ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです。
今回で、凛祢と大洗連合の道が交差します。
では、本編をどうぞ。


第38話 復活の大洗連合!

 島田千代から連絡を受けていた愛里寿は受話器を手に取っていた。

「徹底的に叩きのめしなさい。西住流の名が地に落ちるように」

「試合の件は了解しました。こちらにもお願いしたいことが」

「お願い?」

 愛里寿の言葉に思わず千代も質問を返す。

「私が勝ったらボコミュージアムのスポンサーになってほしいの……このままではたぶん廃館になっちゃうの」

「しょうがないわね」

「お母様ありがとう」

 亜里寿は母の言葉に安堵したような表情を浮かべ、受話器を置いた。

「私が助けてあげるからね」

 ボコに優しくそう言うと愛里寿は部屋を後にした。

 外には史郎の姿があった。

「家元はなんと?」

「数日後に試合がある……歩兵の方にも準備を進めるよう指示をお願いします」

「そうですか……」

 史郎は一言だけ口にすると愛里寿と別れる。

 

 

 日が傾き始め、みほたち大洗連合の宿泊していた施設も夕日で赤く照らされていた。

 二宮金次郎によく似た像は頭から伸びるあんこうのような明かりに光を灯す。

 河嶋桃は雄二と共に物品の整理にあたっていた。

「うぐぐ……」

 桃は荷馬車を引いて、一歩一歩と歩みを進める。

「本当に頑張るな……桃さん」

 後ろから荷馬車を押している雄二も思わず口走る。

 あと数メートルで粗大ごみの回収場所に到着すると言うところで、荷馬車がつまずき備品が一斉に桃に降りかかる。

「おいおい、大丈夫かよ……」

「ああ、このくらいで……」

 なんとか立ち上がり、いつもの強気な性格を見せる。

 しかし、桃は視線の先に写るものに釘付けとなった。

 雄二も続くように視線を向けた。

「「会長……?」」

「ただいま」「今戻った」

 杏と英治の一言で桃は目を潤ませ、一気に泣き叫ぶ。

「会長ー!うう、うう」

 そんな桃の頭を杏は優しくなでてやる。

「遅くなって悪かったな」

「いえ、戻られたと言うことは得た物はあったと?」

「ああ。相当、無理してきたけどな。忙しくなるぞ」

 英治も雄二の肩を軽く叩き、生徒会室へ向かう。

 そして、施設内と施設周辺に放送を始める合図が響く。

 その音に大洗の生徒たちは一斉に行動を止めた。

「非常呼集、非常呼集!会長たちが帰還されました。戦車道受講者および歩兵道受講者は直ちに講堂に集合!繰り返します」

 そのアナウンスで大洗連合の各々は一斉に動き出す。

 戦車のメンテをしていたレオポンチームとタイガーさん分隊。

 Ⅲ突の周辺にテントを張っていたカバさんチームとワニさん分隊。

 筋トレにいそしんでいたアリクイさんチームと日向アイン。

 バレーとバスケの練習を終えたアヒルさんチームとオオワシ分隊。

 そして、実家に帰省し、今戻ってきたであろうあんこうチーム、オオカミチーム、ヤブイヌ分隊の3人。

 そんな中でも動いていないものはいた。

「トシさん。呼ばれてるけど行かなくていいんすか?」

「いいんだよ、別に」

 元ヤブイヌ分隊所属の東藤俊也である。

 彼は廃校が決定してから一度も大洗連合のメンバー、クラスメイトと顔を合わせていなかった。

 ここ数日何をしていたかと言えば……

「そうは言いますけど、トシさん。流石に草野球してて授業も出てないのはまずいんじゃ」

