ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです。
第3部 劇場版編はまだまだ前半になります。
劇場版なので長くなってしまいますからね。
では本編をどうぞ。


第36話 さらば英雄よ

 エキシビジョンマッチを終えた大洗連合、知波単&重桜連合、聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合、プラウダ&ファークト連合の生徒たちは本土大洗町の銭湯施設を訪れていた。

 戦車道と歩兵道履修者たちだけとはいえ、4校の生徒が利用しているともなればかなりの数の人数である。

 銭湯内は満員と言わんばかりに人で溢れかえっている。

「本日はみなお疲れだった。勝利した聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合およびプラウダ&ファークト連合を称えたい。そして参加を快諾してくれた知波単&重桜連合にも感謝の念を禁じ得ない。更に審判員を派遣してくれた日本戦車道連盟と歩兵道連盟……」

「河嶋ー、長い」

「……では、みんなゆっくりしていってくれ」

 スピーチを遮る杏の言葉で、桃は話を切り上げる。

 湯船内で紅茶を飲む聖グロや子供の様なカチューシャを見つめるプラウダ。

 自身の行動を反省する知波単の姿がそこにはあった。

「あと一週間で新学期ですね」

「あ、宿題まだ終わってないー」

「はぁ。また毎朝起きなければならないのか……学校などなくなってしまえばいいのに」

「廃校を免れたばかりなんですから」

 あんこうチームの各々も湯船に浸かり他愛のない会話に花を咲かせていた。

「惜しかったなーもう少しで勝てそうだったのに」

「仕方ないよ、私たちも途中でやられちゃったし」

 試合結果を引きずる風香と華蓮。

「別に今回が最後ってわけじゃないでしょ。まだまだ戦車道をする機会はあるんだし」

「戦車道もいいけど私たち3年は大学受験も控えてるわよ」

「「「そうじゃん……」」」」

 セレナの言葉でオオカミチームの3人は思わず表情を青ざめた。

 

 

 多くの生徒たちが銭湯で汗を流している中、サウナ内に凛祢の姿あった。

 サウナ内にはアサルトツェーンの3人と織田信光、他にも数人の生徒がいる。

「結果的は俺たちが勝ったな」

「まあ、俺も信光には劣勢でしたから」

「当たり前だ。俺がお前に敗れるなんてありえない」

 信光は自身満々にそう言った。

「言ってくれますねイレブン」

「んだと?その名で呼ぶなっつってんだろうが!」

「喧嘩はやめてください」

 凛祢も2人をなだめる。

「アルベルトとエレンも見てないで止めてくださいよ」

「興味ありませんから」

「同感だな。俺は強い奴と戦えれば他はどうでもいい」

「なんで十傑メンバーはこう協調性がない人ばかりなんだよ……」

 凛祢は頭を抱える。

 アサルトツェーンの10人はあまりにも個性が強すぎるのだ。

 信光も自軍の仲間となら協調性が取れているが、熱くなるとこちらの意見は聞かなくなってしまう。

 唯一、協調性があるとすれば第十席、朝倉龍司くらいなものだ。

「はぁ……」

 思わずため息をつく。

 すると放送を始める合図の音楽が流れる。

 続けて放送が始まる。

「大洗女子学園生徒会長、角谷杏様。大洗男子学園生徒会長、相川英治様。葛城凛祢様、大至急学園にお戻りください。繰り返します……」

 その放送が響き渡り大洗連合の各々が思わず杏、英治に視線を向ける。

 そして、サウナ内にいたアルベルトたちの視線は凛祢に向けられていた。

「なんだ……急に呼び出し?なんで俺まで……」

「休暇中に何かやったのか?」

「んなわけないじゃないですか、まあ俺も戻るので。信光さん、ケンスロット喧嘩しないでくださいよ」

 そう言い残しサウナを後にする。

 銭湯の外で杏、英治と合流した凛祢は3人で学園艦へと向かう。

 学園に到着した3人を待っていたのは、ある人物であった。

 

 

 陽が傾き始め、外はすっかり夕日で赤く染まっている。

 聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合、プラウダ&ファークト連合の生徒たちと別れた大洗連合は戦車をガレージに戻すため、学園に向かっていた。

