ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~   作:UNIMITES

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初感想をいただきとても嬉しかったです。
今回から本格的なバトルを描きます。
読んでいただけたら嬉しいです。


第4話 歩兵戦車部隊&円卓の騎士(ナイトオブラウンズ)

 作戦会議から三日後の日曜日。

 朝六時に歩兵部隊と戦車部隊員は大洗女子学園の校門前に集まっていた。

「ふぁぁー眠い」

「四時に起きて朝練はきついな……」

「でも、コンディションはばっちりですね」

「こっちは朝から気分最悪だ……」

 あくびをしている八尋と翼、その様子を見ている塁。俊也も今朝からトレーニングに付き合わされ不機嫌そうに缶コーヒーを飲んでいる。

「それにしても昔使ってた大洗の特製制服で大丈夫かな?」

「それに関しては大丈夫だ。整備部に言ってしっかりと安全確認をして仕上げてもらってる」

 凛祢も昔の特製制服を着用しながら呟くと英治もブレザーを着ながら言った。

 ヒートアックスの入ったバックパック、ファイブセブン、コンバットナイフ、手榴弾を装備する。

 歩兵部隊員が着替えと武装の装備を終えて、ガレージ前で戦車部隊たちを待っていた。

「アーサー、その剣何?」

「ん?これか。整備部に頼んで作ってもらった刀剣武器『カリバーン』だよ、使用がいきなり実戦だから心配なところはあるけど……」

 ジルが問いかけるとアーサーは腰に下げている金属製の刀剣に手を当てる。

「本当に大丈夫なのか?そんな武器は歩兵が使うような武器とは思えないけど」

「まあ、アーサーが使いたいって言うならいいんじゃね?援護はするけどその他は自己責任で」

 シャーロックは心配そうに言うと景綱は缶コーヒーを飲んで言った。

「分かってるよ」

 アーサーも景綱に向かって言うとⅣ号を除く、戦車四両がガレージから出てくる。

 Ⅳ号は麻子を迎えに行くということで先に目的地に向かっていた。

「お、丁度バスが来たようだ」

「みんな忘れ物しないでくださいね」

 雄二と宗司が言うと歩兵部隊員は順番に到着したマイクロバスに乗車していく。

 歩兵部隊全員が乗車しバスは目的地へ向かい走り出す。

「凛祢ガム食う?」

「ああ、ありがと」

「それで作戦はできたのか?」

「んー、後段作戦は大洗市街地でのゲリラ戦かな……問題は罠を仕掛けるための時間だ。俺たちは囮役もやるし、どうにか市街地に罠を仕掛けたいんだけど」

 八尋からもらったガムを口に入れ、凛祢は作戦内容を話す。

「んー俺たちの中で工兵は凛祢だけだからな。どうしたもんか」

「そこは他の歩兵、凛祢との連携でどうにかするしかないだろ」

 八尋が腕を組んで考えていると、翼がそう言った。

「確か、聖ブリはアーサー殿の持っていた刀剣系の武器を使っている生徒もいるのでCQCは少し不利になるかもしれませんよ」

「剣ねぇ」

 塁が休み前に調べてきた情報を口にすると俊也が窓の外に目を向ける。

 刀剣武器を使う例は珍しくはないがナイフ戦闘で長い刀剣武器は使用者の技量が最も現れる。アーサーは部活で剣道をやっているって聞いたが歩兵道でもうまくいくとは限らない。自分にとって重くて片手では満足に振れない刀剣武器は嫌いな武器の一つだ。

「まあ、隊長として最善は尽くすよ」

「「「当たり前だ、あんこう踊りなんて御免だ!」」」「当たり前です、あんこう踊りなんて御免です!」

 凛祢が言うとα分隊の四人も同時に言った。

 

 

 

 二時間後、学園艦の昇降用のドックで、一般車と共に学園艦が目的地である大洗の港に着くのを待っている。

「陸が見えた!」

「バスケの試合以来っすね!」

「今回はバスケじゃなく歩兵道な」

「どんな敵も狙い撃つまでだ!」

 バスケ部のβ分隊の四人が陸の方を見て、興奮気味に言った。

 歩兵部隊の全員も目をやる。

 目線の先は言葉通りの陸……本物の大地である大洗町が広がっていた。

「久しぶりの陸だー。アウトレットで買い物したいなー」

「試合が終わってからですね」

 久しぶりの上陸にはしゃぐ沙織に華がいつもの様に言う。

「ええー!昔は学校がみんな陸にあったんでしょ?良いなー。私その時代に生まれたかったよー」

「私は海の上がいいです。気持ちいいし、星もよく見えるし」

「……」

 沙織と優花里がそんな会話をしていると、みほは大洗の街を見つめていた。

「西住さんは、まだ大洗の町歩いたことないんですよね?」

 みほを見て優花里が問いかける。

「あ、うん」

「後で、葛城君たちも誘って案内するね!」

 沙織もそう言って笑みを浮かべる。

「ありがとう」

 みほも感謝しながら笑みを浮かべた。

 三十分ほどで学園艦は大洗町の港に入港した。

 大洗連合の一同は、専用のタラップを使って下船を始める。

 すると、急に何かが太陽を遮った。

 凛祢やみほが頭上に目を向けると大洗の学園艦よりも何倍も大きい学園艦が隣に入港してきた。

「デカッ!」

「大きなー!」

 沙織と八尋が声を上げる。

「あれが聖グロと聖ブリの学園艦か……」

「……」

 俊也がそう呟くと隣にいた凛祢も学園艦を見上げている。

 綺麗な隊列を組んで下船準備に取り掛かっている聖グロリア―ナ女学院戦車部隊と聖ブリタニア男子高校歩兵部隊の姿があった。

 そんな中、凛祢と聖ブリに居る男と目が合う。

 赤と黒の特製制服を着た男、ケンスロットは数秒間見た後に目を逸らした。

 奴からは気迫が溢れているが騎士のような気高さも感じさせる。強者である何かを感じる。

「あれが聖グロの戦車部隊と聖ブリの歩兵隊か……」

「本物のイギリス人みたいだな」

「あいつ等も大半は日本人だけどな……」

 シャーロック、ジル、景綱が聖グロリア―ナ女学院戦車部隊と聖ブリタニア男子高校歩兵隊を見て言った。

 アーサーだけは少々動揺した顔を見せていた。

「どうしたんだ?アーサー、気分でも悪いのか?」

「いや、なんでもない……」

 凛祢が聞くとそう答えてアーサーはⅢ突の後を追う。

「ラウンズだっけ?円卓はアーサー伝説に深い関わりもあるしなんか思うとこでもあるんじゃねーの?」

「試合中に何も起きないといいけど……」

 八尋と凛祢もⅣ号の後を追うように走っていく。

 

