ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~   作:UNIMITES

39 / 55
どうもUNIMITESです。
少し投稿まで時間がかかってしまい申し訳ありません。
今回から第三部 劇場版編へと移ります。
といっても、この劇場版編が葛城凛祢の物語としては最終章に当たります。
では本編をどうぞ。


第35話 エキシビションマッチ

 第四次スクワッドジャムが終了してから1週間の時が過ぎ、夏休みも残り数日で終了となる。

 本日、大洗連合は知波単&重桜連合とチームを組み、聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合とプラウダ&ファークト連合チームとエキシビジョンマッチを行っていた。

「エキシビションってかっこいいね!」

「かっこいい……それは戦車道と歩兵道に必要な事かな?」

 試合を眺めていたアキにミカが問い掛けるように言葉を投げる。

「えー?じゃあ、ミカはなんで戦車道やってんの?」

「戦車道と歩兵道には人生に大切な全ての事が詰まっているんだよ……でも、ほとんどの人がそれに気づかないんだ」

「わけわかんないし……それにしても司くんたちも来ればよかったのにね」

「仕方ないんじゃない?ヴィダールさんは大学受験準備で忙しいみたいだし、司くんはアンクの夏休みの宿題に付き合ってるから」

 アキが空を見上げて呟くと、運転席に座って本を読んでいたミッコが返答する。

 

 

 一方、フィールド内でも遮蔽物の少ないゴルフ場に聖グロのチャーチル歩兵戦車1輌とマチルダⅡ3輌を追い込んでいた。

「茶柱が立ったわ……イギリスのこんな言い伝えを知ってる?茶柱が立つと素敵な訪問者が現れる」

「お言葉ですが、もう現れています。素敵かどうかはさておき……」

 いつものように格言を口にするダージリンの隣でオレンジペコがツッコミを入れる。

 戦車外では大洗と知波単の砲撃音が響き渡り、砲弾が地面を抉っていた。

 チャーチルとマチルダの間で身を隠している聖ブリの歩兵隊。

「いやー親善試合だからってちょっと遊び過ぎたなケン!?」

「ガノスタンはいつも遊んでいるだろう?まったく……」

 ガノスタンもいつもと同様に笑いこけている。

 アサルトツェーン第五席、ケンスロットも迎撃するように引き金を引いた。

「んで、どうやってここを突破するんだ?」

「生憎、突撃兵と狙撃兵しかいないからダージリンたち次第だな」

「うー。やっぱそうなるのかよー」

 モルドレットも思わずそんな言葉を漏らした。

 

 

