魔王美樹の大冒険(旧:来水美樹が異世界召喚された件)   作:魔王信者

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戦闘のBGMは決戦で!


一章 魔王美樹が世界を徘徊する件
19 魔王ケイブリスとのげきとう


◇人類死滅率36%

 

 見渡せば、どこもかしこも魔物だらけ。

 健太郎くんを求めてあっち行き、こっち行き。

 

 魔物はもう、リトルプリンセスを追て居ないようで、魔物が現れても普通に襲ってくるだけだった。

 

 魔物をしばいて命令し、着いた先がケイブリスの本拠地だった。

 とりあえずケイブリスをしばいて倒せばいいやと思って中に入る。

 

 何時もより格段に警備が薄い中、ずんずん進むと…倒れている人間がいた。

 健太郎くん?と、思ったが違うようだ。

 

「おや?」

 従者のコーラが訝し気にこちらを見ている。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 アリオスは燃え盛る呪いの火に炙られ、それでも死なずにいた。

 この炎は魔王の炎。魔王以外には解ける者はいない。

「まあ、勇者ですからね。死にはしませんが、助かりもしません。それに…」

 

「…」

 

 なんとかしようとして、美樹は呪いを止めた。

 火は止まった。

「ふう、これでいいかな?」

「……」

 

 残念ながら、神魔法は使えないので回復はできない。

 そして、動けない体を無理やり動かし、アリオスは起き上がる。

 

「わあ、動いたら辛いよ!?」

「なぜ、生きているかは知らない。

 だが、魔王は…

 斬る―!」

 

 エスクードソードを構えそして斬り付ける。

「わわっ!」

 

 動きが鈍いおかげか、剣を避けるのはできた。

 

「助けてもらったのに、助けた相手を斬り付けるとか流石ですね。」

 従者コーラは冷静に告げる。

 

「魔王は倒す…!」

「もう!」

 

 美樹からすれば、「せっかく助けたのにぷんすか!」レベルの怒り具合である。

 

 首筋がお留守になっていると見たアリオスは必殺の斬撃を美樹の首に叩き込む。

 

「何故だ…」

 

 無敵結界は突破した。だがなぜ止まるのかが理解できなかった。

 

「ただの、魔法シールドだよ。」

 

 魔法シールドが無くても手傷は負わせられないが、そこは美樹が慎重(謎)になっているからである。

 美樹の手刀が馬鹿でかい出力を伴ってアリオスを貫く。

 大振りの一撃を待っていたのだ。なお、此れはただの貫手である。

 勇者特性で急所には当たっていない。

 

「飛んでっちゃえ!」

 

 ただの衝撃波でもって、アリオスを吹き飛ばした。

 残ったのは、衝撃を受ける際に手放したエスクードソード。

 

「あーあ。飛んで行っちゃいましたね。やれやれ。」

「…」

 

 美樹が勇者の従者を睨め付けるでもなく、観察していた。

 

「なんですか?」

「貴方は何者?」

 

「それはこちらが聞きたいですね。死んだはずのリトルプリンセス。」

「……」

 

(え、どういうこと?)

 顔色は変えていないが、心の中でパニクっていた。

 

「……じゃあ、地獄から舞い戻ってきたのでしょう?」

「…はあ、まあそうですか。良かったですね、仇討てそうで。」

 

「…」

 そういって踵を返すが、頭の中ではクエスチョンマークで埋め尽くされていた。

 

 そうして城内を探していると、折れた日本刀が転がっていた。

 美樹には見覚えがあった。日光だ。

 

「日光さん!?じゃあ、健太郎くんは!?」

 

 戦闘というか攻撃の跡に、健太郎らしき残骸があった。

 魔血魂は抜き取られたのか、魔人ではない状態だったのだろう。

 

「け…けけ……けんた、たろ…ろうくん……」

 震える声でかの残骸を見下ろしている。

「けんたろうくん!けんたろうくん!けんたろうくん!けんたろうくん!けんたろうくん!」

 残骸にしがみ付き、絶叫ともいえる鳴き声を響かせた。

「う、うわーーーーーーーん、げん゛だろ゛う゛く゛ん゛。うわーーーん。」

 

――――――――――――

――――――――――

――――――――

―――――

―――

 

 

 どれくらい泣いたのか。

 泣き止み、呆然としていると日光が目の前に落ちている。

 

 ゆっくりと歩き出し、日光を手に持った。

 

「…日光さん。教えて。何があったの?」

「美樹さん。死んだと思ったのですが、生きていたのですね?」

 

「死んだって、何。」

「だって、ケイブリスに捕まって…」

 

「ケイブリス…」

「…」

 

「私、健太郎くんを探して、昨日やっと自分の世界からこっちに来たんだよ。」

「昨日?それはおかしい。

 ずっと一緒に居たじゃないですか。」

「???どういう事?」

「どういう?」

 

 状況のすり合わせをすると、一旦自分たちの世界に帰ったが、ヒラミレモンが無くなったので慌ててこちらの世界に来た。

 という事で、魔王化を止める方法を求めて旅をしていたらしい。

 