 

 聖グロリア―ナ女学院と聖ブリタニア男子高校の学園艦も昇降用のドックでもケンスロットが考え事をしていた。

「……」

「どうしたんだよ、考え事してるような顔して?」

 ケンスロットの様子に気づき、ガノスタンが声を掛ける。

「なんでもないよガノ」

 そう言って視線を目の前の歩兵戦車『チャーチル歩兵戦車Mk.Ⅶ』に向けた。

「珍しいですわね。試合前に貴方が考え事なんて……」

 チャーチルの砲塔ハッチから上半身を出していたパンツァージャケット姿のダージリンがケンスロットを見て言った。

「いえ、申し訳ございません」

「では、頼みますわよ……我が騎士(ナイト)さん」

 ダージリンはそう言って、不敵に微笑む。

「……イエス、ユア・マジェスティ」

 ケンスロットはそう答え、騎士の忠義を示すポーズを取った。

「モルドレッドどうしたのですか?」

「アルフレッドが居た……」

「なんですって?あの人が?」

 モルドレットの言葉にアグラウェインは驚きの顔を見せた。

「なんでかは知らねーけど。敵ならぶっ倒すまでだ、あんな奴」

「アルフレッド……大洗に進学したとは聞いていましたが、まさかこんな形で再開するなんて」

 アグラウェインは腰の愛剣に手を当てて空を見た。

 

 

 大洗の町で練習試合の準備と試合観戦の準備が整い、五分後には試合が開始される状態になっている。

 試合開始前の集合場所で大洗連合は戦車を横一列に整列させ、その前に随伴である歩兵分隊が整列していた。

 最前列にいた各車長が整列し聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合が来るのを待っている。

「来たか……」

 凛祢が言ったかと思うと土煙を上げるチャーチル歩兵戦車と四両のマチルダⅡ歩兵戦車と共に聖ブリタニアの歩兵隊が現れた。

 聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合は大洗連合の眼前までやって来て、同様に整列していく。

 チャーチルからはダージリン、マチルダⅡからも各車長が出てくる。

「本日は急な申し込みにも関わらず、試合を受けていただき、感謝する」

 両校が整列したのを確認すると、大洗側の代表として、桃がダージリンに向かって言った。

「構いません事よ……」

 ダージリン笑みを浮かてべ返事をする。

「それにしても……個性的な戦車ですわね」

 口元を手で隠してそう言う。

「な?!」

「誘いに乗るな……」

 八尋や他の歩兵部隊も一歩踏み出すが各分隊長が制止させる。

「まあ、そうだよな」

 雄二も同意するように呟く。

 戦車はピンク一色に、金色、旗付き戦車など統一性が全くない。

 決して歩兵たちがマシなわけではないが。

「ですが、私たちはどんな相手にも全力を尽くしますの。サンダースやプラウダみたいに下品な戦い方は致しませんわ。騎士道精神でお互い頑張りましょう」

 ダージリンは大洗連合に向かって言い放つ。

 チームと言っても興味や思い立って集まった急造チームだからな。

「それではこれより!聖グロリア―ナ、聖ブリタニア連合と大洗連合の試合を始める!」

 今回の試合の審判である三人の一人がそう声を上げる。

 その声を聞いて両者の視線をお互いの舞台全体へと移す。

「一同!礼!!」

 審判の声と共にお互いのチームは礼をした。

 例の後両者は自軍の元へ戻り、お互いに戦闘開始地点へ移動を始める。

「ダージリン、気をつけろ」

 ケンスロットがチャーチル歩兵戦車のハッチから上半身を覗かせていたダージリンに言った。

「ええ……あの歩兵ですわね」

 ダージリンも分かったように返事をする。

「歩兵がどうかしたんですか?」

 装填手のオレンジペコがダージリンを見て問い掛ける。

「大洗の歩兵部隊にの中に一人……気になる人が居まして」

「高々、歩兵一人がですか?」

 ダージリンを見て砲手のアッサムも問い掛けた。

「歩兵一人、されど歩兵一人ですわ」

 ダージリンは真面目そうに言う。

「例えるなら、戦場の空気を……土の味を知っているわ」

「土の味?」

「ええ、幾つもの修羅場を超えてきた様な……」

 ダージリンの脳裏に凛祢の姿が浮かぶ。

「彼は早急にリタイアさせる」

 ケンスロットも腰の愛剣を掴み、凛祢への警戒心を強く持った。

 

 

 スタート地点に到着した大洗連合は戦闘準備を完了させていた。

「いよいよ試合か……」

「今回は長く生存していたいもんだ」

 八尋と翼がP90とバリスタをチェックしながら言った。

「勝てるでしょうか?」

「勝つさ……」

 塁が問いかけると凛祢もそう答えファイブセブンに実弾入りの弾倉を差し込んだ。

「用意はいいか?隊長?」

「あ、はい」

 通信機から聞こえた桃の声に返事をするみほ。

「全ては貴様と葛城に掛かっている。しっかり頼むぞ」

「はい……」

 全ては自分に掛かっていると言う言葉にみほの顔は緊張で強張る。

「大丈夫だ、西住。言ったろ俺は西住を守る盾になるって」

 通信を聞いていた凛祢がインカム越しに言った。

「……はい。葛城君が私の盾になってくれるなら私は……葛城君やみんなの敵を倒す剣になります」

「……フッ。それは心強いよ」

 凛祢はみほの言葉に笑みを浮かべた。

 みほも凛祢の声を聞いて不思議と心が落ち着くのを感じた。

「では、試合開始!」

 試合開始のアナウンスが戦場に響く。

「全戦車、パンツァーフォー!」

「行くぞ!全軍オーバードライブ!」

 みほと凛祢の号令で、大洗連合は前進を始める。

 大洗連合と聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合戦いが始まった。

 

