ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~   作:UNIMITES

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どうもUNIMITESです。
今回から試合開始となります。
では、本編をどうぞ。


第39話 本土決戦 八校連合VS大学選抜チーム

第39話 本土決戦 八校連合VS大学選抜チーム

 

 試合が開始されるまで残り時間は1時間。

 凛祢とみほたち大洗連合にそれぞれ7校の高校のチームが加わった『八校連合』は、試合前最後の作戦会議を行っていた。

 迷彩柄のテント内にはそれぞれの高校から集まった隊長と十傑メンバーの姿がある。

 黒板には白のチョークで3個中隊の編成が描かれていた。

「ではこの通り、3個中隊の編成で行きたいと思います」

「歩兵隊は基本自分の随伴する戦車を防衛することになるが、戦況によってはこれに限らない。臨機応変に対応していってほしい」

 説明を終えたみほと凛祢は再び集まった仲間たちに視線を向ける。

「OK」

「了解した」

「中隊長は?」

 いつものように紅茶を手に聖グロのダージリンが問いかけた。

「お姉ちゃ……西住まほ選手、ケイさん、それから私で」

「西側ばかりじゃない」

 不満なのかプラウダ高校のカチューシャが声を上げる。

「ご不満?」

「隊長やりたいんですか?」

「私がやらなくてどうするのよ!」

「……」

 黒森峰のまほから浴びせられる鋭い視線に思わずカチューシャが視線を逸らす。

「まあ、今度でいいけど……」

「……自己中な奴」

「そう言うなよ、同志エレン」

 ヘッドフォンを首にかけ、窓際で立ち尽くすエレンが小声で呟くとアルベルトも思わず呟いた。

「こっちはどうする?」

 続けて龍司が凛祢に問い掛けた。

「うーん。聖羅にアルベルト、ケンスロットでいいんじゃないか?」

「なんでお前がやらねーんだよ!」

 凛祢の返答に聖羅が即答するように声を上げた。

「お前たち、俺の指示聞かないじゃないか!昔から聖羅だって指示は無視する癖に自分の命令は聞かせてたし!」

「それは……そうだったが」

「確かに……」

 黒鉄時代を思い出しているのか凛祢、聖羅、龍司がそんな会話を始める。

 みほはそんな様子を見て、思わず笑みを浮かべた。

「おいおい、時間がないんだから。そういうのは後にしろ」

「じゃあ、みほたちに合わせて黒咲聖羅選手とレオン選手、後は俺がやります」

 メッザルーナの言葉で、しぶしぶ凛祢も中隊長を買って出る。

「カチューシャさんは副隊長をお願いします」

「仕方ないわね。やってあげるわ!」

「ダージリンさんと西さん、アルベルトさんとケンスロットさん、織田さんも副隊長をお願いします」

「よろしいわ」

「誠心誠意、努力します」

「「「了解した」」」

 それぞれの副隊長が返事をする。

「大隊長はみほと凛祢だな」

「あなたについていくわよ!」

「大隊長(そっち)もやるのか……」

「大隊長。部隊名の下知をお願いします」

 西の言葉でみほは少し考えこむ。

 そして、

「西住まほチームはヒマワリ、ケイさんのところがアサガオ、ウチがタンポポでどうでしょう?」

「よろしいわね」

「俺たちは?」

 続けてドライフルーツを齧っている悠希が問い掛ける。

「それもなきゃ駄目か?」

「あった方がいいだろうな」

「じゃあ、聖羅のところがプラチナ、レオンたちがダイヤモンド、俺たちがゴールドとか?」

「良いんじゃねーか。で、作戦はどうする?」

 メッザルーナが再び、質問を投げる。

「行進間射撃しかないんじゃなくて?常に動き続けて撃ち続けるのよ」

 とダージリンが声を上げた。

「楔を撃ち込み、新党突破で行くべきよ!」

 とエリカと声を上げた。

「流星火力独島でいいんじゃない?1輌に対して10輌で砲撃ね」

 とケイが声を上げた。

「2重包囲がいいわ!そして冬まで待って冬将軍を味方につけましょ!殲滅戦って制限時間ないんだし!」

 とカチューシャが声を上げた。

「わたくし、様々な可能性を鑑みましたが、ここは突撃するしかないかと!」