「みなさん、荷物をまとめてらっしゃるんでしょうか?」

「断捨離ブームでもきたのかな?」

「確かに、妙だな」

「引っ越しでもすんのかな?」

「こんな一斉にですか?」

 あんこうチーム、ヤブイヌ分隊は視線の先に並ぶトラックたちを見つめ、そんな感想を漏らす。

 ようやく学園に到着するが、校門は閉じられていた。

 校門には「KEEP OUT」の文字が刻まれたテープが張り付けられている。

 まるで立ち入り禁止を告げているようだった。

「誰よ!勝手にこんなことするなんて!」

「あららー、完全に封鎖されちゃってますねー」

 動揺を隠せない緑子の隣で青葉が思わず告げる。

「まさか、落書きとかしてないよね?」

「あれ、キープアウトってどういう意味だっけ?」

「体重をキープする」

「してないじゃん!アウトー!」

「ふざけてる場合かよ」

『まったくです。あゆみさん体重キープできてないんですか?』

「銀くんまでひどーい!」

「そう言うこと言ってる場合じゃないよ!」

 ウサギさんチームと亮、銀の会話に梓が声を上げる。

「君たち、勝手に入っては困るよ」

 その言葉で、大洗連合全員が振り返る。

 眼鏡にスーツを着た男がそこにはいた。

 柚子や桃、宗司と雄二はその男を知っている。

 文科省の……。

「あの、私たちはここの生徒です!」

「そうですよ!」

「君たちは、もうここの生徒ではない」

 男は淡々と言い放つ。

「どういうことですか?」

「どういうことだってばよ?です」

「君たちから説明しておきたまえ」

 そう言い残し、その場を後にする。

 そして、杏と英治が姿を見せた。

「「会長!」」

「どうしたんですか!?会長!」

 桃たちの問いに杏は口を開いた。

「大洗女子学園と大洗男子学園は8月31日を持って、廃校が決定した」

「「え!?」」「「は!?」」

 その場にいた全員が驚きの表情を浮かべていた。

「廃校に基づき、学園艦は解体される」

 続けて英治が淡々と言い放った。

「戦車道大会で優勝したら廃校は免れるって」

「あれは確約ではなかったそうだ」

「なに!?」

「存続を検討してもいいという意味で、正式に取り決めたのではないそうだ」

 杏の言葉で桃と雄二は膝から崩れ落ちる。

「それにしても急すぎます!」

「そうです!廃校にしろ元々3月末の予定じゃ……!」

「健闘した結果3月末では遅いと言う結果になったそうだ」

 英治も拳を強く握り込み応える。

「なぜ、繰り上がる!?」

 不知火が続けて声を上げた。

「じゃあ、私たちの戦いは何だったんですか!?学校がなくならないために頑張ったのに……」

「納得できーん!我々は抵抗する!学校に立てこもるー!」

「そうだ!こんなの納得できるかよ!」

 桃と雄二は校門のテープに手をかける。

 大洗連合は次々に不服な状況に声を上げた。

「残念だが本当に廃校なんだ!」

 いつもとは異なる杏の真剣な表情に誰もが現実であることを理解していた。

 それでも納得できないと肩を落とす。

「あの……会長。凛祢さんは……凛祢さんはどこですか?」

 みほが絞り出すような声を出した。

 その言葉で、全員が彼の姿がないことにようやく気がついた。

「葛城くんは……」

「葛城は本日付で、転校したよ」

「え?」

 英治の言葉に、みほは動揺を隠せなかった。

 彼の口から思い掛けない答えが返ってきたからだ。

「ちょっと待ってください!転校なんて聞いてないです!」

「そうですよ!こんな時に冗談きついっすよ!」

 翼と八尋が一歩踏み出し声を上げる。

「本当なんだ。葛城の……本当のご両親が見つかったからそっちの家に引き取られることになった」

「そんな……」

「だから、葛城ももういないんだ」

 英治の言葉に更に肩を落とす大洗連合。

 再び各々が声を上げるが

「みんな静かに!……おとなしく指示に従ってくれ」

「会長たちは、それでいいんですか?」

「「……」」

 2人は何も返答はしなかった。

 その手は強く握られていたことに柚子と宗司だけが気づいていた。

「みんな、聞こえたよね。申し訳ないけど、寮の人は寮に戻って」

「自宅の方はご両親と引越しの準備を進めてください」

「あの、戦車と歩兵のみんなの武器はどうなるんですか?」

 みほが問い掛ける。

「すべて文科省預かりとなる」

「そんな……学園艦と凛祢殿を失って、そのうえ戦車や歩兵の道具まで取り上げられちゃうんですか!?」

「「すまない」」

 2人は深々と謝罪した。

 

