ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~ 作:UNIMITES
では本編をどうぞ。
戦況の変化に凛祢と聖羅たち歩兵も次なる動きを見せてた。
2人の分隊が合流していたのだ。
「アルベルト、メッザルーナ、チェーザレにはカニさんとタイガーさん分隊、シラサギ分隊の増援に向かってほしい」
「「了解した」」「了解っす」
「聖羅と八尋、俊也は今後俺と行動を共にしてもらう。ビスマルクも引き続きな」
「問題ない」
「おうよ!」
作戦会議を終えると再び隊が別れる。
「おい凛祢、八尋待て」
「どうした?」
「なんだよ、トシ?」
俊也が2人を制止する。
するとそのまま腰のホルスターからFN FiveseveNを引き抜いた。
「八尋もFiveseveN出せ。凛祢、もうブローニングは弾切れだろ」
「気づいてたのか」
「ただでさえ軽装備なお前だ。これだけ試合が長引けば予測はつく」
「お前すげーな」
八尋もFiveseveNを取り出し手渡す。
凛祢は受けとったFiveseveNを懐のホルスターに差し込む。
「マガジンも全部くれてやるから使え」
「サンキューな」
銃を再び手に入れ、凛祢も戦闘準備を整える。
「行くぞ、もたもたしてるとあっという間に戦況を見失う」
「ああ、行こう」
凛祢たちも再び移動を開始する。
ジェットコースターのレールを進むCV33とチャーフィー。
レールの曲線によってなんとか砲撃を回避していた。
「ドューチェ!前!挟まれったっす!」
前方にはもう1輌チャーフィーが現れる。
挟み撃ちにすることで確実に撃破しに来たのだ。
「どうする!?どうする!?喧嘩売って!」
「はい!」
CV33が8㎜機銃を放つが機銃では装甲を貫通できるはずもなく、敵の距離が少しずつ詰まっていく。
しかし、チャーフィーは何者かの砲撃によって白旗が上がった。
「「よっしゃ!」」
「すげー!ウサギさんやるようになりましたね」
『歴戦の経験!』
今の砲撃を行ったウサギさんチームに続いて、合流したヤマネコ分隊も思わず声を上げた。
「次行くよ、次!」
「やっちゃえ!やっちゃえ!」
「撃て!」
梓の声でM3が発砲。
立て続けにチャーフィーを撃破した。
「流石、軽戦車キラー」
「やったぜ!」
再び声を上げる。
その時であった。
ヤマネコ分隊の元に2発の榴弾が放たれ誘爆した。
爆発に巻き込まれ6人全員が戦死判定を受ける。
続けてM3も狙い撃たれ、横転した。そのまま白旗が上がる。
センチュリオンと史郎たちは静かに横を通り過ぎていく。
「え?なになに?なにがあったの!?」
「わかんないー」
「地雷ー?」
「違うよ!敵にやられたの……センチュリオンが向かっています!」
「あれが敵の隊長か!葛城先輩、後はお願いします!」
梓と亮がボロボロになっていながらも通信を送る。
建物を盾にして射撃戦をしていたレオンとピアーズ、ブラッド。
「くそ!埒が明かない!すでにセンチュリオンが園内に侵入してるってのに!」
「ですが、無闇に出て行っても蜂の巣にされてしまいます!」
「なら、どうするんだよ!?」
「まあまあ落ち着いて」
同伴していたグラーフもなだめるように割って入る。
「しかしだな!」
「上だ!」
屋根の上にいた敵歩兵の存在に気づいたレオンが声を上げた。
皆が同時に動くものの榴弾の爆発に巻き込まれ、ピアーズ、グラーフが戦死する。
「くそー!」
ブラッドは地面に倒れながらもM4の引き金を引いた。
放たれた銃弾が敵兵に命中し屠った。続けてレオンもデザートイーグルを発砲。
敵歩兵の胴を撃ち抜いき戦死させる。
「よし、これで」
再び立ち上がろうとした時だった。
銃弾の雨を浴びせられレオンが戦死判定を受ける。
「レオン!」
ブラッド立ち上がりレオンの元に向かおうとするが、
