ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~ 作:UNIMITES
最近は、執筆の時間が結構とれているので、なるべく早く投稿するように頑張ってます。
第三部 劇場版編も中盤です。
では、本編をどうぞ。
島田邸を出た凛祢は携帯端末のマップ機能を頼りに「ボコミュージアム」の場所を把握する。
「……行くか」
ここ数日、愛里寿とはそれなりに打ち解けていた。
千代も戦車道連盟の仕事で忙しい以上、なるべく愛里寿の近くには自分がいるようにしている。
愛里寿も自分を気にかけている。
凛祢も兄妹というのも悪くないと感じ始めていた。
その頃、みほたちあんこうチームとヤブイヌ分隊の3人は偶然発見したボコミュージアムに到着していた。
その見た目は所々ひび割れ、壁が剥げている部分も見受けられる。
「知らなかった!こんなところがあるなんて!」
「今までで一番テンション上がってるよ……」
みほを追うように沙織たちも歩みを進める。
「八尋、俊也はまだ見つかってないのか?」
「ああ、まったくどこ行ったんだよ。トシのやつ最近はそっちの風紀委員も姿を見ないって青葉先輩言ってたぜ」
「そど子たちも?何か問題に巻き込まれていなければいいが……」
麻子は心配しているのか、そんなことを呟いていた。
中に入ったみほたちを出迎えたのは「ボコ」のオブジェクトである。
「生ぼこだ!かわいい!」
「かわいいか?」
「いや、全然……」
「みほ殿も少し変わってますね」
「粋がる割に弱い」
「それがボコだから」
今まで以上にテンションの上がっているみほを横目にヤブイヌ分隊の3人も苦笑いする。
その後、8人はボコミュージアム内のアトラクションを楽しんでいた。
イッツァーボコワールド、ボコーデットマンション、スペースボコンテに乗り、ついにはボコショーまで見てしまった。
「なあこれ面白いのか?」
「いや、全然……」
「みほ殿、やっぱり少し変わってますね」
3人もため息交じりに後ろの席でショーを見ていた。
「みんなー、おいらに力をくれー」
「ボコがんばれ……」
「もっと力を」
「頑張れ――」
「頑張れボコー!」
みほの声を遮る様に声を上げたのは年端も行かないドレス姿の少女。
負けじとみほも声を上げた。それに続きあんこうチームの4人も声援を送る。
後ろの席で見つめていた3人は無言のままそれを見つめていた。
「きたきたきたー!」
するとボコも急に立ち上がり、パワーが満ち溢れると言わんばかりの姿を見せた。
しかし、ボコられた。
「それがボコだから」
「「あいつは一体何がしたいんだ?」」
八尋と翼が思わずツッコミを入れていた。
凛祢もようやくボコミュージアムに到着していた。
そのボロボロの建物を見て、思わずため息が出る。
「ボコミュージアム。みほが好きなボコのテーマパークだったのか……」
急いできたことで、想定より早く到着した。
そこで、駐車場に止まったⅣ号戦車とキューベルワーゲンが目に入った。
「おいおい、嘘だろ。もしかしてあいつらもいるのか?」
Ⅳ号に描かれた見覚えのあるあんこうのエンブレム。まさにあんこうチームのエンブレムだった。
でも、どうして?