 

 一方、凛祢は敦子の運転する自動車の車内にいた。

「……」

 静寂の流れる車内で凛祢は、数時間前の事を思い出していた。

 時は遡り、数時間前。

 銭湯から戻った3人を待っていたのは文科省の男、そして照月敦子であった。

「なんで俺たちを?」

「待っていたよ葛城君……これを」

 男はそう言って一枚の書類を凛祢の目の前に出した。

 視線を落とし、その書類に刻まれた文字に目を通す。

「なっ!」

 それは、凛祢のDNA鑑定の結果であることがわかった。

 そして、鑑定の結果、親に当たる人物の欄には「島田千代」の名がある。

「島田、千代?」

 その名を読み上げる。

 聞き覚えはあるが……。

「ご存じではないかな?大学戦車道連盟の家元、島田千代。それがきみの本当の母親だ」

「嘘だ。なんだよ急に……」

 思わずそんな言葉が出てしまう。

 今まで、DNA鑑定なんて何度も受けてきたが、こんな結果が出たことはない。

「そもそも今まで受けてきた鑑定だって――」

「今までの鑑定結果とは違うと言いたいのかな?それはそうだろう。葛城朱音は今まで君の鑑定結果を捏造し続けてきたのだから」

「え?」

「正直、私も驚いたよ。君が今年の全国大会に参加したことで、この鑑定結果が出てきたのだから」

 告げられる言葉に凛祢は言葉が出ない。

 そこで、ふと思い出す。

 リトルインファンタリーで戦っていた時から鞠菜と朱音はすでに日本戦車道連盟の人間だった。

 それに昔の鑑定結果はいつだって鞠菜と朱音から告げられていた。

 その時、すでに結果が捏造されたものであったら?

 いや、そもそもなんでそんなことをする必要があるんだ?

 どう考えても分からない。

 そもそもこの結果にも納得はできない。

「朱音に問いただします」

「その必要はない」

「なんでですか!?」

 凛祢は思わず声を上げた。

「葛城朱音は、今回の件を認めている」

「これは犯罪同然だ。彼女にお前と会う資格はない」

 敦子も真剣な眼差しを凛祢に向ける。

「それに朱音さんはお前が、島田家に引き取られることを望んでいる」

「……わかり、ました」

 今の凛祢にはそういうしかなかった。

 納得できているわけじゃない。

 でも、ここで言い争ってもどうにもならないことはわかる。

「では、この話はここまでだ。照月君、葛城君を連れて行きたまえ」

「ちょっと待って下ださい!葛城は!」

「これは彼とご家族の問題だ。君たちに口を出す権利はない」

 英治の言葉を遮る様に男はそう言った。

「いくぞ、葛城」

「……」

 敦子と共に凛祢はその場を後にした。

「さて、君たちにも話がある。聞いてもらうか」

「……」

 杏は何も言わず男の前に立っていた。

 時は現在へ。

「照月さん。あいつは、この鑑定結果が全国大会に参加したことで出てきたと言った。どういう意味だったんですか」

「大会に参加する際に様々な検査等が行われるのは知っているだろ。その際の結果を朱音さんは操作していた。だが、お前は朱音さんに黙って全国大会に参加した。その結果、検査が朱音さんの目を掻い潜ってしまった。その結果、この結果が出てしまったわけだ」