「遅い!」
続けてブラッドも背中を撃たれ戦死する。
「次いくぞ!」
第九席であるレオン、ブラッドを屠ったジャックは次の地点へと移動する。
一方、メグミ、アズミ、ルミのパーシング3輌はサンダースのシャーマンと対峙していた
「一気に蹴散らして、隊長と合流するわよ!」
サンダースの戦車が先に攻撃を仕掛ける。
すれ違い様に砲撃するもパーシングはその攻撃を回避する。
ドリフトするようにその車体が方向転換した。
3輌同時にその動きを行っていながらお互いの車両がお互いの動きを阻害することが一切ない。
彼女たちの息があっていることは明白であった。
「おのれー!」
そんな機動力に翻弄され先にアリサのシャーマンが砲撃を受けて撃破される。
続けてナオミのファイアフライもパーシングの機動力に翻弄されていた。
「え!?」
砲撃する前に狙い撃ちされ白旗が上がる。
残ったケイの車両も砲撃するがパーシングはそれも回避した。
そのまま3輌に囲まれる
「ウップス!」
同時攻撃を受けサンダースの車両全てが走行不能になった。
敵歩兵と交戦していたヤガミは表情を曇らせる。
「うーん。結構、激しいな……」
コンテンダーから放たれた銃弾は敵歩兵に命中し屠っていた。
「くっそ。何人出てくんだ!?」
「撃っても撃っても減りませんよねー」
銃弾が飛び交う中でヒムロやアインも思わず声を上げる。
「僕たち勝てるんでしょうか……」
青葉も思わず弱音を漏らす。
「よし、まだ生き残ってましたね」
「待たせたな」
「カニさん来てくれたんだ!」
「状況はあまりよろしくねーぞ」
合流したカニさん分隊、タイガーさん分隊、アインは再び攻撃を続ける。
「後ろから回り込め、数はそんな多くない」
ラウの指示で敵歩兵が突撃を開始する。
投擲された手榴弾は地面を転がり爆発した。
爆風が八校連合の生徒たちを襲う。
「近づけさせるな!ここで食い止めるんだ!」
ヒムロが声を上げる。
しかし、すでに敵の接近を許していたためアイン、ヤマケン、宗司が攻撃を受けた。
「く!後退を!」
「な!いつの間に!?」
後方に視線を向けるがすでに敵歩兵が囲い込むようにその姿を現す。
再び攻撃を受け、八校連合にはヤガミと英治のみが残る。
「どうする。英治?」
「なんとしてもしのぎ切る!」
「やっぱ、それしかないよね!」
お互いに背中を預け声を上げる。
敵砲兵の銃口がヤガミと英治に向けられた。
その時、発砲音と共に前方と後方それぞれの敵歩兵を銃弾が撃ち抜く。
滑り込むようにアルベルト、メッザルーナ、チェーザレが姿を現す。
「カールの連中が言ってたファークトやアルディーニの生き残りか」
いち早く建物越しに身を隠したラウはこちらを見つめる。
「どうしますか?」
「全員屠る、ジャックにだけ粋がらせるのも尺だからな」
「了解」
再び攻撃を開始する。
「7番、そっちは任せる」
「はいよ!ただその7番って呼び方はやめろよ4番」
「お前だって同じ呼び方してるじゃねーか」
お互いに前方、後方へと視線を向ける。
「ヤガミ、アルベルトさんとそっちは任せるぞ」
「はい!」
敵の攻撃に、一瞬動揺するもののアルベルトたちの交戦がはじまる。
時を同じくしてヘッツァー、三式中戦車はセンチュリオンと交戦していた。
センチュリオンの放った砲弾がヘッツァーのエンジン部を撃ち抜いた。
「やられたー!」
杏のそんな声と共にヘッツァーがひっくり返る。
三式中戦車の車内でもももがーがレバーを力一杯引く。
しかし力任せにレバーを引く荒い使用方法が祟ったのか、衝撃に耐えられずレバーが付け根から破損した。
結果、コントロールを失った三式中戦車を愛里寿の搭乗するセンチュリオンが見逃すわけもなく、難なく走行不能にされた。