 

 試合会場である大洗町のはずれ荒地では大洗連合の戦車と歩兵部隊が前進している。

「いよいよ始まりましたね」

「うん」

 Ⅳ号車内でみほと優花里が言葉を交わす。

「あのー、それでどうするんでしたっけ?」

 Dチーム、M3Leeの通信手である優季が質問する。

「さっき説明された通り、今回は殲滅戦。どちらかの戦車が全滅したら負けだ」

「そうなんだー」

「へー、そうだったのか」

 亮が答えると優季と翔が返事をした。

「まず私たちAチームとα分隊で偵察に出ます。各チームは百メートル前進した場所で待機して下さい」

「さっき声をかけた歩兵は大洗の市街地にC-4爆弾を設置をしてくれ。C-4爆弾に電管を刺すの忘れるなよ」

 みほと凛祢が指示を出す。

「分かりました!」

「はーい!」

「御意!」

「了解!」

 各戦車チームと歩兵部隊から返事が返ってくる。

「何か作戦名無いの?」

 干し芋を齧っているいる杏がそんな事を言う。

「え?作戦名は、えーと……『コソコソ作戦』です!コソコソ隠れて相手の出方を見て、コソコソ攻撃を仕掛けたいと思います」

 杏の無茶振りにも答えるように、みほは少し悩んだ後、作戦名を口にした。

「姑息な作戦だな」

「前段作戦を考えたのは緑間君と桃ちゃんじゃない」

 前段作戦を自分で考えたのに作戦を批判する桃に柚子がツッコミを入れる。

「西住、俺たちが先行して偵察する」

「了解しました。全軍、一旦停止してください」

 凛祢が言うとみほは全軍を停止させた。

 双眼鏡を手に凛祢と塁、狙撃用のスコープを使う翼が崖の傍で伏せて、荒野を見る。

 綺麗な隊列で進軍している聖グロリアーナ&聖ブリタニア連合。

「敵部隊を発見」

「スタート地点から東へ向けて進行中……予想通りですね」

 凛祢と塁がそう言いながら双眼鏡を覗き込む。

「様子はどうですか?」

「敵は隊列を維持して前進しています」

「あれだけ綺麗な隊列を組めるなんて……凄い練度の違いですね」

 みほの質問に凛祢が回答していると塁がそんな感想を漏らす。

「正面からの撃ち合いは避けるんだ。対戦車砲の徹甲弾でもチャーチルとマチルダの正面装甲を抜くのは不可能だ。凛祢の爆弾戦法も零距離まで近づかなければならない」

 翼が注意してくる。

「分かってる……戦術と腕かな」

 戦術と腕……か。

 みほの言葉に凛祢は内心で考え込む。

 こちらは初心者しかいないのに、みほの望む戦術を見せてくれるのか……。

 隊長として弱気は見せられないのは自分も同じこと。厳しい状況だが抗いぬくしかない。

 凛祢たちは偵察を終えて本隊と合流する。

「全車、エンジン音を響かないように展開してください」

 凛祢たちが合流したのを確認すると、みほは指示を出し、大洗連合は再度移動を始める。

 AチームのⅣ号とα分隊を先頭に進軍する大洗連合。

「敵は東へ向かって進軍中です。再度作戦を確認しますが、私たちとα分隊が囮となりますので、皆さんは例の峠で待機していてください」

「狙撃兵はそれぞれ指定の場所で狙撃準備に入ってくれ」

「ではこれより、コソコソ作戦を決行します!」

「はーい!」

「了解!」

 凛祢とみほが言うと戦車と歩兵部隊が待ち伏せ地点である峠へ。

「翼、塁、任せたぞ」

「はい!お任せください!」

「了解」

 翼と塁は凛祢から受け取ったC-4爆弾用のリモコンを手に峠の方向に走っていく。

 Ⅳ号とα分隊の三人が、聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合の誘い出しに掛かる。

「あの、私たちは」

「砲撃を仕掛けて、相手を誘い込む予定なんだけど……うまく行くかな?」

 華の質問にみほは不安そうに回答する。

「弱気になるな……俺たちはできる事をすればいい」

「うん」

「負けたらあんこう踊りだし」

「うう……」

 凛祢が声をかけたのに沙織の発言でみほの表情は曇る。

「それだけは御免だから最善を尽くすんだろ、隊長さんよ」

「言うじゃねーかトシ。色んな意味で俺たちは負けられねーんだよ」

 俊也と八尋の声が通信機から聞こえた。

「私はイギリス戦車が動いているところを生で見られるだけで幸せです」

 優花里はうれしそうな顔で言った。

「本当に幸せそうだね……」

「わかりますよ!僕もイギリスの銃火器を生で見られるチャンスで興奮してます!」

 沙織が呆れるように呟くと塁の興奮気味の声を出す。

 

 

 Ⅳ号は聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合の進行ルートに先回りしていた。

「敵、前方より接近中。砲撃準備」

 聖グロリア―ナと聖ブリタニア連合から見て右前方側の崖でⅣ号は岩陰に隠れるように陣取り砲撃態勢にに入る。

「装填完了」

 優花里がハッチを開けて、キューポラから上半身を出して敵の様子を窺うみほに報告する。

「えーと、チャーチルの幅は……」

「3.25メートル」

「4シュトリヒだから……距離、810メートル」

 華が照準器を覗きながら、微調整を行う。

「良いか、Ⅳ号が砲撃したら、全速後退だ」

「「ああ」」

 凛祢の最終確認に八尋と俊也が返事をした。

「撃て!」

 みほの号令でⅣ号の砲が放たれる。

 轟音と共に放たれた砲弾は、先頭を走行するマチルダⅡの手前に着弾した。

 砲弾が地面を抉り、派手に土煙を上げる。

「敵襲!」

 ケンスロットが叫ぶと聖ブリタニアの歩兵たちが一斉に銃を構える。

「仕掛けてきましたわね」

 チャーチル内のダージリンは慌てる表情も見せず、優雅に紅茶の入ったティーカップとソーサーを手に無線機で指示を出す。

「発見!右前方、10時の方向!」

 聖ブリタニアの偵察兵が双眼鏡を覗きながら報告すると、チャーチルとマチルダⅡの砲塔が旋回し、照準器内にⅣ号を捉える。

「すみません」

「大丈夫。目的は撃破じゃないから」

「お!追ってきたぞ」

 華がみほに言うとⅣ号に上った八尋が後方を見て報告する。

 凛祢、八尋、俊也を乗せたⅣ号は撤退行動に移る。

「全部隊、前方Ⅳ号と随伴の歩兵部隊に攻撃開始」

 ダージリンの指示に聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合は陣形を維持したままⅣ号とα分隊の追撃に入る。

