ガールズ&パンツァー~地を駆ける歩兵達~   作:UNIMITES

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UNIMITESです。
ガルパンの最終章をDVDで見てすごくおもしろかったです。
今回は聖グロ&聖ブリ連合戦の後半戦、凛祢たちは勝てるのか?
あんこう踊りを回避できるのか?


第5話 初試合決着

 大洗連合と聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合との試合が開始されてから二時間の時が過ぎた。

 岩肌の大地から市街地へ戦場を変えた大洗連合の戦いは激しさを増している。

 Ⅳ号はチャーチルとマチルダⅡを背に逃走していた。地に利がある大洗は有利ではあるものの後方を走るグロリア―ナの歩兵戦車は確実に距離を縮めている。

 α分隊はブリタニアのケンスロットの分隊とマチルダⅡの分隊を相手に戦っていた。

 市街地には甲高い発砲音が幾つも響く。

「歩兵を引き離すことができたが、流石に戦い慣れてるな」

「ああ、これはやばいな」

 八尋と俊也は市街地を走り回りながらなんとか戦闘を続ける。

 しかし、残弾も半分を切った、これ以上の長期戦は正直、厳しかった。

「八尋、東藤。ポイントL5地点まで来い!」

「ようやくか、分かった!そろそろ限界だったぜ」

 インカムから聞こえた凛祢の声に八尋と俊也は返事をした。

 開けた道路を走り抜けて目的地に向かう。後方からは八尋たちの姿を確認したブリタニアの歩兵部隊が追いかけてくる。

「待てー!」

「逃がすな!」

 ガノスタンやブリタニアの歩兵も必死に後を追ってくた。

「待てって言われて待つ馬鹿が居るか!」

「いいから走れ!」

 後方を見て叫ぶ八尋を横目に見ていた俊也が言った。

「凛祢殿、こっちからも来てます!」

「塁、さっき言った通り頼む。このまま走り続けるぞ!」

「はい!」

 数分前まで射撃戦を繰り広げていた凛祢と塁もケンスロットや他の歩兵から逃走していた。

 なんとか市街地内に仕掛けたC-4爆弾で敵歩兵の人数を二人まで減らせたが状況は劣勢。

 そして数秒後、α分隊の四人は同時にL5地点に着いた。

 前後どちらにも敵兵の姿があり、一本道にα分隊は囲まれる形になっていた。

「ここまでだな……」

「ここで終わらせる」

 ケンスロットとガノスタンがそれぞれの武器を構える。

「……」

 凛祢もケンスロットを見て、ファイブセブンとコンバットナイフを手に戦闘態勢に入っている。

「くそ、ここまでなのかよ……」

 八尋が言うと、俊也と塁も苦しそうな表情を浮かべた。

 

 

 一方、Bチームの八九式と宗司を投入したβ分隊はマチルダⅡと戦闘を繰り広げたガレージにいた。

「煙が晴れる……」

 宗司が言うと、戦車部隊員と歩兵部隊も目を向けた。

 すると、Bチームとβ分隊の前に現れた光景に目を疑った。

 マチルダⅡからは……白旗が上がっていない。

「なっ!」

「全速回避!」

「間に合いません!」

 辰巳の驚きの声と宗司の声が響くが、左右前後にも動けない八九式にマチルダⅡの砲弾が命中した。

 すぐに八九式から白旗が上がる。殲滅戦ルールに従い、同時に辰巳と漣から戦死を現すアラームが鳴った。

 マチルダⅡの随伴歩兵は二人仕留めたもののアグラウェインは剣を盾にして戦死は免れていた。

 いち早く動いたアグラウェインは宗司にL85から放たれる銃弾を浴びせる。

「ここまでですか……」

 宗司が小声で言うと、辰巳たちと同様のアラームが鳴った。

「はぁはぁ、危なかった……。彼らがあと数秒撃ち続けていたらやられていました」

 なんとか生き延びたアグラウェインは息を荒くしながら刀剣武器『ガラティン』を杖代わりにして立っていた。

「私たちも危なかった……」

 車長であるルクリリも少々動揺していた。

 もしも、相手の戦車の砲がもっと強かったなら……おそらくやられていたのは彼女たちだった。

「こちらBチーム、マチルダⅡの撃破は失敗!逆にやられました!」

「すまない!俺たちだけじゃなく副会長もやられてしまった!」

 典子と辰巳がα分隊に通信を入れた。

 

 