一方、天城史郎と他の歩兵2人は次なるターゲット聖ブリタニアのアグラウェイン、ベディビエールと他数名の歩兵と交戦に入る。
「……!」
背中に背負う日本刀を抜刀すると史郎は近接戦で確実に敵歩兵を屠っていく。
屠った歩兵を盾にするように構え接近すると再び日本刀で歩兵を切り伏せる。
そんな中、ベディビエールも刀剣を振り下ろす。
しかし、史郎は日本刀で攻撃を受け流すように捌き、ソードオフショットガンを引き抜く。
零距離でベディビエールを撃ち抜いた。
散弾を零距離で受け、生存していられるわけもなく戦死判定のアラームが響く。
「ベディ!」
アグラウェインも史郎へと突撃していく。
そして剣を振り上げた。
史郎はソードオフショットガンをグリップから銃身に持ち変える。
振り下ろされた剣を回避すると銃のグリップをアグラウェインの頭部に叩きつける。
「ぐっ!」
痛みに倒れ込むアグラウェインの背中にリロードを終えたソードオフショットガンの散弾を放ち屠った。
すでに2人によって他の歩兵が全滅したことを確認する。
「愛里寿たちは中央広場に向かうはず……我々も向かいます」
「「了解」」
史郎たちも移動を再開する。
ほぼ同時に愛里寿より目標地点が中央広場である事が告げられた。
交戦を続けていたみほも通信機に手を当てる
「おねぇちゃん、私たちもコンビネーションでいこう」
「わかった」
「残りの敵歩兵は20人を切っているようだな。聖羅、一気に歩兵を倒してみほとまほさんの援護に行こう」
「ああ、最初からそのつもりだ」
「みほ、必ず君たちを守ってみせる」
「はい。絶対に勝ちましょう」
通信を送りあうと再び敵歩兵を発見し交戦に入る。
翼、塁、不知火、龍司も交戦が開始される。
「くっ!敵さんはやる気っぽいな」
「翼、お前は援護だ塁ちゃんと龍ちゃんは俺と一緒に戦ってもらう」
「龍、ちゃん?それって僕のことですか!?」
「不知火殿は気に入った相手はちゃん付けで呼ぶんですよね」
「随分フレンドリーですね」
龍司も思わず頬が緩む。
「敵はたった4人仕留めるぞ」
「ジャック中隊長。こちらも残存歩兵は6人を切っています。あまり無理は……」
「戦車も減っている以上そんなものだろう。こいつらは俺たちだけで殺し切る!」
ジャックも銃を構える。
すぐに射撃戦が開始された。
龍司は早撃ちで敵歩兵を翻弄し、不知火たち3人が確実に敵歩兵を減らしていく中、
「ちまちまと削って来るか!こうなれば力で押し切るしかあるまい!」
ジャックはそう声を上げると煙幕手榴弾を投擲して突撃する。
立ち込める煙幕でお互いに攻撃の手をを緩めるが、ジャックはすでに接近していた。
「翼、援護!」
「狙い通りだ!」
ジャックもブッシュマスターの銃口下部に取り付けられたグレネードランチャーをすでに翼の居る方へ向けていた。
榴弾を発射する
翼、そして近くにいた塁も回避するために逃走するが、反応が遅れた2人は爆発に巻き込まれ戦死判定のアラームが響き渡った。
「翼!塁ちゃん!」
「くそ!」
龍司も左手のMP7を捨て、ナイフを手に接近する。
CQC攻撃を仕掛けるが、戦闘慣れしていた大学選抜の一人であるであるジャックは銃でそれらの攻撃を防御した。
そして銃身、ストックを使って次々に龍司に攻撃を仕掛けてく。
不知火も銃を構えた。
しかし、味方である龍司と敵であるジャックの距離が近すぎるため、その引き金を引けなかった。
「ちくしょ!龍ちゃんから離れろや!」
攻撃手段を変更しナイフを手に攻撃する。
「弱い!弱すぎるぞ!」
「やっぱ、つえーよ」
「諦めるんですか!?」
「んなわけねーだろ!イチかバチか、これにかけるしかねーか」
不知火は地面についている右手に視線を降ろす。
龍司のMP7、ジャックのブッシュマスターの引き金が同時に引かれた。
放たれた銃弾はお互いに被弾する。