 説明を聞いて、ようやく理解する。

「だけど、なんで朱音はこんなことを……」

「私にもわからない。このことに関してはサンティたちも知らなかったようだからな」

 敦子は質問に答えるとハンドルを操作する。

 なら朱音は一人でこんなことをやっていたのだろうか。

「もうすぐ島田家に到着するぞ」

「はい」

 結局、どうして朱音がこんなことをしていたのかわからなかった。

 島田邸に到着した凛祢はその屋敷に戸惑いを隠せなかった。

 朱音が大洗学園艦に持っていた家と似ているものの、こちらのほうが圧倒的に大きい。

「きたのね亜凛」

 その名を呼ばれ、凛祢は体をびくつかせる。

 名を呼んだのは灰色に近い色合いの髪に前進赤いスーツに身を包む女性。

「島田さん。ご無沙汰しております」

「照月さん。ここまで遠かったでしょ」

「いえ、そんなことは」

 この女性こそ島田流家元の島田千代である。

 そして、自分自身の産みの親。

「亜凛。待っていたわ、私は――」

「……っ!」

「葛城、何を!」

 凛祢は千代から伸びた手を無意識に振り払っていた。

「そんな名前で呼ばないでください、俺の名は凛祢です。そして俺の親は昔からずっと周防鞠菜と葛城朱音だけです……」

 そう言い残し、逃げるように走り出してしまった。

「おい、葛城!」

「あらあら、嫌われてしまったかしら」

「連れ戻してきます」

「お気になさらず、島田家のことですからこちらで対処いたします」

「……わかりました」

 千代の顔を確認し、問題ないと感じたのか敦子はおとなしく引き下がる。

 30分ほど走り回り、凛祢は噴水のある広場で足を止めた。

 体は走り回ったことでかなり熱を持っており、息も上がっている。

 空いているベンチに腰を下ろし、自動販売機で購入したミネラルウォーターを口に運ぶ。

「……」

 数分ほど経ち、ようやく落ちついたことでポケットから携帯端末を取り出す。

 端末を操作し、電話を掛ける。

 しかし、相手が通話に応じることはなかった。

 それからも何度か試してみるものの、答えは同じであった。

「くそっ!なんで出ないんだよ!」

 イラ立った表情を浮かべる。

 朱音が着信に答えることはなかった。

 メールも送ってみるものの返信はない。

「なんで……」

 視線を落とし、表情を歪ませる。

 朱音の真意はわからない。

 急に島田家が本当の両親と言われても、受け入れられるわけがなかった。

「鞠菜……俺は、どうすればいいんだ」

 弱々しい声がこぼれてしまう。

 日が傾き始め、夕日で世界が赤く染まってきた頃、

「……あの」

「……」

 その声でゆっくりと顔を上げる。

 視線の先には、白と黒を基調としたドレスに身を包む少女が立っていた。

 その見た目から、年端も行かない少女であることはすぐに分かった。

「なにか、用か?」

「いえ、お兄さんが辛そうな顔をしてたので……」

 少女は少し戸惑いながらも言葉を繫げる。

「……関係ないだろ」

「……」

 少女は何も言わず隣に座り込む。

「どういうつもりだ?」

「お兄さん、高校歩兵道で有名な人ですよね。テレビでみたことあります」

 少女は淡々と呟いた。

 こんな年端も行かない少女が歩兵道のことを知っていることに少し驚いてしまう。

「まあ有名になったことで、訳の分からない状況に落とされているんだけどな」

「何かあったんですか?」

 少女の問いに凛祢は正直に答えてしまっていた。

「俺の親は本当の親じゃなくてな。俺のDNA鑑定を操作していたらしいんだ……」

 それからしばらく状況を少女に説明した。

 話を終えると少し気分が楽になった気がした。

「そんなことがあったんですね」

「君には少し難しかったかもね」

「いえ、そんなことはありません」

 するとどこかから着信音が響き渡る。

 凛祢の携帯端末でない。

 少女はポケットから携帯端末を取り出すと、通話に出た。

 数分ほどで通話を終える。

「私、もう帰ります」

「そうか。送っていくよ」

 凛祢は少女と共に広場を後にした。

 しかし、少女の家に到着した凛祢は再び表情が固まっていた。

 そこは先ほど敦子によって連れてこられた島田邸であったのだ。

「君は……まさか島田の」

「はい」

 凛祢の言葉に島田愛里寿は答えた。

 それが島田の血を引く2人の、凛祢と愛里寿との出会いだったのだ。

 顔をなるべく合わせないため外で夕食を終え、島田邸に用意されていた部屋に凛祢はいた。

 布団の上に横になり、天井を見つめている。

「まさか、彼女が島田流家元の娘だったとは……」

 にわかには信じられなかったが千代の溺愛っぷりをみれば、いやでもわかった。

 何より2人は髪の色、瞳の色がまったく同じであった。

 それに、千代の部屋にあった写真には自分の父にあたる人物の写真がある。

 その人物と自分は似た顔立ちと同じ黒髪であった。

 どうやら島田の血を引いていることは嘘ではなかったようだ。

 それでも自分の存在が認知された最大の原因は「超人直感」である。

 島田家と分家にあたる天城家だけが子孫に遺伝してきた強力な直感力。

 その直感は本来、娘にしか発現しないものだったらしい。

 現にいままでの歴史の中で、島田家の男は直感を発現していない。

 しかし、そんな中でもイレギュラーが起きた。

 それが自分の存在だ。歴史上一度たりとも直感を発現しなかったはずの島田家の男が初めて直感を発現した。

 しかも、その直感は歴代でも最大の直感力であったのだ。

「この力は……島田家によってもたらされたものだったとはな」

 自身の直感力は常人のそれとは違うと言うことはわかっていたが、それが遺伝によるものなど考えたこともなかった。

 血統に遺伝した特別な力……。

 凛祢はそう考えていると眠りについていた。

 

 

