ソードアート・オンライン ~悪魔の剣と光の剣士~   作:桜花 如月

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第60話 世界樹の再生【地下ダンジョン攻略part last】

「お兄ちゃん!まだクエスト続いてるよ!」

 

「なにィ!?さっき大ヒゲを倒したじゃねぇか!」

 

(そう言えば《湖の女王ウルズ》はスリュムヘイムに侵入して聖剣エクスキャリバーを地下の台座から抜いてくれ、と言っていたな……)

 

「さ、最後の光が点滅してるよ!」

 

もし、メダリオンの光が全て消滅したら眷属達、トンキーは全滅………

 

「パパ!玉座の後ろに下り階段が生成されています!」

 

ユイが発見した階段に俺たちはすぐに向かった。

 

(もし、俺達がこのクエストを失敗したらスリュムヘイム城が央都アルンへ浮上?肝心スリュムを失ったまま…?あるいは何事も無かったかのようにスリュムを復活……いや、細部にこだわるカーディナルシステムがそんな強引な展開を用意するとは思えない…)

 

「あのねお兄ちゃん、私もおぼろげにしか覚えてないんだけど確か本物の北欧神話ではスリュムヘイム城の主はスリュムじゃないの」

 

「え……?ええ!?だって名前……

 

「そうなんだけどね……確か神話ではす……す……

 

「《スィアチ》です、神話ではウルズさんの言っていた黄金の林檎を欲しているのもスリュムではなくスィアチです、ここからはALO内のインフォメーションですがプレイヤーにスローター・クエストを依頼しているのはヨツンヘイム地上フィールド最大の城に配置された《大公スィアチ》というNPCです」

 

スリュムを倒してもスリュムヘイムが央都アルンに到着すれば《大公スィアチ》がアルヴヘイム侵攻を行う──

 

「つまり後釜は最初から用意されていたってことか………」

 

「パパ!5秒後に出口です!」

 

ユイの指示通り、5秒後、見開いた空間に出た。

その奥には台座に刺さった黄金の剣があった。

 

(ついに……ここまで来た……)

 

────

 

──システムコマンド!オブジェクトID《エクスキャリバー》をジェネレート!!

 

世界樹の頂上、オベイロン、いや須郷を倒すために、あの時俺は世界最強の剣を作り出した──いや、作り出せてしまった

 

だけど今度は──

 

────

 

「………待たせたな」

 

俺は台座からエクスキャリバーを抜こうとしたが、ビクともしないほどに重く、抜くことは出来ない。

 

「頑張れキリトくん!」

「頑張れ!」

「ファイトー!」

 

「ぬけろぉぉぉ!!」

 

力を込めて抜こうとしたら勢い余って後ろに倒れそうになったところで女子5人が俺を支えてくれた。

 

「……キリ公!なんか変だぜ!剣の台座から……木の根が!」

 

喜びもつかの間、大量の木の根が至る所に伸びてきた。

 

「スリュムヘイムが崩壊します!パパ!早く脱出を!」

 

そう言われ、脱出しようとしたが、階段が木の根によって壊されてしまった。

 

ここから下に飛び折れたとしてもどう考えても死んでしまう、そして見事に俺らの近くに上に登れる木の根が降りてこない。

 

「よーしっ!クライン様のオリンピック級ハイジャンプを見せるっきゃねぇ!」

 

 

クラインのハイジャンプ(1m)はもちろん木の根に届かず、俺たちの元にかなりの勢いで落ちたと同時に4つ角の柱にヒビが入り、逆三角形のこのエリアは落下し始めた。

 

「「「「「「クライン(さん)のバカぁー!!!」」」」」」

 

「この下ってどうなってるの?」

 

「もしかしたらウルズさんの言ってたニブルヘイムに繋がってるかもな」

 

「寒くないといいなぁ…」

 

「いやぁ!すごい寒いと思うよ!」

 

「そう言えばリーファ!スロータークエはどうなってる?」

 

「あ、まだひとつ残ってるよ!間に合ったよお兄ちゃん!」

 

世界樹が本来の力を取り戻し始めた、《湖の女王ウルズ》達と眷属達も力を取り戻して人型邪神に狩られ続けることも無くなるだろう……

だが………

 

(やっぱりダメか……)

 

俺は足元のエクスキャリバーをアイテムストレージに入れようとしたが、エクスキャリバーはまだ、アイテムストレージに入れることは出来ない。

 

……と、どうしようか迷っていると遠くの方から鳴き声が聞こえた。その正体はトンキーだった。

 

「へへ……俺は最初から……助けに来てくれると信じてたぜ……」

 

((((((嘘つけ!!!))))))