龍司から戦死判定のアラームが響くがジャックからは戦死判定のアラームはなっていない。
その隙に距離を詰め、接近した不知火がナイフを突き立てる。
「無駄だと言ってるだろうが!」
再びブッシュマスターの銃身で攻撃を防御する。
そしてそのままジャックが攻撃に移行した。
「今しかねぇ……!」
振り下ろされるブッシュマスターを左肩に受けながらも、右足でジャックの足を蹴り上げた。
「なに!?」
不意を突かれたため地面に倒れ込む。
「あれは!」
「凛祢と同じ、格闘術!?」
「衛宮先輩が格闘技使うなんて!」
戦闘中継を見つめていたオオワシ分隊やワニさん分隊が思わず声を上げる。
不知火が放った技は凛祢の扱う覇王流の技、紫電脚だった。
「くっ!だが、この程度で!」
「そうだろうな!覇王流……」
不知火が一歩踏み込み右手の拳を握る。
「俺はGフォースが1人!高校生如きに!」
「烈風拳!」
立ち上がったジャックの腹部に烈風拳が放たれた。
同時にブッシュマスター内のマガジンに残っていた銃弾数発が不知火の腹部に放たれる。
「が、は」
「……」
響き渡る戦死判定のアラーム。
その音が鳴っていたのは……
ジャックであった。
「よし……!凛祢、あとは頼むぜ……」
膝から崩れ落ちる不知火もそのまま立ち上がれずその場に伏せる。
戦死判定こそ、受けていないが身体が限界なのか動けなかった。
一方、ジェットコースターのレールを下りたCV33はアヒルさんチームの搭乗するルノーと共に移動する。
メグミ、アズミ、ルミの搭乗するパーシングを追いかけるカチューシャたち。
「体当たりしてでもセンチュリオンとの合流を阻止するわよ!」
それぞれがすれ違い様に砲撃するが、各車は被弾することなく回避する。
そんな中、八校連合のマチルダが砲撃を受け走行不能となった。
同時刻、敵戦車チャーフィーと交戦していたクルセイダーはその速度を上げて行く。
「リミッター外しちゃいますわよ!」
ローズヒップが声を上げると砲撃を回避したタイミングでお互いの狭間にあった川を戦車速度の勢いのみで飛び越えた。
チャーフィーの砲塔を下部を撃ち抜き走行不能にするものの、クルセイダー自身も壁に激突したことで走行不能の白旗が上がる。
行動を共にしていたオオカミチームのキャバリエ、小梅と聖菜の搭乗するパンターは敵隊長車であるセンチュリオンを発見していた。
「見つけました、敵隊長車です!みほさんたちに援軍を要請しますか?」
「いえ、その必要はないわ小梅さん。私たちであれを倒しましょう」
「でも!」
「勝機が薄いのは分かってる。でもこれ以上あのセンチュリオンを暴れさせるわけにはいかないわ」
「わかりました。いきましょう!」
オオカミチーム、そして小梅たちも覚悟を決めたように視線を再びセンチュリオンに向ける。
「1時の方向、キャバリエとパンター……」
愛里寿も英子たちの存在を察知し通信機で車内に情報を伝える。
「「砲撃!」」
英子と小梅の合図で砲が火を噴いた。
放たれた砲弾はセンチュリオンに向かっていく。
しかし、センチュリオンは流れるような動きで砲弾を回避する。
「何あの動き!?」
「あんな動き、ウチの生徒でもできませんよ!」
華蓮と聖菜が思わず声を上げる。
そのままセンチュリオンは砲撃した。
攻撃をギリギリで回避するパンター。しかし砲弾は装甲を掠っていたために装甲が黒く染まる。
「華蓮、風香!次の攻撃!」
「あいよ!」
「うん!」
再びキャバリエが砲撃する。
装甲を跳ね返る音が響き渡った。
「攻撃が……」
「当たった!?」
「……!」
走行不能にはなっていないもののセンチュリオンに砲弾が当たったのだ。
現在までただの1度も被弾しなかったセンチュリオンに。
「ううん。あの程度じゃ倒せない」
「先にキャバリエを」
愛里寿の指示でキャバリエに砲を向けた。