 大洗女子学園では廃校に向けた撤去作業が進められていた。

「こんな形でこの学校と別れるなんて思わなかったね。もう決議案や予算案の書類、いらないのかな」

「できるだけ、持っていくぞ。これは我々の歴史だからな」

 弱々しく呟く柚子とは異なり桃は必死に書類を整理していた。

「柚子、弱気になっちゃ駄目よ」

「この椅子も持っていくからなー」

 英子が励ますように声を掛けると、杏はいつものような表情に戻っていた。

 ウサギさんチームとヤマネコ分隊は飼育されていたウサギの移動準備。

 アヒルさんチームとオオワシ分隊はそれぞれの部活道具の運び出し。

 カモさんチームとシラサギ分隊は校門前の名札の撤去作業。

 レオポンチームは学園管内の道路を好きなように走り回り、タイガーさん分隊はガレージ内の銃火器の整備にあたっていた。

 カバさんチームとワニさんチームはシェアハウスからの荷物の運び出し。

 アリクイさんチームと日向アインは自宅PCにてネトゲにいそしんでいた。

 自宅がある優花里や塁は家族と引越し作業を進めている。

 華と翼は共に家族に電話をかけている。日常的に花道の教えを聞くため五十鈴家を訪れていた翼の姉弟小鳥と鳥海も慎三郎の声に視線を向けていた。

 沙織は幼馴染である麻子の部屋の片づけを手伝っていた。八尋も付き添っている。

 俊也はかつての不良グループの元に戻っていた。

 そして、みほも引越しの梱包作業を終える。

「これで全部、明日の朝には荷物を残して退艦……凛祢さんどうして何も言わずに行っちゃったんだろう」

 1人だけの部屋でそう呟いていた。

 それでも、彼女の足は学園へと向かっていた。

 ガレージ前に到着したみほを待っていたのは、大洗女子学園の戦車道履修者と大洗男子学園の歩兵道履修者たちである。

「やっぱり隊長も」

「みんな来てますよ」

 ガレージ前に並んだⅣ号、ヘッツァー、キャバリエ、八九式、Ⅲ突、M3、ルノー、ポルシェティーガー、三式中戦車。

 どれも整備が行き届き、いつでも走行できる状態となっている。

 そして歩兵の装備もまた同様である。

「みぽりんいたー」

「お部屋まで行ったんですが、こちらに向かわれた後だったんですね」

 あんこうチームのメンバーも少し遅れて現れた。

「凛祢の家にも行ってみたが、もぬけの殻だった」

「本当にあいつは行っちまったんだな」

「俊也殿もどこいったんでしょうか……」

 続いてヤブイヌ分隊の3人も到着する。そこには凛祢、俊也の姿はなかった。

「みなさんお揃いみたいですね」

「麻子さん、ここで寝るつもりなの?」

「もうお別れかもしれないからな……」

 その言葉で、みな表情を暗くしてしまう。

 そんな静かな校庭に響き渡るのはジェット機のエンジン音だった。

 一斉に周囲を見渡す大洗連合のメンバー。

 校庭に降り立ったのはサンダース大学付属のC5Mスーパーギャラクシーである。

 優花里と塁が思わず声を上げた。

「サンダースとアルバートでうちの戦車と歩兵の装備を預かってくれるそうだ」

「え?」

「大丈夫なんですか!?」

「紛失したという書類は作ったわ」

「これで、みんな処分されずに済むね」

 大洗女子学園の生徒会メンバーの言葉に驚きを隠せないあんこうチームとヤブイヌ分隊。

「おまたせー」

「まったく世話を掛けさせるわね」

「そう言うなって」

 機内からサンダースの隊長であるケイ、アルバートの隊長であるレオン、そして副隊長のアリサとピアーズが降りてくる。