すでに大洗学園艦は出航しているはず。
こんな場所にいるはずが……。
その時、いそいそとボコミュージアムを出てくる亜里寿を発見する。
「愛里寿?おい、愛里寿!」
「……っ!お兄ちゃん!」
愛里寿も凛祢の存在に気づき、こちらにやってくる。
「どうしてここに?」
「愛里寿がここにいるから迎えに行けって千代に言われて」
「お母様が……ありがとう」
愛里寿の顔を確認し、凛祢は再びⅣ号に視線を向ける。
迷っていたのだ。
彼女に会うべきか、会わないべきか。
出航が遅れているとはいえ、あの日からもう1週間は立っている。
今も、本土にいるのが気になっていた。
「これ、気になるの?」
「ああ。愛里寿、少しだけ時間をくれるか?」
「……うん。いいよ」
そう言うと凛祢はボコミュージアム内へと向かう。
中に入るが、想定より広い施設に探し回ってすれ違いになっても困ると考えていた。
「どこから探すべきか……」
「あ、みぽりん!」
「え?凛祢……さん?」
聞き覚えのある声に振り返った。
そこには見覚えのある顔ぶれが揃っていた。
「みほ?それにみんなも……」
「凛祢さん!どうしてここに!?転校したはずじゃ!?」
「みほたちこそ、どうして?学園艦は出航してるはずだろ!?」
2人が言葉を交わしたことで麻子が違和感を感じていた。
「話がかみ合わないな……」
「え?」
「凛祢くん。大洗女子学園と大洗男子学園は廃校になっちゃったんだよ」
「は?なんで!?全国大会で優勝すれば存続するって!」
沙織からの言葉に、凛祢は同様を隠せなかった。
「確約じゃなかったらしくて、結局8月末で廃校になったんです……」
「知らなかった……そんなことになってたなんて」
凛祢は一歩後退し、左手で頭を抱える。
アサルトツェーン第一席である自分がいる学校を連盟や文科省も簡単には廃校にできないだろう。そう思っていた。
だが、第一席がいなければ廃校にすることは不可能じゃない。
すでに全国中に広まった自分と島田の血縁情報。
そして不自然なまでのエキシビションマッチ(8月24日)時点での自分の転校。
これらをすべて偶然で片付けるには話がかみ合い過ぎている。
自分を大洗に戻れないようにした上で、廃校にする。
朱音が自分のDNA鑑定を捏造していたのも、いつかこうなる事を予想していたからなのか?
どうであれ、今の状況は……。
「凛祢。戻ってきてくれないか?」
「そうだぜ、お前がいれば何とかなるかもしれない!」
「凛祢殿!」
八尋たちの眼差しを見れば、分かる。
今がどういう状況なのか。
「凛祢さん!大洗に――」
「駄目だよ」
声を上げたのは後ろにいた愛里寿だった。
そのまま凛祢とみほたちの前に割って入る。
「あなたは、さっきの……」
「お兄ちゃんはもうあなたたちとは関係ない」
「愛里寿……悪いな。今は戻れない、俺はもう葛城凛祢じゃなくなってしまったから」
そう言うと制服についていたネビュラ勲章を外し、みほへと渡す。
「凛祢さん……そんな」
「行こう、愛里寿」
「うん……」
「おい、凛祢!」
「よせ、八尋」
「みほ……ごめんよ」
凛祢はそのままその場を後にした。
こんな別れは辛すぎる。だが、今の自分には彼女を救うことはできない。
みほたちはその場に立ち尽くすしかなかった。
一方、杏と英治は文科省、学園艦教育学局を訪れていた。
「廃校の件は決定したはずですが」
「ですが、優勝すれば廃校は免れると言う約束をしたはずです」
「口約束は約束ではないでしょう?」
杏の言葉を男は否定した。
「判例では、口約束も約束と認められています。民法91条、97条等に記されています」
「可能な限り善処した結果なのです。ご理解ください」
「「……わかりました」」
2人はそう答えるしかない。
例え、善処していようとなかろうと杏たちには確かめる手段はないのだから。
どんなに言葉を並べても、彼の言葉がそうであるなら、そう言うことなのだ。
そして、大洗の生徒たちの宿泊施設では再び生徒会役員の4人が仕事に追われていた。