 別地点の市街地ではγ分隊長アーサーとブリタニアの歩兵モルドレッドが戦っていた。

 二人の一騎打ちのためにⅢ突とシャーロックはその場から離れていく。

「因縁の相手か、アーサーとモードレッド。まさにカムランの戦い」

「「「それだ!」」」

 エルヴィンの言葉にカエサル、左衛門座、おりょうが叫んだ。

「カムランの戦いだとどちらも死んでしまうと思うのだけど」

 シャーロックが冷静にツッコミを入れた。

 何度も金属のぶつかり合う音が響く。

 音の正体はアーサーの刀剣武器『カリバーン』とモルドレッドの刀剣武器『モルガンカリバー』の撃ち合いによるものだった。

「っ!」

 お互い、手に響く衝撃に耐えながら剣を振る。

「僕は、アルフレッドの名を捨てた……今の僕はアーサーだ!」

「何が、アーサーだ!あんたの名はアルフレッドだろうが!」

 アーサーが叫ぶがモルドレッドはその答えをかき消すように叫ぶ。

「俺との戦いから逃げたくせに今頃、剣を持つなど!」

 更に、アーサーとモルドレッドの剣がぶつかる。

「僕は仲間に教わった。『自分の人生は自分で演出する』と」

 血縁とか因縁とかそんなものを捨てて自分の信じた道を行く、それがアーサーの選んだ道だった。

 しかし、モルドレッドの剣術はアーサーを上回っている。

「それでも、あんたじゃ俺には勝てないぜ!剣術は……俺が上だ!」

 モルドレッドの剣がアーサーの剣を弾いた。

「剣術ならモルドレッド、お前が上だ。だが、これは歩兵道。武器はなにも剣だけじゃない!」

 アーサーは体をねじる様な動きでホルスターからマイクロUZIを引き抜くと零距離で発砲した。

 銃弾は次々にモルドレッドに命中していく。

 しかし、アーサーは引き金を引き続けた弾倉が空になるまで。

 数秒後、モルドレッドからアラームが鳴った。

「うぐっ!くそが……」

 モルドレッドは剣を地面に落として、その場に跪いた。

 何発もの銃弾を受けた腹部からは強い痛みを感じる。

「騎士道を貫くのもいい。だが、歩兵道は剣も銃も使われる戦いだ。剣術だけじゃ生きていけないぞ……」

「やっぱり、あんたを超えられねーのか……」

「いや、お前が銃を積極的に使っていたら負けていた……次は確実に負けるな剣術も射撃も」

 アーサーが言うと、モルドレッドはアーサーを睨む。

「まあ、何も戦うだけが戦車道や歩兵道じゃない。戦いを通して礼節を学ぶ神聖な武道なんだ」

「ふん!」

 モルドレッドはそっぽを向いた。

 アーサーもやれやれといった表情でⅢ突の後を追いかけようとした時。

 アーサーから戦死判定のアラームが響いた。

「なに?なんで!」

 アーサーは何が起きたのか分からなかった。

「おい、シャーロックどうした?!」

「すまない……Ⅲ突がやられた」

 アーサーが通信を入れるとインカムからシャーロックの声が聞こえた。

「壁を突き破った砲弾を側面から受けて一発だったよ……Ⅲ突は車高が低いから狙い撃ちなんてされにくいのに」

 シャーロックの言葉を聞いて状況を想像する。

 そして、一つの答えが浮かんだ。

「旗なんてつけてるからだろう、エルヴィン!」

 アーサーはインカム越しに叫んだ。

「ふ、不覚。我らの演出が仇になるとは……」

 カエサルが悔やみきれないように悔しがっている。

「こちら、Cチーム。敵砲撃により走行不能!」

 エルヴィンが続くように通信を入れた。

 

 

 通信を聞いたⅣ号車内に緊張が走る。

 八九式とⅢ突のリタイア、さらには敵の戦力は四両。

 圧倒的に大洗が劣勢だった。

「まずいよ、みぽりん」

「このままじゃ……」

 沙織と優花里が不安そうに言った。

「一両ずつ倒していきましょう。確実に一両ずつ減らしていくんです」

 みほはAチームを落ち着かせるように言った。

「まだ葛城たち、歩兵のみんなも戦ってるんだ」

「そうですね、進みましょう」

 操縦手の麻子と砲手の華もそう言うと、全員が気を引き締める。

 すると、逃走していたⅣ号の前を「工事中」の看板が遮った。

 看板の奥はバリケードを張る様に通行止めしている。

 麻子は急いで車体を操作し後ろを向かせると、数十メートル先にチャーチルとマチルダⅡの姿があった。

「っ!」

 みほも状況確認を行いつつ、逃走経路を探す。

 一本道であるここには逃げるための道は一つしかなかった。

 しかし、下手に動けばこちらがやられる。

 チャーチルとマチルダⅡは道を塞ぐように陣取り数メートル先で停止するとキューポラからダージリンが顔を出した。

「こんな言葉を知ってる?イギリス人は……恋愛も戦争も決して手を抜かない。全力で挑むのよ」

 ダージリンが言うとチャーチルの砲がⅣ号の方を向いた。

 

 

 一方、同じくピンチを迎えていた凛祢たちの状況を打ち砕くように発砲音が響いた。

 ガノスタンと共にいた歩兵二人から戦死判定を告げるアラームが鳴る。

「なに?!」

 ガノスタンが言うと同時にα分隊が動く。

 塁がFALを発砲してケンスロットの隣にいた歩兵を倒した。

「まさか、このタイミングで狙撃兵が出てくるとは」

 ケンスロットが言うと凛祢のナイフ攻撃をアロンダイトでガードした。

 ガノスタンたちの後方からは狙撃兵の翼と英治が狙撃銃を撃ちながら走ってくる。

「ようやく、合流してくれたよ」

「なぜ、いままで出てこな……まさか!」

 ケンスロットは凛祢に反撃しつつ理解した。

 ブリタニアの歩兵はケンスロットとガノスタン、アグラウェイン。そして、この場の数人の歩兵だけとなっている。

 そして、38tを監視していた部隊からの連絡はない。

 狙撃兵部隊が岩場に残りブリタニアの歩兵を全員倒してきたとしたら。

「侮っていた。まさか、ここまでとは……」

 大洗の歩兵たちはケンスロットの予想を確実に上回ってきた。

 ガノスタンは八尋と翼の相手をしており、援護はできない。

 他の歩兵も塁と俊也、英治が相手をしていた。

「やられたぜ、こんな状況……完全に予想外だ」

「ギリギリ間に合っただけだ。もう少し遅ければ終わってたよ」

 こんな状況でも笑みを浮かべるガノスタンに八尋も笑みを浮かべて答えた。

「それにしても凛祢の奴、本当に一人で敵エースと戦うのか……」

「八尋、今は目の前の敵に集中しろ」

 八尋や翼も正直、反対した。凛祢が敵エースと一騎打ちをすることに。

 しかし、敵は数も質も大洗より上、誰かがエースと戦う必要があった。

 だからこそ、凛祢に頼むしかなかった。チーム唯一の経験者であったから。

 凛祢はケンスロットとの対決を、ガノスタンは八尋、翼との対決を開始する。

 

