魔王美樹の大冒険(旧:来水美樹が異世界召喚された件)   作:魔王信者

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11 現地神のターン・現地人のターン

 異世界から化物が来た。

 

 それは魔王を名乗っており、現地の魔物は恐れて近付かない。

 

 魔王と現地の魔物の相性はすこぶる悪い。

 半径10km以内の魔物は体が解体され魔力塊となり、それも分解されて源素(げんそ)となった。

 これらは、かの魔王に引き寄せられ吸収される。

 

 源素(げんそ)は魔力の素材でもあるが、『この世界』を構成するすべての源である。

 神の力と言い換えても良い。

 

 魔王の近くでは源素(げんそ)が満ちている。

 世界から源素(げんそ)が魔王に向かって集まっている。

 

 このままでは、大気や地脈を流れる源素(げんそ)は枯渇するだろう。

 枯渇すれば世界からあらゆる魔法、加護、ステータスは失われる。

 

 早急に対処しなければならない。

 

 

 慌てているこの神は地方神。

 然程力はない。件の世界で見れば四級神相当。

 

 自らの力を超えたあの化物は、最早地方神の手に負えるものではなかった。

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

「なぜ、あのシステムを残しておいた。」

 

 元凶はつまり、かの化物を召喚してしまった『勇者召喚システム』である。

 

 人類がまだ未熟だった頃の導き手として有効だった。

 

 現地人に害を与えないようにするステータスプレートという鎖も有効に働いていた。

 

 

「一度限りの使い捨て設定だったのですけれども。」

「複製して使っているのか。賢いと言えば良いのか、狡いと言えば良いのか。」

 

 かの地方神が話しているのは、その父神である。

 大陸神であり、二級神相当だろうか。

 

 あの魔王と戦えば負けるとは思っていない。ただ大変そうだとは感じていた。

 

「それで、どう対処すべきでしょう。」

 

 地方神ではもはや打つ手がない。

 藁にもすがる思いで父に泣きついたのだ。

 

「ふん。人間の自業自得であるな。」

「そ、そんな」

 

「まあ、問題を対処し終わったら、改めて天罰を与えるとして…

 現地人を一人勇者にしてやろうじゃないか。

 魔王を倒すのは勇者の役割だからな。」

 

 召喚した方の勇者は、異世界人であり最早勇者足りえないとして切り捨てられた。

 

「なるほど…」

「神託を下せ。魔王を倒す勇者を誕生させたと!」

 

 

 その日13歳の男の子が勇者となり、その神託が下った。

 

『その者、魔王を倒す勇者なり。これを害する者は邪悪なるものとして裁かれるであろう』

 

 それは神殿の長、そして教皇に伝えられた。

 

 数百年もの間、一度も無かった神託が下る。それだけでも大事件であるが、それが勇者の誕生である。

 教国は困っていただけにその出現を喜んだ。

 

 真の勇者の誕生である。

 

 神も13歳の少年に、幾つもの加護を与えた。

 与えて与えて、最早人の範疇を超えるほどの化物となる。

 

 Lv1の段階でかなりの力を持っていた。

 レベルが上がれば如何ほど強くなることか。

 勿論、魔王を倒す事が望まれている。

 

 その少年は何も知らず、毎日礼拝を欠かさない親孝行な農民であった。

 突然、頭の中に神の声が響いたと思うと、勇者としての力を得たのだった。

 

「邪悪な魔王を討つため…それが僕の役割!?」

 

 そして、その使命をすんなり受け入れた。

 

 勇者となった少年は故郷に別れを告げ、教都へ向かい旅立った。

 

 

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「うーむ。これだけでは不安だ。」

「勇者の様子からすると、成長させる必要がありますね。」

 

 神はそれだけでは納得しなかった。

 

「適度に倒せるが苦戦するレベルの敵を道中に配置しよう。」

「あ、心の成長もさせたいので伴侶になりそうな娘をパーティーに加えさせましょう。」

 

 この世界でも神は神。自身の娯楽を優先させているようだった。

 