虫刺されの薬と給食用のお米ストック切れ、廊下の電球が切れるなど様々な問題が出ている。
「あー、本当足りないものばかりですね」
「風紀委員が地元の生徒と喧嘩してます!青葉さんが止めに入ったんですけど駄目みたいです!」
「ちょっと喧嘩の仲裁に行ってくる!」
桃は増える面倒ごとにイラ立ちを見せる。
「桃ちゃん頑張ってるなーって。もっと泣き叫ぶかなーと思ったのに雄二君みたいに……」
「もう駄目だ……おしまいだ……」
視線の先には膝から崩れ落ちている雄二の姿があった。
「そんな暇はない!今頑張らねば、いつ頑張るのだ!雄二、貴様もいつまでも泣くな!喧嘩の仲裁に行くぞ」
「ほーい……」
桃と雄二はそう言い残し、その場を後にする。
「会長たちはどこ行っちゃったんだろうね」
「きっと会長たちには考えがあるんですよ」
宗司も書類を整理してそう言った。
日本戦車道&歩兵道連盟会館に杏と英治の姿はあった。
「文科省の決定したことは我々にも簡単には覆せないんですよ」
「向こうの面子が立たないと言うことですか」
「そう言うことになるかな」
日本戦車道連盟&歩兵道連盟理事長は言いづらそうにそう返答した。
「面子が立たないということでしたら、優勝できるほどの力のある学校をみすみす廃校にしてはそれこそ戦車道連盟および歩兵道連盟の面子が立ちません」
「蝶野君と照月君も連盟の教会員の一人だろ?」
「確かにな、だがな理事長!戦車道と歩兵道に力を入れるという国の方針とも矛盾するのではないか?すでにイメージ落ち始めてるぞ。第一席の転校の件だって相当ブーイング受けてんだからな」
蝶野の言葉に賛成するように意見を述べる敦子。
「う、うーん……」
再び頭を抱える連盟理事長。
「私たちは優勝すれば廃校が撤回されると信じて戦ったんです」
「信じていたその道が、最初からなかったと言われて引き下がるわけにはいかない。俺たちのために戦い、学園を去ることになったあいつのためにも」
杏に続き英治も立ち上がり、自身の意見を述べる。
彼の口した学園を去った者、それが葛城凛祢の事であったことは全員が分かった。
「しかし、今文科省は2年後に開催される世界大会の事で頭がいっぱいだからな。留置するためにプロリーグを発足させようとしているくらいだから……取りつく暇がないよ」
「プロリーグそれですね」
「また無茶する気か?まあ、付き合ってやるけどな」
杏はその言葉に不敵な笑みを浮かべる。
顔を見た英治も何故か笑みを浮かべていた。
「ここは超信地旋回で行きましょ!照月もいいわよね」
「ったく。悪いこと考えるなお前ら」
蝶野と敦子もお互いにアイコンタクトを取る。
一人取り残された理事長はそんな彼女たちの様子を傍観していた。
愛里寿を島田邸まで送った凛祢は本土の大洗町にある照月家を訪れていた。
畳部屋に通され、玄十郎と対面する。
「今日は何用だ?」
「単刀直入に聞きます。朱音はどうして俺の血筋を隠していたんですか?」
「なぜワシに問う?」
「照月教官もサンティさんたちも、血筋の事は知らなかったと言っていました。
俺の考えうる限り、知っている可能性がある人物はあなただけです」
凛祢は曇りのない表情を見せていた。
「……」
「知らないなら、それで構いません。でも、もしも知っているのだとしたら――」
「知っているとも」
「っ!」
凛祢はその言葉に一瞬身体をびくつかせる。
「だが、その答えは、今のお前自身が薄々感じているものではないのか?」
玄十郎はそう口にした。
そして、その答えを教えてくれた。
照月家を後にして再び電車に乗り継ぎ、ある場所を目指す。
外の景色は次々と過ぎ去っていく。
「よし」
電車を降りて、慣れた足取りで山道を進む。
夏も終わり秋の季節だからか、虫もあまりいない。
辿り着いたのは山中にある木造の一軒家。
その家は決して大きいわけではなく、すでに古くなっていた。
ここは、かつて自分と鞠菜が住み、そして時々朱音が宿泊していた家だった。
扉を開き室内に入る。
そこには予想通り彼女の姿があった。
「……り、凛祢」