 逃げるⅣ号とα分隊に向けてチャーチルの砲が火を噴く。

「敵戦車発砲!」

 凛祢が叫ぶとチャーチルの撃った砲弾はⅣ号の背後に落ちる。

「いーっ!」

「あぶねー」

 八尋と俊也がそんな気の抜けた声を出す。

「なるべくジグザクに走行してください。こっちは装甲が薄いからまともに受けたら終わりです」

「了解……」

 みほの指示に麻子はⅣ号を左右に揺らしながら走行させる。

「もう撃っていいか?」

「まだだ、今撃っても当たらない」

 P90を構える八尋の肩に凛祢が手を乗せて制止させる。

「今は我慢しろ八尋」

「へいへい」

 俊也の言葉に八尋は空返事で口笛を吹く。

 Ⅳ号とα分隊に聖グロリア―ナと聖ブリタニア連合は陣形を維持したまま容赦なく行進間射撃を行いつつ、徐々に距離を詰めてくる。

「よし。トシ、やるぞ」

「わかったよ……」

 八尋がP90を、俊也がFALを後方に向けて構えると追撃してきた聖ブリタニア歩兵部隊の扱う車両SASジープに銃弾を浴びせる。

「うわ!」

「くっ!」

 銃弾はSASジープのフロントガラスを砕いたが、乗員には命中していない。

「野郎!」

「お返しだ!」

 助手席に居た歩兵が反撃するようにブレン軽機関銃を発砲する。

 .303ブリティッシュ弾が岩肌の地面や崖に命中し、砂煙を上げる。

 更に、聖ブリタニア歩兵部隊はアサルトライフル『L85』や軍用小銃『リーエンフィールド』、対戦車ライフル『ボーイズ対戦車ライフル』、による攻撃が開始される。

「やべっ!」

「翼、出番だぞ!」

 八尋の焦った顔を見てインカム越しに凛祢が呟く。

「了解。目標を狙い撃つ!」

 崖の奥に隠れた翼の声と同時にバリスタから放たれる銃弾。

 銃弾は吸い込まれるように敵歩兵の胸元に命中する。

「ぐっ!」

「狙撃だ!」

 撃たれた歩兵は何とか痛みに耐えた。瞬時に立ち上がったケンスロットが腰の刀剣を抜刀する。

「一撃は無理か……わざわざ立ち上がるとは、なら隊長を撃つ」

 翼はレバーを引き空薬莢を排出し次弾を装填する。ケンスロットを狙い、放つ。

 放たれた銃弾はケンスロットの右足に向かって飛んで行く。

「位置はもうわかっている……」

 ケンスロットは愛剣、鋼鉄直剣『アロンダイト』を両手で握る。

 鉄と鉄のぶつかる甲高い音が響き、Ⅳ号の乗員と凛祢、八尋、翼、俊也が驚きの表情を見せる。

 彼は、聖ブリタニアの隊長、ケンスロットはその剣で銃弾を……弾いた!いや、斬った!

「「嘘だろ?!」」

「あり得ない……!」

 八尋と翼は思わず声を上げる。俊也もまた現実離れした技に驚く。

「たった一発で翼の位置を見抜いたのか……?」

 奴は、あえて立ち上がることで翼の狙いを自分に向けた。まさか、狙撃を絶対に防ぐ自信があったのか?!

 凛祢もさすがに動揺した、ケンスロットの芸当はそれほど大洗に絶大な衝撃をもたらした。

 自分にも『銃弾を避ける』なら可能かもしれない、しかし『銃弾を斬る』なんて芸当はできない。

「くそ、せめてもの救いは敵の砲が徹甲弾しか使ってこないことぐらいだ」

「あー確か、マチルダⅡは徹甲弾しか撃てないんだっけ?」

 俊也がFALを撃ちながら言うと、八尋が問い掛けるよう呟く。

「そうだ、イギリス軍は対戦車砲と対軟目的用の砲を別に搭載した方が効率がいいと考えてたからな」

「つまり、狙撃しか能の無い翼とCQCしか能の無い凛祢みたいって事だろ?逆に俺やトシは何でもできるからな!」

「狙撃しか能が無くて悪かったな」

 俊也の説明に納得したようにうなずく八尋。

 インカムから翼の声が響く。

「だが、チャーチルは別だ。奴の主砲であるオードナンスQF75㎜砲は榴弾を撃てる」

 凛祢が言った瞬間、チャーチルが主砲を放つ。

「冷泉さん、右に避けろ!」

 凛祢が叫ぶとⅣ号は右に曲がり、砲弾を避ける。

「みぽりん!危ないって!」

 みほが安堵の息を吐くと通信手の沙織がハッチを開けてみほに呼び掛ける。

「え?ああ、戦車車内はカーボンコーティングされてるから大丈夫だよ」

「そう言うんじゃなくて!そんなに身を乗り出して、当たったらどうするの?!」

 沙織は心配するように言うが砲弾と銃弾の飛び交う場所にいるのに平気な顔をするみほ。

「まあ、滅多に当たるものじゃないし、当たりそうになっても葛城君たちが守ってくれるから。それに、こうしてたほうが状況が分かりやすいから」

「でも、みぽりんにもしものことがあったら大変でしょ!もっと中に入って!」

「できれば、中に居てほしい。その方が安心してみんなを守れるから」

 心配する沙織と凛祢が言った。

「二人ともありがとね」

 みほはそう言って10㎝ほど車内に引っ込んだけだった。

「逃げてばっかりで攻撃もしてこないぞ!」

「やっぱり楽勝だな!一気に決めるぜ!」

 逃げ続けるⅣ号とα分隊の姿に痺れを切らしたように聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合の歩兵部隊の一台のSASジープが、加速して追ってくる。

