遺跡の中をラスカルとマキナにヴィーラと四人で歩くアルスト。警備用のドローンなどが襲ってくるのでは警戒していたラスカルとアルストだが遺跡内部には物がほとんどなく異様な数の施錠された扉があるだけだった
「ヴィーラ、これはどこまで続くんだ?」
「施錠されたいくつもの扉を付けている割には警備用の機械が見当たらない。今までの遺跡とは全く異なる」
「その通りです、遺跡のほとんどは何かの工場や倉庫となっておりますがここはフラグマンが実験などのために使っていた地下施設なのです。まあ化身とのあれこれで見つかりにくい場所に施設を移したみたいで見たらわかる通りほとんどの物が無くなっていますが。あ、目当ての物が残っているのは確認しておりますので大丈夫ですよ、この最後の扉の先にあります」
そういってヴィーラは最後の扉を開ける。そこでアルスト達が見たものは一つのジョブクリスタルとクリスタルを取り込むように設置された機械だった
「周りの機械はともかくこれは間違いなく各地にあるジョブクリスタルと同じものだ。このクリスタルは何か特殊なジョブになれるのか?」
「いえ、そのクリスタルで就くことが出来るのは一般的なジョブばかりで特殊なジョブに付くためのクリスタルではありません」
「じゃあここには何のために?」
「ここにはジョブの強化の為に来ました」
「ジョブの強化、【魔装王】のか?」
「・・・それまだ広まってないと思ってたが。いったいどこで情報を仕入れてるんだよお前は」
「〈IF〉に入るなら教えてやる」
「前に入らないって言っただろう。まだ諦めてないのか」
「それではお願いしますよ。マキナさん」
「は~い。それと私は呼び捨てで良いですよ」
互いの主人たちが話している間にヴィーラはマキナを呼び二人で装置を起動させていく
「・・・うわー、フラグマンこんなことも考えてたんですか。というかできるんですか?」
「私とフラグマンだけでしょうね。あなたも作れないんじゃないですか?」
「・・・うん無理ですね。動力炉は作れますがこっちは作ろうとすれば完全に体が動かなくなります」
「フラグマンにとってこれは動力炉以上の価値があり万が一にも知らない誰かの手に渡るのを警戒したのでしょう。まあこれを使って行えることを考えたら妥当ですね」
「おい、お前たちだけで話してないで俺たちにも教えろ」
「ヴィーラ、結局それは何なんだ?」
「これはまあ簡単に言うとジョブの改造を行う装置です」
「ちなみに~改造されたジョブは持ち主が変わってもそのままでーす」
「「・・・なに?」」
長年デンドロをプレイしている二人からすればそれはあり得ない言葉だった。皇国に居る【魔将軍】ローガン・ゴットハルトの様にジョブに介入する力を持ったものは少ないがいる。しかしそれはエンブリオを使っての一時的な物に過ぎない。煌玉人達の言う様な完全にジョブを改造する事など出来るはずが無いのだ
「まああまりに逸脱した改造は行えないんですけどね。下級職に超級職レベルのスキルを付けるとか系統外のスキルを付けるとか」
「見た感じあくまでそのジョブの延長線上。いうなれば超級職を超超級職に強化、みたいな感じですかね?」
「・・・その名称はともかくどういうことなのかは分かった」
「それでは早速やってみましょう。マスター、そのジョブクリスタルに触れてください」
「わ、分かった」
「後はこれを装着します」
アルストがクリスタルに触れるとヴィーラはアルストの体に様々な装置を付け終わるとコンソールを操作して作業を開始する
「ほら、貴方も手伝ってください。これ扱いが難しいんですから」
「は~い。ご主人様にも言われていますからちゃんと働きますよ」
しばらくヴィーラたちが端末を操作する音だけが聞こえずっとクリスタルに手を付いていたアルストはヴィーラに尋ねた
「なあ、こうやってクリスタルに手を付いてるだけなんだけどこれでジョブの改造ができるのか?」
「はい、手を離さないでくださいね。最悪【魔装王】が使用不能になりますので」
「え、怖いんだけど。何やってるの」
「まあ簡単に言いますと【魔装王】所持者のマスターを媒介に〈アーキタイプ・システム〉に介入。【魔装王】関連のシステムを改造しています」
「・・・何かとんでもないこと言ってる」
「そんなことが可能なのか」
「普通は無理ですね、専用の装置と高度な演算装置。後は改造を行える力を持つ物。現在確認されていてそれが出来るのは私かフラグマンだけなのであまりそこは考えなくても大丈夫ですよ」
「・・・ますますお前たちが欲しくなった」
「俺は〈叡智の三角〉のアルスト・コジャーソだ。他のクランに入る気はない」
「つれないな」
「・・・あの二人ってなんだかんだ仲が良いですよね。馬が合うんでしょうか」