 追い詰めていた大洗と知波単の戦車はじりじりと距離を詰めつつ砲撃を続けていた。

 その後方には歩兵隊である大洗男子、重桜高校の姿もある。

「ふーん。織田さんたち結構戦えるのに、全国大会では対戦カードの引きが良くなかったんだな」

「知波単がもう少し突撃を自重してくれればいいのだが……」

 全国大会での試合内容を聞いた八尋が頷く隣で信光がため息を漏らした。

「そういう織田さんだって、結構大胆に攻めて来てたじゃないですか。スクワッドジャムだってほぼノーガードで戦闘していたし」

「俺たちは攻めきれると確証を持っていたからだ。知波単のような伝統だけの考えなしじゃないんだ」

 アサルトツェーン第一席、葛城凛祢が思い出したように視線を向けると、織田信光は眉一つ動かすことなくそう言った。

 確かに、彼の言う通りスクワッドジャムで攻められたときは自分たちの分が悪かった。

 そこに司とアンクという予想外の要因が現れたわけなのだが。

「そうは言ってもな……」

「凛祢さんそろそろチャーチルたちに接近して攻撃を仕掛けます」

「重桜の皆さんも、いつまでもおしゃべりしていないで攻めますよ」

 通信機から響くみほと西の声で凛祢と信光がそれぞれ武器を引き抜く。

 凛祢はいつもの装備であるブ2丁の自動拳銃ブローニング・ハイパワーを、信光は89式小銃を握る。

「攻めると言われても、あんな戦車がドンパチやっている中に特攻したら流れ弾で一発リタイアしちまうぞ」

「行くのは俺と織田さんだから。翼と俊也は援護よろしく、塁と八尋は状況確認を頼むよ」

「「まかせろ」」」「了解です」「おう」

 凛祢の指示でヤブイヌ分隊の4人が返事をする。

「蘭丸も、援護頼むぞ」

「了解です!期待してくださいよー!こう見えても重桜一の狙撃手なんですからー」

 信光の言葉で蘭丸もやる気満々と言わんばかりに銃を手に取る。

「パンツァーフォー!」

「戦車前進!」

 そして、大洗と知波単の戦車が前進を開始した。

 その合図で凛祢と信光も駆けだす。

 数分も経たない内に距離は詰まり、砲撃が命中すれば確実な撃破を狙える距離で戦車が停車する。

 そのタイミングで大洗連合の戦車であるアヒル(八九式)、うさぎ(M3)、アリクイ(三式中戦車)、カバ(Ⅲ突)、カメ(ヘッツァー)から砲撃準備完了の通信が入った。

「こちら凛祢と織田。俺たちも指定位置についた」

「……」

 凛祢と信光は匍匐前進で発見されないよう、攻撃位置に着く。

「大洗知波単連合の攻撃部隊、攻撃準備が整いました。守備隊の状況を教えてください」

 続けて通信手である沙織の声が響く。

「じわじわ来てるよー」

「……あと5分ってところかな」

「あと5分だってー、まあどっちにしても長くは持たないからねー」

 レオポンチームの車長、ナカジマが返答する。

「そもそもプラウダと聖グロの戦車を相手に防衛しろってほうが無茶だと思うんだけどねー私」

「風香、そういうこと言わないの。華蓮、今は防衛メインだからあまり砲撃に集中しなくて大丈夫だからね」

「うん。適度に休んでるから大丈夫」

 オオカミチームの風香が車内で悪態をつくが、車長の英子が注意する。

 通信を聞いてみほが再び叫ぶ。

「砲撃開始!」

 その合図で戦車砲が一斉に火を噴く。

 響き渡る轟音で草原にいた凛祢たちにまで振動が伝わる。

 砲撃が始まってすぐにあんこうちーむのⅣ号と知波単の九七式中戦車がマチルダⅡをそれぞれ撃破。

 凛祢もブローニングハイパワーで狙いを点け、発砲。SaSジープの転輪を撃ち抜く。

 拳銃しか遠距離武器を持たない凛祢は移動用の車両の転輪をパンクさせることで機動力を奪って行くのだ。

 続けて信光が敵歩兵を狙撃し、戦死させる。

「近接戦闘もなかなかですけど狙撃もできるんですね」