「そうなると魔王は今の城から動いてほしくないですね。」

魔王(ラスボス)が前線で暴れるとか、何を考えているのか。」

 

 ラスボスはラスボスらしく奥に引っ込んでいろという事だろうが、魔王リトルプリンセスに至っては、自身で攻めるのは当然の事だ。鬼畜王でも戦国でも前線に出張っていた。

 それにラスボスと言うよりはバッドエンドクリエーターであり、滅亡フラグそのものだ。

 勝つためにはルドラサウム大陸より外のMソフトの窓sからチートコードで書き換えを行わかねればならない。

 云わば、創造神を無視して人間を直接数値操作する必要があるということだ。

 

「先日人の軍が1万…でしたっけ、攻めてきましたけど普通に単騎突撃して蹴散らしてましたね。」

「裸の魔族も蹴散らしていたな。」

 

「あちらは全員血を吸われてて…ギリギリ致命傷になるあたりで吸うのをやめていて…。

 一日くらいで死ぬが、その間ずっと苦しみ続けるとか、どういう殺し方だ!」

「まさしく悪魔とでも言える。」

 

「Lv20前後の人間では1万集まっても、戦力評価すらできませんね。」

「いまだ全力で戦っていない。底知れぬが魔力の強さからして、勇者であればなんとかなるだろう。」

 

「とりあえず、魔王をあの城から出さないように持久戦をしかける必要がありますね。」

「うむ。ラスボスはラスボスらしく最後に倒されるべきだ。」

 

 この神の親子は、手持ちの戦力を思い出す。

 

「私の方で持っているのは上級天使3、中級天使500、下級天使1000です。」

「ふむ、我は上級20、中級2000、下級が15000程だ。下級はLv50程度であるから人の軍とは比較にはならぬが。」

 

「相手がどれくらいのレベル相当なのか知りたいですね。」

「上級1体を隊長として1000程派遣してみるか。」

「え、混成でもうちの戦力とほぼ同等じゃないですか。」

「まあ我の方から出しておこう。」

 

 なお配下の下級神も戦力と言えば戦力がだ、普段は文官のような仕事が多く荒事には慣れていない。

 

「倒せるなら倒しちゃっても良いんですよね?」

「無理だろう。せいぜい持久戦をするよう言い含めよう。」

 

 こうして天使軍の派遣も決まり、上級天使に率いられた中級100、下級1000の部隊が出撃した。

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■

 

 神託が下る前。

 

 

 城塞都市が陥落したのは奇襲であり、

 僅かな兵力でもなんとかなてしまった。

 

 と、その様に判断した上層部は流石に1万の軍勢であれば勝てるだろう。

 奪われたばかりで、かつ防衛する兵士が居ないなら勝てるだろう。

 

 そのように判断し、拙速を以って城塞都市に辿り着いた。

 

 これは通常であれば正しい判断であるが、相手が魔王(ジル)であれば――

 

「……いいぞ、補給物資。

 私のために…血を運んでくるとは……良い奴らだ。」

 

 只の栄養補給に過ぎなかった。

 

 

 勿論暴れたのは幼女だけでは無い。主に彼女の方が暴れたのだが、補給するのに適切な量を残して撤退した。

 むしろ彼女に殺されたものは感謝すべきだ。

 

 幼女に殺された方は、丸一日苦しんだ挙げ句、死に絶えるのだから。

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■

 

 

「全滅!?全滅だと?」

「は、はい。それも軍事上の言い方では殲滅と言いますが」

 

「言い方など、どうでも良い!