「相性は悪くなさそうですよね。マスター、終わりましたので手を放しても大丈夫ですよ」
「ああ」
アルストはクリスタルから恐る恐る手を離し体の確認をしてみる
「あんまり変化したって感じが無いな」
「まあ奥義しか改造していませんからね。大幅な改造も出来ませんし」
「【魔装王】の奥義か、確かにお前のエンブリオを考えたらそうなるだろうな」
「【魔装王】の奥義を知ってるのか?本当にどこまで手が広いんだよ」
「ただ先代の【魔装王】と戦ったことがあるだけだ。それよりこの後はどうする気だ?ジョブの改造が終わったという事はこの場には用が無いんだろう」
「ええ、後は帰る私達を攻撃しなければ問題ないので帰ってもらって問題ないですよ」
「・・・あれはどうする気だ?」
「もう必要が無いですからねえ。欲しいなら持って行って構いませんよ」
「おいヴィーラ良いのか?」
「構いませんよマスター。しかし先に言っておきますが」
ヴィーラは装置と繋がっているジョブクリスタルに近づくと軽くコツンと叩いた。するとクリスタルは罅が入りそれが一気に全体に広がると粉々に砕けた
「ジョブクリスタルからシステムに介入していたのでクリスタルの負担は大きいです。貴重なクリスタルを一つ消費してジョブ一つだけなのでそんなに便利な物じゃありませんよ」
「・・・それでも貰っていこう」
「それでは私たちは先に帰りますので」
「じゃあな」
そういって来た道を戻る途中、アルストはヴィーラに確認を取る
「なあ、本当に良かったのか。あの装置を渡して」
「問題ないでしょう。一回ジョブを改造するのにクリスタル一つ。この時点でほぼ使うことは不可能ですしあれを動かせるのは私かフラグマンだけ。あの子、マキナでも扱えませんので〈IF〉がものすごく強くなるなんてことは無いですよ」
「なら良いんだが」
「そんな事よりもマスター、あなたが考えるべきことは王国との会議ですよ。この場で襲われたらひとたまりも無いのですから集中してください」
「ラスカルは契約書があるんだから攻撃できないだろ」
「いえそちらでは無く・・・」
「これで最後か、無駄になが・・・」
遺跡の最後の扉をアルストが空けると
「【皇竜】だ!」
「おいおい本当にいたぜ」
「情報通りだったか」
「砂上船で派手に動いたのでカルディナからの追ってでも来る可能性が」
「安心しな、俺たちはPKクランの〈デザート・カメレオン〉。カルディナとは無関係だ」
「カルディナからの追ってじゃないなら何の用だ。俺一人を狙うよりそれこそ金持ちがなる船でも襲えば色々と手に入るだろうが」
「とぼけるなよ。それらと比べても価値が高い物をお前は持ってるだろうが」
「・・・狙いは【ヴィーヴィル】か」
「大正解。大方【ガレージ】にでも入れてんだろ。おとなしく渡せば見逃してやるぜ」
「・・・ふざけるな」
「あん?何だって?」
「ふざけるなと言ったんだ。なぜおまえたちの様なゴミに渡さないといけない。二人相手にこんな大勢の仲間と一緒じゃないと偉そうなことが言えない小物が」
(マスターが起こるのは珍しいですね。まあ理由が理由なだけに無理もありませんが)
【ヴィーヴィル】はアルストの夢でありクランメンバーと協力して作った大事な物でそれを価値も分からないやつが渡せと脅迫してきたのだアルスト以外でも怒っていただろう
「な、なんだとてめえ!こっちがせっかく穏便に済まそうとしてやってんのに・・・ッ!お前らやれえ!!」
「了解!《クリムゾン・・・【デットマンズソード】!
□
〈デザート・カメレオン〉対【デットマンズソード】の戦いは敵側の人数が多かった割にはすぐ終わり全滅させたのを確認したアルストは【ヴィーヴィル】を出してドライフへの帰路についていた
「早速改造した奥義の効果を試すことが出来ましたね。ほんの少しでしたけど」
「あいつら結構な人数がそろってた割に弱かったからな。PKって言っても初心者専門集団だったのかな」
(普通に【デットマンズソード】の性能が高くて【魔装王】の奥義がヘスティアと相性が良すぎたからこそ一方的な戦いになったんだと思いますけど、まあそこは言わなくても問題ないでしょう)
・ジョブ改造装置
初代フラグマンが作ったジョブを改造するための装置。改造と言っても大幅な強化は不可能。できるのはスキルを改造して効果を強めたり効果範囲を拡大させたりなど。
〈アーキタイプ・システム〉に干渉するためにシステムと繋がっているジョブクリスタルが必要。しかしクリスタルを消耗品として使わなければいけないため使い所が難しい。
ラスカルが持ち帰り【器神】で完全に修復したがジョブクリスタルが必要な点とやはり扱いきれないという事でとりあえず保管して放置。その数日後マキナが兵器を作る材料として使用したことでマキナを仕置きされた。