ソードアート・オンライン ~悪魔の剣と光の剣士~ 作:桜花 如月
これは世間がクリスマスというイベントで騒がしくなっている去年の12月25日、キリト達がキャリバー獲得クエに行く三日前の話………
「それじゃあ、行ってくるね」
「あぁ、行ってらっしゃい、気をつけてな」
朝から葉月が少し軽めの荷物を持って俺に挨拶をして家の扉を開いて出かけて行った。
数日前に俺のスマホに『葉月さんに教えたいことがあるからクリスマスの日に東京駅に来るように伝えてください』というメールが来ていた、それを伝えた結果葉月は1度ALOにログインしてアスナと何かの約束をして今に至る。
「ふわぁ〜……ん?メール?」
昨日は何故か珍しく嫌な夢を見てしまいあまり眠れなかったため、1人の空間で大きくあくびをした直後、タイミングを図ったかのように俺のスマホにメールが届いた。
1つは明日菜からの今日の葉月に関するメール、もう1つは和人(キリト)からのメールだった。
──クラインがクリスマス限定のクエストを受けたらしいから一緒に行ってくれないか?俺以外にはシノンぐらいしか誘う相手………
文面だけ見ると行きたくないが、和人とシノンとクラインだけでクリアできる難易度かわからないし限定という言葉が気になる、ということで躊躇うことなく了承をした。
「よし、行くか」
俺は限定クエストに挑戦する前に装備を整えるため、指定された時間より少し早めにALOへとログインした。
ALO:リズベット武具店
ALOにログインした俺はたまたまログインしていたリズベットに武器の整備をしてもらった。
リズベットも限定のクエストに誘おうとしたがリズベットは指定された時間の少し前にリアルの用事でログアウトしないといけないらしいから今回は断念。
その後、同じ目的で来たキリトも俺と同じように武器の整備をしてもらったあとリズベットを誘ったがもちろん拒否。
さらに合流したシノンも武器の整備を頼み、そのまま指定された時間までリズベット武具店で雑談をした。
数十分後
指定された場所、央都アルンの中央広場に行くとクラインが1人寂しく待っていた。
「おっせーぞお前ら!」
「指定された場所、時間は会ってるだろ?」
「オラァ、数十分前には来てたんだぞ?今回のクエストは楽しみだから早めに来ちまってな」
クラインの衝撃の一言で俺たち3人はそのまま停止、まさか、クラインも俺らと同じタイミングでログインしていたとは……
「そーいやお前ら、アスナとハヅキはどうしたんだ?」
「「ちょっと用事」」
誰からも何も伝えられてなかったクラインに俺とキリトは同時に同じ言葉を放った。
クラインは何か浮かない顔をしていた気がするけどシノンに指摘されて本来の目的をしっかりと再確認した。
クエストの内容はモンスターの影響で特殊ステージに変化してしまったシルフ領とサラマンダー領の境界の森で特殊ステージに変化させたモンスターと変化した影響で凶暴化したモンスターの撃破。
これだけなら簡単と思うがそうでもなく、エリア1つを変化させるだけのことはあり、ステータスは中々に高く設定されている。
そのため、無茶してクエストに挑もうとするプレイヤーがいなくてまだ報酬も不明でクリア者もいないらしい。
「怪しいけど挑戦してみるか…」
「どうせクラインは女の子目当てだろうけど」
クエストの詳細を確認して独り言を漏らした俺の横でケットシーになって間もないシノンが耳を揺らしながらクラインに向けて厳しい言葉を投げた。
「し、シノンさんよぉ…いくら俺でも限定のクエストが気になるっての」
「ほんとかしらね……それでキリト、あんたはどうするの?」
「俺も報酬が気になるから挑戦してみるけど、高難易度ってことは相当……」
「まぁ、やってみないと分からないだろ」
挑戦するか迷っているキリトの肩を少し強めに叩いてキリトに喝を入れた。
その直後、キリトの胸ポケットから今更ながらナビゲーションピクシーのユイが現れてクエストの解析を始めた。