「当たり前だ。そうでなきゃ突撃兵にはなってない。それに、部下に信頼されるにはそれなりに力が必要だからな」

「確かに、そうですね」

 信光の言った通り、歩兵道において仲間たちから信頼されるのに必要なものとして「戦う力」はあると思う。

 黒森峰の黒咲聖羅やファークトのアルベルトもまた高い戦闘能力を有していた。

 といってもそれだけか言われれば、答えはNOだが。

 十六夜蘭丸や柴田勝正たちの様子を見れば、信光が力だけでなく戦友として信頼されていることはわかる。

「だいぶ数は減らしましたね」

「ああ。だが、まだ有力な歩兵を仕留められてはいないからな……」

 4人目を仕留めると信光も一息つくように、引き金から指を離す。

「すごいな。聖グロから白旗を手に入れられるなんて!」

「西殿、あとは突撃あるのみです!」

「そうです。突撃は我が校の伝統です!」

「突撃以外何がありましょうぞ!」

「いや、どうだろうな……」

 知波単学園の意見に、西が表情を曇らせる。

「ああ、また知波単(うち)の悪い癖が出てきやがった……」

 信光が思わずため息をついた。

「信光さん今のって?」

「ああ、そうだ。あいつらはこうなると止まんねーんだよ。

西も伝統は大事にするタイプだから強くは言えないんだろうな」

「信光さんも苦労してるんですね」

 信光のイラ立ちと呆れた表情の混ざった複雑な表情で、理解できた。

 知波単が突撃戦術を使うことは知っている。むしろ戦車道と歩兵道では有名な話だ。

 すると予想通り知波単の戦車が次々に突撃を敢行し始める。

「突撃ー!」

「突撃して潔く散りましょうぞ!」

「散ったらだめだろう!?」

 西も予想外の言葉に思わず声を上げた。

「知波単魂を世に知らしめましょうぞ!」

「あー、まあいいか。突貫!」

 西も周りに看破されたように前進を始める。

「西さん!?」

 みほが知波単の動きに声を上げた。

「ちょっとちょっと、知波単の方々またですかー!?」

「おい、どうなってんだ?知波単のやつら急に動きが変わったぞ」

 頭を抱える蘭丸の横で翼が問い掛ける。

 スコープ越しに戦場を見ていた2人が声を上げると、俊也と塁も双眼鏡を手にする。

「説明しましょう。知波単学園はその昔、その突撃戦術で勝利を掴み取ったことがあるのです」

 音もなく現れたのは重桜の偵察兵である、百鬼半蔵であった。

「その時代の突撃戦術が今も伝統として残っているのです。それでも信光殿は、突撃戦術をやめるようにずっと言っていましたけどね」

「知波単ってただの馬鹿だったんだな」

「トシー、思っても口にすんなよ……」

 俊也はいつものように悪態をつくと、八尋がやれやれと注意する。

「スコーンが勝手に割れたわね」

「後は美味しくいただくだけです」

「ガノ、我々も攻めるぞ」

「へいへい」

 聖グロと聖ブリがこの好機を見逃すわけもなく、防戦から攻撃へと転じていく。

 次々に砲塔を回転させるチャーチルとマチルダ。

「それに、もうすぐサンドイッチも出来上がるわ、砲撃!」

 ダージリンの声でチャーチルの砲が火を噴いた。

 瞬く間に知波単所属の戦車が5輌走行不能となる。

「うーん。あと一息なのに……」

 知波単の数少ない生き残りである西の車両はジグザクに走行し、なんとか砲撃を回避していた。

「まずいな……」

「っ!」

 状況の変化に凛祢と信光も表情を歪ませる。

「我々は本当にこれでいいのだろうか……いや、よくない!いや、いい!」

「いいわけねーだろうが、突撃馬鹿が!」

 西の言葉でとうとう信光の堪忍袋の緒が切れた。

 通信越しであるとは言え、怒りの声を上げる。

「あらあら」

「まずい!凛祢さん!」

「わかってる……」

 みほから通信に返答すると同時に電管付きのヒートアックスを地面に落とす。

 

 

