ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~ 作:UNIMITES
今回で40話を迎えました。
では劇場版編の本編をどうぞ。
試合が開始して1時間が過ぎようとしていた。
現在、大洗連合はパンターやIS-2といった戦車4輌と歩兵4分隊を失っていた。
それでもノンナやクラーラ、エレンとガングートたちの働きで敵戦車も2輌走行不能とすることはできていた。
天気も荒れ始め、フィールドは雨に包まれている。
「こちら半蔵。アサガオとダイヤモンドを突破した部隊はヒマワリとプラチナへの追撃を中止して中央集団と合流中の模様……」
「思った以上に厳しい戦闘になりそうだな」
偵察隊がそれぞれ双眼鏡を手に通信を送る。
「了解。引き続き偵察よろしく。それにしてもあの頭上からの砲撃は……」
「恐らく、あれです」
アリサも真剣な表情で返答する。
「おい、亮。あれってなんだ?」
「僕が知るわけないじゃないですか」
「ねーねー、サンダースさん。その、あれってなんなん?」
オオカミチームの各々が通信を送る。
「なんでわかるの?」
「また盗聴?」
「アリサさんって彼氏のことも盗聴しそうだよね」
「束縛しすぎ?」
「それでタカシにフラれたんだー」
ウサギさんチームのメンバーも思ったことを口にする。
「告白もしてないのにフラれるわけないじゃない!てか、なんで知ってるのよ」
「そう言う問題じゃないと思うけどな」
「アリサさん、元気出してくださいね!」
「1人は楽しいですよ!」
「ファイト!」
「ドンマイ!」
「戦車が恋人でいいじゃないですかー」
「うるさいわね!あなたちに慰められたくないわよ!」
「そこまでだぞ!」
レオンの一声がウサギさんチームとアリサを戦場という現実に引き戻す。
「あの車両は認可されたの?」
「ウチが問い合わせた時は協議中でしたよ!もっとも相手さんは導入している可能性は高いでしょうけど」
ピアーズの返答でケイとレオンはお互いの顔を見合わせる。
一方、みほと凛祢たちタンポポとゴールドも戦闘の中にあった。
「アサガオみんな脱出したけどあと6輌だって!」
「第五席であり狙撃兵であるエレン殿を失ったのもファークトとしては痛い戦力ダウンですね」
「戦闘を中止してアサガオと合流しますか?」
「でも、先に頭上からの砲撃をどうにかしないと……」
「みほの言う通りだな。このまま、あれを野放しにしているのは非常に脅威だ」
見えない場所からの攻撃はそれだけで脅威になる。
通常なら発射方向から場所の特定をするのは難しくはないが、大きく弧を描き落下してくる砲撃は場所の特定も難しくなってくる。
およその場所も現在計算中ではあるが……。
ブローニングハイパワーの引き金を引き、発射した銃弾が敵歩兵に命中し戦死させる。
発砲と着弾時の音から砲弾はおそらく1トン級の艦砲クラス。
ロケット推進音はないため先ほど予測したシュツルムティーガーではない。
「そもそも艦砲クラスの砲を付けた戦車なんていんのか?」
「確かラーテとかいう戦車は陸上戦艦とか呼ばれていたんじゃなかったかな?2連装の砲を搭載してるって、本で見たことある」
「そうですね。でもラーテではあれほどの榴弾は撃てないはずです。なにより、ラーテであるなら前線で砲を連射したほうが合理的だと思いますし」
「「……」」
凛祢と塁、八尋は再び考え込むように沈黙する。
「もしかして!」
「会長、磯部さん、アンチョビさん、ミカさんお願いしたいことがあります」
みほが通信を送る。
そして、作戦の内容伝える。
「こっちも英治会長に辰巳、メッザルーナとヴィダールの分隊。あとは――」
「俺が行こう!」
「アルベルト!?」
通信機から響いた声に凛祢が少し動揺する。
「少々暴れたい気分なんでな」
「しかし……」
「僕も行きます」
「龍司までなにを!」
「いいだろう。朝倉、ついて来い」
アルベルトも龍司と行くことに問題はないと通信を送る。
これから偵察に出るどんぐり小隊は工兵、狙撃兵が中心。
歩兵戦になれば、いくらメッザルーナたちが居ても攻め切るのは難しいかもしれない。
「えっと勝手に決められては……」
「わかった。アルベルト、龍司。2人もどんぐり小隊と共に行ってくれ」
「了解した」「了解だよ」
「凛祢さん!?」
「正気か?」