「何言ってんだ。歩兵道で3倍単位もらってんだから出席率が2分の1でもお釣りがくることぐらい小学生でもわかるだろ」

 俊也はキャッチャーをしていた男にボールを投げる。

 ここ数日彼は不良時代の仲間と純粋に野球を楽しんでいたのだ。

「俺たちは確かに野球の楽しさをトシさんに教わりました。でもトシさんは歩兵道ってやつの楽しさを知ったんじゃないんですか?」

「っ……生意気言ってんじゃねーよ」

「す、すいません」

「ったく。面倒くせーな」

 そう言うとトシはグローブを仲間に押し付け、一人講堂へと向かう。

「トシさん変わったよな」

「無闇に手をあげなくなったな」

「これも歩兵道のおかげなのかもね」

 ガラの悪そうな不良たちも思わずそう呟いた。

 そして、釣りによって魚を集め、焚火で調理する。

 完全にサバイバル生活を満喫していたウサギさんチームとヤマネコ分隊。

「なんか変な声聞こえない」

「うるさいよねー」

「こわーい」

 桂里奈や礼、あやがそう口にしていた。

 十数分で講堂には大洗連合が揃っていた一部を除いて。

「トシー!テメー一体どの面下げてここに来やがった!?」

「やめろって八尋」

 姿を全く見せていなかった俊也に八尋が掴みかかろうとするが、翼が止めに入る。

「別にどうでもいいだろ」

「俊也、あえて今まで何してたのかは聞かない。でも、今ここにいるってことはお前も歩兵道受講者であるんだな」

「戻ってくると信じていましたよ!俊也殿!」

「いちいちうるせーよ」

 俊也は呆れたように頭を掻く。

「全員揃ったな!?」

「カモさんチームが来てませーん」

「なにー?!」

「あいつら何やってんだよ……こんな時に」

 メンバーがそろっていない事に桃、雄二は声を上げる。

「数日前から行方不明なんですよねー。風紀委員は青葉だけになってます」

 青葉も気の抜けた声で返答する。

「はぁ、面倒くせーな……」

 戦車道、歩兵道受講者の中でも唯一、風紀委員である緑子たちの居場所に心当たりのある俊也は再びため息をついた。

 数日前に、俊也が教えた場所に彼女たちがいる可能性は高いだろう。

 一人、背を向け歩き出す。

「どこに行くつもりだ?」

「風紀委員を連れ戻しに行くんだよ」

 麻子が問い掛ける。

「心当たりあるんですか?」

「まあ、一か所だけ……」

「では青葉も行きます!同行させてください!」

「私もあいつらの、風紀委員の遅刻を取り締まりに行く」

「好きにしろ……」

 青葉と麻子もそう言うと後を追いかける。

 10分ほど歩き、見た目が古くなった工場跡に到着した。

「こんな場所にいるのか?」

「ここにいねーなら、後は知らん」

 俊也は吐き捨てるように言うと、重々しい扉を開く。

 工場内には見るからにガラの悪い生徒たちの姿がある。

 しかし、俊也の姿を確認するとすぐに視線を戻し会話を始める。

「うわー、怖そうな人たちばっかりですねー」

「全員、喧嘩で下してるから安心しろ」

「俊也、本当に喧嘩強いんだな」

 そんな会話をして、工場内を歩き回ると彼女たちの姿はあった。

 大洗女子学園の制服におかっぱの髪型、そして顔をのよく似た3人組。

 風紀委員の緑子たちである。

「本当にいやがった」

「まったく遅刻遅刻と言っていたくせに――」

「そど子さーん!」

 誰よりも早く動いていたのは青葉だった。

 緑子の肩を掴み、顔を近づける。

「何か用?」

「……!」

 その表情を見て、少し動揺する。

 多少は変化していると思っていたが、数日前から腐っていた様子に変化はない。

