魔王美樹の大冒険(旧:来水美樹が異世界召喚された件) 作:魔王信者
数千年をあの暗闇で過ごすつもりだった。
絶望に打ち拉がれ、今は考えることを止めていた。
そんな折、目の前に選択メニューが現れた。
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異界の門について、ご教示願います。
召喚いたしますので、承認される場合は
下の承認ボタンを押してください。
[承認] [却下]
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当然、承認だ。
ああ、一年か二年か。そのくらいで外へ出れた。この運に感謝しよう。
喚んだ者は運が悪い。糧となってもらおう。
思いの外早く外へ出れた。
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普通の人間が目の前に居た。
召喚された幼女から発せられる魔力に耐えきれず、幾人も倒れる。
しかし、その眼の前のピンク髪の少女。彼女は倒れない。
「キャーーー―――」
倒れた者たちではなく、彼女が悲鳴を上げた。
「ななな、なんで裸なんですか!?」
召喚された幼女は、裸で悲鳴をあげるなんて初心な事だと嘆息する。
「じゃあ、血貰う。」
カオスも持っていないただの人間相手だから無造作に近づいても大丈夫。
何時ものように血を収穫して命を頂く。
「ちょ、」
はずだった。
手を止められ、噛み付こうとした顔は止められる。
手を焼くなぁと思いつつ彼女を気絶させるため腹を殴りつけた。
だが何の冗談か、ピンク髪の少女から反撃を食らい相討った。
「痛い…?」
「ちょ、ちょっと、一体なんですか!?」
彼女も同様に久方ぶりの痛みを感じる。
それ以上に普通に殴って死なないことに驚いている。
「血が欲しい。」
彼女もまた同様に、幼女の血を吸いたいと思っていた。
いやそれは失礼だ。私は吸血鬼じゃないぞと思ってぐっと耐える。耐えた。
「血、血なんて吸わせない!」
自分が吸わないからと言って、相手に吸わせて良いわけではない。
「……なかなか…しぶとい。…人間にしては………やる…か。」
その幼女は、その辺に転がっている奴らに比べて強者であると認め、今ある全力を持って戦おうとした。
「変なの召喚しちゃった。これは本気でやらないと」
魔王モードに移行した彼女から、幼女を上回る魔力が放出される。
20~100倍程の魔力の奔流に、これは勝てない。と幼女は降参した。
「…っょぃ……勝てない。」
今再び異界へ行き、LvMAXまで強化したとしても足らないと思わされた。
まして今は魔力何もかも弱体化しているのである。
異界へ行く事すらできない。あるいは1000年前の自分なら勝てたのにと、彼女は初めて挫折した。
裏切られた時も、復活してから戦った時も、相手は自分以下か、せめて同等だった。
自分より格上の相手など2000年前以来無かったことだ。
だが賢い彼女のこと。
喚んだのだから、して欲しい事があるのだろうと降参した。
力を回復させ、逆襲する。そんなプランを考える。
「………やむを得ない。………降参……する。」
そのセリフに美樹はほっと胸を撫で下ろした。
さてと、ここで話すのも油断も出来ないとなればと場所を移動した。
「ついてきて。」
「わかった。」
移動した先は旧領主の部屋。今は彼女が使っている部屋である。
「さて、先ずは召喚に応じてくれてありがとう。
でも、いきなり襲ってくるなんてどういう了見?」
「………私は今………とても衰弱している……だから補給が必要」
「なるほど。」
「……だから…血が。……命が……欲しかった。(そして虐めて壊したかった)」
「もうしない?」
「……回復しないと……辛い……」
「とりあえず、私とその仲間に手を出すのは辞めて」
「………判った。」
幼女は、勝てない相手だから仕方ないとして諦めた。
彼女の方は、とりあえず攻撃を止めてもらえたのは助かった。
「それで、なんで裸なの?」
「?」
何を聞いているの?と、言わんばかりの表情で首を傾げている。
「いや、裸なの恥ずかしくないの?」
「……恥ずかしがる要素が何処に?」
「えー」
「??」
お互いに平行線であり、話が進まない事を認識した彼女は、裸のことは放っておくことにした。
「まずは自己紹介しましょう。私の名前は来水美樹。えーと、いちおう異世界の魔王やってます。えへへへ。」