「勝手な行動を!」

「待て!隊列を乱すな!」

 ダージリンが不快感を感じ、アグラウェインが命令する。

「心配しないでください!」

「こんな弱小チームの戦車なんてすぐに仕留めてやりますよ!」

 歩兵は指示を無視してⅣ号に接近して行く。

 そして、後部座席にいた砲兵の歩兵が立ち上がり、PIATを構えた。

「俊也、手榴弾を!」

「当たらねーぞ!」

「早く!」

 凛祢が言うと、俊也は腰のベルトから手榴弾を掴み、ピンを外して投擲した。

「そんなもの!」

 地面をバウンドしながらSASジープに向かって転がる手榴弾。しかし、来るとわかっていたため回避された。

「馬鹿が!」

「そっちがな……」

 凛祢は右手に持つリモコンのスイッチを押した。

 瞬間、地面に仕掛けられたヒートアックスが爆発する。

 爆発はSASジープを巻き込んだ。

「なにーーー!!」

 乗員たちは全員投げ出され地面を転がる。

 乗員の三人からは戦死判定のアラームが響くがたった一人だけは生き残った。

「あのヒートアックスいつの間に仕掛けたんだ?」

「塁に頼んで一つだけ仕掛けておいたのさ。本当はチャーチルに使いたかったんだが」

 八尋に聞かれ、凛祢はリモコンを腰のベルトにしまう。

「油断するな、俺たちの任務は終わってない」

 俊也もガッツポーズをした後に言った。

「大丈夫か?」

「なんとか……申し訳ございません、私がついていながら」

 ケンスロットがインカムで連絡すると生き残った歩兵は痛む左肩に手を当てて返事をする。

「それはいい、あいつらには後で罰を与える。アグラウェイン、彼を回収してくれ」

「了解」

 後方を走行していたアグラウェインのSASジープは生き残った歩兵の元に向かう。

「敵もなかなかやるようだな。これは油断したら全滅するかもな……」

「そうならないためにしっかり戦ってください、ガノ先輩」

「了解だ」

 狙撃銃L96A1改良型ガノスタンモデル『フェノルノート』を構えるガノスタンにオレンジペコが言った。

 SASジープは陣形を立て直しつつⅣ号の後を追う。

「……ケン。先ほどの攻撃、見ていました?」

「ああ」

 ダージリンがケンスロットに通信を入れる。

「あの状況で、しかも私たちに悟られないようにヒートアックスの置かれた地面に誘導させるなんて……」

「あいつは戦いに慣れている。おそらく、歩兵道の経験者だ」

 凛祢の戦術に油断が完全に消えたダージリンとケンスロット。

 

 

 大洗連合が待ち伏せする地点では市街地に罠を仕掛けた歩兵たちがちょうど帰還していた。

 崖に挟まれた一本道を見渡せる峠の上に、大洗女子学園の戦車が一本道を挟むように整列している。

 歩兵たちも戦車の横に待機している。

「かっくめーい!」

「しまった、どうしようー?」

「いつも心にバレーボール!」

「そーれ!」

 Dチームはトランプで遊び、Bチームは車外でバレー練習をしている。

「遅い!」

「待つのも作戦だよー」

 Eチームの桃はいつでも戦える態勢をとっているが柚子と杏は車外に出てゆっくりしていた。

 杏に関してはサマーベットに寝転んでいる。

「試合でありながらリラックスしてますね……」

「みなさん、試合だって分かってるんでしょうか?」

 苦笑いする宗司に塁が問い掛ける。

「お前たちはいつでも戦える様にしておけ!」

 桃と同様に臨戦態勢の雄二がMP18を手に言った。

 岩陰にうつ伏せに倒れ、狙撃していた翼も移動を開始する。

「こちら翼、第一狙撃は失敗。これよりキルゾーンを狙撃できるポイントに移動する」

「了解。こちら英治、いつでもキルゾーンを狙えるぞ」

「了解。こちら迅、同様にいつでも狙えます」

 翼が報告すると英治と迅の声がインカムから聞こえた。

「よし、それぞれの狙撃ポイントで待機。キルゾーンでの戦闘後、味方戦車が市街地に移動したらそれぞれの分隊に合流するように」

 英治が翼と迅に指示を出してそれぞれの狙撃準備に向かう。

「こちらAチーム!現在敵を引き付けて待機地点に後三分で到着します!」

 みほからの通信が全戦車の通信手と随伴である歩兵隊のインカムから聞こえた。

「Aチームが戻ってきたぞ!全員戦車に乗り込め!」

「ええ、嘘ー?」

「折角革命起こしたのに」

「ボールはちゃんと持って!」

「はい!キャプテン!」

 桃の声に、DチームとBチームがそれぞれの戦車に乗り込む。

「……」

 塁も緊張しながらもリモコンを握る。

「ルートには既にC-4爆弾と対戦車用の地雷を設置してある。Ⅳ号が通り過ぎた後に立ち往生したところを一斉砲撃だ!前段作戦で勝利するぞ!」

 雄二が叫び、歩兵たちは武器を構える。

「後、五百メートルで敵部隊が射程内に入るぞ!」

 通信機とインカムからの凛祢の声に敵が現れるのを待つ大洗連合。

 やがて、敵を連れたⅣ号がキルゾーンに侵入する。

 瞬間、戦場に響く多数の発砲音。

「撃て、撃て!」

「弾薬を雨を浴びせろ!」

 桃と雄二の声に一斉に対戦車砲と銃を放つ歩兵部隊。

「うおーー!!」

「オラオラオラオラ!」

「ムダムダムダムダ!」

 命令に勘違いしたとも知らずDチームのM3とΔ分隊が砲撃と射撃を開始する。

「あ、まだです!」

「みんな、なにやってるんだ!」

 塁と宗司もみんなの行動に思わず叫んだ。

「フレンドリーファイアー?!」

「待てよ、俺たちを殺す気か?」

「あ?!待ってください!」

 八尋、俊也、みほが驚きの顔を見せた。Ⅳ号の傍に砲弾と銃弾が着弾する。

「味方ごと、撃つのか……」

「味方を撃ってどうすんのよ?!」

 凛祢が呟くとそれを聞いた沙織が悲鳴を上げる。

 しかし、攻撃の手が止まることはなく、次々と砲弾と銃弾は地面に仕掛けられた対戦車地雷に命中、次々に誘爆する。

「あーー!!」

「お前ら、人の努力を無にしやがって!」

 罠を仕掛けた本人であるジルと景綱が叫ぶ。

 くっ!対戦車地雷がなくなったら戦車を行動不能にする方法がない!