その隙をつくようにパンターが接近する
「セレナ!」
「……!」
直感的に危険を察知したのか愛里寿が瞬時に車内にハンドシグナルを送る。
砲塔の回転が止まり、パンターを捉えた。
「しま――!」
砲撃音と共にパンターから白旗が上がる。
「小梅さん!」
続けてキャバリエが砲撃するもののその砲弾は回避された。
反撃する様に砲が火を噴く。
被弾したキャバリエからも白旗が上がった。
「2輌撃破完了」
センチュリオンは再び移動を開始する。
ブッシュマスターから放たれた銃弾がアルベルトの手から銃を弾き飛ばした。
「ちっ!」
「まったく恐ろしい人たちだよ。君らは!」
倒れた仲間たちを見て、自分の小隊の歩兵が自分自身だけであることに気づく。
「アルベルト!」
身を隠していたメッザルーナが突撃する。
「邪魔だ!」
「ぐ!」
腰のホルスターから引き抜いたコルト・ガバメントが火を噴く。
銃弾はメッザルーナに命中する。
戦死判定は受けていないものの身体に走る痛みに膝をつく。
同時にアルベルトも2丁の引き抜いたナガンM1895の引き金を引いた。
放った6発の銃弾は3発だけがラウに命中した。
しかし、それでも彼を屠ることはできていない。
反撃するようにアルベルトの肩を撃ち抜く。
「惜しかったね!これで!」
「……お前がな」
ラウは勝ち誇ったように銃口をアルベルトに向ける。
そんな中、アルベルトは笑っていた。
「あいつ、まさかさっきの射撃!」
その意図にメッザルーナも気づいた。
後方から1発の銃弾が現れ、ラウの背中に命中したのだ。
「な、なぜ……」
そんな発言と共に戦死判定のアラームが響き渡る。
命中した銃弾はさきほどアルベルトの放ったナガンM1895の銃弾であった。
「まさか……跳弾?そんな芸当をやったと言うのか!?」
「……さあな」
アルベルトも痛む肩を抑え倒れ込む。
さきほどの銃弾は完全に予想外の跳弾だった。
正真正銘、意図しない形で跳弾が起きたのだ。
そのまま気を失い、戦死判定のアラームが響く。
続いてCV33とアヒルさんチームにルノーが敵戦車パーシングを発見していた。
「野良パーシング発見!」
「残党狩り係でしょうか?」
「小癪な!挟み撃ちにするぞ!」
「了解!」
アンチョビと緑子はパーシングに砲を向ける。
「勝手なことしちゃっていいの?これじゃ丸で規則違反しているみたい」
「規則は破るためにあるのよ!」
「青葉さんが聞いたら喜びそう……録音しておけばよかった」
ぱぞみが小声で呟く。
するとCV33がパーシングの前方に出た。
8㎜機銃を放つ。
「この!……って、あれ?」
砲を向けようとするが、接近されている上にその小さな車体では砲を低く向けることができなかった。
「へへ!深く取れないでやんの!」
「豆戦車を踏み潰せ!」
砲撃から車体での突撃に切り替えたパーシングがその速度を上げて行く。
その動きに合わせてCV33も付かず離れずの距離を保つ。
「よーし!T型上下作戦だ!」
「一回も成功したことないっすよ!」
ペパロニが声を上げるが、CV33は加速してプールの上を見ず切石のように跳ねて行く。
それは車体の軽いCV33だからこそ奇跡的にできた芸当であった。
操縦手がレバーを引き、パーシングはギリギリ陸に踏みとどまる。
後方を走行していたルノーがその隙を狙わないわけもなく砲撃してパーシングをプールの水中に落下させた。
そのまま白旗が上がる。
「安心して、浅瀬だから」
「やった!成功だ!タンケッテ最強!」
プールを越えたCV33車内ではアンチョビが思わず声を上げた。
しかし、すぐにその砲撃を受ける。
車体がひっくり返り白旗が上がった。
砲撃を行ったのは、さきほどキャバリエとパンターを走行不能にしたセンチュリオンである。
「次、3時の方向」