燃える炎の様な赤い髪と長身長の女性。
しかし、その表情に力はなく、今にも死んでしまいそうだった。
「散々探し回ったぞ。勝手に歩兵道連盟から消えやがって」
朱音に近づく。
「こないでよ!私は、もう駄目なのよ!私は……!」
「もう分かってる。朱音のやっていたことも」
肩に手を乗せる。
「鞠菜が最も嫌うこと『特別扱い』だったよな」
「っ!」
鞠菜が嫌うこと「特別扱い」。それこそがすべての元凶だったんだ。
玄十郎はすべてを話してくれた。
どうやら自分を引き取ってから1年ほどで、鞠菜たちは島田の血を引いていることはわかっていたようだ。
それ自体は大きな問題ではなかった。
だが、歩兵道をすることとなれば話は別だ。
強くなればその力は凛祢自身ではなく、遺伝によるものである……そんな血縁によっての特別扱いが始まるかもしれない。
そう考えた鞠菜は、DNA鑑定の結果を操作させた。
朱音もそれをずっと実行し続けてきた。これが鑑定結果捏造の意図だ。
「まったくとんだ馬鹿親だよ朱音も鞠菜も。でも、俺はずっとそんな朱音たちに守られていたんだな」
凛祢は再び朱音の顔を見つめる。
「恨んでなんてない。むしろ感謝してる。俺をここまで育ててくれたから。本当の親は朱音と鞠菜だから」
「ありがとう凛祢。そう言ってくれて。鞠菜がいなくなって、いつか自分のしていることが公になるのが怖かった……」
朱音は涙を流していた。
初めてだった。朱音の涙を見たのは。
その後も朱音は感謝の言葉を述べ、泣き続けた。
1時間ほどでようやく落ち着いたのか、朱音はベッドに座り込む。
「落ち着いたか」
「ええ。でも、どうしてここがわかったの?」
「これでも結構探し回ったぞ。歩兵道連盟に行ってサンティさんに聞いても行方不明って言われたし……」
「だって……」
朱音は視線を逸らす。
正直、ここくらいしか朱音の来れる場所はないだろうと思っていた。
それも、みほたちに学園艦が解体されてしまった話を聞いていたためだが、
「まあ、見つかったからいいよ。それより大洗廃校の件知っているだろ?朱音は歩兵道連盟に戻ってくれ」
「でも、私はもう歩兵道連盟の理事長じゃ……」
「少なくとも、今はまだ歩兵道連盟の理事長は朱音だ」
サンティの話によれば、次の理事長が見つかるまでは前任者の朱音が理事長の席に着くことになる。
次の人間はまだ現れていない。
「今の俺には、なにもできない。でも、朱音や連盟の大人たちならなんとかできるかもしれない……そうだろ?」
「うん。わかった。やってみる」
朱音もそう言うと、準備を始める。
「後は任せるよ」
凛祢は再び島田邸を目指して走り出した。
そして朱音もまた行動を開始する。
翌日、みほは本土の西住家を訪れていた。
転校手続きのために親の判子をもらいに来ていたのだ。
「みほ」
「……お姉ちゃん!」
ちょうど犬の散歩から帰還した西住まほが優しく名前を呼んだ。
その表情は戦車道をしているときの様な真剣な表情とは異なり、柔らかな表情をしている。
「おかえり」
みほはまほと共に西住邸へと入る。
「いいの?」
「ここはお前の家だ。戻って来るのに何の遠慮がある?」
まほは淡々と言い放った。
「まほ?」
「はい」
「お客様?」
「学校の友人です」
「……っ!」
まほは、まるでみほを守る様に嘘を言い放った。
みほもそんな姉に感謝していた。
半年ぶりに自室へと戻ったみほは何も変わっていない部屋に少し安心感を抱いていた。
「どうした?」
「変わってない……」
そうここは何も変わっていなかった。
昔のままなのだ。
「書類は?」
「これ」
まほの言葉でみほは転校手続きの書類を見せる。
「……ちょっと待ってろ」
まほはそう言い残し部屋を後にした。
一人残ったみほは再び部屋の中を見渡す。
部屋にかけてある黒森峰の制服、棚に置かれた戦車の模型、ベッドにはボコのぬいぐるみ他にもリボン付きのパンツァーファウストなどがある。
机に置かれた姉との2人の写真を笑みを浮かべた。
そして、ポケットからネビュラ勲章を取り出す。