 と西が声を上げた。

「とりあえず、パスタを茹でてから考えていいか?」

 とアンチョビが声を上げた。

「いや、なんでだよ!」

 続けてメッザルーナがツッコミを入れる。

「みんな、みほと凛祢に従うと言っただろう。みほ、凛祢」

「確かに、ケイさんの1輌に対して10輌で潰しにかかると言うのは合理的だ。それにカチューシャさんの冬まで待って、

冬将軍を味方につけると言うのも制限時間のない殲滅戦の裏をかいた悪くない作戦かもしれない……」

「おい、凛祢。前者はともかく、後者はどう考えても無茶苦茶な作戦だろうが」

 その様子を見て、聖羅も呆れたように声を掛ける。

「えっと、ヒマワリとプラチナチームを主力として、アサガオとダイヤモンド、タンポポとゴールドが側面を固めてください。

連携の取れる距離を保ちつつ、離れすぎないようにしてください」

「砲兵と工兵、対戦車兵装を扱う歩兵は、この戦いにおいては出し惜しみする必要はない。俺や聖羅も含めて短期決戦のつもりで使っていってほしい」

「はい!」「おう!」

 みほと凛祢の最後の言葉で再び、全員が声を上げた。

「それで、ここからが重要なんだけど……作戦名はどうする?」

「3方向から攻めるんだから、3種のチーズピザ作戦!」

「ビーフストロガノフ作戦がいいわ!玉ねぎと牛肉とサワークリームの取り合わせは最高よ!」

「フィッシュアンドチップスアンドビネガー作戦と名付けましょう」

「グリューワインとアイスワイン作戦!」

「フライドチキンステーキウィズグレイビーソース作戦!」

「あんこう干し芋フォアグラ作戦」

「会長も乗らないでください!」

「間を取ってすき焼き作戦はどうですか?」

「なんで食い物ばっかなんですか!?間取ってすき焼きもおかしいですし」

 各々の答えに凛祢が思わず声を上げた。

「好きな食べ物と作戦は関係ないだろ」

 まほも呆れたのか声を上げる。

「じゃあ何がいいのよ?」

「ニュルンベルグのマイスター作戦なんかはどうだ?これは3幕からなる――」

「長い!」

「大隊長……決めてくれ」

 まほも諦めたのかこちらに任せる。

「作戦名なんてちゃんと考えたこと無いからな……」

「では、こっつん作戦なんてどうですか?相手を突き出して、えい!ってやる作戦なので」

「なにそれ迫力ないわね」

「よし、決まりだな」

「よし、それで行こう」

「よし、試合開始だな」

「え……?」

 決定した作戦名を聞いて凛祢、まほ、聖羅が席を立つ。

 エリカはただただ聖羅とまほを交互に見つめていた。

「こっつん作戦開始します。パンツァーフォー」

「オーバードライブ!」

 みほと凛祢はいつもの掛け声を上げた。

 テントを出てあんこうチームとヤブイヌ分隊の元に向かおうとした時だった。

「凛祢くーん!」

「うおっ!……み、ミッコ?」

 後方から勢いよく抱き着いてきたのは継続高校のミッコであった。

「司、アンクも……」

 他にも同級生の司、黒鉄時代の後輩であるアンクの姿がある。

 なんとかミッコを引き離すと再び会話を始めた。

「いやー嬉しいよ。まさか凛祢君と同じチームで戦える日が来るなんて!」

「そうか。ミッコやミカとは同じ中学だったけど、こうして同じチームで戦場に出たことなかったな」

「確かに、僕や司、アンクはずっと一緒に戦場を駆けてたけど。僕もミッコさんと一緒なのは初めてです」

 隣にいた龍司も黒鉄時代を思い出す。

「あの404号室で一緒にいた私たち4人がこうして揃うと、なんだか同窓会みたいだよ」

「あれから3年しか経ってないじゃないですか。僕や司は全国大会で毎年あってるし」

「ミッコさん女子生徒なのに男子寮に来てたんすか?」

「そうだよー、ほぼ毎日行ってた」

「凄いっすね……」

 アンクは少し驚きながらもそんな言葉を漏らす。

「ミッコって凛祢さんたちと仲がいいんですね」

「そりゃあ、同じ中学だったからな」

「うん。いい友人さ」

「いいなー。私は同じ中学の人いないですから。ミッコが少しうらやましいです」

 アキは会話に花を咲かせるミッコたちを見つめ、思わず呟く。

 ヴィダールもそんな様子を見つめ、ミカもカンテレを弾いていた。

 