「そど子さん!いい加減目を覚ましてくださいよ!いつまでそうやって腐っているつもりですか!?」

 青葉は真剣な表情で声を上げる

「……」

 しかし、そど子の様子に変化はない。

「青葉……」

「……」

 麻子と俊也も静かにその様子を見つめていた。

「こんなのあなたらしくないですよ!青葉は、いつも風紀を取り締まっていたそど子さんが好きだったんだですよ!」

「な……何言ってんのよ青葉くん!す、好きってそんないきなり!」

 青葉の叫びに、緑子は顔を赤くして動揺した表情を見せた。

「それに、それに……」

「なに……?」

「青葉がボケた時、そど子さんがツッコんでくれなきゃ寂しいじゃないですかぁー」

 いつもの気の抜けた声に俊也と麻子も思わず「は?」という声が出る。

「なんでそうなるのよ!」

「あだー!」

 緑子はどこからともなく出したスリッパで青葉の頭を叩く。

「まったく青葉くんはー……って、冷泉さんに東藤くん?こんなところで何してるの?」

「どうやらいつもの様子に戻ったようだな」

「今ので戻るのかよ」

 緑子はきょとんとした表情で二人を見る。

 俊也も呆れたようにため息をついた。

「と、とにかく今までのことは忘れなさい!戻るわよごもよ、ぱぞみ!」

「「待ってよそど子」」

 緑子を追うようにぱぞみとごもよも工場を後にする。

 その場で伸びている青葉を俊也が見つめた。

「ったく。夫婦漫才かよ」

「同感だな……」

 俊也が伸びていた青葉を背負うと二人も招集を掛けられた講堂へと戻るのだった。

 講堂に戻り、あんこうチーム、ヤブイヌ分隊、カメさんチーム、カニさん分隊、アヒルさんチーム、オオワシ分隊、カバさんチーム、ワニさん分隊、ウサギさんチーム、ヤマネコ分隊、カモさんチーム、シラサギ分隊、オオカミチーム、レオポンチーム、タイガーさん分隊、アリクイさんチームのメンバーが揃ったことを確認すると改めて杏が話を始める。

「みんな!試合が決まった!」

「「試合!?」」

 その言葉に全員の視線が英治と杏に集まる。

「相手は大学強化チームだ」

「え?!」「なんだと!?」

 大洗連合の全員が声を上げた。

 みほも視線を落とし、凛祢のネビュラ勲章を見つめる。

「大学強化チームとの戦いに勝利できれば、今度こそ廃校は撤回される!」

「文科省局長から稔昌も取ってきた。戦車道連盟、大学戦車道連盟、大学歩兵道連盟、高校戦車道連盟と高校歩兵道連盟の認証ももらって来た」

 杏の言葉に合わせて、英治が書類を全員に見せる。

「「さすが、会長方!」」

「やっぱりちゃんと動いてくれていたんですね!」

「英治……貴方という人は」

 生徒会メンバーの4人も歓喜するように声を上げる

「会長!もう隠していることはないですよね?」

「ない!」

「勝ったら本当に廃校撤回なんですね!」

「そうだ!無理な戦いだってことはわかっている……」

 杏と英治はステージを下りる。

「「だが、必ず勝って!みんなで大洗に、学園艦に帰ろう!」」

「「おおー!」」

 2人の言葉でより、大洗連合はより声を上げた。

「がんばりましょう!」

「やるしかないしな」

「「おおー!」」

「あんたもおーとかいいなさいよ!」

「はいはい」

 あんこうチームのメンバーも声を上げる

「おー!」

「青葉、お前いつの間に」

 いつ目を覚ましたのか青葉も俊也の背中で声を上げていた。

「西住殿……」

「うん……」

 優花里とみほは少し不安そうな表情を浮かべていた。

 そして、凛祢のネビュラ勲章を強く握りしめていた。

 

 