「メッザルーナやヴィダールの実力は知っているし信頼できる人だが敵は社会人を破った大学生。出し惜しみして作戦が失敗すればそれこそアウトだ」
「わかりました。ではみなさん、お願いします」
「「「了解!」」」
凛祢とみほの指示で編成された偵察隊「どんぐり小隊」は行動を開始する。
「どんぐり小隊!全力前進!」
「お待たせー。ちょびー」
「ちょびーって呼ぶな!」
「4輌前進してきます。おそらく隊長車狙いかと。こちらの指揮系統を混乱させるつもりか。やぶれかぶれなのか」
「各車発砲」
メグミの声でパーシング、チャーフィーは一斉に砲撃を開始する。
砲弾によって巻き上げられた砂煙が晴れるとそこにどんぐり小隊の姿はなかった。
「消えた?」
「陽動だ。させておけ」
愛里寿はクールな口調でそう言った。
一方、砲撃を回避したどんぐり小隊はその機動力で草原を抜け、森林フィールドを進んでいた。
「な、なんだあれは!?」
「よりによってカールかよ……」
「ヴィダール。お前のラハティで撃ち抜けるか?」
「カールなんて予想外すぎる。そもそもあれ自走砲だろ?装甲どれくらいか知らねーぞ」
「動いてて問題ないってことはルールは破ってないってことですよね」
カールを発見したどんぐり小隊は驚きを隠せていない。
「おい!カールって何なんだ!?」
「戦車道やってるお前らのほうが普通詳しくあるべきだろーが……カール自走臼砲、600mm砲だ」
「600!?カルロベローチェが8㎜機銃だから」
「カルロベローチェの7.5倍っす!」
「いや750倍でしょ!」
「「75倍です……」」
「750倍って600㎜超えてるだろう―が」
間違った答えを正すようにカルパッチョとマリーダが呟く。
すると、ちょうど砲弾の再装填を終えたカール自走臼砲が再び空に砲弾を撃ちだす。
撃ち出された砲弾は八校連合の中隊の近辺に落下し、誘爆する。
「これを直前になって認可させたのは、このためだったんですな」
「卑怯ですよ!あれ自走臼砲なんだから戦車じゃないっしょ!?」
孫市もたまらず声を上げる。
「言いがかりは止していただきたい」
「オープントップを戦車として認めていいいんですか?」
「考え方次第ですよ」
「考え方次第……ですか。確かにそうですね」
「サンティちゃーん、納得してどうすんのさー?」
気の抜けた声を上げる。
「心配ありません。それでも彼らは戦うでしょう。今の大洗連合には十傑が揃っているんですから」
サンティは再びスクリーンを見つめる。
森林フィールドでカールを見つめるどんぐり小隊。
「パーシングが3輌、歩兵は24名でカールを守ってるよ」
「ヒートアックスをぶつけるにしてもパーシングと歩兵が邪魔だ」
「会長、撤退しましょう!」
「4輌とみんなで突っ込むか」
「無茶です!」
桃たちが声を上げる。
「それはパスタを生で食べるくらい無茶だぞ」
「撤退しかありません」
「騒々しい奴らだな。こいつらっていつもこうなのか?」
「同じ学校じゃない僕に聞かないで下さいよ」
呆れた表情を浮かべるアルベルトを横目に龍司も苦笑いを浮かべる。
「まさかまた戦車に乗るのか?」
「違います」
「カールに上がれる方法ないですから」
「私たちが考えたのは」
「殺人レシーブ作戦です!作戦内容は――」
「「「「名前が穏やかじゃ無さすぎるだろ」」」」
思わず辰巳たちが声を上げる。
典子たちの説明を聞いた杏が笑みを浮かべた。
「継続ちゃーん、冬樹くんたちも聞いてた?ちょっと手伝ってほしいんだけど」
「この作戦に意味があるとは思えない……」
「じゃあ従わないの?」
「俺は従いますよ」
「僕もです」
「しかし、彼女たちを信じおう」
「了解だ」
ミカの言葉で継続高校、冬樹学園のチームは立ち上がる。
「先陣は俺たちで行く」
「援護よろしく」
「行くよー」
BT-42にアルベルト、龍司、アンクが掴まるとミッコが前窓を開けた。
続けてミカがカンテレを弾き、その演奏が響き渡る。
「行くぞ……」
白い煙を上げて、発進したBT-42が森林を抜けた。
カールたちが陣取っている場所となる島までの距離を、その勢いで宙を舞い着地する。
同時に跳躍した歩兵たちが銃を発砲する。
放たれた銃弾が次々に敵歩兵へと命中した。
BT-42も発砲しパーシングの砲塔を撃ち抜き、1輌走行不能とする。
逃げるように水の抜けた川へと降りると追いかけるようにパーシング2輌も降りる。
