魔王美樹の大冒険(旧:来水美樹が異世界召喚された件)   作:魔王信者

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イブニクルのお話をだいぶ忘れた関係でこの辺りの時間は飛ばさせてもらいます。
…その代わりジル様の方に焦点を合します。
イイですよね?
肝心の美樹ちゃんはイブニクル世界でゼスを探して彷徨います。
「あ、この世界違う」と思うその時まで……横道に逸れて観光してるだろうけど。




15 美樹ちゃんの異世界探訪に変わりまして、ジル様の異世界征服をお送りします

手駒が足りない。

 

前は一声かけるだけで500万の兵が動いたというのに。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

教皇はその日も魔王対策会議を行っていた。

 

「次に勇者の行方ですが、未だ分かっておりません。」

「魔王を単身、討ちに行ったのでは?」

 

「それは無いだろう。道中の村にも立ち寄った形跡が無い。」

「ふうむ。人類の希望だが、あれが居ないと戦いにすらならぬ。よくよく探すしかない。」

 

「はっ。

 次に、軍ですが予定より遅れております。予定しております出陣には一ヶ月ほど間に合わないかと。」

「それは何%なのだ?」

 

「15%程です。」

「ならいい、どうせ長期包囲を考えているのだ。後で合流する事にする。」

 

「はっ

 次に、遺跡からの対魔武器の出土は困難を極めております。現状進捗はありません。」

「情けない話だな。

 だが無理も言えぬ。倒すことは不可能でもせめて封印しなければ…」

 

 このように人としても対策を重ねていた。

 先日の襲撃は青天の霹靂であり、まさか魔王単体でここまで突破さえてしまうとは考えても居なかったのだ。

 

 然らば、人としてできることは軍を整え何とか対抗するだけだ。

 蹴散らされようとも、諦めるわけにはいかないのだから。

 

「人類の総力を結集してでも奴らを除かねば…」

「…うーむ。だが奴らは余りにも脅威。時が要る。

 誰ぞ和平をもちかけられぬか?」

 

「和平…で、ございますか。」

「あの化け物には軍では勝てない。だが神のお力であればなんとかなる。勇者の力があれば。

 であれば時間だ。時間が必要なのだ!」

 

「そうでございますね。承知いたしました。」

「適任者は…」

 

 そう言いかけ。息を飲む。

 ぞくぞくっと悪寒がし、異様な重圧がかかる。

 気持ちが悪くなり、吐いてしまいそうだ。

 

「こんにちは………」

 

 気が付けば会議室の真ん中に、かの全裸幼女が居た。

 

 教皇は報告にあった魔王の手下だと気づいた。

 手下であってもこの言いようもない雰囲気、魔力はとんでもない化け物だと認識させられた。

 

「…………死ね。」

 

 何を言ったのか、判断する前に衝撃派で全員息絶えた。

 

「…まずそうな血。」

 

 会議室は一転、地獄と化した。

 地獄にした本人は次の標的へ向けて移動していた。

 

 この日、教国の上層部及び官僚将軍はほぼ全滅した。

 

 

 

 

「…解放戦争だ………出撃せよ。」

 ただ、それだけを言うと配下の者たち…としている、彼女と同郷の人間に命令を下した。

 そして、それで立ち去った。

 

「え?何。え、何?」

「何を、どれだけの規模で、何処へ出撃すればいいの!?」

 

 最終的に僅かな守備兵を残して出撃するのだが、準備には数時間かかった。

 

 そもそも、決定から出撃まで数時間で終わるのが奇跡的である。

 ネットショップが無ければ実現しえなかったであろう。

 

 奴隷解放戦争である。

 隣町に到着すると、守備兵は居ても将は無く、あっさりと陥落する。

 奴隷を解放し戦力とした後、更に隣町へ。村へと解放の手は伸びる。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

隣国の執務室

 

「魔王が教都に現れた?

 勇者は戦ったけど敗北。軍は何もできず…召喚院に到達。そこで何かされて帰ったと…」

 

 隣国の王は唸った。

 勇者へ協力は約束したが、これは幸先が悪い。

 生き残るためにはどうすればいいか。恭順しようかと考えていると…

 

 ぎぃっと扉が開いた。

 隙間から流れ来る魔力が恐怖を伴ってかの王を襲う。

 

「こんにちは……」

 

 そこから入ってきたのは、報告にあった残忍な方の化け物。

 

 これはヤバイ。下手な事を言ったら死ぬ…。そう予感させられた。

 

「あ、ああ。こんにちは」

 絞り出せたのはそれだけ。

 

「………………死ね。」

「!!!降伏します。!!!」

 