ユイの解析によるとこのクエストは正真正銘現在のALOではかなり高難易度に位置付けされているらしい、限定のくせに。
ステータスまでは把握出来ないらしいが生半可な気持ちで行くと負ける可能性があるということは確実。
「そんなもんは当たって砕いて砕けるだけだぜ!」
「
「ほんと、クラインらしいな……とりあえずクエストの場所まで行くか」
ALO:シルフ・サラマンダー領境界の森(限定エリア化)
「一気に畳み掛けるぞ!」
「シノンは援護頼む!クラインとラギは一気に仕掛けるぞ!」
「「了解!」」
限定エリア化した森に到着した直後、クエストボスではないものの、クエストに表記されていた『凶暴化したモンスター』が大量に襲ってきた。
倒せない強さではないため連携攻撃で一気に攻めて何とか倒すことが出来たが、ボスがこれ以上に強いとなるとかなり厄介かもしれない。
数分後
「これがこの限定のボスか……っ!」
「キリの字にはいい思い出ねぇな……」
森の中を進むと周りにいたモンスターより遥かにでかいサンタのようなモンスターが静かに俺たちの方を見ていた。
キリトとクラインが反応したのは少し前に聞いたことがある、SAO時代、クリスマスの日に特別クエストとして死者が蘇生できる特別アイテムをドロップする限定モンスターがイベントとして現れたらしい、それから先は今は触れないが………
「キリト、クライン!今は考えるな!」
「わかった……やるぞ!みんな!」
キリトとクラインは体勢を立て直してボスに攻撃を開始した。
数十分後……
《Congratulation!!》
「勝った……か」
「報酬は……クラインの所か」
結局、俺達が一気に減らしたあと、クラインの一撃でボスを倒してラストアタックはクラインに入った。
「えっとなになに………激レア装備……サンタコスチュームだぁ!?」
クエストクリア報酬はクリスマスクエスト限定装備、サンタコスチュームだったらしい。
「全く……苦労した結果がこれか……」
「クラインらしいオチね」
「畜生………もっといいもんかと思ったのに…」
こうして、高難易度と言われたクリスマス限定のクエストは少し締まらないオチで終わった。
周りを見ると特殊ステージに変化してしまった森は元の姿を取り戻していた。
どうやら、1度きりの本当の意味で特別なクエストだったらしい……
如月家:キッチン
中々の激戦だったため披露した俺らはあの後すぐに解散してログアウトした。
その直後、いつの間にか帰ってきていた葉月が俺に渡したい物があると言ってきたためキッチンへ行くとそこには……
「チョコレートケーキ……?」
「明日菜にケーキの作り方教えて貰ったんだ、上手くできてるかはわからないけど……食べて?」
「ん、それじゃあ、遠慮なく………」
キッチンに置いてあったケーキの1切れ(残りは冷蔵庫にいた)を食べた。
「ん………ん!?」
「ど、どう?」
「美味い……美味すぎる」
「ほんと?」
「食べてみろよ、冗談なしに美味いぞ!」
「それじゃ、いただきます」
「どうだ?」
「うん………うん!美味しい……!!」
甘過ぎず渋過ぎないちょうどいい味に調整されたチョコレートが口の中に広がる。
明日菜に教えて貰った作り方を葉月がアレンジしたらしいけどこれはすごく上手い、その一言しか言えないけどとりあえず美味い。
「ありがとな葉月、最高のクリスマスだよ」
「うん……!喜んでくれてよかった」
残ったチョコレートケーキも2人でたべてこの日、クリスマスは途中振り回された気もするけど最高の一日になった。
そう言えば明日菜もキリトにケーキを作ったらしい。
「こんな日が続けばいいのにな………」
疲れ果てて寝てしまった葉月の横で俺はそう呟いた。
なんとか間に合った!
ギリギリだけどメリクリ!
SAOだけでなくクリスマス特別の小説も投稿したからよかったら見てください
前書きにも書いたけどこれは現在進行中のオリジン編から半年ほど前の話になります