「さあ、みんなハイアップ!」

 大洗連合の戦車と歩兵装はすぐに積み込み作業へと移る。

「そうか。葛城は本当に転校しちまったのか」

「はい……」

 説明を聞きレオンとケイは納得したように頷いている。

「みほたちは、どうするつもり?」

「まだ、わかりません……」

「まあ、出来る範囲で助けてはやる」

 レオンはそう言い残し作業の手伝いに向かう。

 積み込み作業が終わり、再びスーパーギャラクシーのエンジンがかかる。

「確かに預かったわ。移動先がわかったらすぐに連絡を頂戴」

「はい。ありがとうございます!」

「届けてあげるわ」

 大洗連合のメンバーは感謝してもしきれないと言わんばかりに感謝の言葉を述べる。

 戦車9輌に大縣コンテナを積んで、相当の重量であることは明白であった。

 それでも、スーパーギャラクシーは飛び発って行った。大洗連合のすべてを乗せて。

「よかったー。学園は守れなかったけど戦車と歩兵の装備は守れました」

「うん」

 みほも最後まで飛び去るスーパーギャラクシーを見つめていた。

 翌朝、学園艦と別れた大洗の生徒たちはバスに揺られ、次なる目的地を目指していた。

 バスは学科ごとに分かれていくものの戦車道履修者と歩兵道履修者は同じ宿泊施設になるため、纏まっている。

 それでもバス内は静寂が流れていた。

 しばらくして古めかしい建物の前でバスが止まる。

 大洗連合のメンバーはそれぞれバスを降りていく。

「転校の振り分けが完了するまで、ひとまずここで待機となります」

「クラス別に教室が割り当ててある。速やかに移動しろー」

 生徒会メンバーの活動で大洗の生徒たちもそれぞれの宿泊施設に向かって行く。

「きっと会長たちがどうにかしてくれる」

「そうだな。やる時はやってくれる人たちだ」

 桃や雄二も会長である2人を信じていた。

「結局、俊也の奴はどこにもいなかったな」

「トシの奴、本当にどこ行きやがった」

「今は大変な時だって言うのに……」

 一日中、探し回っていたヤブイヌ分隊の3人も日が傾き始めたので宿泊施設に帰還していた。

 そんな時、聞き覚えのあるエンジン音に、大洗連合全員が空を見上げた。

 空には先日送り出したサンダース大学付属のC5Mスーパーギャラクシーが飛んでいる。

 一斉に校庭に繰り出していく生徒たち。

 みな空のスーパーギャラクシーを見つめていた。

 スーパーギャラクシーは積んでいた9輌の戦車と大型コンテナを空中から降ろしていく。

 こうして戦車と歩兵の装備は再びみほたちの元へと返還された。

「とりあえず当面はここで生活できそうだな」

「いいんですかこのままで……」

「こんな場所だが、朝は出席を取って、全員無事なのを確認するように」

 杏が指示する。

「葛城がいない時点で全員無事ってことはないだろ……」

「英治?」

 英治は小さく呟くと一人生徒会室を後にする。

「青葉、ウチの風紀委員はどうした?」

「あっちですっかり腐ってます」

 席で新聞を読んでいた青葉は放送室を指さす。

「おい!風紀委員の癖にだらしないぞ!」

「学園ももうないんだし、私たちの意味なんてないじゃないですかー」

「腐ってしまっているでしょ。風紀委員が青葉しかいなくて大変ですよ」

 抜け殻の様な緑子の様子にいつも悪ふざけをしている青葉もため息をついていた。

「転校手続きが済むまではちゃんとしろ!」

 桃も怒りを露わにしていた。