 

 一方、島田愛里寿と天城史郎たち大学選抜チームも試合前最後の作戦会議を行っていた

「どうします?隊長」

「高校生とはいえ相手はかなりの戦力を有しています」

 大学選抜チームの中隊長メグミとアズミが通信を送る。

「まずはプラウダと黒森峰の重戦車を倒す」

「それが妥当でしょう」

 装備を整えた史郎も愛里寿と合流する。

 愛里寿の搭乗する戦車は重巡航戦車「A41センチュリオン」。

 イギリス製戦車であり、攻撃力、防御力、機動力どれをとっても高水準な戦車である。

 砲は17ポンド砲と7.92mmベサ機関銃。

「アズミとルミの中隊、歩兵隊は私と史郎さんの隊と共に広く長い一列中隊を形成してゆっくり前進。

 側面からの強襲に注意しろ。偵察者は相手を発見しても攻撃するな」

「了解!」

「各車前進!」

「ルミ了解!」

「アズミ了解しました。全身開始」

「メグミ中隊を並進させます」

 愛里寿の指示で隊は動き出す。

「さあ、行くとしますか」

 史郎もそう口にすると、一歩踏み出す。

「「「了解」」」

 ゴールドフォースの3人である悠我、ジャック、ラウも自分の分隊と共にそれぞれの戦車の元へと向かう。

「接触は早くて20分後……」

 愛里寿は静かにそう口にした。

 

 