 

「みんな!乗ろう!」

 

女子達5人が先にトンキーに飛び乗り、クラインはギリギリでトンキーの触手に捕まった。

そして俺もエクスキャリバーを持ち、飛び乗ろうとするが、聖剣(エクスキャリバー)が重すぎて僅かな距離すら飛ぶことが出来ない。

 

(エクスキャリバーを抱いたま墜落死かそれとも捨てて生き残るか、随分と意地悪な二者択一だ……)

 

「全く!カーディナルってのは!!」」

 

俺はキャリバーを遠くに投げ、トンキーの上に乗った。

 

「また、いつか取りに行こうよ」

 

「あぁ、そうだな、ニブルヘイムのどこかで、きっと待ってくれるさ──

 

「二百メートル…………ぐらいか」

 

(シノン……?あのスペルは《リトリープ・アロー》?まさか……いや、いくらなんでも…矢筈に繋がる糸で起動は安定しないし二百メートルはリズの作った弓の有効射撃の2倍近い距離……)

 

シノンは小さく息をすい、弓を放った。

すると光の糸はエクスキャリバーを捉え、シノンはソレを逃さないように引っ張り、自分の頭上まで持ってきたところで糸が消え、エクスキャリバーはシノンの手元に。

 

「うわ、重……」

 

「「「「「「し、シノンさん、まじかっけぇー!」」」」」」

 

シノンの凄さに思わず全員でシノンを褒めた。

 

「上げるわよ、そんな顔しなくても」

 

「あ、ありがとう」

 

「……その前に一つ約束」

 

「………?」

 

「この剣を抜くたびに、心の中で私のことを思い出してね」

 

シノンは満面の笑みで俺にエクスキャリバーを渡してきた。

女子達の微妙な目線が俺に刺さる。

 

「おうおう!いいよなぁ!モテおと─小指ぃ!?」

 

茶化してきたクラインの小指を思いっきり踏んだ。

 

「ありがとう、見事な射撃だった」

 

「どういたしまして」

 

ウィンクされたと同時に俺は気がついた。『してやられた』と。

 

そして、頭上ではスリュムヘイムが崩壊していた。

 

(消滅間際のスリュムは気になることを言っていた、アース神族こそ真の……

 

「なぁ!すげぇよ見てみろ!グレートポイントが!」

 

「穴のそこから水が………」

 

「そうか、元々ここは湖だったから……」

 

見ていると上から世界樹の根が湖に向かい生え、湖に入り込むと根から芽が生え、スリュムヘイムに自然戻った。そして、トンキーの仲間がたくさん現れ、それにみんなで感動していると、トンキーの横にウルズが現れた。

 

『よくぞ成し遂げてくれました《全ての鉄と木を斬る剣》エクスキャリバーが取り除かれたことにより、イグドラシルから断たれた《霊根》は母の元へ還りました、木の恩寵は再び大地に満ち、ヨツンヘイムはかつての姿を取り戻しました、これも全てあなた達のおかげです』

 

「いや、そんな、スリュムはトールの助けがなかったら到底倒せなかったと思──

 

『かの雷神の力は私も感じました、ですが気をつけなさい、妖精達よ、アース神族は霧の巨人の敵ですが、決してそなたらの敵ではない』

 

「あの…スリュムもそんなことを言ってましたが…それはどういう?」

 

リーファのその質問をはぐらかすかのようにウルズは妹達が話をしたいと言った。

 

『私の名は《ベルザンディ》ありがとう、妖精の戦士達、もう一度緑のヨツンヘイムを見られるなんて夢のようです』

 

『我が名は《スクルド》!礼を言うぜ戦士達!』

 

『私からはその剣を授けましょう、ただし、泉に投げないように』

 

「は、はいっ!しません!」

 

ウルズ、スクルド、ベルザンディが手をかざすと、クエストのクリア報酬が大量にストレージに入った。

 

俺は急いでその中を確認すると《聖剣エクスキャリバー》の名が表示されていたのを確認した。

 

その後、3人の女神は空へ飛び立とうとしたところをクラインがフレイヤさんを諦めてスクルドにメアドを教えて欲しいなどという話をしたところ、スクルドは笑顔をクラインに見せ、手を振って飛び立っていった。

 

「あのさ、この後、エギルの店で打ち上げ兼忘年会でもやらないか?春揮と葉月も呼んでさ」

 

「さんせー!」

 