「ぜんいんしゅうごうー」

「学校なくなったんだから朝起きなくてもいいんじゃないのか?」

「出席は毎日取るんだって」

「トシは居ないんだけどな」

「顔くらい洗え!そど子!」

「まあまあ、そう怒らずに」

 青葉がなだめるように笑みを見せる。

「出席取りまーす。全員いるわねー。はいしゅうりゅーう」

「なんてアバウトなんでしょう」

「青葉君、申し訳ないけど女子のほうの出席取りもおねがーい」

「えー?男子だけでも相当面倒なのに……」

 青葉は仕方ないと名簿を受け取り、出席取りを行う。

 それからも大洗連合は各々で自分たちのやれること、好きなことををして過ごしていた。

 そんな中、深夜のコンビニに東藤俊也の姿はあった。

 後ろには見るからにガラの悪そうな男が数名いる。

 そしてコンビニ前にはルノーが停車していた。

「風紀委員?お前ら何やってんだ?」

「あー、東藤君。ひさしぶりー」

「随分、腐ってんな」

 思わず俊也はそんな言葉を呟いた。

 廃校が決定した瞬間から、大洗に顔を出さず不良たちと絡んでいた自分が言えたことではないが今の緑子たちはそう見えた。

「あなたこそ、そんなガラの悪い人たちとつるんでるの?」

「凛祢がいない上に廃校が決まった大洗に何かできるとは思えないからな。もはや牙も爪もないトラ同然だ。だから俺はやりたいようにやらせてもらってる」

「ふーん。ねえ私たちも混ざっていい?」

「んあ?」

 思い掛けない言葉に俊也は再び視線を緑子に向ける。

「もうどうでもいいのよね。何もかも」

「……好きにしろ。俺たちはこの先の工場跡にいるからな」

 俊也はそう言い残し、その場を後にした。

 

 

 島田邸に来てから数日の時が過ぎた。

 毎日のように凛祢は歩兵道で戦っていた。

 敵歩兵を戦死させ、戦闘終了が告げられる。

「……」

 息が上がってはいたものの勝利したのは凛祢であった。

「流石、島田流の息子!」

「やはり、島田流の血統は伊達ではないな」

 観戦しているのは高校スカウトマンだ。

 どうやら凛祢の名は現在、島田亜凛として世界中に広まっているようだ。

 どこの学校も島田の血統である自分を是が非でも引き抜きたいらしい。

 正直、うんざりしていた。

 こんな風にちやほやされたくて、歩兵道をしていたわけではないのに。

 本日の紅白戦も終了し、凛祢はシャワーで汗を流す。

「……」

 部屋に戻ると2台の携帯端末の内の一台が鳴った。

 鳴っているのは島田家に用意された携帯端末だ。

「はい」

「亜凛。紅白戦で疲れているところ、お悪いのだけど愛里寿を迎えに行ってもらえるかしら?」

 通話に出ると相手は母である千代であった。

「愛里寿を?どこかに出かけているんですか?」

「ボコミュージアムって場所よ。一人だと心配なの」

「わかりました」

 凛祢は通話を切ると部屋に掛けてあった大洗の制服に視線を向ける。

「洗濯中で他の服ないんだよな。まあいいか、これで」

 大洗の制服に身を包み、凛祢は2台の携帯端末を手に玄関に向かうのだった。




今回も読んでいた頂きありがとうございます。
ついに明かされた凛祢の直感の秘密、そしてその血縁関係。
現在凛祢は大洗メンバーとは別行動となっているので、場面がよく変わります。
意見や感想は募集中です。
では次回もよろしくお願いします。
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