愛里寿の一言で砲塔が回転し、一撃でルノーを狙い撃ちし走行不能にした。
ここまで彼女のセンチュリオンは目の前に現れた戦車すべてを走行不能にしていることをスクリーンから見つめていた観客も気づいていた。
しかもその砲撃はほぼ一撃で確実に敵戦車を撃破している。
メグミ、アズミ、ルミのパーシングを追撃していたポルシェティーガー、ティーガーⅡ、T-34/85。
その機動力に翻弄されていた。
ポルシェティーガーの厚い装甲が何とか攻撃を防いでいたものの、八校連合側も決定打を当てられてはいなかった。
「このままじゃ追いつけないから、パワー出すよ!スリップで付いてきてね!よろしく!」
「スリップするのか?」
「スリップストリームね!」
ツチヤが視線を落とし、自分たちの搭載した秘密兵器を見て笑みを浮かべた。
「そんなんじゃいつまで経っても追いつけないよ。ノロマさんたち」
ルミも車内で勝ち誇った笑みを浮かべる。
「エンジン規定はあるけど、モーターはないもんね!」
ツチヤがEPSと書かれたボタンを押した。
その瞬間ポルシェティーガーの様子が変化する。
モーターからはまるで牛の鳴き声の様な低い音が響く。
EPSはenergy panzer systemの略であり、Energy-Recovery Systemを元にしたシステム、直訳すればエネルギー回収システム。
減速で発生した運動エネルギーやエンジンの排気熱を回収して動力に上乗せするシステムの事である。
ポルシェティーガーはそのまま加速していき、後方にピッタリくっつくティーガーⅡとT-34/85。
「いけ!超音速の貴公子!」
「……あれ?あ、モーターイカれた」
「こりゃあ、またヒムロくんが暴れそうだな」
その超加速にモーター、エンジンが耐えきれなかったのかポルシェティーガーのエンジン部が黒煙と共に炎上する。
そんな中でもスリップストリームで加速したティーガーⅡとT-34/85はパーシングに肉薄し砲撃。
ティーガーⅡがルミ車のパーシングを、メグミ車のパーシングがティーガーⅡを、そしてアズミ車のパーシングがT-34/85をそれぞれ撃破し白旗が上がる。
スクリーンには残存戦車、歩兵が映し出される。
残存戦車はⅣ号とティーガーⅠの2輌。
残存歩兵はⅣ号の随伴分隊であるヤブイヌ分隊の凛祢、八尋、俊也。
ティーガーⅠ随伴歩兵である聖羅とビスマルクの合計5人となる。
凛祢たち歩兵隊も敵歩兵と対峙していた。
接近して距離を詰めた凛祢はFiveseveNをの引き金を引く。
敵歩兵を屠ると同時にその歩兵を盾にする。
「こいつ!」
そのまま屠った歩兵のブッシュマスターを乱射して敵を怯ませる。
隙を突いて聖羅とビスマルクが敵歩兵を2人屠った。
「よし!」
敵歩兵を屠り移動を開始しようとした時だった。
八尋と俊也が狙撃され戦死判定を受ける。
「八尋、俊也!っ!来たか……」
「ここまで来ましたか」
「……」
その言葉に凛祢はFiveseveNを握る手に力を込める。
視線の先にいたのは敵歩兵隊の大隊長である天城史郎。そして残存歩兵が2名。
「こちら残存歩兵は3名。さきほど2名を屠ったのであちらも残りは3名です」
「恐れるべきは亜凛だけです、行くぞ」
「「はい」」
史郎はソードオフショットガンを構える。
お互いの間にピリついた雰囲気が流れた。
スクリーンを見つめるオオカミチーム。
「残りの歩兵は凛祢たちだけね」
「勝てるのかな?」
「勝つよ、きっと。ねえ、照月さん」
「ええ。今は信じて待つ」
英子もスクリーンを見つめ拳に力を込める。
バックパックを外した凛祢たちが突撃する。
史郎が銃口を凛祢とビスマルクに向ける。
そして引き金を引いた。
同時に凛祢が防弾加工外套を大きく広げる。
自身の身体が隠れるように。
「な!?」
敵歩兵も少し驚くものの冷静に銃の引き金を引いた。
