魔王美樹の大冒険(旧:来水美樹が異世界召喚された件) 作:魔王信者
勇者Lv47
勇者は虹のマントを装備した。(魔法防御40%カット)
勇者は属性指輪を装備した。(土水火風光闇雷属性50%カット)
光の鎧を装備した。(防御力 激高 光防御力10%カット)
勇者の剣を装備した。(攻撃力 激高 残念エスクードソードではないよ)
星の腕輪を装備した(素早さ 激アップ)
勇者の盾を装備した。(完全防御 一回 完全防御は貼り直すごとに1ターンかかる)
故郷から教国の首都。所謂教都に到達した時には、かなりLvアップしていた。
教皇との謁見中に神が降臨。勇者の装備を与えられ、その場で装備した。
勇者のLvは人で言うなら高い。
素養も高いので、この世界基準でLv120相当にまで強化していたのだった。
「では勇者よ、魔王を倒すため協力して欲しい。」
旅になど出している余裕はない。
軍にて抱えて魔王の居る城まで出撃する必要があった。
「はい、お任せください。」
元気よく答える、そのあどけない顔には強い意志が顕れていた。
「うむ、では皆のもの魔王を倒すため出撃である!」
「大変です!城門が魔王に破られました!!」
攻めていく系魔王のリトルプリンセスは、そんなの関係ないとばかりに正面突破してきた。
自分と露出狂の幼女二人である。
「なっなんだとぉ!」
教皇もいきなり魔王が現れるとは思わず、動揺した。
だが、それも神の思し召し。丁度勇者が居るじゃないかと思い直す。
「勇者よ…早速だが。頼む。」
「はい!わかりました!今すぐ魔王を倒してきます!」
今まで丁度いい感じの魔物を苦戦しつつも倒してきたのが良かったのだろう。
強く自信に満ち溢れた彼は、素直に首肯し魔王の方に向けて駆け出した。
此れほどの武器防具、そして勇者としての規格外な能力。
人類の希望は今、魔王に刃を突き立てる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
鎧袖一触とはこの事だ。
魔法攻撃を装備の力でレジストしたようで、撃ち出した『火の矢』はその9割の力を失った。
例えば人間同士であれば100ダメージ与える攻撃が10になる。
損害は微々たるものだが、10,000与えるようなオーバーキル気味の攻撃では1,000食らってしまう。
まさにレベルが違う。
勇者は一撃で瀕死の状態となった。
「…何が起こったんだ。」
彼女は、その辺りの雑兵(聖騎士)との区別なく適当に魔法をばら撒いている。
かなり適当ではあるが、当たれば死ぬ。
レジストが高かったおかげで勇者は生き延びたと言っていい。
そもそもだが『火の矢』は2発当たっていた。一発目は普通に絶対防御で防いだ。
勝てない。もうダメだ。と、
魔力での威圧感もあり、勇者は絶望仕掛けた。
(ふ、ふざけるな!皆に、神に強化され、強くなったこの僕が…ただの一撃で終わるだなんて!
ふざけるな!
勝てない程度で立ち上がれなくなるなんて、なんて無様。
そんな無様な真似だけはできない…!)
回復魔法をかけると、勢いよく立ち上がり叫ぶ。
「っ、待て!魔王!」
ちら見をすると火の矢を勇者に向けて打ち出す。
一発だけだったので、勇者の盾の力。絶対防御で打ち消した。
だが魔王は倒れるのを確認すること無く、城へ向けて歩みを続ける。
正面の敵には容赦なく火の矢を撃ち込んで黙らせた。
「(チャージ完全防御…そして真後ろは…隙だらけだぞ!!)」
叫び声をあげず、魔王を後ろから斬りつけ。
気がつけば建物の残骸の中で意識を取り戻した。
背中と首が痛い。
気を失っていたのは数秒か数分か。
(一体何が…
斬りつけようとした時、黒い何か打ち付けられたような?)