 翌日、大洗連合の車長と分隊長は生徒会室で作戦会議をしていた。

 優花里と塁の持ってきた情報を確認したことでざわめきが走っている。

「社会人を破ったチーム!?」

「いくらなんでも無理ですよ!」

「無理は承知だよー」

 そんな意見が飛び交っていた。

「西住はどう思う?」

「選抜チームの隊長どこかで見た気が……」

 雄二の質問に返答するみほだが

「俺の妹だ。島田愛里寿」

「ああ、凛祢さんの……え?」

「な!」「へ!?」

「葛城!?」「お前、なんで!」

 生徒会室の扉をくぐり現れた凛祢の姿を確認し、その場の全員が驚いていた。

「凛祢さん……」

「みほ……」

 彼女の、みほの顔を確認して少し安心した。

「ちょっと待て!葛城どうして!」

「そんな幽霊でも見たような顔するのやめてください。短期転校の手続きをして、ここに来ました」

「短期転校……?」

 書類を杏に見せる。

 それから、ここに、大洗のみんなのところに戻ってきた経緯を説明した。

 自分が次の試合に大洗連合として参加すること。

 そのために短期転校することになったこと。

「という訳で、俺は晴れて大洗連合の元に戻ってきたんだ」

「そういうわけか」

「それでもこの誤算は嬉しい誤算だよ。葛城くん、君が加われば私たちの勝機もグンと上がる!」

 納得した英治の隣で杏も喜びの表情を浮かべる。

「まさか、愛里寿が相手だとは思わなかったけどな……」

 凛祢も情報を確認する。

 書類には大学強化チームの情報……愛里寿と天城史郎のこととチーム全体のことがかかれている。

「天才少女って呼ばれているらしいな。飛び級したらしい」

「年は僕たちより下なのに大学生ですか」

 カエサルとアーサーが興味深く書類を見つめる。

「島田流家元の娘なんだよね」

「でも、こちらには西住流家元の娘である西住さんと凛祢がいるわ!」

 ねこにゃーの意見に対抗するように英子が声を上げる。

「つまり、これは島田流対西住流の対決でもあるんだよなー」

 その場で誰も凛祢を島田とは呼ばなかった。

 彼女たちの優しさであるのだろう。

 なにより、大洗連合にとって葛城凛祢こそが仲間なのだから。

「で、相手は何輌出してくるんですか?」

「30輌……」

「歩兵も限界の180名出してくるだろう」

 みほと凛祢の返答に全員動揺する。

「「え!!」」

「もう駄目だ……おしまいだ……」

「西住からも勝つのは無理だと伝えてくれ!」

 膝から崩れ落ちる雄二と桃。

 それもそうだろう。

 現在の大洗連合は戦車が9輌しかない。

 歩兵だってオオカミチームやアリクイチームの様に1人しかいないチームもある。

 これでは、圧倒的に戦力差があった。

 それに、個人の実力だって相当なものだろう。

 大洗連合が勝利する可能性は100分の1いや、1000分の1の確率かもしれない。

「確かに、今の状況では勝てません。でもこの条件を取り付けるのだって大変だったはずです。それに、ここには大洗のみんなと凛祢さんがいます!」

「みほ……」

 凛祢は、みほを見つめる。

 彼女もこちらを見て笑みを浮かべた。

「戦車に通れない道はありません。戦車は火砕流の中だって進むんです!勝てる方法を探しましょう」

「そうね。考えてみれば全国大会だって逆境ばかりだったじゃない!」

「だな。歩みを止めない限り道は続くんだ!歩みは止めない、みんなで明日を迎えるために」

 英子と凛祢も奮い立たせる言葉を告げる。

 その言葉で、大洗連合は、より士気を上げるのだった。

 その後、大洗連合は試合会場に向かう貨物船に乗り込む。

 しかし、試合に向かっていた大洗連合に予想外の情報が転がり込んできた。

 その情報に、大洗連合の全員が動揺の表情を見せる。

「殲滅戦……だと?」

「あの、30輌に対して9輌で、その上突然殲滅戦というのは!」

 そう。試合ルールが殲滅戦であると言うことだ。

 全国大会ではフラッグ戦。つまりフラッグ車を守り、敵フラッグ車を撃破出来れば勝利できた。

 しかし、殲滅戦は違う。

 敵戦車をすべて走行不能にさせることで勝利となるのだ。つまり敵戦車を全滅させること。

「予定されるプロリーグでは殲滅戦が基本ルールとなりますので、それに合わせていただきたい」

「大会ルールは殲滅戦で進めているんだって……」

「辞退するなら早めに申し出て下さい」

「っ!なんだよそれ!」

 文科省の男が去った後、不知火は壁に拳をぶつける。

 