ビスマルクも回避行動を取るものの、左半身に大きく散弾を受け戦死判定を受ける。
凛祢のほうは散弾を防弾加工外套で受けることで紙一重で回避した。
さらに低く態勢を取ったことで地面に倒れる八尋のP90に手が届く。
「いけ!俺のP90!」
P90の引き金を引いたことで5.7x28mm弾が毎分900発の速度で放たれる。
放たれた銃弾が敵歩兵を1人撃ち抜き戦死させた。
同じように接近していた聖羅が伸縮式警棒を振り下ろす。
史郎もソードオフショットガンで防御するが、衝撃でソードオフショットガンの銃身が歪む。
そんな状況でも眉一つ動かさなかった。
続けて撃ち尽くしたP90を捨て2丁目のFiveseveNを引き抜いた。
しかし、ソードオフショットガンの銃口も聖羅に向こうとしていた。
「覇王流……」
凛祢は力いっぱい史郎の腕を横から蹴り上げた。
ソードオフショットガンの銃口は空を向いたことで銃弾も空へと飛んで行く。
紫電脚を応用して大きく蹴り上げたのだ。
「なに!?」
「あっぶねー」
回避行動を取っていた聖羅もH&K MARK 23をホルスターから引き抜く。
そのままもう1人の敵歩兵を攻撃し屠った。
後方に下がり、懐からコルトガバメントを引き抜いたも史郎も聖羅の左肩とH&K MARK 23を撃ち抜いた。
銃は後方に飛んで行き、聖羅の武装は警棒のみとなる。
背中に装備している最後の武器である日本刀を抜刀して、再び凛祢を見つめる。
「流石、Gフォースの3人を屠ったチームですね」
「彼らを倒したのは俺ではなく、仲間たちだ」
凛祢も黒塗りのコンバットナイフを右手に握る。
「まあいいでしょう。あなた方2名を屠れば私の仕事も終わりですから」
「……!」
史郎は日本刀を手に一気に接近する。
凛祢もナイフで応戦する。
射撃しようとした左腕を後方に回し凛祢の左腕を固めた。
そのまま足を蹴り地に伏せさせる。
同時にFiveseveNを蹴り飛ばした。
「ぐっ!」
「凛祢!」
聖羅も伸縮式警棒を振り下ろすが日本刀で攻撃を受け流す。
「2対1だからといって甘く見るな!これほどの逆境、幾度も潜り抜けてきた!」
聖羅が日本刀を紙一重で回避したことで空を斬る。
「は!」
ナイフを力一杯振るが史郎はその攻撃をも回避して数歩後退する。
さすが天城家の人間であり、大学選抜チームの隊長。
戦闘能力も桁違いであった。
「それでも!」
再び攻撃を仕掛ける。
数回の打ち合いの折、史郎の腹部を蹴る。
距離が開いたと同時に後方から聖羅が警棒を振り下ろす。
甲高い音と共に日本刀の刀身が……折れたのだ。
しかし史郎は冷静に折れた日本刀を聖羅に突き立てる。
聖羅もその腕を掴みギリギリで受け止めた。
「ふっ!」
そのまま頭突きをする。
もろに攻撃を受けた聖羅が一歩後退した隙を突く。
史郎は右手に持つコルトガバメントで聖羅を数発撃ち抜いた。
「あ……」
「聖羅!」
思わず声を上げた。
そんな声をかき消すように彼から戦死判定のアラームだけが響く。
「これで残り1人です」
彼のいう通りだ。
とうとう自分だけになってしまった。
やはり無理だったのか……大学選抜チームに勝つのは。
いや、まだだ。まだ自分がいる。
「いい顔になりましたね!」
折れた日本刀を捨て左手で腰からコンバットナイフを引き抜くと、コルトガバメントの引き金を引いた。
向かってくる銃弾を右に走り抜けることで回避する。
そのまま地面からFN FALを拾い上げた。
流れるように引き金を引く。
凛祢よりも射撃長けている史郎の放った銃弾がFN FALの銃身を撃ち抜く。
「くそ!」
FN FALを投擲すると同時に接近すると胸に流星掌打を放った。
痛みにうめき声を上げるがコルトガバメントの銃口をこちらに向ける。
しかし直感的にその攻撃を察知した凛祢が右手をブロックした。