「凛祢さんに……会いたいな……」
悲しそうにそう口していた。
「みほ」
その声で勲章をポケットに押し込む。
振り返るとまほの姿があった。
そして、帰ってきた書類には姉の字である「西住しほ」の名前、西住の判子が押されていた。
「お姉ちゃん、そのサインと判子は?」
「しー……」
しほに黙って書類を記載したことはみほにもすぐわかった。
そんな姉の優しさに自然と笑顔を見せていた。
「本当に駅まででいいのか?」
「うん。ありがとう」
まほの運転で送ってもらっていたみほは遠慮するようにそう言った。
「お姉ちゃん。凛祢さんにも兄妹がいたの。妹さんが」
「葛城凛祢に?いや、今は島田の……」
みほはボコミュージアムでのことを思い出していた。
あの少女は凛祢の事を「お兄ちゃん」と呼んだ。
彼らが兄妹であることは自然と分かってしまったのだ。
「平気か?」
「うん。凛祢さんはもういないけど。私は大丈夫だから!」
みほは空を見上げていたが、まほはその表情がどこか寂しそうであったことに気づいていた。
みほが去った西住家には、一台のヘリが降り立っていた。
「家元。蝶野さんと葛城さん、照月さんがおみえです」
「わかっている」
西住流家元、西住しほは眉一つ動かさず客間に向かう。
蝶野、敦子、そして朱音の話にしほも頷く。
「来年の大会に大洗連合が出てこなければ、黒森峰が叩き潰すことができなくなるわね」
「怖いこと言うわね、しほさんは」
しほの言葉に朱音は皮肉そうに言っていた。
そして、彼女たちも動き出す。
訪れたのは文科省、学園艦教育学局であった。
「若手の育成無くして、プロ選手の育成は成しえません。これだけ考えに隔たりがあってはプロリーグ設置委員会の委員長を私と葛城朱音さんが務めるのは難しいわね」
「葛城さんはともかく、今年度中にプロリーグを設立しないと戦車道と歩兵道大会の誘致ができなくなってしまうのは先生もご存じでしょ?」
「いちいち気に障る言い方するわね!あなた」
朱音が思わず声を上げる。
確かに現在は凛祢の件で表では強く出れない朱音だが、しほや蝶野たちが一緒なら話は別だった。
文科省の男も目の前にいる人選に圧倒されていた。
それもそうだろう。
目の前には戦車道連盟理事長の西住しほ、歩兵道連盟理事長の葛城朱音。
教会員の蝶野亜美と照月敦子。日本戦車道連盟&歩兵道連盟理事長。
大洗女子学園生徒会長角谷杏と大洗男子学園生徒会長相川英治。
合計7人が居るのだから。
「優勝した学校を廃校にするのが、文科省のスポーツ理念に反するのでは?」
「それに、大洗男子からは今年の十傑が選抜もされています」
しほと朱音が更に追い打ちをかけるように声を上げる。
「しかし、まぐれで優勝した学校……それも島田様のご子息がいたとなれば」
「「戦車道と歩兵道にまぐれなし!あるのは実力のみ!」」
しほと朱音が初めて一致した答えを出した。
「それに、葛城凛祢は島田の子であることは、つい先日まで公にはなっていなかった。これまで彼は他の生徒とは変わらない普通の教育を受け、血の滲むような努力をしてアサルトツェーン第一席になったのです!あなたは彼の努力を、否定するおつもりですか?」
しほは湯飲みを力強くテーブルに置いた。
その答えに朱音だけでなく敦子も少し動揺していた。
彼女の口から凛祢を擁護する言葉が出てきたからだ。
「どうしたら認めていただけるかしら?」
「まあ、大学強化チームに勝ちでもしたら……」
「わかりました!勝ったら廃校を撤回していただけますね!」
杏は身を乗り出すように声を上げる。
「へぇ?」
「今ここで覚え書きをしてください!噂では口約束は約束ではないと聞いたのでー」
続いて皮肉たっぷりな声で英治が紙とペンをテーブルに起き、一歩踏み出す。
その後ろではしほたち4人は満足そうな表情をしていた。
そして、次にしほと朱音が向かったのは……島田邸であった。
千代から客人がくることを聞いていた凛祢はお茶の準備を進めている。