 

 チャーチルが発砲しようとした時、エンジン音と共に現れたのは金ぴかに輝く38tだった。

「参上ー!」

 杏の声が通信機から響く。

「生徒会チーム!」

「履帯、直したんですね!」

 それを見た沙織と優花里が叫んだ。

「食らえ!」

 桃の叫びに合わせて38tが発砲した。

 しかし、砲弾は明後日の方向に飛んで行った。

「桃ちゃん、ここで外すー?」

「桃ちゃんと言うな!」

 柚子がそんな声を上げると、桃も叫ぶ。

「え?ここで外す?」

 それを見たマチルダの車長も思わず同じ感想を述べた。

「マチルダを一撃で倒して、左の道にそれて!チャンスは一度!」

 みほが叫ぶとⅣ号はマチルダⅡに発砲。

 瞬時に、左の道へと逃走していく。

 逃がすまいと、もう一両のマチルダⅡは38tに砲弾を撃った。

「やられたー」

 杏の声を合図に、ほぼ同時に38tとマチルダⅡから白旗が上がる。

「道を抜けたら右折、壁沿いに進んで急停止!」

 みほの指示を聞いて、指示通り道を抜けて壁沿いに待ち伏せする。

「秋山さん、成形炸裂弾を!」

「了解!」

 優花里も成形炸裂弾、HEAT弾を装填する。

 HEAT弾とは、簡単に言えば、装甲貫通能力に長けた特殊な榴弾の事である。

 初速が遅いという弱点があるものの、Ⅳ号でも使用できる物では70~90㎜装甲を貫通できるはずだ。

「五十鈴さん!」

「発射!」

 数十秒後、マチルダⅡが曲がり角から現れると華がトリガーを引いた。

 発砲音と共にマチルダⅡの側面に砲弾が命中し、白旗が上がった。

「こちら、マチルダⅡ。砲撃により走行不能!」

「こちら、ルクリリ隊マチルダⅡ。対戦車地雷により走行不能!」

 すぐに、後退しその場から数メートル離れる。

 また、別地点では市街地内を走行していたルクリリ隊のマチルダⅡだったが、走行中に道路に仕掛けられた対戦車地雷が起爆。

 履帯を切られた上にエンジン部に引火し、白旗が上がった。

「なっ、なかなかおやりになるわね」

 驚きのあまりダージリンは思わずティーカップを落とした。

 ティーカップは割れ、紅茶が車内にこぼれる。

「ここまでとは、驚きですね」

「初心者同然の大洗がここまでしてくるなんて」

 オレンジペコとアッサムも驚いた。

 圧倒的な差で勝つと思っていたのに状況は五分五分にまでなっていた。

 大洗は残り一両と分隊一つで状況をここまで覆した。

「確かにやるわね。でも、負けるわけにはいかないわ!行くわよ!」

 ダージリンはⅣ号を討つべくチャーチルを走らせる。

 そして、道を抜けたチャーチルとⅣ号が対峙した。

 Ⅳ号はそのまま、チャーチルから大きく距離を離し始める。

「路地行く?」

「いや、ココで決着着けます! 回り込んで下さい! そのまま突撃します!!」

 麻子の問い掛けに、みほはそう返す。

「………と見せかけて、合図で敵の右側部に回り込みます!」

 チャーチルから距離を離していたⅣ号が反転し、チャーチルの方を向き直る。

「向かって来ます」

「おそらく、さっきと同じ所を狙って貫通判定を取る気ね」

「させるもんですか!」

 Ⅳ号の動きを見て、次の動きを予想するダージリン、オレンジペコ、アッサムが言った。

 向かってくるⅣ号に対してチャーチルを右旋回させ、車体を固定する。

 Ⅳ号が前進し、チャーチルの最初の砲撃を避ける。そのまま、チャーチルの右隣に滑り込む。

 チャーチルもすぐに砲弾を装填、Ⅳ号と同時に砲を撃つ。

 

 

 凛祢も必死にナイフを振るが、ケンスロットはその攻撃を捌ききっている。

 くそ、攻めきれない!実戦において自分の腕は、ここまで衰えているのか?

 急がなければⅣ号が負けるかもしれない!