一発の発砲音が響き渡る。
瞬時にコルトガバメントを奪い小指で引き金を引いた。
銃弾は史郎の腹部に命中する。
「な、に。そんな……」
史郎も先ほどの打ち合いが予想外だったのか後退する。
奪ったコルトガバメントが弾切れになったことを確認し、捨てる。
「どうした、もう終わりか?」
「まだだ!」
お互いに残りの武装はコンバットナイフ一本となったことで激しい攻防が始まる。
ナイフの攻防だけでなく、拳と蹴りを織り交ぜたCQC戦闘に観戦していた八校連合も言葉が出なかった。
刃が特製制服の生地を切り裂く。
そんな中、凛祢の目には青い空が写っていた。
空だ……鞠菜やみんなと見た空だ。
戦場で戦っていると言うのに自分はそんな事を考えていた。
鞠菜も、この空を見ていたのだろうか……。
そんな時だった。頭痛と共に倦怠感が体を襲う。
「う……」
膝を付いてしまう。
アルベルトと戦った時と同じだ。
超人直感を短時間で酷使しすぎたせいか、頭痛が走る。
前方からは史郎が接近してくる。
そんな中、凛祢の頭には鞠菜の顔が浮かんでいた。
彼女と最後に過ごしたあの家での顔を。
走馬灯だとでもいうのだろうか。
彼女の言葉を思い出す。
「自分のために生きる」
その言葉だった。
「鞠菜、あんたの事を一度だって忘れたことはない。鞠菜がそうしろと言ったから、俺はそうするよ。
自分のために戦うよ!」
気が付けば自分も駆け出していた。
丸で誰かに背中を押されたように。
史郎の振り上げたナイフは凛祢の頬を掠り空を斬る。
凛祢のナイフは史郎の左胸から腰に掛けて体を切り伏せていた。
数秒の沈黙の後、戦死判定のアラームが響き渡り、天城史郎がリタイアしたことを全員が理解する。
「やればできるじゃねーか凛祢」
聖羅も満足そうに笑みを浮かべていた。
「……まだだ。まだ終わって、ない」
バックパックを拾い上げ、一つだけ残していたヒートアックスを取り出す。
電管を刺して、リモコンで起爆可能状態にしたことで凛祢はふらつきながらも中央広場を目指した。
「まさか、凛祢のやつ戦車を倒しにいくつもりか?」
「だろうな。あんな状態で馬鹿な奴だよな」
倒れていた八尋と俊也もその行動に驚いていた。
ふらつきながらも歩みを進めながら携帯端末を取り出す。
現状の生存車両と生存歩兵を確認する。
「すでに歩兵は全員リタイアしたようだな。戦車は2対3か。時間がないか」
頭痛と倦怠感は今だに残っている。
それでも必死に足を動かしていた。
中央広場に到着したⅣ号とティーガーⅠもメグミ、アズミのパーシング、愛里寿のセンチュリオンとの戦闘に挑もうとしているのだった。
行動不能車両 八校連合 九七式中戦車(新砲塔)、九七式中戦車、
パンターG型、T-34/85、IS-2、KV-2
BT-42
Ⅲ号突撃砲、九七式中戦車(新砲塔)×2、九七式中戦車、
八九式中戦車、チャーチル歩兵戦車
M3、シャーマン×2、ファイアフライ、
ヘッツァー、三式中戦車、マチルダⅡ、
クルセイダー、キャバリエ、パンターG型
CV33、ルノー、ポルシェティーガー、
ティーガーⅡ、T-34/85
大学選抜チーム M26パーシング×2
M26パーシング×3、カール自走臼砲
M26パーシング×6
M26パーシング×9、T-28重戦車
M24チャーフィー×3、M26パーシング×2
残存車両数 八校連合 2輌(Ⅳ号、ティーガーⅠ) 歩兵1名(葛城凛祢)
大学選抜チーム 3輌(センチュリオン、パーシング×2) 歩兵0名
今回も読んでいただきありがとうございます。
長かった大学選抜チームとの戦いも終盤です。
天城史郎を倒した凛祢、しかし戦車をすべて撃破できなけば勝利を手にすることはできない。
八校連合は勝利することができるのか?
では、また次回のお話で。