 八校連合も一列中隊で前進をしていた。

 それぞれの戦車のエンジン音、履帯が地面を抉る音が耳を刺すように響く。

「こちら大隊長車。まだ敵の動きは確認できていません。慎重に行動してください」

「敵はこちらより経験や技術も上だろうから、単独での行動は控えてください」

 みほと凛祢がそれぞれ通信を送る。

 一方、CV-33の車内ではカルパッチョとペパロニが表情を曇らせていた。

「……ドューチェ。ツインテールが邪魔です」

「本来なら2人乗りなのに……これじゃ前見えないっすよ」

「だったらペパロニ降りろ!」

 アンチョビも声を上げた。

 続けるようにペパロニが口を開く。

「そりゃないっすよー」

「だったら耐えろ!」

「外せばいいじゃないっすか!そのウィッグ!」

「地毛っだ!」

「そうだったんすかー」

「いだっ!」

 車内が大きく揺れ、天井に頭を打ったアンチョビが更に声を上げる。

「随分と賑やかな方々ですな」

「それがウチのいいところだからな」

 CV-33と共にSPA TM40で偵察に出ていたメッザルーナたちと百鬼半蔵。

「いたっ!敵集団発見!ゆっくり横一列で前進してきているぞ!」

「敵歩兵は6分隊。すべて突撃兵であるようだ」

「了解した。大隊長、ヒマワリとプラチナは高地麓に到達した」

「現在、先遣隊を出しているってところだ」

 アンチョビ、メッザルーナの報告に返答するようにまほと聖羅が通信を送る。

 先遣隊として高地を目指していたヘッツァーは上り終える。

 同時に敵影がないことを角谷杏が報告した。

「さっさと取るべきよ!」

「どうだろうな……」

「確かに撃ち合うなら高地の方が有利ではありますが、技量が上の相手では……」

「エレンの言う通りかもな。凛祢、どうする?」

 アルベルトとエレンの言葉に聖羅も少し考えた後、通信を送る。

「罠かもしれないが、俺は進むべきだと思う。みほはどう思う?」

「私も同意見です。十分に警戒してください。退路を確保しつつ、前進。敵に遭遇した場合は無理をしないようにお願いします」

 お互いの顔を見合わせると凛祢とみほも返答した。

「有利だが、包囲分断される危険性がある。他のチームとの連携が取れなくなる可能性がある」

「そこまで気にすることか?」

「M26なんて上るの遅いし、ここは行くしかないわよ!」

「取れば戦術的に優位に立てます」

 まほとは異なり聖羅やカチューシャは積極的に高地を取る考えを示す。

「確かに優位だが、わざと山頂を開けているのかもしれない」

「大丈夫よ!あなた、なんだかんだで妹と一席のこと信じてないのね!」

「……」

「そう言うわけじゃないと思うけどな」

 カチューシャの言葉に沈黙を貫くまほを見て、聖羅が視線を逸らす。

「ノンナなんてどれだけ私を信じているか!私が雪を黒いと言えばノンナも黒というわよ!ね!?」

「はい……」

「おーい。信じるのと崇拝してるのは話がちげーぞ」

「そもそもノンナさんを例に上げるのが、おかしいと思います」

 自信満々の言葉にアルベルトとエレンが反発する発言をする。

「あなたたちどっちの味方なのよ!」

「「別に」」

 視線を逸らし返答する2人。

「確かに、試合が長引くと経験の多い相手が有利だ。序盤で成果を上げておきたい、行くか!」

「はい!」

「行くぞ、悠希!龍司!」

「了解」「はいよ!」

 その声でヒマワリ、プラチナは前進を始める。

「さあ行くわよ!203高地よ!」

「203高地ですか!」

「203高地って……」

「プラウダはどんな戦いか知っているのか?」

「負ける気か?」

 歴史に詳しいカバさんチームとワニさん分隊は203高地についても知っているため複雑な表情を見せる。

「アサガオとダイヤモンドはヒマワリ左翼をそのまま前進してください」

「OK」「了解だ」

「私たちは?」

「タンポポは右翼の高地脇を前進。ヒマワリの援護をお願いします」

「性向は大胆不敵の子供、最初から勝負に出るのね」

 ダージリンは紅茶を手にいつもの笑みを浮かべていた。

「さて、愛里寿。君はどんな戦術を取って来るんだ?」

 兄妹であるとはいえ、凛祢と愛里寿では育った環境、教育者がまったく異なる。

 自分では愛里寿の考えを読むことは難しい。

 そもそも愛里寿の戦っているところだって最近になって1度見ただけであった。

 1輌で多数を相手にする姿は継続のミカたちの戦闘を彷彿とさせる。

 もしかして、ミカも……いや、まさかな。

 凛祢は考えるのを辞めるように首を振ると再び戦場に視線を向けた。

 戦いの火蓋は切って落とされのだ。

 数分ほどでティーガーやT-34/85が高知へと到着する。

 

 

 

 一方、シートに草木を括りつけ草原に紛れていたM24チャーフィー軽戦車の搭乗者たちはその様子をいち早く確認していた。

「敵中隊、高地北上中。高地頂上到達まで想定5分。攻撃しますか?」

「取らせておけ……アズミ中隊とジャック中隊。高地西の森林を全速で前進。敵部隊と遭遇した場合はこれを突破し、中央集団を脅かせ」

 タブレット端末を操作し、指示を出す愛里寿。

「了解。中隊各車、全速前進。ジャック、ちゃんとついてきてね」

「俺が毎回、単独行動してるみたいじゃねーか」

「間違ってないでしょ?」

「そうだけどよ……」

 ジャックもそう呟くとジープでアズミのパーシングを追いかける。

「ルミ中隊とラウ中隊は麓東方を湿原まで前進。接敵した場合は、突破せず相手を釘付けにしろ」

「中隊!隊形を横帯から斜向陣へ!ラウくん後方はよろしく」

「はいはい」

 ルミの指示で流れるように陣形が変化していく。

 

 

