ある男の飛竜戦艦   作:ゴロゴロ鼠

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第21話

「楽しかったね!」

 

「ああ」

 

アルストはライトから話を聞いた後、レフトの討伐を手伝うと伝えると周りが暗くなってきていたので先にクルスを家に返し後で二人に合流すると言いクルスを家に送っていた

 

「いいかクルス、家に帰ったら絶対に一人で家を出たら駄目だぞ」

 

「うん、でも何で?」

 

「・・・外には悪い奴がいるかもしれないからな」

 

「大丈夫!悪い奴はお父さんが倒しちゃうから」

 

「そうだな。ほら着いたぞ」

 

クルスの家に着くとクルスの父のエドが家から出てきた

 

「クルス、丁度探しに行こうと思ってたんだ。どうだった?」

 

「うん!楽しかった」

 

「アルストさんもありがとうございました」

 

「いえ、それよりも話しておきたい事が」

 

「何ですか?」

 

「実は・・・」

 

アルストはライトから聞いた話をエドに話した

 

「その話なら聞いております、すでに皇都に指名手配の連絡をしております」

 

「そうですか。では私は用事がありますので」

 

「はい、お気を付けて」

 

「エドさんも」

 

アルストは家から離れると二人が待っている飲食店へと入り直ぐに二人を見つけた

 

「お待たせしました」

 

「いえ、急に依頼を頼んだのは私なんですから。ベルドルベルさんも依頼を受けてくれてありがとうございます」

 

「この街に知り合いも多く出来たからな、【牙神】に殺させるわけにはいかない。それでどうする?レフトが何処に隠れているのか分かるのか?」

 

「いえ、この街にいることは確かなんですが」

 

「地道に探すしかないということですか」

 

「そもそも何でこの街にレフトがいると分かったんだ」

 

「それは〈DIN〉から情報を買ってここまできました、〈DIN〉によるとレフトはある物を手に入れるためにここまで来たそうです」

 

「それは?」

 

「あれです」

 

ライトは街の中央の広場にある大きな塔に指をさして言う

 

「あれ何か貴重な物なんですか?」

 

「はい、あれがあるからラチスは今もモンスターから身を守れているのです。あの塔の中には先々期文明の動力炉が入っています」

 

これにはアルストとベルドルベルも驚いた、先々期文明の品は遺跡からたまに発見されるがMPを自動で生成する動力炉が見つかるのは珍しい

 

「まだラチスという街が無かった頃、このあたりの村の人達は生きていくために協力してこのラチスを作りました。しかし近くには〈厳冬山脈〉、ただ壁で街を囲った所で壁を砕く地竜が現れたら終わりです」

 

「そこで戦闘職に就いていた者達が近くにあった遺跡に望みを託しました、そして遺跡の奥で動力炉を見つけ壁を作り結界を張り魔力式の大砲を取り付け地竜から身を守ったそうです」

 

「なるほど、たしかに動力炉は〈叡智の三角〉でも喉から手が出るほど欲しい物、カルディナにでも売れば大金が入って来るでしょうね」

 

「しかし街から動力炉が無くなればこの街は防衛手段を失いモンスターに襲われたら終わりです」

 

「〈マーシャルⅡ〉だけでは問題がありますからね」

 

「もちろんあの塔には厳重な警備がありますが・・・」

 

「【牙神】をどうにか出来ないだろうな」

 

「とりあえずあの塔の近くに行ってみるか」

 

 

「警備の〈マーシャルⅡ〉が五機しかいないな」

 

「この街に〈マーシャルⅡ〉は六機でもう一機は緊急時の予備機ですからあれで全部ですね。この塔の重要性が分かります」

 

三人は警備に見つからぬよう周りの建物の影に身を潜めながら『テレパシーカフス』で話す

 

「今日来ると思いますか?」

 

「はい、レフトがこの街に到着したのはおそらく昨日、直ぐにでも動力炉を奪ってこの街から離れるでしょう」

 

「・・・おい、来たみたいだぞ」

 

