ソードアート・オンライン ~悪魔の剣と光の剣士~ 作:桜花 如月
転移門広場
シズクの話によるとオレっちの所から去った後、商店通りの裏手にある雑貨屋でたまたま売っていた首輪をワン吉に装備した途端、シズクの手から離れてそのままどこかに行ってしまったらしい。
「それで、町中探したあとオレっちに助けを求めた、と」
「うん……それと、さっき取り乱しちゃったこと謝ろうと思って……」
「それはいいヨ、オレっちがシズクの過去にあったことを知らないのにいきなり言っちゃったんだからナ」
「それは後で話すね……とりあえず、ワン吉を探さないと」
冷静を取り戻したシズクはオレっちと一緒に大森林エリアから捜索を始めた。
移動中に攻略に出かけてるライム達にも協力を促した。
その時に【それは分かった、私たちで探してみるよ───後で話したいことがある】という返信が来ていた。
大森林エリア:祈りの大樹付近
大森林エリアの入口からかなり進んでプレミアが聖石を手に入れた大樹の近くまで行くとシズクが何かを見つけた。
「あれって……」
木に何科が引っかかっていたのをシズクが精一杯背を伸ばしてギリギリでとると手に持っていたのは赤い首輪だった。
首輪を見つけてオレっちの方に来ようとしているシズクの後ろ、木の上から複数のモンスターが降りてきた。
「シズク!後ろダ!」
「え……?」
モンスターの気配に気が付かなかったシズクはそのままモンスターに攻撃をされた───
と思いきやモンスターたちの元にシズクの姿はなかった。
「シズク!どこダ!?」
「私は大丈夫……ワン吉が助けてくれたから……!!」
いつの間にかシズクはオレっちの後ろで一回り以上大きくなったワン吉に乗っていた。
「ワン吉……行くよ!」
シズクがワン吉に指示を出した途端、ワン吉はさっき降りてきたモンスター達に向かって突進をしてモンスター達を蹴散らした。
数分後
ライムにワン吉が見つかったことを伝えた後、モンスターが出ないところまで移動した。
「ワン吉……大丈夫……?」
移動を終えてシズクを降ろした直後、ワン吉はその場に力なく倒れてしまった。
よく見るとワン吉は至る所に傷を負っている、多分シズクを助けた時にシズクを庇うようにモンスターの前に現れて攻撃を受けてしまったと考えられる。
そのままシズクに心配をさせないために無理してモンスターたちを蹴散らして今、力尽きてしまった……
「シズク、ワン吉は……」
「わかってたよ、元々……でも、せめて野生に返してあげたい」
「もちろん、オレっちだってシズクを悲しませたくはないからナ、傷を癒してあげる間に色々とワン吉に関して教えてクレ」
「うん……」
ワン吉の治療を開始すると同時にシズクは過去を話し始めた。
シズクは小さい時、6年ほど前に子犬を拾って家で親に反対されながらも自分の力で育てることを決めて飼うことになった。
その時にシズクが子犬に付けた名前、それがワン吉だったらしい。
ワン吉と一緒に過ごして1年ほどが経過した寒い日、ワン吉が急に起きなくなり、親と一緒に病院に連れて行くとワン吉は飼い始めた頃からずっと病気を抱えていて1年間生きていただけでも奇跡、と言われるまでに病状は最悪だった。
病気が発覚して数日後、ワン吉は……
「そんなことがあったのカ……」
「うん……」
「……よし、治療完了」
傷を直した後、ワン吉は立ち上がり、シズクの顔を舐めた。
「ワン吉……こんなに大きくなっちゃうと街の中じゃ飼えないよ……だから……」
シズクは泣きそうなのを堪えて最後の一言を放った。
「ワン吉、さよなら」
シズクは精一杯の笑顔を見せた。
ワン吉はシズクの気持ちがわかったのか、再びシズクの顔を舐めた後、そのまま森の中に進んで行った。
「ワン吉……また、会おうね……」
「シズク、泣きたいなら泣いていいんだゾ」
「うん……ごめん…アルゴ……」
それから数分後、街に戻ったオレっちは泣いていたことが嘘のように明るくなったシズクと一緒にメールで呼び出された宿屋に向かった。
宿屋:カフェスペース
「急に呼び出してごめん」
「いいや、オレっちだって急にメールでワン吉の捜索なんて頼んだしお互い様ダヨ」
宿屋にはライムとフィリア、そしてプレミアがいた。
「アルゴに話したいことがあってさ、それが……」
ワン吉‥‥お前のことは明日までは忘れない
俺なりにアレンジしたワン吉クエスト、あれはホロリアやった人なら絶対感動すると思う
攻略に向かったライム達、一体何をアルゴに伝えたいのか…?