 死ねと聞いた瞬間、殺意が爆ぜた。

 それに合わせる様に手を挙げて降伏を宣言した。

 

 黒く伸びた手が、その首を刎ねる直前だった。

 

「……ふむ。」

 

 まさか降伏してくるとは思わなかった。

 考えるに、手駒は足らない。

 

 なら、この手の臆病者は現地人の裏切り者として使うのも良いかと思い始めた。

 

「………良かろう。」

 

 すっと手を引いた。

 

「お、おおお…」

 あと数瞬、反応が遅れれば死んでいた。

 

 この申し出は贔屓される現地人が居るという事。

 手駒にもなるし、虐められる対象からすれば憎悪の対象にもなる。

 

 これらが反乱し、贔屓された者たちが襲われて壊される様がとても楽しみな為、降伏を許した。

 

 

「……本拠地は知っているな?」

「は、はいもちろんです!」

 

「……こちらの城の方が良いもの使っているな。」

「ど、どうぞどうぞ!すぐに明け渡します!!!」

 

「………………まあ、後で引っ越す。

 部屋を……空けておけ……」

「はは!畏まりました。」

 

「うむ…」

 幼女はもう次の国に移動する事を考えている。

 取り急ぎ上層部と官僚を殲滅する予定だった。

 

「わ、私はアーノルド・ヴェ・ギシリマ申します。

 貴女様は、なんとお呼びすれば?」

「…………好きに呼べ。」

 

「い、いえ。大変失礼なのですが…お名前をお聞きしても?」

「…………ジル。」

 

「ははっ!ジル様!お名前ありがとうございます!」

「…………」

 

 何か言おうとしたが、諦めて去った。

 

「………怖かった。」

 少し≪だいぶ≫ちびっていた。

 

 

 

 

 3か月後

 周辺国含め大陸にある国の6割は上層部を刈取った。

 動きがマヒするレベルでなく大混乱となっている。

 

 なぜ6割かと言うと、ルドラサウム大陸に比べ大変大きかったからだ。

 全部狩り切れず帰ってきた。

 

 三か月間奴隷解放軍もその数を雪だるま式に増やしており、内ゲバで忙しかった教国を占拠していた。

 そんな折に幼女がそこへ帰ってきたのだ。

 

「……ご苦労。」

「は、はい!」

 自分らは頑張った!という達成感があった。

 それはそうだ。軍の将軍などが居ないと言っても貴族は居るし、兵士は残っているのだから。

 それなりに大変だった。

 

「……次は…間引きだ。」

 

 

 LP4年10月。既にゼスは解放されているが、その間ゼスを苦しめた占領政策。

 人を虐め殺す趣向はカミーラが主導していた。

 だが、アレはカミーラ風にアレンジしただけで、もともとはジルの治政で行っていた事だ。

 ゆえに数か月前起こっていたゼスでの惨劇が、異世界の此処でも起こっていた。

 

 今も…ジル様を楽しませ、楽しませる事ができなかったら処分する。という事を実施していた。

 具体的に説明すると18禁に抵触する内容であるため説明できない。残念だなぁー

 

 愉しんでは居たが、満足はしていない。

 ただの暇つぶしだ。

 

 最近は働きすぎだった。力は大分取り戻した。魔王の血が足らないので全盛期には程遠いが、今はこの程度で我慢しよう。

 そんな状態だった。

 力が平常になったので少しずつ体も成長を始めている。

 子供が大人になるように、普通の速度でゆっくりとだが、大きくなっている。

 

 いずれ、また忙しくなる。反発で反乱軍ができ、それを叩き潰す。それまで暇だ。

 

 気に入った男は適当に侍らせた。

 侍っている男の容姿がガイやランスに似ているような気がするが、きっと気のせいだ。

 

 教国は地獄と化したのだった。

 

 

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神界

 

「帰って行った!」

「帰りましたよ!!」

 

 地方神と大陸神である親子神は手を取り合って喜び、安堵した。

 手下が残ってはいるが、魔王はこの世界から去ったのだ。

 

 源素の流出は停まった。ある程度減ったが誤差の範囲…では済まないが誤差に収めるのが神の手腕の見せ所である。

 

 幼女魔王が残っており実は吸収されているが、生成量と比較すれば枯渇するに至らないと、今のところ思われている。

 故に彼女の暴虐は無視された。

 

 それどころではない事態が発生したのだ。

 

 海洋神―母神―が、旦那(父神)と娘神が不倫していると勘違いして襲撃して来たので戦争になっていた。

 神界で神が争っており、下界の事は忘れ去られた。

 

 


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