三人が視線を向けると〈マーシャルⅡ〉が霧に包まれ、その中で一人の男が立っていた

 

『何だこの霧は!』

 

『お前の仕業か!』

 

〈マーシャルⅡ〉達が一斉に男に持っていた銃を向け引き金を引こうとするが

 

「無駄ですよ」

 

男がそう言うと〈マーシャルⅡ〉は全機が一斉に動きを止める

 

「全員を一発で【強制睡眠】とかさすが超級職、手に入って運が良い」

 

「・・・信じられんな」

 

ベルドルベルがそう反応したのも無理はない、恐らく〈マーシャルⅡ〉が動きを止めたのは短剣の武器スキルである《スリーピング・ファング》で操縦者が【強制睡眠】にされたからであろう。しかしそれだけなら驚かない

 

「いったいどうやって攻撃を当てたんでしょうねえ?」

 

アルストの言うとおりレフトと操縦者には〈マーシャルⅡ〉という壁がある、操縦者には短剣の武器スキルが当たるはずがないのだ

 

「前と同じです、彼奴は私達に武器すら見せていなかったのに仲間が次々と状態異常にかかり全滅しました、それが彼奴の」

 

「〈エンブリオ〉ですか」

 

「おそらく」

 

「なあ、隠れてないで出てこいよ」

 

三人が話していると突然、レフトが三人の方を向き話しかける

 

「!」

 

「如何するのですか?気付かれている様ですけど」

 

「出て行くしかあるまい。出て行かなければ何をするか分からんぞ」

 

三人が出ていくとレフトはライトを見ると大きく笑い声を上げる

 

「ははははは!兄さんじゃないですか、こんな所で如何したんですか?」

 

「お前を止めに来たんだ」

 

「僕を止めに?ははは、兄さん忘れたんですか?前に同じことを言って僕一人に全滅されたことを」

 

「今回は前とは違う!」

 

「あん?・・・ッち!超級職ですか」

 

レフトは《看破》を使ったのか三人を見ると舌打ちをする

 

「しかし、あなたが居るとは驚きましたよ、〝皇竜〟さん?」

 

「・・・それほんとに広まってるんですね」

 

「兄さん、超級職を二人連れてきたのは驚きましたが二人とも非戦闘系、【奏楽王】は分かりませんが【設計王】はこの街中であの竜を出すわけにもいかない。一体どうやって戦うつもりですか?まあ、もう戦えないでしょうけど」

 

「それは如何かな?」

 

「・・・幻術ですか」

 

レフトが短剣をライトに投げると短剣はライトに当たることなくライトの体をすり抜け地面に落ちる

 

「お前がどうやって状態異常を付与しているのか知らないがこちらの居場所が分からなければ攻撃できないだろう」

 

「それでは私を止められないのでは?」

 

「その心配はいらない」

 

アルストがそう言うとレフトの背後から一体の〈マーシャルⅡ〉【デッドマンズソード】がレフトに攻撃する

 

「先程のティアン達を見ていなかったのですか?〈マーシャルⅡ〉なら状態異常を受けないと思ったのなら大間違いです」

 

レフトは【デッドマンズソード】の中にいるであろうアルストを【強制睡眠】にしようとするが【デッドマンズソード】は動きを止める事無くレフトを攻撃する。他にも【拘束】等動きを封じる状態異常を付与するスキルを発動するが【デッドマンズソード】は動きが変わることなくレフトを攻撃する、それはありえないことだった。

 

【牙神】のパッシブスキル《オールヒット・ファング》は完全な耐性を持たない限り相手に完全に状態異常を付与できる・・・・相手が生物でさえあればの話だが

 

「これは・・・人間が動かしていませんね」

 

『正解です』

 

【デッドマンズソード】と融合したヘスティアがレフトに話す

 

『私は機械と融合した〈エンブリオ〉【麻痺】や【強制睡眠】の状態異常にはかかりません』

 

【デッドマンズソード】の攻撃をかわしながらレフトは周りを見る

 