 どれだけ、攻撃を繰り出してもケンスロットは防御する。

 ケンスロットも凛祢の攻撃を防ぎきってはいるが、怒涛の攻撃に防御に徹するしかなかった。

 攻撃に回れば簡単に守りを崩されると分かっていた。

「早く、もっと早く」

 凛祢の攻めのスピードを上げる。

 それでも、ケンスロットは守り切る。

「大洗にここまでの歩兵がいたとは」

「……」

 同時に距離を取るように後退した。

 ケンスロットがそう言うが凛祢は息を荒くしながらケンスロットを見る。

 ついにケンスロットが攻撃を始める。

 弾切れのファイブセブンを捨て、凛祢もナイフ一本で戦う。

 お互いの攻撃のぶつかり合いで、ついに凛祢の手からナイフが弾かれる。

「もらった!」

 ケンスロットがその瞬間を見逃すわけもなく、アロンダイトを縦に振った。

「なっ!」

 しかし、凛祢は左に動きアロンダイトを回避した。

 ケンスロットは驚きを隠せなかった、ほぼ必中の零距離だったが回避された為だ。

 凛祢もケンスロットの隙をつくように腹部に拳をかました。

「うっ!」

 ケンスロットはうめき声を上げる。

 更に、追い打ちをかけるように何発も拳を叩き込む。

「取った!」

 凛祢がそう叫び、最後の拳をかまそうとする。

 が、甲高いアラーム音が響き渡り、凛祢の拳はケンスロットの顔の数センチ前で停止した。

 戦死判定のアラームが鳴ったのは……凛祢たち、大洗連合だった。

 そして、アナウンスが大洗の市街地に響いた。

「大洗女子学園、残存戦車ゼロ。聖グロリア―ナ女学院、残存戦車チャーチル一両。よって、聖グロリア―ナ&聖ブリタニア連合の勝利!」

 アナウンスを聞いて、凛祢も握った拳から力を抜いた。

「……流石にやばかったな」

 ガノスタンも二刀流の短剣を地面に落とし、その場に座り込んだ。

 息が荒く、特製制服もボロボロだった。

 目の前の地面には八尋と翼が倒れている。二人掛かりでもガノスタンには勝てず、Ⅳ号が負ける直前にアラームが鳴っていた。

 そして、他の歩兵も激戦を繰り広げ、その場に倒れている。

「君はやっぱり、歩兵道経験者なんだな。最初の誘いやCQC戦闘の技術は確かなものだった」

「ああ……そうだな」

 ケンスロットの手を掴み、立たせると凛祢は問いに答えた。

「大洗の歩兵は全員初心者だと聞いていたが、君やガノと戦っていた歩兵達はいい腕を持っているようだ」

「それでも、敗北したのは俺たちだ。それに、ブリタニアの歩兵は少なからず手を抜いた歩兵もいたはずだ」

「すまない。手を抜いていた者のことは謝る」

 凛祢が皮肉を言うように答えると、ケンスロットは頭を下げた。

「別にいいよ。俺たちの技術はまだまだだってわかったしな」

「……もう一度再戦してくれるか?」

「機会があればな……」

 ケンスロットが問うと凛祢は小さめの声で答えた。

「約束だぞ、騎士の誓いだ。次に戦うとき勝つのは俺だ」

「ああ、そうだな。わかったよ」

 ケンスロットの声をちゃんと聞かず答えた凛祢は八尋と翼の元へ向かう。

 

 

 数十分後。撃破された大洗の戦車は、SLT50エレファント戦車運搬車によって運ばれて行く。

 更に、その他の装甲車や兵員輸送車、軍用車両も同様に運ばれて行く。

 試合は大洗連合の敗北という結果で幕を閉じた。

 Aチームのみほたちと、α分隊の凛祢たちは大洗の港の荷物を運搬するトラックが並んでいる駐車場に集まっていた。

「負けたな……」

「はい……」

 八尋の呟きに、華が悔しそうな様子で返事を返す。

「相手は準優勝経験もある強豪校だもんだ……俺たちが勝てたら奇跡だっただろう」

「それは……そうですけど」

「悔しいですよね……」

 翼や塁、優花里も同じような様子で言った。

「あーあ、惜しかったな」

 沙織もため息交じりに言った。

「西住、ごめん。守るって言ったに……」

「そんな、葛城君のせいじゃないよ!」

 凛祢は責任感を感じて謝罪するが、みほは慌てて撤回する。

「失礼しますわ。ちょっとよろしくて?」

「?!」

 声を聞いて、一同が声の聞こえた方に目をやるとそこには聖グロリア―ナ女学院のダージリン、オレンジペコ、アッサムの姿があった。

 そして、聖ブリタニア学園のケンスロット、ガノスタンの姿もあった。

「グロリア―ナの!」

「ブリタニア歩兵隊」

 突如現れたダージリンたちとケンスロットたちの姿に、みほは驚き、凛祢もケンスロットたちに目を向ける。

「貴方たちが大洗の隊長さん?」

「あ、はい」

「……」

 ダージリンの問い掛けにみほが返事をし、凛祢も首を縦に振る。

「お名前をお伺いしてもいいかしら?」

「あ、西住みほです」

「……葛城凛祢、兵科は工兵」

 みほと凛祢が答えるとグロリアーナの三人とブリタニアの二人が軽く驚いた様子を見せた。

「もしかして、西住流の?」

「はい」

「そう、貴方のお姉さんとのまほさんとは一度試合をした事がありますわ。……貴方はお姉さんとは違うのね」

 ダージリンは笑みを浮かべながら、みほに向かって言うのだった。

「そっちの貴方も、凛祢と言う名前聞いたことがありますわ。中学歩兵道ではかなりの強者だと聞いていましたが。確か、今の黒森峰の隊長、黒咲聖羅さんの右腕だったとか。貴方の戦闘を見る限り、間違いではない様ね」