 

 試合前日の夜、みほと凛祢は2人で試合フィールドを確認していた。

「苦労かけるね」

「すまないな2人共」

 その声に振り返ると杏と英治の姿があった。

「いえ……」

「どうする、明日の試合。辞退すると言う選択肢も――」

「それはありません。退いたら道はなくなります」

「可能性は低いかもしれない。だけど0じゃない。会長たちだってそう思ったから、試合条件を取り付けたんでしょう?」

 その言葉に安心したのか杏と英治は笑みを見せた。

「厳しい戦いになるな」

「私たちの戦いはいつだってそうでした」

 4人は空を見つめていた

「じゃあ、俺たちも戻る2人も早めに帰るんだぞ」

「はい」

 杏たちがいなくなり、2人だけとなる。

「凛祢さん……これ」

「……ネビュラ勲章」

 みほが差し出したのは、凛祢が全国大会で獲得し、数日前に彼女の託した十傑の証ネビュラ勲章だった。

 もう戻ることはできないだろうと、そんな別れの意思表示で託したものだ。

「持っていてくれたのか」

「はい。これは私たちのつながりだったから」

 ネビュラ勲章を受け取る。

 これで、正真正銘アサルトツェーン第一席、葛城凛祢に戻ることになる。

「みほ。今度こそ、みほの居場所を俺は守るよ」

「私だけじゃありません。学園の皆の、凛祢さんの居場所でもあります」

「……そうだな」

 その言葉がうれしかった。

 自分の居場所はここだったのかもしれない。

「みほ、好きだ」

「私も、凛祢さんのこと大好きです」

 2人はその言葉と共に、唇を重ねていた。

 数秒の間お互いの存在を感じた後、唇を離す。

「……キス、しちゃいましたね」

「嫌だったか?」

「いえ、私たち恋人同士じゃないですか」

「そうだったな。勝とう、俺たちみんなで」

「はい!」

 頬赤く染め、再び空を見上げていた。

 こうして、決戦前夜の夜は過ぎていくのだった。

「ふー、なんとか間に合いましたね……」

「サンティちゃん、無理させてくれるねー。十傑全員の学園艦に訪れるなんてさ」

 ヘリの中で疲労した顔を見せる平賀孫市。その隣にはサンティ・ラナの姿ある。

「ごめんなさい。無理させちゃって」

「いやいやー。私はサンティちゃんのためなら下着姿で戦車にも挑んじゃうよ」

「流石にそれは引きますね」

「そんなー」

「ふふ……凛祢くん、私にできる事はここまでです。忘れないでください、君の戦いが無駄ではなかったこと。戦場の友は必ず君の助けとなる」

 サンティは暗い空に輝く月を見つめていた。

 そして、各地から大洗連合と大学強化チームの戦うフィールドを目指す車両、ヘリ、列車の姿もあった。

「お茶会楽しそうだよ」

「刹那私議には賛同できないね」

「それでも行くんだろう?」

「凛祢の為にな」

 ミカたち継続高校と、司たち冬樹学園の6人も同様にフィールドを目指していた。

 

 