なんとなく、正直に言ってもいいだろうと思って言った。
「……………ぇ?」
流石にかの幼女も固まった。
「……ああ、異世界にも。……魔王は……居るか。」
ぼそぼそと小さく呟く。
「それで貴女は?」
「……うむ。私はジル。昔魔王をやってた。今も5%くらいは魔王。」
まあ彼女も云うなら95%魔王。
「あなたも魔王なんだ!?へーー」
「…………」
幼女は、なんでこんなに脳天気なのに魔王やってるんだ?的な感じでジロジロ見ている。
「なるほど……魔王…なら、……あの魔力も…………納得。
それで…異世界?の魔王とは?」
「私ねチキューってトコにいて、こっちに召喚されちゃったから、この世界的には異世界でしょう?」
「ふむ……多分だけど、ここは私的にも異世界。ルドラサウム大陸から来た。」
「へぇ~そうなんだぁ。」
「それぞれ…異世界の魔王か。……それで?」
「それでチキューに戻りたいんだけど分からなくって。知ってる人を条件に召喚しちゃいました。」
「なる……ほど……」
「どう?できるかな?」
「余裕………と言いたいが、今はゲートコネクトを使う力もない。血が足らない」
幼女は力なく俯く。
果たして、血を吸った所でこの脳天気な少女に勝てるだろうかと算段している。
「えー。困ったなぁ。」
血とは多分生贄のことだろうと予想していた。
調達は難しいと思っている。
「お前ほどの魔力があれば……余裕でゲートコネクト出来る。教える対価に、血をくれ。」
「うーん。…とりあえず罪人の血でもいい?」
とりあえず差し出せる血を考え思いついた。
「とりあえずは……それでいい。」
彼女はそれで一段落ほっとした。
それで自ら地下牢へ案内する。
至る道中、彼女は幼女に愚痴っていた。
「それでね!勝手に承諾なく召喚したんだよ!この世界の人達って!」
「そう…か。」(興味ない)
「しかも、大人しくしてたのにいきなり私のこと奴隷として売ろうとしたんだよ!」
「そう…か。」(興味ない)
「其処に至って、ようやっと暴れたんだけど!!ソイツらが云うにはね、異世界人は異世界猿なんだって!失礼しちゃうよね!」
「そう…か。」(興味ない)
話は続く。二転三転するセリフに、幼女はテキトーに相槌をうった。
「でねネットショップって云うスキルが神スキルすぎるので、現地の生活や売買を残したまま占領しなきゃいけなくて、がんばって手加減したんだよぉ!
なのに皆わかってくれなくて…」
「そう…か。」(興味ない)
「そしたら、同じ様に召喚されて、奴隷にしてるって人がわんさか居てね!これはもうチキューが舐められてるって思ったので、この国滅ぼしちゃおうかなって思ったんだ。」
「……うん!?それはいい…」(興味あり)
キラキラした目で彼女の方を向いた。
「うん?」
「良い。ぜひ滅ぼそう。」
「う、うん。」
「それで、どうやるんだ?頭からか?それとも軍からじわじわか?」
「え?え?いままで大人しめだったのがなんでそんな食いつき?」
「人を…虐めるのは。良い。」
「いじめっ子ちゃん?」
「こうして、負けて虐められるのも好き。」
「えーー」(ドン引き)
「そんな事より、国狩り国イジメしたい。私もやる。」
「う、うん。」
暫く国刈りや人虐めについて、幼女は饒舌に話し出す。
~1時間後~
「新米な魔王か……やはり未熟
その後は……人間牧場を作る。
問題は、牧場の人間を…虐める魔物が居ない。」
――止めてくれー ←血を吸われてる被害者
「こ、ここの魔物はさっぱり見た事が無いからね。」
「私のトコの魔物なら、人を適度に蹂躙できる。ここには居ない。
生かさず、殺さず虐めないと駄目」
「う、うん。」
――助けてーー ←血を吸われてる被害者
「そうだ…お前の世界の被害者。
その中で元の世界に帰りたくないヤツ。
……奴隷にされていたヤツを使おう。」
「え?」
「きっと、現地の人間を虐めるのに、なんの呵責もないはず…いい案。」
「えー、やってくれるかなぁ」
このように、深夜遅くまで魔王レクチャーが行われたのだった。
先々代と当代という認識はないままに、魔王教育は行われた。
異界の門について詳しい奴が3人くらいしか思い当たらなくて、それぞれ考えてみたら、
ホ・ラガ
暇
応じてくれない
ミラクル・トー
不明
気分により
ジル様
暇
必ず応じる
こう考えると、ミラクルさんも無いなって思った。
そうなるとジル様一択だが、異世界が酷い目に…あ、なってもいいやえい。
って感じで出演でした。
そして魔王同士仲良くして欲しい(ぉ