「へー、俺たちは高校歩兵道がスタートラインだからよく知らねーけど。あ、俺はガノスタン。狙撃兵だ」

 ダージリンが思い出したように言うと、ガノスタンがそんな呟きを漏らす。

「俺はケンスロット。兵科は突撃兵。それほどの実力を持っていながらどうして黒森峰に進学しなかったんだ?」

「中学で歩兵道はやめてたから……それに家の事情もあった」

 ケンスロットの質問に即答する凛祢。

「え?なんでやめたんだよ?」

「聖羅とは道が違ったからだよ……あいつの歩兵道は西住流に似ている。だが、俺はあいつの歩兵道を認めなかった。それだけだ」

 ガノスタンの問いに少し考えた後に答えた。

「そうか。でも、工兵なのにケンと同等の近接戦闘をするなんてスゲーな。俺たちも油断してられねーよ」

「どおりで強いわけだ」

「凛祢……かつて中学歩兵道で最強とまで呼ばれた超人が、大洗に居たとはね」

 ガノスタンやケンスロットも凛祢の技術に納得した様だった。

 ダージリンも凛祢の顔を覚えるようによく見る。

 思わず凛祢は目を逸らした。

「ダージリン、そろそろ」

 ケンスロットがそう言うとダージリンは凛祢から離れる。

「あら、残念ね。では、これで失礼するわ」

「ご機嫌よう」

 ダージリンとアッサムが言うと、グロリア―ナとブリタニアの面々はその場から去っていく。

「そこの茶髪と眼鏡。お前らいい腕してるし、コンビネーションもよかったぜ。修練積めば十分俺たちを超えられるぜ。じゃな」

「失礼します、行きますよガノ先輩」

 ガノスタンとオレンジペコはそう言ってケンスロットの後を追って行った。

「なんだあいつ……でも、負けたままってのも気持ちが悪いな」

「次は必ず勝つぞ」

 八尋と翼もまるで好敵手と出会ったように闘争心を燃やしていた。

「いやー負けちゃったねー、ドンマイ」

「だが、得た物は大きいはずだ。決して無意味な敗北ではない」

 そこで、みほたちと凛祢たちの背に声を掛けてきたのは聞き覚えのある声。

 杏と英治だった。他にも副会長と広報の四人もいる。

「約束通りやってもらおうか……あんこう踊りを」

「結果は結果だ」

 桃と雄二がいつもの怖そうな顔で言った。

「うっ!」

 Aチームとα分隊が麻子を除いて一気に表情を影に落とす。

「マジかよ……」

「終わった……もう一生モテることはねーよ」

「これは単位のためこれは単位のためこれは単位のため……」

「俊也殿、顔が怖いです!」

 α分隊の三人もそれぞれの心の声を漏らしている。塁が俊也を見て声を上げる。

「まあまあ、こういうのは連帯責任だから」

 そこで、杏が思い掛けない言葉を発した。

「うえ?!」

「ちょっとそれって?!」

「そうなるよな」

 雄二、宗司が驚きの顔を見せ、英治も分かっていたように言った。

「会長!」

「杏、やるの?」

 桃や柚子も同様の表情をしていた。

 やっぱ、生徒会長は何考えてるか分からなかった。

「うん!」

「……確実に広報の奴の独断専行のせいだがな!」

「うるさい!」「うっせー!」

 杏は満面の笑みを浮かべて返事をした。

 俊也が広報の二人を睨み言うと、桃と雄二が叫んでいた。

「やるか?この野郎、女でも殴るぞ」

「東藤やめろ!広報の二人もやめてください!」

「そうですよ、みんなチームなんですから!」

 喧嘩腰の俊也と雄二を凛祢とみほが止めに入った。

「みんな、ここで争って意味はない。結局俺たちはあんこう踊りすることになるんだ。だったらここで殴り合って体力を消耗しても無意味だよ」

「トシ、あとでセブンティーフォーのアイスおごってやるから、トリプルで」

「っ!別にいらねーよ。悪かったよ、負けた責任を押し付けて」

 英治が合掌して言うと、八尋に止められた俊也は素直に謝罪した。

「雄二、河嶋さん」

「独断専行してしまったのは確かに私たちだ、悪かった」

「すまない……」

 宗司が言うと、桃と雄二も謝罪した。

「はい、一件落着。さーいこー!」

 再び杏が満面の笑みでそう言い、罰ゲームが開始されるのだった。

 

 

 大洗の戦車道と歩兵道受講者たちは街中であんこう踊りを踊っていた。

「ふええー!」

「もうお嫁に行けないー!」

「仕方ありません!」

「恥ずかしいと思えば余計に恥ずかしくなります!」

 妙に耳に残る盆踊りの調の曲『あんこう音頭』を鳴らしながら大型輸送車の荷台の上にはデフォルメされたあんこうの被り物を被ったピンクの全身タイツを着たAチームが踊りを踊っている。

「ふざけんなよ……まじで」

「羞恥心を捨てろ」

「無理だ!」「無理ですよ!」

 また、Aチームの隣でふんどし一丁のα分隊が踊っている。

 他の戦車道受講者、歩兵道受講者も踊っていた。

 そんな中でも、麻子と凛祢はポーカーフェイスを貫いている。

「格好もきついが、踊りもなかなか……」

「それでもついてきてるじゃないか」

 アーサーが踊りの難易度に手間取っているがシャーロックは踊っている状況でもパイプ煙草を銜えている。

 そんなアーサーとは対照的に杏たちや英治たち生徒会は妙に慣れた様子で踊っていた。

 息ぴったりで見事にシンクロしている。

「なんであの人たち。あんな踊れんだよ」

「今の状況でのみ生徒会を尊敬するよ」

 辰巳と漣が生徒会を見て呟くのだった。

 

 

 一時間ほど経過しようやくあんこう踊りから解放された。

 すぐに、みほたちと凛祢たちが大洗市場前に集合し、観光の準備をしている。

「あー、恥ずかしかった」

「まじで拷問だよな、あれ」

 身も心も疲れ果てた沙織と八尋が呟いた。

「ごめんね、みんな……」

「いいや、悪いのは俺だ。結局何もできなかった」

 みほが申し訳なさそうに謝るが凛祢が否定するように言うと。

「そんなことありません!」

「そうですよ、西住殿も葛城殿も必死にやっていたじゃないですか!」

 そんな二人を見た塁と優花里が否定するように言った。

「あんまり思い詰めるなよ」

 翼も二人にそう声をかけた。

「この後、七時まで自由時間ですけど、どうします?」

 華がみんなに向かって訪ねる。

「買い物に行こうー!」

 沙織が右手を挙げながらそう提案すると麻子が無言で歩き出す。

「麻子どこ行くの?」

「おばあに顔見せないと殺される」

 沙織が尋ねると、麻子は振り返らずに返答した。

「俺も実家に顔見せなきゃならないから、パス」

「俺も行くところがあるから……」

 麻子に続くように俊也と凛祢が輪から離れようとする。

「え?葛城君と東藤君も?!」

「んだよ、付き合いわりぃな。まあいいか」

「しょうがないだろ」

 沙織がまさかの返答に驚く。

 隣にいた八尋と翼は納得しているようだった。

「それじゃ」

 凛祢が言うと凛祢と俊也、麻子がバラバラに歩き出す。

「用事があるなら仕方ないよね。私たちだけで行こうか?」

 残った七人は沙織が言うと、そのままアウトレッドモールへと向かった。

 