「凛祢殿、どうしますか?!」

「凛祢!どうすんだ!」

「葛城!指示を出せ!」

 塁、八尋、俊也が次の指示を待っている。

「前段作戦は……まだ終わってない!」

「そうです!罠がなくなっても。まだ……戦車が残ってます!」

 凛祢とみほの闘志はまだ消えていない。

「こんな安直な囮作戦……私たちには通用しませんわ」

「しかも、先ほどの誤射で大洗の配置はわかっている。一気に畳み掛ける!」

 優雅に紅茶を飲んでいるダージリンと隊列を崩さず加速するケンスロットの乗るSASジープ。

 キルゾーンに堂々と侵入する。

「撃てぇ!」

 再び桃が命令し、大洗連合は攻撃を開始する。

「撃て撃て撃て!!」

 雄二も後に続くように叫ぶが敵に損害を与えられない。

 聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合は左右に分かれて陣を展開し、大洗連合の包囲に掛かる。

「そんなバラバラに攻撃しても……履帯を狙ってください!」

「みんな、落ち着け!」

 みほと凛祢が叫ぶが、発砲音に掻き消されみんなに聞こえていない。

「桃ちゃん、落ち着いて……」

「うるさい!」

 柚子の言葉を無視して砲撃を続ける桃。

「あちゃー、またか」

「桃ちゃんの悪い癖が……」

 杏が他人事の様に言って干し芋を食べると、柚子がため息をついた。

 他の戦車、歩兵もバラバラに砲撃を続ける。

 その間に、大洗連合を聖グロリア―ナ&聖ブリタニアの包囲する。

「こちら、ガノスタンー。包囲陣形はオッケー!」

「こちら、アグラウェインも包囲完了です」

「こっちもオッケーだぜ」

 ガノスタン、アグラウェイン、モルドレッドがインカム越しに言った。

「了解しましたわ。では砲撃開始」

 ダージリンが命令を下すと戦車と歩兵が砲撃を開始する。

「全軍岩陰に身を隠しつつ応戦!」

「了解!」

 凛祢の指示を聞いた歩兵たちは一斉に身を隠す。

「お前ら何してる?!ぐあーー!」

「「やられた!!」」

 しかし、ジルと景綱、雄二は通信がよく聞こえず銃弾が被弾した。瞬時に戦死判定のアラームが鳴る。

「ジル、景綱!よくも!」

「待て、アーサー!今ここで出ていけば良い的だ!」

 アーサーがカリバーンを手に出ていこうとするがシャーロックがその手を掴んで止める。

「でも!」

 徐々に距離を詰められ、砲撃は激しさを増していく。

 余りの激しさに、砲撃を止め始める戦車と歩兵が出始める。

「落ち着いてください!攻撃を止めないで!」

 みほが叫んだ。

「無理です!」

「もう嫌ぁ!!」

 Dチームのあゆみと優季が悲鳴を上げたかと思うとDチームの乗員がM3Leeを放棄して車外に脱出する。

 そのまま戦場を走り抜けて、逃亡していく。後を追うように亮を除くΔ分隊の歩兵も逃走する。

「おい、みんな!逃げてどうするんだ!」

 亮も自分の仲間が逃走する姿に気をとられ無防備に立ち上がった。

「亮、伏せろ!」

「え?」

 凛祢が叫ぶが既に遅く、銃弾の雨は次々と亮の体に命中する。

 その場に倒れた亮から戦死判定のアラームが響く。

 凛祢の手元には亮のトンプソン・サブマシンガンが転がる。

 すぐにM3Leeも被弾し、行動不能の白旗が上がる。

「凛祢、もう無理だ。撤退しろ!」

「そうだ葛城、これ以上は無理だ!市街地まで下がり、隊を再編成するんだ!」

 インカムから翼と英治の声が聞こえた。

「塁、C-4を起爆させろ!翼、会長、迅、俺たちが撤退するまで狙撃で時間を稼いでくれ!」

「「「「了解!」」」」

 凛祢が指示して、みんなが返事をする。

「撤退だと?ふざける――」

 桃が言っている途中、38tに至近弾が着弾。

 車体が浮き上がったかと思うと、左の履帯が外れた。

「あれ?あれれ?!」

「ああー、外れちゃったねー、履帯。38tは外れやすいからなあ」

 突然操縦の効かなくなった38tに困惑する柚子、冷静に状況を分析する杏。

 履帯が外れた38tは左に流され、窪地へと落ちた。

「武部さん!各車状況を確認してください!」

「あ、う、うん!」

 みほは各車の状況報告を求めた。

「えっと、Bチームどうですか?」

「なんとか大丈夫です!」

「β分隊も大丈夫です!あ、今、淳がやられました!」

 Bチームの妙子と漣が答える。

「Cチーム!」

「言うに及ばず!」

「γ分隊は僕とシャーロックだけです!」

 勇ましい声のエルヴィンとアーサーが返事をした。

「Dチーム!」

 Δ分隊共に応答はない。

「Eチーム!」

「駄目っぽいね」

 必死に窪地から脱出しようとしている柚子の隣で杏がいつもの口調で言った。

「ε分隊は私と会長だけです」

 宗司が続くように通信を入れた。

「私たち、どうしたら?」

「隊長殿!指示を!」

「撃って撃って撃ちまくれ!」

 指示を求める典子とエルヴィンとは対照的に攻撃を指示する桃。

 その間に、戦車同士の距離は縮まっていく。

「西住、市街地まで撤退だ!」

「え?」

「ここで全滅するよりマシだ!時間は狙撃隊で稼ぐ!」

 みほの有無を聞かずに凛祢は撤退を促した。

