはどちらが先にフラッグ車を走行不能にできるかが重要になって来る

 Ⅳ号と38t、M3にヤブイヌ分隊(4名)、カニさん分隊(3名)、ヤマネコ分隊(3名)を含めたA小隊。

 Ⅲ突とルノー、ポルシェティーガーに坂本塁、衛宮不知火、ワニさん分隊(4名)、タイガーさん分隊(3名)を含めたB小隊。

 AとBに小隊に分けるとチームは別れていく。目標地点に到着するとそれぞれ臨戦態勢になる。

「皆さん、自分にできる事をしてください!そして、みんなで勝って決勝に行きましょう!」

「「「了解!」」」

「最後の作戦『どたばた作戦』を決行します!」

 みほの指示を合図に大洗連合は継続&冬樹連合と最終戦闘を開始するのだった。




お互いに一歩も引かない戦い。そんな中、大洗連合は最後の作戦。どたばた作戦を決行する。凛祢たちは勝利できるのか?
そして、司との決着は?
今回も読んで頂きありがとうございます。
最近は忙しくてなかなか時間がありませんでした。
次回も少し時間が空いてしまったら申し訳ありません。
4月くらいになれば少しは落ち着くと思うのですが……
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