 

 みんなと別れた凛祢は、慣れた足取りで一人街を抜けていく。

 そして、木製の古めかしくも広そうな建物の前で足を止めた。

「三年ぶりか……」

 門の名札には「照月」と掛かれている。

 凛祢は門を抜けて、玄関のインターホンのスイッチを押した。

 数十秒後、優しそうな顔のおばさんが現れる。

「あの、あなたは?」

「えっと。照月玄十郎さん、いらっしゃいますか?」

「主人なら、いらっしゃいますけど……」

「周防鞠菜の息子が来たと言えばわかると思うのですが……」

「鞠菜さんのって……もしかして……凛祢君?」

 おばさんは鞠菜の名を聞いて凛祢の名を口にした。

 この人は玄十郎の奥さん、照月麗子(てるづきれいこ)。

 麗子さんは覚えていてくれたもう三年もあっていないのに。

「こんなに大きくなって!あ……ごめんなさい。今すぐ呼ぶから入って」

「すみません、お邪魔します」

 麗子の案内の元、畳部屋で腰を下ろした。

「今、呼んでくるからね」

 麗子は冷たい麦茶の入ったコップを凛祢の前に置いて、玄十郎を呼びに行く。

 少しだけ麦茶に口をつけると、乾ききった喉を潤していく。

 いつも飲む麦茶とは別物と思ってしまうほどその麦茶がおいしかった。

 そんな事を思っていると、麗子が出て行った戸が開き怖そうな顔の男が現れる。

 凛祢の顔を見た後に、凛祢の前に座った。

 この人こそ照月玄十郎(てるづきげんじゅうろう)。照月流の師範であり、鞠菜の師匠でもある。

「何故、俺に会いに来た?」

 玄十郎が口を開き、凛祢に緊張が走る。

 彼の見た目からはそれほど威圧感があった。

「もう一度……俺に『無拍子』の修行をつけてほしいんです!」

 凛祢は生唾を飲み込み言った。

「お前には一度修行をつけたはずだ」

「お願いします!どうしても無拍子が必要なんです、だから!」

「貴様は覇王流を……照月流をなんだと思っている?無拍子は我が家の流派だぞ。お前は三年前まで修行しても無拍子を使えなかった。そんな者に二度も修行をつけることなどできん」

