ソードアート・オンライン ~悪魔の剣と光の剣士~   作:桜花 如月

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第106話 強さ【劣等感】

路地裏

 

ライムが片手剣を振り、ソードスキルのような何かを練習している様子が確認出来る、一回一回剣を振り終わったあとのライムの表情はどこか暗く見える。

と、隠れてライムの様子を確認していると俺の入ってきた方とは真逆の方から見るからに怪しい3人組がライムの方へ向かってきた。

 

「坊主、お前1人で何してたんだ?」

 

「あんたら、誰?俺になんの用」

 

「なんの用かって?そりゃ、お前には()()が見えねぇのか?」

 

3人の中のリーダーと思われる大男は自分の頭の上に指をさした。

その先にあったのは《殺人》をしたプレイヤーに表示される《オレンジ》マーカーだった。

 

「あんたら、殺人ギルドか何かなの?」

 

「その通りよ、坊主、1人で居るなら俺らの腹いせにでもさせてくれよ、こちとら()()()()()()()()()()()にデュエルで負けて腹が立ってんだ、《完全決着》型デュエルで勝負しようぜ?」

 

「断ったら?」

 

「ここでお前を殺せないからな、3人で圏外に連れてって痛みつけてやるよ、死ぬまでな」

 

「デュエルって言っても3対1だけど」

 

「ンなもん関係ねぇだろ!おめぇは俺らの腹いせのために死ぬんだからよ!」

 

完全決着デュエル……HPがゼロになるまでデュエルが終わらない、それだけならともかくこのデスゲーム内でそれが行われるとただ単に人を殺すためだけに使用するデュエルになっている。

蒼眼のチビだか何だかよくわからないけどそんなやつに負けてそれの腹いせを他人にぶつけるなんて……それも3対1の不利な状況で行うのか……!

 

(そんなことさせねぇ!)

 

ライムがデュエル開始のボタンを押そうとしたところで俺はライムの背後から飛び出してライムを吹き飛ばしながら3人の男の前へ出た。

 

「ルシハ……どうしてここに!?」

 

「ちょっと寄り道してたらお前が剣を振ってたのを見ててな、そこでこいつらが()()()()()()()()()から思いっきり飛び出したんだ、悪いな吹き飛ばして」

 

「おいおい坊主、てめぇ1人で俺ら3人に挑もうってのか?」

 

「なぁめんなァよォ?おれぇらぁはァ!あのかの有名な───ぐっはぁ!?」

 

とりあえず剣を抜き変な喋り方をする男一人を《スラント》で吹き飛ばし相手に威嚇という名の先制攻撃を仕掛けた

 

「おうおう、いい度胸してんな!」

 

スラントごときで吹き飛ばされたとはいえここは圏内、普通なら無傷で済む、もちろん今も相手は無傷で吹き飛ばされている。

 

「たった一人倒したぐらいでいい気になってんじゃねぇぞ小僧!」

 

「ったく……たった一人のプレイヤーを集団でいじめようとしたくせに、今度は1人のプレイヤーに負けて慌ててるのか」

 

「んだとてめぇ……これでも喰らいやがれ!」

 

男は俺の挑発に乗って攻撃してくる、と思いきや取り出したものは『煙幕』のようなもの。

それを男が地面に向かって投げつけた瞬間、そのアイテムから煙が噴出し相手の姿は見えなくなった。

 

 

 

それから数分して煙が消えたと思えば男達3人はどこかへ消えていた。

 

「大丈夫か、ライム」

 

「………ごめん」

 

「なんで謝るんだよ、別に、こんなの日常茶飯事だから俺は気にしてない、それよりなんでこんな朝早くからこんな所でソードスキルの練習なんてしてたんだ?」

 

「ここで話すのもなんだし、とりあえずどこか休める場所…カフェにでも行こうよ、そこで話す」

 

こうして俺はライムと共に近くにあるカフェに行った。

 

────

はじまりの街:カフェ・ドルチェ

 

「それで、なんでソードスキルの練習をしてたか、だよね」

 

席に座ると同時にライムは話を始めた。

 

「俺はさ、今のあのギルド……《夕立の霧雨》の中では戦力的には1番かもしれないんだけどさ、ルシハの戦闘を見てたら思ったんだ、『こんな強さじゃ前線に立てない』って、それでルシハが使ったあのソードスキル……《ホリゾンタルスクエア》を使えるようになりたいって思って朝早くからソードスキルの練習ばっかりしてた、まぁ…なんの進展もないけどね」

 

「なんでお前はそこまで強くなりたいって思うんだ」

 

「………強さ、か」

 

ライムは自分の頼んだコーヒーのカップを見てしばらく黙ってしまった。

 

「俺が男だったら強さを求めてたんだろーな………」

 

「………はい?」

 

「言ってなかったな、俺、こう見えて女の子だよ、れっきとした高校生の」

 

「……もしかして、女ってことを隠すために強くなろうとしてた、とかじゃないよな」

 

「俺さ、リアルでもこんな見た目だからずっといじられ続けてて、元々『私』って言ってたんだけど、それも『俺』って言うようになって、シズクとゴウだけが俺の事をしっかりとした女の子って認めてくれて、一緒にいるようになってしばらくしてこのゲームが発売されて、VRなら別の自分を作ることが出来る、そう思ったらデスゲームとかいう訳分からないやつになって、リアルの姿に戻されて、周りからは男みたいだ、とか馬鹿にされるようになって、たまーにあんな感じでよくわかんないゴロツキとかに絡まれて、それからだよ、前線に3人で行こうと考え出したのは………それで、2人に無理はさせたくないからって自分の実力をどんどん上げようと思っ───

 

話しているうちに少し、ライムは目に涙を浮かばせているのがわかった。

 

「……そこまででいいよ。言いたいことはわかった、だけどライム、無理しすぎて前線に出て死んだやつもいるんだ、無理して前線に来て、ボス戦前に死んだプレイヤーを俺は知ってる……俺は夕立の霧雨に入ったのはお前らを死なせたくないからなんだよ、俺が目の前で失ったプレイヤーにそっくりだったから……な」

 

俺はライムをちょっと無理やり抱き寄せて今の発言をした、ライムは安心した様子でしばらくの間泣き続けた。

 

「ルシハ、ありがとう」

 

「男っぽくしててもいいけど、ちゃんと女の子らしくもしろよ」

 

「わかってる」

 

この後、フレンド登録をして本当に女としてSAOに登録しているんだ、とか思いつつ俺とライムはシズク達が待っていると思う宿へと戻った………が

 

「シズク達がいない……!?」

 

宿に戻ると宿は何者かに荒らされた様子で、シズクとゴウの姿はどこにもなかった。

ライムがシズクの寝ていた部屋からとあるアイテム……記録結晶を見つけ出した、それを再生すると……

 

 

『第7層、新緑の樹海にてお前らを待つ、もし来なければ2人のプレイヤーの命が無くなるだろう』

 

と、低めの男の声が録音されていた。




まじかー、ライム女だったのかー(棒)

明かされる簡単な説明
そしてシズクたちが何者かに連れ去られてしまった……!?

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