「朝倉、アンク!右は任せるぞ!」
「アルベルトさんも気を付けてください!敵は強敵です!」
多くの敵歩兵を撃破するため別れる。
「暴れされてもらうぞ!」
アルベルトはAK-47の引き金を引き、次々に敵歩兵を撃破する。
「これは人生にとって必要な戦いなの!?」
「多分ね」
継続のBT-42がパーシングを引き付けている間に八九式たち3輌が橋を渡り、カールの元へと向かう。
「しまった!」
「大丈夫!木っ端みじんにしてあげるわ!」
「うおー!こっちみてるぞー!」
カールはその車体を動かし、アンチョビたちの方へと砲身を向ける。
放たれた600mm弾を八九式、ヘッツァーが回避する。
「随分無茶するな」
橋の近くに陣取っていたメッザルーナも冷や汗を流す。
600mm弾はそのまま橋を撃ち抜き瓦礫が宙を舞う。
そんな瓦礫の雨の中をミッコは操縦テクニックで軽やかに抜けていく。
車体の細いBT-42とは異なり、パーシングは道に引っ掛かる。
「メッザルーナくん!今のうちに!」
「了解!」
橋を下りてパーシングに取り付いたメッザルーナはヒートアックスを3つエンジン部に仕掛けるとその場を離れ、リモコンのスイッチを押す。
すぐにヒートアックスが起爆し、パーシングを走行不能にする。
「残り1輌!」
「ミッコ左!」
「いいっ!」
ミカの言葉でミッコが視線を向けるとパーシングが突撃するようにこちらに向かっていた。
車体を激突させられたBT-42は数回横転し、砂埃を上げる。
「ミカ!」
「ミッコさん!」
「アキ先輩!」
冬樹の歩兵たちが声を上げる。
「アンク避けて!」
「へ?ぐあっ!」
その隙を突かれアンクは射撃され戦死判定を受ける。
「ふっ!ひひ!」
「あれって!」
「嘘!?履帯なしなのに!?」
ミッコが外付けのハンドルを填めると再びBT-42は走行を始める。
その転輪には履帯はなく、転輪だけで走行していた。
「天下のクリスティー式!なめんなよー!」
「いっけー!」
「「「必殺、殺人レシーブ!」」」
「賢いね!私たち!」
八九式が急ブレーキをかけることで、乗っていたCV33が宙を舞う。
「今だ!マズルを狙えー!」
宙を舞いながら8mm機銃を放つ。
しかし、CV33の車体はカール自走臼砲の居る島にたどり着く前に橋に落ちる。
「あれ?」
「何やってんだ!?」
アルベルトが再びナガンM1895を発砲するとカール自走臼砲の装甲を反射し敵歩兵を戦死させる。
続けてアルベルト、龍司の後方にいた敵歩兵をヴィダールと司が狙撃した。
「アルベルト、出過ぎだ!」
「龍司ももう少し慎重に!」
「お前たちを信頼しているからこそだ」
「そうですよ。司の援護狙撃を期待しているからです」
2人の声に答えるようにアルベルトはナガンM18952丁による早撃ち、龍司もMP7による精密早撃ち「十弩」で残りの敵歩兵4人を
一気に屠った。
「用意!」
一方残り1輌のパーシングと交戦していたBT-42もその機動力でパーシングを翻弄していた。
「せっかく踏み台になったのに……」
「作戦失敗だ撤退しろー!」
「チョビ子、履帯を回転させろ」
「命令するな!私を誰だと!」
「干し芋パスタ作ってやるからさ」
「パスタ!?」
「マジっすか!?」
杏の言葉でペパロニとアンチョビが目を輝かせる。
「チェーザレ、歩兵はアルベルトたちが全部潰した!一瞬だけ時間稼げ!」
「了解っす」
ヘッツァーの後方からSPA TM40が速度を上げて近づいてくる。
速度を上げたSPA TM40は橋を飛ぶ。
空を舞う中でチェーザレがヒートアックスの入ったポーチを投擲する。
地面に落下すると同時にリモコンのスイッチを押すとヒートアックスが起爆。
カール自走臼砲が大きく揺れた。
「とべぇ!」
「残りはカール守るものはもうない!杏会長、ここで仕留めてください!」
「決めろヘッツァー!」
「いけぇ杏!」
思わず英治も呼び捨てにして名を叫ぶ。
CV33をカタパルトのようにして空を舞うヘッツァーはカールの砲身を撃ち抜く。
砲身を撃たれ、砲内の砲弾ごと誘爆しカール自走臼砲から白旗が上がる。
「やったー!」
「無茶するな」
「まだだ、後はあのパーシングを」
アルベルトが視線を向ける。
視線の先ではパーシングを追いかけ、そのまま追い抜くBT-42。