 玄十郎は腕を組んで、強く言った。

 彼の言う通り照月流、通称覇王流の技、無拍子の修行を鞠菜の頼みの元、過去に受けた。

 しかし、凛祢が無拍子を使えることはなかった。

 だからと言って、凛祢も引き下がれない。

「お願いします!どうしても必要なんです!」

 凛祢が言ったその時、戸が開いた。

「……」

 凛祢と玄十郎は同時に目を向けるとそこには照月敦子の姿があった。

 他にも、凛祢とそう変わらない歳の少女がいる。

「照月……教官?」

「葛城凛祢……」

 お互いに顔を見合わせる。

「葛城、なぜここにいる?」

「それは……」

「こいつは無拍子の修行を受けにきたそうだ。だが、こいつには素質がなかった。これ以上やっても時間の無駄だ」

 敦子の問いに答えようとした凛祢の言葉を遮るように玄十郎が言った。

「なぜ無拍子を?」

「必要なんです……」

「そうか。だが凛祢、無拍子の修行には最低一年……いやどれだけ早くとも半年以上かかる。どっちにしても全国大会には間に合わないぞ」

 凛祢の言葉を聞いた敦子は言った。

 全国大会までは約二か月、そんな短期間ではどうやっても間に合わない。

 だが、何もせずにいるのは嫌だった。

「とにかく俺は修行をつけるつもりはない。帰れ」

「そんな……」

 玄十郎ははっきりと言うと、部屋から去っていった。

「……」

 凛祢は無言で拳を力いっぱい握った。

「ふん。葛城、どうしても修行を受けたいか?」

「はい……」

「どんな苦痛にも耐える覚悟はあるんだな?」

「はい……」

 敦子の言葉にも返事だけを返す。

「あのじじいには頼まないでいい。私が修行をつけてやる」

「え?」

 凛祢は顔を上げて敦子の顔を見た。

「そもそも、じじいはもう引退してる。これからは私と英子のどちらかが照月道場の師範をやることになる」

「お姉ちゃん。そんな勝手なことしていいの?」

 後ろにいた少女が心配そうに言った。おそらく彼女が英子だろう。

「いいんだ。葛城、修行は私がつけてやる。英子にも手伝ってもらう」

「え?私も?」

 敦子の言葉を聞いて、英子は驚きの表情を見せる。

「本当にいいんですか?」

「ああ、周防先輩には世話になった。それに私たちも照月流の人間だ。だが、修行は厳しいものになるぞ、それに全国大会に間に合うかもわからないぞ」

「はい!よろしくお願いします!」

 凛祢は感謝の思いを強く持って言った。

 その後、すぐに道場に連れていかれた凛祢は昔使われていたという特製制服へと着替えていた。

 目の前には同じ柔道着姿の敦子と英子がいる。

「ねえ、お姉ちゃん。私いらないでしょ」

「お前も同じ照月流だろ、ならば少しは手助けしてやろうと思わないのか?」

「思わないよ。せっかく陸に来て、遊びに行こうと思ってたのに」

 敦子はそう言っているが英子は迷惑であると言っているようだった。

「お、俺のせいで。ごめん」

「本当だよ……ちゃんと責任取ってよね!学園艦に戻ったらセブンティーフォーのアイスでも奢ってもらうんだから!トリプルで」

 凛祢が謝罪すると英子は誤解されそうな発言をする。

「時間は限られている。さっさと始めるぞ」

 敦子の言葉を合図に数時間に及ぶ無拍子の修行が始まった。

 基本の動作は凛祢自身覚えていた。

 しかし、それ以外はまったく記憶になく、敦子や英子はため息をつくばかり。

 時刻は五時半を回った頃、ようやく修行が終わる。

 凛祢は疲れを見せるが、敦子と英子は涼しい顔をしていた。

「そろそろ、時間だな」

「もう、全然だめじゃない。あなた」

「……」

 英子が呆れたように言うが凛祢は何も言えなかった。

 彼女の言う通り自分は何一つ満足にできていない。

 もしかしたら成長すらしていないかもしれない。

「英子、お前は学園艦に住んでいるんだ。歩兵道の授業がない時はお前が修行をつけてやってくれ」

「ちょっと、お姉ちゃん。冗談でしょ?私だって忙しいのに」

 英子は露骨に嫌がった。

 それもそうだろう。今日会ったばかりなのにすぐに親しくなどできるわけもない、修行をつけるなんて無理というものだ。

「そうか。なら、お前の欲しがっていたボコとやらのレアDVDはまた今度だな。次はいつ手に入るかわからんな」

「お姉ちゃん、卑怯だよ!ボコを出汁にするなんて!」

 英子は体を震わせながら敦子に叫ぶ。

 というか照月家って教官の親族だったんだな、確かに照月って名前だったけど知らなかった。

 ボコってなんだよ?という疑問が浮かんだ。

「オークションで売ったらいくらになるかな」

「うう。ううーお姉ちゃんなんて嫌いなんだから!凛祢とか言ったわね?分かったわよ、全国大会までは手伝ってあげるけどそれまでなんだからね!」

 英子は凛祢を指さして言うと道場を出ていく。

「よかったな葛城。お前の新しい教育係だ」

「は、はあ。ありがとうございます」

 凛祢と敦子も英子の後を追う。

 麗子から聞いたことなのだが、敦子と英子は姉妹というわけではないらしい。

 正確には従姉妹同士の関係なのだが、英子にとっては敦子が姉のようなものらしく照月家では「お姉ちゃん」と呼んでいるそうだ。

 二人とも護身術として照月流戦闘術を覚えたそうだ。あと、英子は大洗女子学園の三年生でボコられ熊の『ボコ』というキャラクターが好きらしい。

 麗子の勧めで照月家でお風呂と夕食をご馳走になった凛祢は英子と共に学園艦に向かう道を歩いていた。

 お互いに無言のまま学園艦へと向かっている。

「……なあ」

「なによ……?」

「なんで怒ってんだよ?」

 凛祢も意を決して話しかけた。英子は見ただけで分かるほど不機嫌そうだ。

「別に怒ってないし」

「悪かったよ、巻き込んで。敦子教官があんな事を言うとは思わなかった」

「……別に、気にしてないわよ。お姉ちゃんのあれは今に始まったことじゃないわ」

 凛祢の謝罪の言葉を聞いたからなのか英子の言動がどこか優しくなった気がする。

「凛祢、貴方はどうして歩兵道をするの?」

「……最初は友人に誘われたからだった。でも、今は……誰かの役に立ちたかったから」

 凛祢は少し考えた後に英子の質問に答える。

「……ふーん、そう。変わり者ね」

 英子はそう言いって凛祢の後ろを歩いていた。

「……私もだけど」

 最後に小声でそう言うと英子は何も言わなかった。

 数十分後、学園艦に到着した凛祢と英子が甲板に戻ると大洗の生徒会とみほたちの姿があった。

「凛祢、それじゃあね」

「ああ、気を付けてな」

 英子はそう言って女子寮に帰っていく。凛祢もそう返事して見送る。

「悪い遅れた」

「遅いぞ凛祢。あの人、誰だ?」

「今の可愛い子、誰だよ?!」

 凛祢がそう言って合流すると翼と八尋が質問する。

「はいはい、後で教えるから」

 凛祢はそう言って生徒会の傍に行くと試合で戦車を放棄した梓たちと逃亡した歩兵部隊、一年生チームのDチームとΔ分隊が居た。。

「西住隊長、葛城隊長……」