そう。無造作に放った裏拳で勇者は吹き飛ばされた。
その攻撃は絶対防御でなんとかなったが、衝撃は殺しきれず建物に衝突。
いくつもの建物を破壊する弾丸となり、此処まで吹き飛ばされたのだ。
「は、はは…アレが魔王か。
神様が勇者を任命するわけだ。
装備を与えてくださるわけだ。
あれは最強の人間だって勝てるわけがない。束になったって勝てるものか……」
ろくに相手にもされずに敗北。だが生きている。
通常のRPGであれば負けイベント。悔しさをバネに更に強くなる事を心に誓うだろう。
だがこの少年も挫折を知らぬ少年だった。今挫折を知り、完全に心は折れていた。
正しい心の変化だ。
そこへ…強制的に立ち直らせるのが勇者の加護。
即座に立ち直る。
勇者に挫折は要らない。ただ魔王を倒すべし…と。
勇者は倒されたことで何故かレベルが上がった。
その強さは神が与えた。
もっともっと強くなれと、全力で支援していた。
そんな事をしたら少年の心は完全に歪んでしまう。だが勇者の加護で矯正される。
完全な勇者は、こんな事ではへこたれない。
傷を治した勇者は再度魔王へ向けて突撃する。
先程から殺しきれない雑魚がうろちょろと煩かった。
魔王だからと堂々と門を突破。
教国の主城…ではなく、召喚を行った召喚院へ向かっていた。
幼女はどこかで栄養補給しているようで、後で合流すると言っていた。
何度かうざい雑魚を吹き飛ばしていると、だんだん強くなってきている気がした。
殴られるたびに強くなるとは、一体いかなる変態か。
ついに、一撃では吹き飛ばなくなった時、正面から彼女を見据えこう言った。
「僕は勇者だ。魔王覚悟しろ!」
そういえば、あちらの世界で勇者にも追いかけられていたなと思い出す。
(そっか、こっちの正しい意味での勇者か。)
この世界を守るためにご苦労な事だと苦笑する。
勇者はこの世界の正義を一身に受けるもの。そのハズなので少し余興を思いついた彼女は、斬りかかろうとする勇者に声をかけた。
「ふふっ。勇者君なんだね。さっきから煩さい雑魚かと思ってた。」
「だ、黙れ!」
「まあ、君が自己紹介してくれたからね、私も自己紹介しちゃうね。」
「何?」
「私の名前は来水美樹。異世界の魔王をやってます♪」
実に楽しげに、これからお茶会をするかのように名乗った。ところでリトルプリンセスという名前は使わないのだろうか。
「ぼ、僕は勇者アーレス。お前を倒す者だ!」
「くすくす」
その返事に彼女は可笑しそうに笑う。
「な、何がおかしい!」
「せっかく異世界のってつけたのに、全然反応してくれなくて。」
「そんな無意味な質問をして何になる!」
「え~異世界から来たなんて、何しに来たんだーってならない?」
「ならない!どうせこの世界を侵略しに来ただけなんだろ!」
「くすくすくす」
「何がおかしい!!」
「勘違いだよ、酷い勘違いだよ。早とちりだね勇者君。」
「な、何が勘違いだって言うんだ?」
「私はね…いえ、私たちはね?召喚されてこの世界に来たんだよ。
別に来たくて来たわけじゃない。
ね?違うでしょ?」
「なっ……!嘘を吐くな!!!」
「嘘じゃないよ。しかもね、召喚した理由が最悪。奴隷にしようとしたんだって。」
「奴隷!?」
勇者の村にも奴隷は居た。
村長の所に数人いて、いつも怒鳴られ、ノロノロと仕事をしていた。
好奇心からアレはなにかと聞いたら、姿は似ているけれど、猿の一種で奴隷にして使ってやっているのだと言う。
馬や牛を使うのと一緒だが言葉で命令しやすいので扱いやすいと聞いていた。
その奴隷が?一体何事かと思った。
「ここでも、あちらでも奴隷がいっぱいだね。
じゃあ、あの奴隷はどこから来たのかな?」
「何処…から?」
「正解はね、異世界。違う世界から来た人だから、ここの人とは違うの。だから猿と呼んで奴隷にしてもいいみたい。」
「だから、奴隷を解放しに来たとでも言うのか?」
「違うよー。
私もね、奴隷にしようとしてたの。
面白いよねー。魔王を奴隷にしようだなんて。」
「なんだって!」
「君はさ、明日から奴隷にします。勝手に売るから、売られた先でせいぜい頑張って働いてね?って言われたらさ、怒らないかな?」
「……」
「酷いよね。しかもステータスプレートとかいう奴で自由すら奪ってくるんだよ。
あれで命令されると逆らえない見たい。」
「……」
「まーだから。私はね…ただ故郷に帰りたいだけなんだよね。」
「な、なら…なんでこんなに暴れるんだ。さっさと帰ればいいだろう?」
先ほどとは打って変わってテンションダダ下がりで勇者は聞いてきた。
声が若干震えていた。
「私と、故郷のみんなを奴隷にしている人に、なにを遠慮する必要があるの?