「わかりました、これより前段作戦から後段作戦に移ります!市街地でのゲリラ戦を仕掛けますので、八九式とⅢ突はついてきてください」

「「了解!」」

 みほの指示に典子とエルヴィンが返事をする。

 すると、Ⅳ号とⅢ突、八九式が逃走する動きを見せる。

「起爆!」

 塁は声と共にリモコンのスイッチを押すと仕掛けられたC-4が爆発する。

 次々と爆発していくC-4は数人の聖ブリタニアの歩兵を巻き込んだ。戦死判定のアラームも鳴った。

「お!やるなー」

「ガノそんなこと言ってる場合ですか!」

「いやーC-4なんてよく使うなーって思ってよ」

 ガノスタンが笑いながら言うとアグラウェインがやれやれと声を掛ける。

 爆発で舞う上がる煙に紛れ大洗連合の歩兵たちはそれぞれの戦車に飛び乗り逃走する。

「だが、逃がさないんだよな!」

 ガノスタンはスコープを覗きながら言うとフェノルノートの引き金を引いた。

「うっ!」

 銃弾は塁の右肩に命中。

「大丈夫か?塁」

「あの野郎。あの状況で狙撃してくるとは……」

 八尋は塁の体を支える。俊也も狙撃したガノスタンを睨む。

「私としたことが、敵を逃がしてしまうなんて……」

 ダージリンが紅茶を飲んで悔しそうに呟く。

「ダージリン、どうするの?」

「大洗連合を追撃しますか?」

 アッサムとオレンジペコが指示を求める。

「いえ、一旦煙が晴れるまで待ちますわ。敵陣だった場所を進むのに、視界が効かない状態は望ましくありませんわ。敵が自陣のに罠を残していないとは限りませんわ」

 ダージリンは待機命令を出して紅茶を置いた。

「確かに、彼らは罠で先手を取った。ここは待つべきだ」

「んあ?さっさと行こうぜ!敵の陣形が崩れてる今がチャンスだろ!」

「モルドレッド落ち着け。急がば回れと言うだろう」

「っ!んだよ……アルフレッドはすぐそこだってのに」

 ケンスロットの言葉に舌打ちをして腕を組むモルドレッド。

 聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合は待機しながらそれぞれ銃の弾倉交換などを行っていた。

 数分後、砂埃が消え視界が良好になった聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合も追撃を開始する。

「もう逃がさねぇ!」

「モルドレッド熱くなりすぎです!もっと冷静に――」

「うるせぇ!」

 モルドレッドはアグラウェインに怒鳴るとチャーチルの後を追う。

「モルドレッド、今日は随分張り切っていっていますわね……」

「ハハ、あれはマジで切れてんじゃねーの?なんでか知らねーけど」

 ダージリンの言葉にガノスタンが笑いながら言った。

「38tはウェディの分隊に任せて、行くぞ!」

 ケンスロットが指示すると一つの分隊を残し、追撃隊は大洗連合の通った道を進む。

 

 

 なんとか激戦地帯を抜けた大洗連合の三両は磯前神社へと登る坂を下り、大洗の市街地に向かった。

 観客の声が自然と聞こえる。

「これより、市街地に入ります。地形を最大限、活かしてください」

 みほの声に合わせて大洗連合の戦車はマリンタワー南交差点を右折し、大洗の市街地に侵入する。

「Why not!」

「大洗は庭です!任せてください!」

 エルヴィンと典子が返事をする。

「よし、歩兵部隊の再編成を行う」

 凛祢はそう言って、みほと八尋、塁、俊也に見えるようにメモを見せた。

 大洗連合戦力。

 生き残っている車両はⅣ号、八九式、Ⅲ突、そして作戦地点に取り残した38t。宗司と英治がまだ生存しているところを見るとまだ撃破されていない。M3はリタイア。

 歩兵部隊、α分隊は全員生存、β分隊は漣を除いて三人、γ分隊はアーサーとシャーロック。Δ分隊は全滅、何時リタイアしてもおかしくないε分隊の二人。

「戦力はおよそ半分。ただ、38tはリタイア同然だろ」

「会長と副会長が生存している以上、まだ何とも言えませんが」

 八尋と塁がそんな言葉を口にする。

「α分隊はそのまま。β分隊に副会長、γ分隊に会長を投入、それぞれ歩兵戦闘を行えるように準備を」

「では、これより後段作戦。市街地でのゲリラ戦を開始します!」

「了解!」

「分かった!」

 凛祢とみほの指示に歩兵部隊は返事をして、それぞれ気を引き締める。

 数分後、ようやく大洗連合の姿を確認した聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合、砲撃を浴びせながら大洗鳥居下の交差点を左折。

 そのまま、県道2号線を通って、海沿いを走行する。

「どうやら、市街戦に持ち込むつもりみたいですね」

「地の利を活かすようだ」

 オレンジペコとケンスロットが言うとチャーチルはゆっくり前進する。

「消えた?」

「どうやら、完全に市街地に入られたな」

 キューポラを覗き、窓から外を見ながら呟くダージリンと周りを見回すガノスタン。

「ケン、どうする?」

 ガノスタンが問い掛ける。

「狭い市街では大部隊を組んで移動するのは困難だ。ダージリン、隊を分けて戦うべきだろう」

「確かに、そのほうが良さそうですわね」

 ケンスロットとダージリンが通信を終えると戦車を中心に分隊は分散していく。

 

 