 一方、防衛線を敷いていた部隊にも知波単の突撃の通信が届いていた。

「我が知波単第一中隊が突撃を敢行したらしいぞ!」

「よし我々も遅れを取るな!」

「突撃!」

 知波単の1輌が前進する。

「あ、ちょっと待った!」

 ナカジマの声を聞くこともなく、瞬く間に走行不能にされてしまう。

「先輩殿!我々も続くであります!戦車前進!」

 玉田も続くように前進を始めるが、

「だから駄目だって、知波単のみんな無謀過ぎだよ」

「頼むからこれ以上無駄に戦力を減らさないでくれ」

 タイガーさん分隊のヤガミこと八神大河とヒムロこと氷室大地が制止するように通信を送る。

 カモさんチームのルノーがその車体で玉田の車両の道を遮った。

「行かせてください。このままではみんなに合わせる顔がありません!」

「先輩に合わせる顔も何も玉田さん、ここでやられたら俺たち随伴の歩兵に合わせる顔ないでしょ。まあ今俺はこっちいるからなんとも言えないけど」

 玉田車の随伴歩兵である蘭丸は思わずそんな言葉を漏らした。

「アグレッシブに攻めるのもいいけどリタイアしちゃったら元も子もないんだって」

「そうそう。ナカジマの言う通りだよ」

 キューポラから頭だけを出すナカジマの注意に賛成するヤガミ。

「我が知波単学園は――」

「西住隊長にここを防衛するように言われたでしょ。命令ってのは規則と同じなの」

「命令と規則は違くないですか?」

「青葉君は黙ってて」

「はい……青葉、一応シラサギの分隊長なのに肩身が狭いです」

 緑子の睨みに青葉は思わず呟いた。

「規則は守るためにあるのよ」

「こちらまもなく突破されます!撤退、合流します!」

 ナカジマの通信でレオポン(ポルシェティーガー)、カモ(ルノー)、オオカミ(キャバリエ)、玉田車の4輌とそれぞれの随伴歩兵隊が撤退を始める。

「はい。防衛線突破されちゃいましたー」

「風香ー……」

「ごめんごめんって」

 キャバリエの車内でも風香がいつもの悪ふざけを華蓮が咎める。

 後退を始めるとすぐに敵部隊、プラウダとファークトの部隊が防衛線を越えて現れる。

 戦車は全国大会の時の白色ではなく迷彩色に変更されていた。

 戦場が雪原ではなく森林、草原であるために変更されたのであろう。

「待たせたわね!」

「待たせたな」

 プラウダの隊長であるカチューシャとファークトの隊長でありアサルトツェーン第四席であるリボルバー・アルベルトが通信機を手に叫ぶ。

「待ちすぎて紅茶が冷めてしまいましたわ」

「お待ちしてましたよ」

 ダージリンとケンスロットも返答する。

「しょうがないでしょ!もっと簡単に突破できると思ってたんだから!」

「迂回すればいいだけだったけどな」

 ダージリンの言葉に少々熱くなるカチューシャを横目にアルベルトが呟く。

 ノンナとその随伴歩兵である第五席スナイパー・エレンも同感と言わんばかりにカチューシャを見つめる。

「それより早く挟撃態勢に入っていただける?」

「任せなさい!カチューシャが来たからにはもうおしまいよ!攻撃開始!」

「アルベルト、君の事だから何も言わなくてもやってくれますね」

「伊達に四席の数字を持っているわけじゃないのでな」

 お互いの隊長が通信を送り、再び聖グロとプラウダの戦車が攻撃を開始する。

「車両1.4倍、火力に至っては1.95倍こちらが有利です」

「私たちの援軍ももうすぐ到着するわ」

「ベディビエールたちか!」

 アッサムに続いてモルドレットも声を上げた。

「行くわよカチューシャ!」

「先に言わないで!命令するのはわたしなんだから!」

 カチューシャが声を上げると、プラウダの戦車が砲撃を続けた。

 ゴルフ場に追い込まれていた聖グロと聖ブリも移動を開始する。

「逃げたぞ!」

「合流させるな!」

 ヘッツァーとⅢ突、狙撃兵の英治も攻撃を開始する。

 しかし、攻撃を妨げるようにヘッツァーの前方の地面を砲弾が抉っていく。

「なんだあれは?」

「蟹みたいだね」

「僕たちの事ですか?」

「違うだろ、宗司。にしても随分足が速いな」

 迫りくるイギリス製戦車に驚きを隠せずにいるカメさんチームとカニさん分隊。

「巡航戦車クルセイダー!足が速いから要注意だ」

「ジョジョ第3部みたいな名前してるな。僕は第5部が好きだけどね」

「「「それだ!」」」

「やってる場合かワニさん分隊。ただでさえ足が速いんだからさっさと行くぞ」

 カバさんチームとワニさん分隊も逃げるようにその場を後にする。

 前方には追い込んでいたはずの聖グロ&聖ブリ連合本隊。

 後方からはプラウダ&ファークト連合全軍。

 そして、機動力重視のクルセイダー小隊。

「考えうる最悪のパターンを引いてしまったな」

「そうですね……」

 信光と凛祢もようやくみほたちと合流する。

「みほ、どうする?」

「ここで戦うのは不利です。撤退します!」

「そうなるよな」

 Ⅳ号に続くように凛祢たち大洗連合、そして生き残った知波単と重桜連合も撤退していく。

「山を下ります。下り終えたら敵の分散に努めてください」

「市街戦になれば、対人戦も増えてくる。それぞれ各個撃破を目指して行ってください」

 二人の指示で再び反撃の準備へと移る。

 

 

 観客席で試合を見ていたミッコはため息をついていた。

「もーせっかくのチャンスを不意にして、なにやってんの!」

「人は失敗する生き物だからね。大切なのはそこからなにかを学ぶってことさ」

 そう言うとミカは再び、カンテレを鳴らした。

 

 