しかしパーシングの放った砲弾がBT-42の左の転輪を撃ち抜く。
「コケるー!」
ミッコは思わず声を上げるがBT-42は車体を斜めに傾け片方の転輪のみでパーシングに接近していく。
「撃て(テュータ)!」
ミカの言葉でアキがレバーを引く。
BT-42の砲身が火を噴く。
砲撃によって3輌目のパーシングを走行不能とするが、その衝撃で右の転輪もはずれ地面を抉りながら
前進したBT-42も煙を上げ、まもなく走行不能となった。
「皆さんの健闘を祈ります」
「凛祢くん!頑張ってね!」
ミカ、ミッコも最後に激励の言葉を送る。
「俺たちはここまでみたいだ」
「龍司、凛祢たちの事頼んだよ」
「うん。継続と冬樹のみんなが繫いでくれたこのバトンは最後まで繫いで見せる」
お互いにハイタッチをする。
「エレンが居なければ俺の隣に立っていたのはお前だったかもしれないな」
「何言いだすんだよ。ガラでもねーくせに」
「そうだな」
「まあ、葛城のこと最後まで助けてやれよ」
「ああ」
ヴィダールとアルベルトも司たちと同じようにハイタッチを交わす。
そして凛祢たち八校連合本隊も次の戦闘の準備を進めていた。
「さっきの戦闘でBT-42が走行不能となったので残り戦車は23輌と歩兵は23分隊」
「でもでもこっちはパーシング3輌とカールを撃破して24輌まで削ったよ」
「これで24対23ですね」
みほたちあんこうチームが現在の残存戦力を整理する。
「だいぶ減ったね」
「戦車の数だけ聞けば五分に近い状態だが、実力差を考えれば実際はちげーんだよな」
「それでもよく持ち堪えている」
凛祢も顔を上げる。
俊也の言う通り戦車の数は五分に近い。
だが、ここまで敵は突撃兵と偵察兵しか見せていない。
対戦車要員である砲兵と工兵、そして歩兵を遠くから狙う狙撃兵もいるはず。
ここまでは様子見で出していなかったのだろう。
すると、作戦に出ていたどんぐり小隊も本隊に合流する。
「でも継続さんたち頑張ってくれましたよね!」
「ウチもな!」
「ウチはカチューシャだけになっちゃった」
「大丈夫よ。まだあなたが残ってるわカチューシャ。それに」
励ましの言葉を掛けるダージリン。
「戻ったぞカチューシャ」
「ただいま戻りました」
カチューシャ車を随伴する歩兵であるアルベルトの分隊も合流する。
「彼もいるわ」
「わかってるわよ!それよりアルベルト!あなた私を放っておいていくなんてひどいじゃない!」
「放っておくって。別にそう言うわけじゃ……」
「アルベルトはカチューシャさんを守るために少しでも敵を減らしたかったんですよ」
「おい。お前は黙ってろ」
「アルベルト……もう馬鹿」
カチューシャは頬を染めて小声でそう口にした。
「すみません。互角に持ち込めると思ったんですけど」
「定石通りやり過ぎたな。らしくもない」
「まあ相手が相手だからな。みほ、君は君の戦いをすればいい。俺も自分の戦いをするから」
ブローニングハイパワーのマガジンを交換していた凛祢もみほに笑いかける。
「ここからの作戦は大隊長」
「局地戦に持ち込みます。個々の長所を活かしてチームワークで戦いましょう」
「急造チームでチームワーク?」
「急造でも今の俺たちはチームだよエリカ」
「そ、そうだけど」
悠希が割って入る様に通信を送る。
「チームを再編成して、あそこを目指します」
「守ってばかりじゃ勝利は掴めないか……ミカたちを見習うべきなのかもな」
「どうするんですか?」
「俺たちも攻める必要があるってことか?」
「ああ。歩兵の隊を再編成するぞ!決戦はあそこだろうからな」
凛祢、みほの視線の先には遊園地跡が写っていた。
あそこでなら遭遇戦による戦闘が行いやすい。八校連合でも、敵を撃破できる確率は上がる。
急造である自分たちは、互いの弱点を補いあって戦うしかないのだから、そう言った戦場の地形を活かすしかない。
「背水の陣になるがいいのか?」
「得意だよー。ウチはそういうの」
「アンツィオも得意だぞ!」
「そうっすか?」
「まあ凛祢と西住さんが大丈夫だってなら、大丈夫か」
メッザルーナも納得したように頷く。
「では、パンツァーフォー」
「オーバードライブ」
みほ、凛祢もそう口にした。
そして八校連合も同じ目的地を目指し前進していくのだった。
今回は継続の活躍回でした。
内容的には戦闘も中盤に入ってきました。
では次回の話でまた。