「家元襲名、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「……」
室内には島田千代、西住しほ、葛城朱音の姿がある。
「失礼します」
すぐに凛祢が入室し、3人の前に紅茶を置く。
「凛祢君にも話があるから、残ってくれるかしら」
「は、はい……」
しほの言葉で凛祢も席に着く。
正直、彼女の意図はわからない。
それにどうして今日ここにやってきたのかもわからなかった。
「ここは、ぜひ大学強化チームの責任者である島田流家元にもご了承をいただきたいと思いまして」
「わかりました。こちらもやるからには手加減いたしません」
話を聞く限り大洗連合が大学強化チームと試合をすると言う話のようだが。
その意図は勝利できれば大洗女子学園、大洗男子学園が復活することにあった。
これで安心だ。これなら……なんとか。
「そして、もう一つ。凛祢君にも、この試合に参加していただきます」
その言葉で凛祢は思わず立ち上がった。
大洗連合と大学選抜の試合に参加する……それは
「ちょっと待ってくれよ!それはつまり、俺に大洗連合のみんなと戦えってのか!?無理だ!俺はみほと大洗連合の皆のためにしか戦わない!そう決めたんだ、だからもう」
「話は最後まで聞きない。凛祢くん。あなたにはこの試合、大洗連合の生徒として戦ってもらいます」
「え?」
「それはどういうことかしら?」
朱音の言葉に千代が質問する。
「この試合をするにあたり、必須条件の一つに大洗連合が本来の力を発揮できることが含まれます。そのためには、彼が大洗連合側で戦う必要がります」
「いいでしょう。こちらも不完全な相手と戦っても目覚めが悪いですから。その条件でも結果は変わらないとは思いますが」
これも千代は了承した。
「じゃあ、俺は……」
「凛祢、大洗のみんなと合流しなさい」
朱音はそう言い残し、しほと共にその場を後にする。
「ありがとう朱音、ありがとうございます西住しほさん」
やはり朱音は凄い奴だ。こんな条件を取り付けるなんて。
凛祢も急いで部屋を後にする。
時を同じくして大学強化チームは紅白戦を行っていた。
白チームの戦車はその真っ白な砲で敵戦車を走行不能にする。
まもなく赤チームの戦車全てが走行不能となったことで白チームの勝利となる。
「調教終了……史郎さん、そっちは?」
愛里寿がそう呟く。
「こちらも終わりましたよ」
白い髪と黒の瞳、その手には二丁の銃が握られている。銃身と銃床が短く2連装の銃口を持つ「ソードオフショットガン」である。
そして彼の周囲には10人を超える歩兵が戦死判定を受け倒れていた。
彼の名は天城史郎。現大学強化チームの歩兵隊長である。
「さすが、変幻自在の戦術と黄金世代の歩兵」
「忍者戦法と呼ばれるだけあるわー。それにG(ゴールド)フォースの隊長であることは伊達じゃない」
「日本戦車道と歩兵道をここにありと知らしめた島田流戦車道の後継者とそれを守護する天城家の長男」
バミューダの3人も口を揃えて二人を見つめる。
「史郎なら一人でも大丈夫だからな」
「俺ももっと張り合いのある戦いをしたいものだ」
「スクワッドジャムも今年はあまり楽しめませんでしたからね」
バミューダの随伴歩兵である3人も思わず口を滑らせる。
彼らこそ第四次スクワッドジャム優勝チーム「Gフォース」のメンバーである。
愛里寿もキューポラから身を乗り出し、懐中時計を見つめる。
「もう始まってる……よかった録画しておいて」
「愛里寿、どうかしましたか?」
「気にする必要はありません……」
「先ほど家元から連絡があったようです」
「母上から?」
史郎の言葉に愛里寿も急ぎ、帰還するのだった。
すでに凛祢は島田家を後にしていることは今の彼女には知る由もなかった。
読んで頂きありがとうございます。
いよいよ、劇場版編も大詰めを迎えていきそうですね。
ついに凛祢とみほたち大洗連合の道が交差する。
凛祢の道の終着点とは?
次回もなるべく早く投稿できるようにします。
意見、質問も募集中です。
では、また次回のお話で。