 そして、森林を進んでいたアサガオとダイヤモンド。

「前方に異常なし」

「了解、ケイ車より西車へ。そっちはどお?」

「こちら知波単部隊。我が部隊は順調に進撃中。右翼には――」

 西の通信を遮る様に、砲弾が車体を掠める。

「敵襲ー!3時方向だ!」

 素早く反応したのは織田信光だった。

 知波単の九七式中戦車も車体を傾ける。

「CQ!CQ!こちらアサガオ!敵と遭遇!」

「ピアーズ!ブラッド!攻撃開始だ!」

 肩にかけていたレミントンM870を握る。

 続けてピアーズもバレットM82のスコープを覗く。

「……っ!」

「もう仕掛けてきたのか……っ!こっちもか」

 凛祢は懐のホルスターからブローニングハイパワーを引き抜く。

 すでに視線の先には敵戦車、敵歩兵の姿があった。

「敵戦車発見。方位10時、240ヤード」

「11時の方向!パーシング!」

 続けてダージリンと典子から詳細が告げられる。

 敵戦車は容赦なく砲撃を開始してくる。

 次々に砲弾が放たれる中、タンポポとゴールドも応戦を開始した。

「みほさん、指示を」

「大隊長車よりアサガオ、タンポポ各車へ。前後に移動を行って、相手の車線に入らないようにしてください。

高地の頂上に、到達するまで耐えましょう。西さん、無理な突撃は極力避けて下さい」

「え?はい。了解しました」

「釘刺されたな……」

「歩兵隊は身を隠しつつ、対戦車攻撃に備えて攻撃準備。狙撃兵は可能であれば敵歩兵の撃破を」

 みほに続き凛祢も全中隊に通信を送る。

 すでに始まっている砲撃戦で次々に轟音が響き渡り、砲弾が飛び交っていた

「こちらヒマワリ、高地頂上に到達した」

「203奪取よ!」

「「「ウラー!」」」

「近辺に敵影なし。そっちはどうだ?」

「こっちもありません」

 頂上に無事到達した各車を横目にアルベルトとエレンが周囲を確認する。

「みぽりん!」

「やりましたね!」

「ヒマワリとプラチナは二手に分かれて、上から援護をお願いします」

「了解、北に敵部隊発見。警戒しつつ支援にあたる」

 通信後、ヒマワリとプラチナも攻撃準備に入った。

「攻撃開始!」

 ケイの声を合図に次々に攻撃を開始する。

 轟音が響き渡る中、歩兵たちも射撃戦を開始した。

 放たれる砲弾と銃弾はお互いの車体を掠めていく。

「うお!こっち来た!」

「一歩たりとも通すな!」

「やはり装甲面で抜きやすいこちらを狙ってくるか……レオン!」

「分かってる!」

 信光の声にレオンも返答すると砲兵部隊が前線へと出る。

「アリサ、ナオミ、ラビット、ウルフ!前へ出て、私たちも守るわよ!」

「了解。自分が!」

 ケイたちサンダースも続くように移動するが、

 遮る様に轟音と砲弾が降り注ぐ。

「っ!蘭丸と狙撃隊は敵歩兵を!できる限り戦車を守れ!」

「おのれ、こうなったら突撃!」

「負けるか!」

「ちょっと!知波単さん!?」

 知波単の戦車が2輌全身を始める。

 敵戦車とすれ違い様に前進した知波単の戦車2輌は走行不能となり白旗を上げた。

 蘭丸やピアーズたち狙撃隊が歩兵を多少は減らしたものの戦車は1輌も撃破できていないのが現実である。

「アサガオ、ダイヤモンドよりヒマワリ、プラチナへ。敵に突破されたわ、現在追跡中。アリサ、追撃の指揮は任せたわよ!」

「イエス、マム!動ける者は私に着いてきて――!」

 再び敵の砲撃が始まり、砲弾が飛び交う。

「どうするのですか?」

「工兵のいない我々に森林を活かしての戦闘は無理だ。今はできることから行動するだけである」

「泣かぬなら泣かせて見せよう時鳥ですな」

「それ言ったの、信光さんのご先祖様じゃなくないですか?」

「言っている場合ではないと思うのですが……」

 重桜高校の信光たちが思わず、そんな言葉を呟く。

 集中砲撃を浴びたアリサ車は左右の履帯を破損し、砲塔も故障していた。

「こりゃあ、動けるまで時間かかるな」

「そうすんなりはいかないですね。とりあえず体制を立て直しましょう!レオンさん、織田さん、葛城先輩に被弾状況と残存戦力の報告をお願いします」

 不知火と亮も砲撃を受けた戦車を見つめる。

 