 撤退する中で大洗連合と知波単&重桜連合は市街地へと向かっていた。

 それぞれが市街地で戦闘を行っている。

 市街戦での戦闘が激化して数十分が過ぎた頃、凛祢は八尋、翼と共に海沿いの水族館に向かって戦場を駆けていた。

「んで、凛祢。この調子で進んで大丈夫なのか!?」

「みほたちももうすぐそばまで来ている。時間がないんだよ」

 凛祢がそう言った時、ふと「超人直感」が危機を察知する。

 その瞬間、足を止めた。

「りん――!?」

 凛祢の目の前のコンクリートを一発の銃弾が抉る。

 銃弾の飛んできた方向に視線を向けた。

 森林の広がる先には確かにこちらを狙撃した者がいる。

「走れ凛祢!」

 すると翼が狙撃銃を構える。

「翼……わかった」

 凛祢は再び走り出す。

 同時に翼が引き金を引いた。

 飛んで行った銃弾は森林先にいた狙撃兵、聖グロのガノスタンの銃を掠めた。

「おいおい、今の一発で俺の居場所がわかったてのか!?」

「少しズレた……やっぱ一発で敵の位置の計算しきるのは難しいか……」

「そんな芸当出来る奴お前くらいなもんだ」

 八尋は思わずそんなことを呟いた。

 翼はさきほどの狙撃から銃弾の飛んできた角度、風の影響などを計算してガノスタンの場所をあぶりだしたのだ。

「次の一発で決めろよ!翼!」

「おう」

 八尋が特攻し、翼は再びスコープを覗く。

 凛祢がようやくⅣ号、チャーチル、T-34/75の姿を発見する。

「よし、まだ間に合う!」

 そう言った時だった。

「見つけましたよ!葛城!」

「ここで倒させていただきます!」

 チャーチルの随伴歩兵であるケンスロット、クルセイダーの随伴歩兵であるベディビエールが突撃してくる。

「くっ!」

 左手のブローニングハイパワーを発砲した。

 しかし、ケンスロットは銃弾を刀剣で切り裂き、接近する。

「やはり、あの時銃弾を斬ったのはまぐれじゃないのか」

 初戦闘で翼の狙撃を防いだ時の事を思い出していた。

 反射的にコンバットナイフを引き抜き刀剣を防御する。

「この瞬間を待ち望んでいました。再戦するこの時を!」

「……」

 ケンスロットに続き、ベディビエールもその刀剣を揮い凛祢を追い込んでいく。

 超人直感で攻撃をさばいているもののⅣ号との距離は離れていく一方であった。

 数回の打ち合いで凛祢のコンバットナイフの刀身が砕ける。

「なっ!?」

 驚きを隠せない凛祢。

 防御に徹していたとはいえ、無意識に武器を酷使していたのだ。

「もらいました!」

「これで!」

 凛祢に向けて振り下ろされる刃。

 しかし、その刃は黒鉄の刃によって阻まれた。

「なに!?」

「お前らは!」

 思わず二人も声を上げる。

 凛祢を守ったのは重桜の歩兵である織田信光と明智光貞であった。

「……」

「間に合ったか」

「信光さん、それに光貞さん!」

 二人の手には太刀の様な形状をした武器が握られている。

「ここは俺がやらせてもらう」

「ありがとうございます」

 凛祢は再び走り出す。

「君が立ち塞がるのですね、イレブン」

「イレブン?あーこの人が」

「その名で呼ぶな」

 ケンスロットの言葉に信光は冷静に返答する。

「まちがってはいないでしょう?11席なのですから」

「俺をその名で呼ぶな!」