 翌朝、試合開始時間となりみほと凛祢はあいさつのために草原を歩いていた。

「敵を三角地帯におびき寄せて各個撃破して……」

「みほ、落ち着け。大丈夫、俺が守るから」

「はい!」

 そう言ったが自分も緊張していた。

 この試合はそれほど重要な一戦であると言うことなのだ。

 緊張と不安を隠せない2人がようやく指定位置に到着する。

 目の前には、すでに妹である島田愛里寿と分家の長男である天城史郎の姿があった。

「では、これより。大洗連合対大学選抜チームの試合を始めます」

「それでは、両チーム礼!」

「「よろしく――」」

「ちょっと待ったー!」

 聞き覚えのある声が試合開始合図の礼をかき消した。

 視線を向ける。

 その先にはダークイエローの戦車が4輌とキューベルワーゲンが4輌確認できた。

 ティーガーⅠにティーガーⅡ、パンターG型が2輌の合計4輌の戦車。

「お姉ちゃん!?」

「聖羅なのか?」

 近くで停車すると車内から黒森峰連合の西住まほ、逸見エリカ、黒咲聖羅、星宮悠希が降りてくる。

 いずれも大洗女子学園と大洗男子学園の制服に身を包んでいた。

「大洗女子学園、西住まほ」

「同じく逸見エリカ」

「大洗男子学園所属、アサルトツェーン第二席、黒咲聖羅だ」

「同じく、第八席、星宮悠希……です」

「以下18名と歩兵15名。試合に参戦する!短期転校の手続きも済ませてきた。連盟の許可も取り付けてある」

 まほや聖羅の言葉に驚きを隠せなかった。

 短期転校の書類だって自分が提出したものと同様の物であったためだ。

「お姉ちゃん、黒咲さん。ありがとう……」

「聖羅、お前……」

 みほだけでなく、そして凛祢も感謝するように彼女たちを見つめた。

 これによって大洗連合に戦車4輌と歩兵15名が加算される。

「戦車や歩兵の装備まで持ってくるのは反則だ!」

「みんな私物なんじゃないですか?私物が駄目ってルールありましたっけ?」

「卑怯だぞ!大体葛城凛祢の参戦だって――」

「まあまあ、そう言わず!」

「そうですよー」

 文科省の男の発言を遮る様にサンティと孫市が現れる。

 続けて現れたのはグリーンの戦車が3輌とジープが3輌(歩兵18名)。

 シャーマンやファイアフライである。

「私たちも転校してきたわよ!」

「今からチームメイトだ!」

「覚悟なさい!」

「アサルトツェーン第九席、レオン・ハード。大洗男子に転校した!」

「ジルバレンタイン、クリスレッドフィールド助けに来たぞ!」

「まだ言っているんですか。ブラッド」

 サンダース&アルバート連合の6人も転校したことを告げる。

「サンダースとアルバートが来た!」

「黒森峰連合にサンダース&アルバート連合が加わってくれるなんて!」

「鬼に金棒」

「虎に翼……」

「凛祢にヒートアックスだな」

 塁や沙織、麻子に続き俊也が言った。

 続けて現れたのは、迷彩色に彩られた戦車4輌と4輌のGAZ-47(歩兵16名)。

 T-34/85が2輌に、IS-2とKV-2が各1輌である。

 ロシア製であると言うことはプラウダ&ファークト連合。

「もう一番乗り逃しちゃったじゃない!」

「誰かさんがいつまでも寝てて動けなかったためだろーが」

「右に同じ」

 ヘッドフォンを点けているのに呟くエレン。

「まあ来たくて来たわけじゃないんだけどね!」

「でも、一番乗りして、かっこいい所見せたかったんでしょう?」

「いちいちうるさいわね!」

「大洗男子所属、第四席、リボルバー・アルベルトおよび第五席、スナイパー・エレン、同志ガングート、これより盟友ために参戦する!」

 アルベルトが声を上げる。

 次は、イギリス製戦車3輌とSaSジープ3輌(歩兵15名)であった。

 チャーチルにマチルダ、クルセイダーが各1輌である。

「やっぱり試合には、いつものタンクジャケットで挑みますか」

「じゃあ、どうして大洗の制服そろえたんですか?」