 

 通信機から響く声で状況を把握するヒマワリ、プラチナ。

「左翼的集団、アサガオを突破して我々の後方に進行中」

「アサガオを援護するわよ、蹴り落してやる!」

「お前ら準備良いか?」

 聖羅が通信機に言い放つ。

「狙撃隊はもいつでも狙えます」

「準備完了です、黒咲さん」

「射線に着きました」

「いつでもOKだよ、お兄ちゃん」

「まほ」

「攻撃を許可する」

「よし、うてぇ――えー?」

 砲撃を開始しようとしたその瞬間、高地頂上で爆発が起きたかのような音と衝撃がヒマワリ、プラチナを襲う。

「弾着!」

「なんだ?」

「爆発!?砲兵による攻撃!?」

「いや、近くには敵歩兵の姿はなかった。それに爆発がデカすぎる。これは確実に戦車砲による攻撃だ」

 龍司の問いに悠希が返答する。

「あー、こちらヒマワリ。なんか上から飛んできたっぽいぞ」

「呑気なこと言っている場合じゃないだろ……葛城、戦車砲による攻撃だろうが、爆発が異常にデカかったぞ」

 杏と英治の通信にみほや凛祢も高地に視線を向ける。

 あの爆発範囲……。

「聖羅、状況は?」

「大丈夫だ。今は誰も被弾していない。だが、この威力だ。分析できそうか?」

「流石に目視でだけでの、分析は確実性に欠けるぞ。強いて言えばシュツルムティーガーあたりか?」

 爆発の大きさから予想を口にする。

 同じようにⅣ号内でも優花里が同じ答えを出していた。

 すると続けて、発砲音が響き渡る。

 その音から遠くで発砲されたことは凛祢だけでなく他の者たちも予測できた。

 十数秒後、再び高地頂上に砲弾が落下し、爆発音が響き渡る。

「ぐわぁー!」

「ううぅー!」

 その爆発は黒森峰のパンターを簡単に横転させ、白旗が上がった。

 小梅車はいち早く移動していたことでなんとか走行不能は免れた。

 しかし小梅車の随伴歩兵は龍司1人となってしまう。

「聖菜さん!大丈夫ですか?」

「な、なんとか……」

「3発目が来る前に前進しろ!」

 ヒマワリとプラチナも急ぎ、移動を開始する。

 しかし、そうはいかないと言わんばかりに敵戦車が進行方向より砲撃を行う。

「っ!まずいな」

「どうする?俺たちの攻撃で突破するか?」

「無理ですよ。敵歩兵もしっかり陣形組んでいるこの状況では」

 聖羅たちも武器を握る。

「あれ、これって」

「包囲されてる?」

 杏たちもようやく状況を飲み込んだのか、声を上げる。

「龍治、とりあえずこっちにこい!徒歩で逃がしてくれる相手じゃねーぞ!」

「うん、了解」

「後方からの半包囲、上から謎の攻撃……しかも前からは敵本隊か」

 まほも地図に状況を書き起こし、状況を整理する。

「ここにいては全滅します!」

「中隊長どうにかしろ!やられたー!」

「やられてないって!」

「まほさん。あんまり長居してるとまじで全滅するよ」

「星宮君の言う通りですね。中隊長指示をお願いします」

 通信機から各々の声が響き渡る。

「前方斜面をこのまま降りる!中隊全速前進!タンポポと合流するぞ!」

「全速前進だ!」

 まほと聖羅の声で一斉に中隊は動き出す。

 高地を下っている間も互いの砲撃船は続く。

「見てごらんなさい!私には当たらないわよ!」

 カチューシャが声を上げる。

「一人撃破!」

「こちらも一人……」

 そんな中、アルベルトとエレンはそれぞれ跳弾と狙撃で敵歩兵を撃破する。

「流石ですね。アルベルトさん、エレンさん」

「当然だ」

「パーシング接近!」

「っ!俺は対戦車武器は持ってないんでな。戦車相手は勘弁だ」

 攻撃を続けていた2人も逃走に専念する。

 そんな中、カチューシャ車のT-34/85が敵戦車の砲撃が集中していた。