 梓が二人の名を呼ぶ。

「え?」

「戦車を放り出して逃げたりして……」

「恐怖に負けて、敵前逃亡してしまい……」

「「すみませんでした!!」」

 梓と亮の声を合図にDチームとΔ分隊は謝罪と共に一斉に頭を下げた。

「先輩たち、カッコ良かったです」

「すぐ負けちゃうかと思ってたのに……」

「私たちも、次は頑張ります!」

「絶対頑張ります」

 あゆみ、優季、あや、桂利奈が確かな覚悟を持って言った。

「歩兵は戦車を守る存在……そう教えられたのに、自分たちは未熟でした!」

 亮が言うと、Δ分隊の五人も真剣な表情を見せた。

 未熟なのは自分も同じだ。

 中学歩兵道は戦車がいない歩兵だけのものだった。だから、俺は無意識に歩兵を食い止めることに徹していた。

 しかし、高校歩兵道はまったくの別物だ。戦車を守るのが歩兵なのに……。

「俺も同じだ。西住、本当にすまなかった。俺は……」

 凛祢もみほに頭を下げる。

「いいんだよ葛城君、みんな。失敗は誰でもするもの。大事なのはその失敗を繰り返さない事なんだから」

 みほは凛祢や一年生たちに笑みを浮かべて答えた。

「ああ、同じ失敗は繰り返さない」

 凛祢も顔を上げて言った。

「西住さん。これを聖グロリア―ナの隊長さんが」

「葛城君にもあるよ」

 柚子はバスケットをみほに渡し、宗司が手紙を凛祢に渡した。

「紅茶?」

 バスケットの中身が紅茶である事に気づいたみほ。

「手紙が付いてるよ」

 沙織もバスケットの中身を見て言った。

 みほが手紙を手に取り、目を通す。

 ダージリンからの手紙であった。

『今日はありがとう。貴方のお姉さんとの試合より、面白かったわ。また公式戦で戦いましょう』

 ダージリンの手紙には、そう書かれていた。

「凄いです!聖グロリア―ナは好敵手にしか、紅茶を送らないとか!」

 優花里が興奮気味に言った。

「そうなんだぁ」

「昨日の敵は今日の友!ですね」

「凛祢のほうは?」

 八尋が凛祢の手紙を覗くように見る。

「果たし状って……」

「なんか、変わってますね」

 翼と塁も手紙を見て言った。

『拝啓、葛城凛祢殿。貴殿との試合は、自身の弱さを知ることができた。実に良い経験をさせてもらった。次はお互いの騎士道をかけた公式戦で戦おう。聖ブリタニア高校歩兵部隊長ケンスロット』

「全国大会で再戦か……」

「いいぜ、やってやる。ガノスタンの奴には勝たなきゃならねーからな、上等だぜ」

 凛祢が言うと隣にいた八尋が翼と共に気合を入れている。

「次は全国大会か……」

「我々はもう負けられないんだ」

 雄二と桃が小声で言った。

「そうだな、全国大会では負けられない」

「そうだね。私たちには優勝の道しかないんだから……」

 更に英治と杏が凛祢やみほを見ながらいつもとは違う視線を向けていた。

 

 

 初試合を終えた次の日、みほたちと凛祢たちは大洗女子学園の校庭のガレージに集まっていた。

 今日は戦車道や歩兵道の授業があったわけではないがみんな早く戦車に会いたいと放課後に集まったのだ。

「凄ーい!」

「直ってる!」

 ガレージ内に並べられた新品同然の戦車たちを見て、一年生チームから声が上がる。

「いやー、ヤガミたちは仕事が丁寧な上に早いから捗るよー」

「ナカジマたちだって細かいところに気づいてこっちとしては助かってるよ」

 整備と修理を行った女子学園自動車部のリーダー、ナカジマと男子学園整備部のリーダー、八神大河がそんな会話をしながら最後の調整をしている。

「これでまた練習できるね」

「あと、二か月か……」

 みほが言うと、制服姿の凛祢が言葉を続ける。

「まず、その塗装をどうにかしろ」

「そうですよ、いくら何でもその色では目立ちます。バレー部の皆さんも文字を消してください」

 雄二と宗司がⅣ号を除く四両を見て言った。

 二人の言い分は賛成だ。

 ピンクに金ぴか、旗付き四色戦車はどうにかしなければならなかった。

「えー?バレー部って文字を?」

「我々の色に文句をつけるのか?」

「せっかく塗ったのにー」

 B、C、Dチームが不満気な声を上げる。

「カエサル、Ⅲ突に関してはその旗のせいで撃破されただろう?忘れたのかい?」

「まったくだよ、僕やシャーロックが生き残っていたのに……」

 シャーロックとアーサーが言うと、カエサルも仕方ないという様子を見せる。

「あの、できれば私も元に戻してほしいです」

「戻すべきだろう、普通」

 みほと凛祢も塗りなおすように言うとB、C、Dチームはため息をついたが、ようやく聞き入れてくれた。

「我々も戻しましょうか」

「そだね、ちょっとふざけ過ぎたかも」

 桃と杏も少し反省している様だった。

「どうせだし射撃訓練ぐらいしていくか」

「それもそうだな」

 八尋の提案に俊也が賛成する。

「私たちも走行訓練と砲撃訓練しよっか」

「そうですね」

 沙織たちも訓練を行うようでみんなが戦車に乗り込み、八尋たちは銃を手に取る。

 凛祢もファイブセブンに手を伸ばす。

 銃の重さを感じつつⅣ号に乗り込むみほを見た。

「今度は絶対に守り抜く……俺の全てを賭けて」

 凛祢は心の中でそう言った。

「凛祢ー行くぞー」

「ああ、今行く」

 翼の声に返事をすると、凛祢もファイブセブンを手に演習場へと向かう。

 

 

 二時間ほど射撃練習をした頃。

 凛祢は銃を下ろして、息を吐いた。

 数メートル先の的には数発以上命中したがほとんどが外側に命中している。

「凛祢、どうした?」

「あまり、結果が良くないですね」

 俊也と塁が凛祢の的を見て感想を述べた。

 いつもなら三発ほどは中央付近に命中するのに今日はまったく当たっていない。

「いや、大丈夫だ。少し疲れが残ってるだけだ」

 そう言って肩を回す仕草を見せる凛祢。

「そうか?じゃあ、俺たちもそろそろ終わるか?」

「それも、そうですね」

 八尋が言うと、塁が答えた。

「珍しいな、あいつらしくもない」

「あいつも昨日の試合の事、気にしてるんだろうよ」

 俊也が凛祢の背中を見て言うと八尋がP90の弾倉を外して言った。

「凛祢や西住さんに頼ってばかりじゃ駄目だ、全国大会には俺たち個々の実力も必要になる」

「個々の実力か……確かにそうかもな。昨日の試合は凛祢が敵エースを引き受けてくれたから、あそこまで戦えたんだ。それに、俺たちはいつまでも二人に頼ってもいられない」

 翼や俊也が昨日のことを思い出し言った。

「俺たちも、役に立てるように頑張ろうぜ!」

「「ああ!」」「はい!」

 八尋の声にα分隊の三人が返事をしていた。




ケンスロットはランスロット、ガノスタンはトリスタン、アグラウェインはガウェイン、モルドレッドはモードレッドを模して描いたキャラです。
これからも続きを書くので読んでもらえたら嬉しいです。
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