「状態異常が効かない敵に何処から攻撃してくるか分からない超級職二人。なるほど厄介ですね、ここは一度出直しましょう」

 

レフトは後ろを向くとアルスト達に聞こえるように大きな声で話す、しかし

 

「なんてね」

 

突然、誰も居ないはずの方角からデッドマンズソードに向かって【クリムゾン・スフィア】が飛んできた

 

『!?』

 

ヘスティアが避け【クリムゾン・スフィア】が飛んできた方向を見るとそこには霧に隠れてよく見えないが数人の人影があった

 

「なんだ、あいつらは」

 

「彼らは今回の仕事仲間ですよ」

 

「仕事仲間?」

 

「ええ、詳しくは言えませんが動力炉を手に入れろという依頼でしてね、彼らは僕と一緒に依頼を受けたティアンや〈マスター〉ですよ、まあ後数人いますが」

 

「数人?・・・まて、まさか!」

 

「ええ、兄さんは僕ばっかり警戒しすぎましたね」

 

レフトが笑いながら言っていると動力炉がある塔の中から数人の男たちが出てくる、その中の一人が一つの【アイテムボックス】をレフトに見せ

 

「こちらは完了した、そいつらはどうする?」

 

「僕が始末しておきますよ、あなたは先に依頼主の元へ」

 

「分かった、あいつ等は万が一のために残していくがいいな?」

 

「ええ、要らぬ心配でしょうけど」

 

それを聞くと男は数人の仲間と霧の中へと姿を消した

 

「まずい、あいつらに動力炉を持っていかれたらこの街は」

 

「・・・私が行こう」

 

「ベルドルベルさん」

 

「大丈夫なんですか?いくら超級職とはいえあいては恐らく全員戦闘系ですよ?」

 

「あのくらいなら問題ない」

 

「そうですか、では、ヘスティア!」

 

アルストが呼ぶとヘスティアはアルストの意図を察しベルドルベルの前まで行きデッドマンズソードの操縦席を開きベルドルベルを操縦席に座らせる

 

「AGIではあいつ等には勝てないでしょう、あいつ等の所までヘスティアが送ります」

 

「助かる」

 

デッドマンズソードはベルドルベルを乗せるとレフトたちを無視し逃げた男たちを追い始める

 

「追わせるわけが無いでしょう」

 

レフトは仲間に攻撃するように指示を出すが、皆ヘスティア達を狙わず真上に向かって攻撃を始める」

 

「周りに被害を出すわけにもいかないからな」

 

「ッ!たかが上級職ごときが」

 

レフトは目の前に現れたライトに短剣で切り付けるが切った感触が無くそれが幻影だと気付く

 

「前とは全然違いますね、こそこそと煩わしい」

 

レフトは一旦落ち着き残った仲間に指示を出す

 

「幻術師系統は光と音を騙すだけ、幻影には熱はありません熱感知のアイテムの装備」

 

それを聞いて事前に準備していたのかそれぞれが装備しライトが居る方向をしっかりと見ている

 

「アルストさん、聞こえてますか」

 

「はい、聞こえてますよ」

 

アルスト達が言っているのはそれぞれの声、ではなく街の外から聞こえる声である

 

「モンスターの声ですね、結界が無くなったのに気付いたのか」

 

「・・・アルストさん、外のモンスターを頼みます」

 

「いいんですか?」

 

「はい、こいつらを倒してもモンスターがこの街を襲ったら意味がありません、それに・・・」

 

ライトは【ジャック・オー・ランタン】を出しレフト達に聞こえるように言う

 

「こいつら位俺一人で倒せれますよ」

 

「そうですか、それじゃあ頼みますよ」

 

アルストはそう言うとアイテムボックスからソードマンを取り出し、それに乗りモンスターの声がした方向へと向かう

 

「本気ですか?」

 

レフトは忌々しそうにそう言った

 

「本気だよ、お前は此処で確実に監獄送りにする」

 

「出来るものなら」

 

こうしてライト対レフトとその仲間の戦いが霧の中で始まった

 


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