私はソレをするこの国の人が大嫌いなので、滅ぼそうと思うの。
私としては殴られたから殴り返しているだけだよ?駄目かな?」
「……」
「で、どうするの?
奴隷たちを生み出す悪の国家に手を貸して、立ちふさがるのかな?」
「ひ、人を殺すな。殺すのは悪だろう?」
「人の意思を捻じ伏せて奴隷にするのは悪じゃないのかな?
それとも、彼らは奴隷じゃない。異世界猿だとでも言うのかな?」
「…お、…お前の言っていることが正しいなら、奴隷を生み出すこの国は悪い。
だけど、お前の言っていることが正しいとは限らないだろう!」
「うーん。証拠かぁ、今、手元に証拠はないね。」
「なら、」
「でも今向かっている所は城じゃないよ。
私が向かっているのはこの国が奴隷を呼び出している召喚設備がある建物。
召喚院に向かってるんだよ?」
「!!」
「私は家に帰りたいの。だから帰るための手がかりが欲しくてね。」
「……」
「それを見た後、そうだね、この国の人に奴隷見せてくれって言って、どこから収穫したのか聞いてみるといいよ?
面白い答えが返ってくると思うよ?」
「…わ、分かった。
その魔法陣を見るために同行しよう。
そして、お前たちに手出しはさせない。
だからお前たちも人を殺さないでくれ。」
「ん~嫌だよ。」
「なっ!なんでだ!」
「この国の人はそれだけの事をしたの。」
「だからって殺すことはないじゃないか!」
「死んで償えって言ってるんだよ、わからないかな?」
「!!!」
勇者は苦しそうにうめいている。
それを見て(うわー、精神攻撃に弱い子だ)と、楽しく見守っている。
「ふふ。まぁ、召喚院を見るまでだったら良いよ。手出しされない限り反撃しない。」
「!…分かった、頼む。」
彼女は満足げに頷くと召喚院へ向けて歩き出す。
散発的に出てくる兵士は、勇者が抑える。
「召喚院に行くから道を空けてくれ!」
こう言いながら歩いていく。
聞いたものはこう思った。
「ああ、召喚院で包囲して何かやるんだな」と…
そして、それを聞いていたのは兵士だけではなかった。
途中なんの障害もなく、召喚院へ到着した。
召喚の異界の門前には既に、全裸の幼女がスタンバイしていた。
「…!な、全裸!?」
初めて見たかのようにジロジロをあちらこちらを見る。
「…クク…」
幼女は愉しげに嗤う。
笑われて勇者はさっと目を背けた。
「…それは……弁当持参?」
「弁当じゃない。」
あまり笑えない冗談に彼女も苦い顔をする。
「アレは……正真正銘……DT
純粋な……良い子。」
目を細めて嗤う。
「な、なんなんだ、そいつは」
「異界の門のスペシャリストかな。」
「この子の…血……吸っていい?」
「駄目よ。」
速攻で拒否られて、幼女はふうんといった表情で彼女とDTの様子を見る。
(なるほど、言葉責めで遊んでいるのか)
女の直感の方で理解した。理責めでもきっと理解できたが。
「それで、座標はわかった?」
「起動していない状態だと…‥分からない。
…起動してみても?」
「被害者が出ないようにしたい。できる?」
「…とりあえず縦にすべき。この状態で起動すると落ちる。」
確かに自分たちは落下して到着したなと思い出す。
「…なるほど。」
勇者は勇者で彼女の言っていることが正しいと思い始めていた。
「本当に召喚する設備があったなんて。」
彼女達が強引に立て掛けて起動すると周辺の空間が歪む。
「…これ…は。」
「え?何?」
どうにも召喚するための異界ゲートが開いている雰囲気ではない。
「…罠か。」
「どういう事?」
「なんだって!?」
勇者も一緒に幼女の言葉に食いついた。
「……何処かは知らないけど、
………強制転移……魔法陣。
…もう……止められない。」
「なっ!」
勇者は驚いた。
それはそうだ、勇者ごと、まとめて何処かへ追放させるというのだから。
「もう……到着。
…もう……別の……異世界。」
彼女らはミラクル・トー命名で言うところの、ポリポリワンに到着していた。
(ああ、DTの慌てた表情がたまらない。)
異界に追放されてしまいました。
投稿してから読み返し。誤字訂正という流れが多く、ご迷惑おかけしております。