 つまりだ、補給部隊を残して戦闘集団は一人として帰ってこなかったという事だな!」

「は、はい。左様でございます。」

 

 激昂する枢機卿。傍らでは教皇が厳つい目で報告者である補給部隊の隊長を見据える。

 

「それで…敵は?どれくらいで、どのような戦法、戦術を使って我が軍を全滅させたというのだ?」

「それが……その」

 

 枢機卿は無言で先を促す。

 

「敵は、ふ、二人で…」

「二人ぃ!」

 

「ひっ!」

「ん、続けよ。」

 

 激昂した枢機卿を教皇が抑え、先を促す。

 

「その、先ず…一撃で中央部が壊滅。生き延びたのも爆風で転がっていった者だけで…」

「一撃だと…」

「馬鹿な。」

 

 

「それで、左右にも1500づつほど残っておりましたが、片方に一人づつ突撃していきまして」

「正に化物か。」

「化物が相手だとして、他のものは逃げられなかったのか?」

 

「それが、急に息苦しくなり、身動きが取りづらくなったのです。」

 魔力の影響であるが、比較的遠くに居た者であっても影響が強かった。

 

「それで、兵士たちは抵抗という抵抗もできずに殺されていきました。」

「信じられぬ。信じられぬが、同じ様な化物の出現は示唆されていたな。」

「ハミルトン卿の言は真であったか。」

 

「わ、我々はそれでもなんとか、動けたので…逃げ出した次第でございます。申し訳ございません。」

「う、うむ。」

「その状況で逃げるのは仕方ない。」

 

「状況は理解した。それで、相手はどのような姿であった?」

「一人はピンク髪で黒いマントのような、なんというかそんなモノを纏っており、魔法のようなもので我が方の者を殺しておりました。」

 

「ふむ。報告にあったものか」

「もう片方が、同じ様な雰囲気ではあったのですが、その裸で…」

「裸!?」

 

「え、あ、はい。」

「いや良い、続け給え。」

 

 

「はい。

 それで、手足が黒く、物凄く長い水色の髪でした。

 一人一人、甚振るように噛み付いて食らっているような殺し方をしておりまして、その姿が怖くなり…申し訳ございません。」

 

「ふーむ。」

「もう一人の方は情報が無いな。」

「異世界猿にそのような者は居なかったか。」

 

 

「よくわかった、また質問が出るかも知れぬが下がって宜しい。」

「はっ」

 

 補給体調はそれで部屋を出る。

 

「ハミルトン卿の言うことが正しかったか。」

「確か、魔王は勇者でなければ傷つけられない…とか」

「勇者だけで編成するか。ステータスプレートで命令すればいいだろう。」

 

「まあ、多少数が減っても勇者であれば問題ありませんな。」

「すぐに編成を開始せよ。」

「はい。承知致しました。」

 

 

――――

 

「なんだと?」

 

 一方、教国に臣従する近隣国の王は、その戦いの報告を聞いて声を荒げた。

 

「ですが、複数のルートから持ち帰りました情報でございます。」

「これが真実だと!ふざけるな!俺はサーガ(英雄譚)の話を聞きたいのでは無いんだぞ!」

 

「ひっ、でですが。」

「ああ、分かってる。すまん。

 真実だとしても酷い話だったのでな。」

 

「は、はい。」

「町中での行動は、間抜けとしか思えないのだが、なんだこの戦場の動きは。

 まさに化物の所業だな。」

 

「…」

「援軍を求められても、犬死するために派遣するだけじゃないかコレは」

「恐らくは…」

 

「そんなとこに大事な兵士を送り出したくないな。

 んーそうか、浮浪者とか男女老人関係なく集めろ。」

「どうされるので?」

「税金を払わ無い、町の害虫共を処分する良い機会だと思ってな。そうだ、罪人もソレに加えよう。で、どうにか5000人位編成できたら教国にも言い訳になるだろう。」

「なるほど。」

 

「ではすぐに編成して…適当な安い武器と防具を装備させろ。」

「はっ!」

 

「はーしかし、魔王か。やばい奴が出てきたな。勝てそうに無いし従属するか?」

 

 その後神託が下り勇者を担ぐ方向に切り出すが、この強制徴兵は実施されたのだった。

 

 

 




現地人も現地神も、無防備なサンドバックになるなんて事はありません。
出来る限りの抵抗はします。

(アリス神なら、ほっときそう。)
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