 信光は黒刀を手にケンスロットと打ち合う。

「そんなに熱くならないでくださいよ」

「イレブンイレブンと。そんな数字に意味はない。10席は強さの格付けではないのだからな」

 信光に与えられたイレブンという名。

 それは彼が十席に入れなかった11番目の順位であるということであるのだ。

「それに……ここで勝利するのは俺だ!」

 力強く叫ぶと再び黒刀を振るう。

「カチューシャ急ぎなさい!凛祢さんが接近してきていますわ」

「超人なんて砲で撃破しちゃいなさいよ!」

「悔しいけど、今はみほさんへの応戦で精一杯ですの」

「ぐぬぬ!」

 チャーチルとT-34/75はⅣ号への応戦で、精一杯であった。

「少し無茶だが零距離で……」

 ヒートアックスに電管を刺す。

 あと数メートルとなった時だった。

「待たせたな、カチューシャ」

「アルベルト!?」

 Ⅳ号たち戦車が向かっている方向にファークトの歩兵アルベルトの姿がある。

 しかし、大洗の歩兵を相手にしてきたその特製制服はダメージが蓄積していることが一目で分かった。

「頼んだわよ」

「ああ」

 アルベルトはリボルバー拳銃を引き抜き駆け出す。

「あいつまだ生存してたのか……」

 思わず苦虫を噛み潰したように表情を歪める。

 この状況でアルベルトが現れたからだ。

 アルベルトが放つ銃弾を凛祢はその「超人直感」で回避していく。

 現在、遮蔽物のないこのフィールドでは跳弾は使えないため凛祢も回避することができていたのだ。

「覇王流絶技……」

 凛祢は握り込んでいた左手を開く。

「橘花無拍子!」

 次の瞬間、神速の一撃をアルベルトの腹部に見舞っていた。

「があっは!」

 うめき声をあげ、気絶したアルベルト横目に一歩踏み出す。

 同時に砲撃音が響き渡った。

 見上げた先には白旗を上げたⅣ号とチャーチル、そして生存しているT-34/75の姿がある。

「「大洗連合と知波単&重桜連合チーム、フラッグ車走行不能!よって聖グロリア―ナ&聖ブリタニアとプラウダ&ファークト連合の勝利!」」

 蝶野と照月敦子のアナウンスで勝敗が決定したことをようやく理解する。

「また……敗北か。でも、やっぱいいな歩兵道は」

 凛祢は自然と笑みを浮かべていた。

 

 

 相変わらずカンテレを鳴らすミカの隣でミッコは不服そうな表情を浮かべていた。

「あー負けちゃった」

「そうだね」

「やっぱり私たちも出ればよかったのにー。なんで参加しなかったの?」

「出ればいいってものでもないんじゃないかな」

「えー、参加することに意味があるんじゃないの!?」

「人生には大切な時が、何度か訪れる。でも、今はその時じゃない」

 ミカは笑みを浮かべてそう言っていた。

 今のアキにはその言葉の意味がいまいちわかっていなかった。




今回も、読んで頂きありがとうございます。
主にガールズ&パンツァー劇場版の序盤シーンですね。
ちなみに本編でも出ていますが織田信光は唯一、十傑入りのできず連盟評価が11番目だからイレブンと呼ばれ方をしています。
次回もなるべく早く投稿できるようにします。
意見、感想も募集中です。
では、また次回のお話で。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。