 一両のマチルダⅡが随伴歩兵部隊三人を周囲に展開し、歩兵部隊に移動速度を合わせてゆっくりと市街地の路地を進んでいる。

「こちら、グラスト分隊。敵影は発見できず、引き続き捜索を続けます」

 随伴歩兵部隊の分隊長グラストが通信を送る。

 瞬間、前方から手榴弾が投げられる。瞬時に手榴弾は爆発し、グラスト分隊の歩兵一人を戦死させた。

「前方から敵襲!」

 分隊長が大声で叫ぶと、分隊全員が前方に視線を向ける。

 視線の先には鋼鉄刀剣『カリバーン』を右手に持つアーサーの姿があった。

「前方に歩兵一名!攻撃開始!」

 聖ブリタニアの歩兵がブレン軽機関銃を構えた。

「はっ!」

 声と共に後方に建っているコンビニのごみ箱からシャーロックが勢いよく現れる。

 前方に気を取られる歩兵を日本武術『バリツ』で投げ飛ばす。

 コンクリートの地面に投げつけられた歩兵は堪らずうめき声を上げる。

 更に駄目押しするようにワルサーP38を胸部に発砲すると、歩兵から戦死判定のアラームが鳴った。

「くっ!後ろから奇襲するなど騎士として恥ずかしくないのか!」

「生憎、私は騎士ではないのでね。君の価値観を押し付けないでくれ」

 シャーロックは煽るように煙草を吸う仕草を見せる。

「貴様、許さん!」

 分隊長が腰の剣を抜刀しようとした時、シャーロックが煙幕手榴弾を投げる。

 一瞬にして、煙がマチルダⅡと分隊長の視線を奪う。

「なに?ぐあ!」

 そんな分隊長の声と拳銃の発砲音が響いた後、戦死判定のアラームが響く。

「こちらの歩兵部隊が全滅しました!」

「嘘?!前進して、敵を一両でも倒すのよ!」

 タブレットで歩兵生存状況を確認したマチルダⅡの通信手と焦りだした車長が叫ぶ。

 マチルダⅡが前進して、煙幕を抜けるとアーサーの姿はない。

 間も無くして薬局の前を通り過ぎようとする。

 乗員全員が随伴歩兵の全滅に焦りだしていた為、気づかなかった。

 薬局の前に置かれた旗の中に、真田の六文銭と新選組の誠のマークの旗がある事に。

「今だ!撃てぇ!」

 エルヴィンの叫びが響いた瞬間、薬局と民家の間に潜んでいたⅢ突が発砲。至近距離からの砲弾が、マチルダⅡの砲塔右側面に叩き込まれる。

 数秒後、行動不能を現す白旗が上がる。

「よし!」

「次だ!」

 マチルダの後に煙幕を抜けたアーサーとシャーロックがその様子を見て、拳を軽くぶつけ合う。

「こちらエルヴィン。マチルダⅡを一両撃破!」

 Ⅲ突はすぐに移動を開始する。キューポラから顔を出したエルヴィンとカエサルは機嫌よさそうに笑っていた。

「よし、私たちも行こう――」

 シャーロックの言葉はそこで止まり、地面に倒れる。

 一瞬、アーサーは何が起きたのかわからなかった。しかし、目の前に写る人物に驚きを隠せなかった。

 その聖ブリタニアの歩兵の名をアーサーは口にする。

「も、モルドレッド……!」

「ようやくだ。ようやく見つけたぞ、アルフレッド!」

 モルドレッドはアーサーを見て、叫んだ。

 

 

 別地点では、マチルダⅡが怪しいガレージを見つけていた。

 さっきまで使われていたかのように赤いライトが点灯している。ガレージ前の駐車場には重ねられた段ボールが三つ置いてあった。

「あの、ガレージが怪しいですね……どうしますか?ルクリリ隊長」

「行くだけ行きましょう。闇雲に探しても見つかりませんから」

 アグラウェインの言葉を肯定するようにルクリリが指示するとマチルダⅡは怪しいガレージの前に停止する。

 すると、ガレージのシャッターがゆっくりと開いていく。

 マチルダⅡとアグラウェイン分隊は戦闘態勢を整える。

 しかし、前方にのみ気を向けていたマチルダⅡとアグラウェイン隊は気づいていなかった。

 後方の駐車場には地下から出るためのエレベーターから八九式が現れていることに。

 マチルダⅡの後ろを取った八九式は息を潜めたままマチルダⅡの燃料タンクに狙いを定める。

「静かに、確実に行くよ……」

「スネークアタックだ」

 典子と辰巳が小声で通信する。

「ん?後ろだ!」

「しまった!」

 アグラウェインとルクリリが叫ぶと八九式が発砲。同時に段ボールに隠れていた辰巳と淳、宗司が現れ、百式軽機関銃前期型とMP18を発砲。

 砲弾は燃料タンクに命中し、マチルダⅡから煙が上がる。

 辰巳たち歩兵の銃弾も歩兵を捉えた。

「やりました!キャプテン!」

「やった!こちら八九式、マチルダⅡを一両撃破しました!」

「逆転のダンクシュートだ!」

 攻撃を決めた車内では典子とあけびが喜びの声を上げた。辰巳もガッツポーズをして、笑みを浮かべる。

 

 

 更に別地点はⅣ号とα分隊が戦闘状況を整理していた。

「残りは三両か。五分五分だな」

「問題はチャーチルです。こちらの砲じゃ装甲を突破できませんから」

 通信を聞いた八尋と塁が言った。

「うーん、できれば随伴を引き離した上での一騎打ちに持ち込みたいんですが」

「そこは、俺たちで何とかする」

 みほが言うと凛祢がⅣ号から降りて言った。

 すると発砲音と共にⅣ号の傍のコンクリートを砲弾が抉る。

「戦車発見。ナイトの皆さんは歩兵を」

 ダージリンは紅茶を飲むと指示を出した。

 α分隊が振り向くとチャーチルとマチルダⅡ、敵歩兵の姿があった。

「円卓の騎士団(ナイト・オブ・ラウンズ)の名は伊達ではない。白兵戦に持ち込めば経験のある、こちらが上だ!」

 ケンスロットもリーエンフィールドを手に戦闘を開始する。

「もう、来たのか。みんな行くぞ!」

 凛祢の声と共にα分隊は聖ブリタニアの歩兵部隊のほうへ、散開していった。




とうとう聖グロと聖ブリタニアの戦闘が始めりました。
自分はガルパンのキャラでダージリンが好きなので頑張りました。
今後も執筆をつづけるので読んでいただけると嬉しいです。
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