こうして、俺たちのALOでの戦いは終わった。

 

────

如月家(春揮目線)

 

「春揮、またメール」

 

「んあ?あ、和人からか……『キャリバー入手の打ち上げ兼忘年会やるからダイシーカフェに来てくれ』……はぁ」

 

遊園地で葉月にものすごく振り回された俺は肉体的にも精神的にもボロボロで熟睡していたところで和人からメールが来た。

 

「行かないの?」

 

「……お前は体力底なしかよ…わかった、すぐ向かおう」

 

ものすごく疲れた体を起こし、俺は葉月と共にダイシーカフェに向かった。

 

────

ダイシーカフェ・和人目線

 

ALOから帰ってきた俺はスグと共にダイシーカフェに向かい、パソコンを操作していた。

先に来ていたシノンがそれに興味を持ってきた。

それを説明しているうちにアスナとクライン、シリカとリズ、何故か疲れ気味の顔をしている春揮と逆に元気な葉月が到着した。

 

「それにしても、なんで《エクスキャリバー》なの?」

 

「へ?どうしてって?」

 

(「春揮〜またふわふわするよ……」)

 

(「お前それ酒!?」)

 

「…普通はって言うか他のファンタジー小説やマンガだと大抵《カリバー》でしょ?」

 

「へぇーシノンさんそういうの詳しいんですね」

 

「中学の頃は図書館のヌシだったから、アーサー王伝説の本も何冊か読んだけど訳は《カリバー》だった気がする……」

 

「……それなら元ALO管理のレクトの人の趣味だよ」

 

「そう言えば春揮さんはアーガスに行かなくていいんですか?」

 

「まぁ、あそこは年末も無視して営業しないとALOの管理ができないからな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()とかを二度と起こさないようにな、でも俺は一応今は出入り自由なだけで社員ではないから学生として年末は休みなんだ」

 

確実にアーガスのことを頭から離していた様子を見せつつ冷静に話をしてくれた春揮は話を続けた。

 

「元々、伝説内でもいくつか名前があって《カリバーン》以外にも五六種類あるって話だ」

 

「うへぇ、そんなにあるのか…」

 

「春揮も詳しいわね、キャリバーっていろんな意味があって、ひとつの意味は《器の大きい人》、キリトは……」

 

「あれを持つならそれなりの事しないとな」

 

「わ、わかったよ……アルバイトで稼いだし、今日は俺の奢りでいいよ!」

 

────

SAO(ソードアート・オンライン)

ALO(アルヴヘイムオンライン)

GGO(ガンゲイルオンライン)

3世界での経験を通して人の器なるものについて何かを学べたとすればそれは《1人では何も背負えない》ということだ。

どの世界でも俺は挫けそうになりながら多くの人に助けられてどうにか歩き続けてきたに過ぎない、今日の突発的冒険が象徴的だ。

 

だからきっと俺の、いや、みんなの《キャリバー》とは──

仲間全員で手を繋いでいっぱいに輪を作ったその内径を指すんだ。

 

あの黄金の剣は自分一人のためには決して使うまい。

 

────

 

「さぁ!みんなで乾杯しましょ!」

 

(「春揮〜なんでこんなにふわふわするー?」)

 

(「いや、だからお前酒飲んでるんだよ!?」)

 

「さっきやっただろ?今度はなんの乾杯だ?」

 

「ったりめぇだろ?キャリバーにだよ!」

 

「……あぁ、乾杯!」

 

────

ダイシーカフェ前、乾杯後(春揮目線)

 

「やっぱり……か」

 

「どうしたんだ春揮?」

 

「……和人か、いや、ちょっと気になることを探しててな、菊岡から返信を待ってたんだが……」

 

「気になること?」

 

「……いや、今はまだ話さなくていいか、そのうち話す」

 

「………?そうか、わかった」

 

ダイシーカフェに入る俺の片手に持っているスマホには《ALO内MMOトーナメント》の記事と《GGOの新大会開催予定》の2つの記事、そして《オーグマー開発開始、開発者の声》という記事が表示されている。

 

(オーグマー……か)

 

その後、ダイシーカフェでの忘年会は長時間続き、気がついた頃には日を過ぎていた。




ついに完結、キャリバー編!

所々オリジナリティ出しつつクラインの扱いを雑にしつつ。

葉月は酔いつつ
春揮は謎の記事をみたり。


色々すごいね5000文字。

次回からは春揮目線に戻るよ。

そしてついに次回からは……あのキャラが登場!

次回。
《マザーズロザリオ》編!
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