 このままでは撃破されるのは時間の問題。

 状況を理解したクラーラとノンナは通信を送る。

「やるのか……ノンナ、クラーラ」

「「はい」」

「仕方ありませんね……停車してください。それとデグチャレフを」

 短い会話の後、プラウダの戦車とファークトのGAZ-47の動きが変わる。

 彼らはわかっているのだ全員で逃げ切ることは不可能であると。

「あなたたち!日本語でしゃべりなさいって何度言えばわかるの!?」

「カチューシャ様、お先にどうぞ。それではごきげんよう」

「なに!?その流暢な日本語?」

「クラーラは日本語が堪能なのだよ」

 ガングートたち歩兵も進行方向を変え、敵部隊へと突撃していく。

「先に言いなさいよ!……何する気?クラーラ!ガングート!」

「アルベルト、聖羅さん。この後の事はお任せしますので」

 デグチャレフを手にエレンもそう口にすると引き金を引いた。

 発砲音と共に14,5mm弾が敵戦車の履帯を撃ち抜き、機動力を奪う。

 そして、クラーラの搭乗するT-34/85が敵戦車を狙い撃つ。

「カチューシャ様、アルベルトさん一緒に戦うことができて光栄でした」

「うぉぉぉ!」

 ガングートの部隊も敵部隊を巻き添えにするように爆発の中に消える。

「クラーラ!ガングート!」

「……」

 声を上げるカチューシャとは異なりアルベルトはただその光景を見つめていた。

「砲兵部隊!武器がなくなったならば突撃あるのみです!ガングートに続け!」

「ウラー!」

 RPGのロケット弾を撃ち尽くした砲兵も拳銃、ライフルを手に突撃していく。

 カチューシャとアルベルトの重畳する車両とすれ違うKV-2とその随伴歩兵達。

 彼女たちももまた覚悟が決まっていた。

 続くように敵部隊へと向かって行く。

「カーベータン!?」

 KV-2も砲撃を開始する。

 再びエレンの狙撃が敵戦車の履帯を撃ち抜き、機動力を奪う。

「まずい!カチューシャ逃げてください!」

「逃げるなんて隊長じゃないわ!」

「お願いです!」

「来ちゃ駄目よ!ノンナまで失うわけには――」

「カチューシャ!今は撤退だ!」

 アルベルトも撤退を促す。

「カチューシャ、アルベルト。あなた方はこの戦いに必要な方だ!」

「そうです。僕やガングート、ノンナさんたちでもない!あなた方が――」

 エレンの言葉を遮る様に爆発音、戦死判定のアラームが響く。

「エレンも散ったか……」

「カチューシャ、あなたは私がいなくても……勝利します」

 その言葉と共にIS-2は敵戦車を走行不能にし、自身も砲撃を受け走行不能となった。

 少しの間、放心状態だったカチューシャも目を見開く。

「カチューシャ、今どうするべきかわかるだろ?」

「撤退……するわよ!」

 その言葉と共にT-34/85とGAZ-47は撤退していくのだった。

 そして、残されたKV-2もまたまもなく走行不能となるのだった。

 

 

 行動不能車両 八校連合    九七式中戦車(新砲塔)、九七式中戦車、パンターG型、

T-34/85、IS-2、KV-2

        大学選抜チーム M26パーシング×2

 

 残存車両数  八校連合    24輌 歩兵隊24分隊

        大学選抜チーム 28輌 歩兵隊28分隊

 

 




今回も読んで頂きありがとうございます。
ついに開始された大学選抜チームとの戦いですね。
プラウダとファークトの戦力を大きく失うこととなった大洗連合は
一体どうなってしまうのか
では、また次回のお話で。
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