「みんな着てみたかったんだって」

「まあ、いいじゃないか。これはこれで悪くない」

「確かにな」

「俺はアルフレッドと同じ制服なんて……」

「今の彼はアーサーですよ。モルドレット」

 聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合もいつもの様子で会話をする。

「大洗男子所属、第六席、ケンスロットこれより大洗の剣となる!」

 ケンスロットも宣言するように声を上げた。

「グロリア―ナやプラウダまで!」

「アルベルトにケンスロットか!」

 みほと凛祢は再び声を上げる。

 次は……その小さな車体は戦車と呼ぶには小さいだが、それも戦車なのだ。

 カルロベローチェとSPA TM40(歩兵3名)各1輌。アンツィオ&アルディーニ連合である。

「大洗諸君!ノリと勢いとパスタの国からドューチェ参上だ!恐れ入れ!」

「葛城ー!アサルトツェーン第七席にしてイタリアの伊達男!三日月咲夜もといメッザルーナ参戦させてもらうぜ!」

「「今度は間に合ってよかったすね」」

「カバさんチームのたかちゃーん来たわよー」

「ひなちゃん!……カエサルだ!」

 カエサルは顔を赤くして返答する。

 続けて現れたのは、銀色の装甲を持つ戦車「継」の文字が印象的なBT-42とジープ(歩兵3名)が各1輌。

「みなさんこんにちはー。継続高校から転校してきましたー」

「なんだかんだミカは凛祢たちを助けるんだよね」

「俺たちのかつての仲間だからな」

「そうっすよ!」

「違う、風と一緒に流れてきたのさ」

「風とはエレンと気の合いそうなこと言うな……第三席、ヴィダール!我々もこの試合に参戦いたします!」

 ミカやミッコ、アキの3人にヴィダール、司、アンクたちも参戦する。

 そして、最後に現れるのは――

 その数は以上に多い。知波単学園の戦車である九七式中戦車とクロガネ四駆がそれぞれ21輌。

「お待たせいたしました!昨日の友は今日の盟友!勇敢なる鉄自身、21輌参戦であります!」

「増員は私たち全員で21輌と言ったでしょう?あなたのところは5輌!」

「やっぱり間違ってたのか……これだから知波単は。我が名は織田信光!イレブンではあるが、盟友として参戦する!」

 西と信光もより大きな声を上げて参戦を報告する。

 戦車5輌と駆動車5輌(歩兵20名)となった。

「みんな……」

「俺たちが戦いで培ってきた絆は無駄じゃなかったんだな」

 2人は感謝の思いでいっぱいだった。

 好敵手、戦友、盟友、それぞれ形は違えど凛祢やみほ、大洗連合と戦い、今この場に駆けつけてくれたのだ。

「試合直前で、選手増員はルール違反じゃないのか!?」

 文科省の男も状況の変化に焦っているのか蝶野に連絡を取る。

「意義を唱えられるのは相手チームだけです」

「「我々は構いません。受けて立ちます!試合を開始して下さい」」

 愛里寿、史郎は自信があるのか、大洗連合の大幅な増員にもまったく動じていなかった。

 こうして、大洗連合は様々な高校チームを取り入れた大型連合チーム「八校連合」となったのだ。

 車両数は戦車30輌、歩兵も全120名まで増員されていた。

「いこう、みほ。俺たちみんなで!」

「はい、わたしたちの戦車道と歩兵道で!」

 あいさつを終えた2人も作戦会議のため、いそぎ陣地へと戻るのだった。

 大洗に集った戦士たちと共に。




今回も読んで頂きありがとうございます。
ついに、開始される八校連合VS大学選抜チームとの試合。
十傑の全員が集い、戦力差を、ほぼ五分まで持ち込みました。
大洗連合は勝利することができるのか?
次回から数話は参戦することとなった黒森峰やファークトの歩兵たちの紹介を、やっていきます。
では、また次回のお話で。
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