 それで、色々旅していたがケイブリスに捕まってここに来て…健太郎は殺されてしまったとの事だった。

 

 こちらの事は、帰る為に色々な世界を巡ってやっと帰って来たら、居なかったから探しに来た。

 という事を説明した。

 

「…そうなんだ。」

「そちらの美樹さんも大変だったのですね。」

 

「…とすると、私も居るのかな?」

「……」

 

「私の死体…になるのかな。」

「…」

 

 重い足取りで城内を巡る。

 すっかり誰も居ない城内では楽に探せた。

 その部屋は、酸っぱい匂いに混じって血と色々なものが混じった匂いがした。

 

「あぁ…私か。」

 

 きっと、健太郎くんを救いたくて。殺されてでも救いたくて、耐えて耐えて、そして息絶えたのだろう。

「……」

 

――よく頑張った。

 そう思ったが、それ以上に無残であり、惨めな死体だった。

 

 美樹は別の自分である死体を炎で燃やすと部屋を出る。

 

「ケーーーーーーイーーーーブーーーーーリーーーーーースーーーーー!!!!!」

 

 そう、未魔王ではない。既に覚醒済みの魔王なのだ。

 何を躊躇うものがあるものか。

 

 

 ケイブリスを探しに、城を飛び出した。

 

 

 ケイブリス探しの旅は、特に難航しなかった。

 魔物に命令すれば楽だった。

 

「ケイブリス何処にいるの?教えなさい。」

「は、はい!あっちです!」

 

 魔王の絶対命令権があれば楽だった。

 

 

 

 そして、奴。ケイブリスの居るであろう場所までやって来た。

 数千の魔物を引き連れて村を包囲している。

 

 

「さあさあさ! どしたオラァ!?

 逃げずに俺様と戦いやがれ!

 正々堂々とよぉぉぉお! くぁはぁはぁ!」

「にゃーはっはっはっは!

 さっすがケイブリス様はいいこと言うにゃん!」

「とても凛々しく格好いいお姿に

 ワンもうっとりですわん」

 

「ぐぁはぁはぁはぁはぁ!

 そうだろう!? オオ! そうだろ!?」

 

 何とも言えない巨体に人の上半身が生えている生物。

 魔王ケイブリスがそこに居た。

 

(なに、あいつは。)

 魔力を非展開モード。いつもの美樹状態で、何をしているのか物陰から見ている。

 

「くくくく……

 よーし、たまには魔王っぽいこともするかあ」

「おらっ!アホのサテラ!

 『俺の前に出てきやがれ!』

 今! すぐ! これは魔王様の命令だ!」

 

「絶対命令権……」

 

「くっうう……!」

 美樹も見覚えのある魔人、サテラが隠れ家から出てくる。

 魔王の絶対命令権に逆らえず出てきてしまったのだろう。

 

「おーおーおー、出て来たなぁぁ。

 くそたれホーネットに与する、

 負け犬のアホたれサテラちゃんよぉ」

「ま……魔王……ケイブリス……」

 

「げへへへへへへぇぇぇぇ……

 魔人ってのも惨めなもんだよなぁぁぁぁ?

 魔王の気まぐれな命令一つ逆らえねえ

 だぁがぁなぁぁぁぁぁ!

 俺様は自害しろなんて命じる気はねぇぜぇ!

 抵抗するなとも命じねえ!」

 

 それから、ケイブリスは聞くに堪えない罵詈雑言を飛ばし、カオスを持った人間を炙りだした。

 

「だーっ! いい加減にしろーーー!

 サテラも! そして世界中の女も!

 ぜーーーんぶ俺様のもの!

 貴様なんぞには!指一本触れさせんわーーーー!」

 

(なるほど、あの人間…緑のおじさんは…どっかで見た覚えが)

 JAPANで会っていないので、顔見知り度が低下していた。

 

「死ねやァァァァアアアアーーー!」

「テメェが死ねやぁぁぁああぁあああああ!!!」

 

 まるでヤクザの衝突だなぁと思っていた。

 観察していたら、今にも激突しそうだったのでランスの前に躍り出る。

 

「あ?」

「うん。ケイブリス?殺しに来たよ。」

 

「あああ?なんだ!?

 てめえは殺したはず…どういう事だオラァァァァアアア!」

 

「地獄から舞い戻って来たよ。」

 

「うお、美樹ちゃん?え…え?生きてて、生きてた?え?」

 

 ランスは混乱している。ケイブリスも混乱している。

 

 美樹は力を開放し…魔王リトルプリンセス状態になる。

「……私と…健太郎くんの仇だ。死ね。」

 

「死にぞこないってかぁ!いいぜぇ

 何度でも殺してやらぁあああアアア!!!!

 

 

 

-----------------------------------------------------------------------------

            戦闘準備

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魔王ケイブリス               魔王美樹

HP12000000           HP3100000000

■■■■■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□□□

 

 

-----------------------------------------------------------------------------

 

「あ、あれ?なんか桁ちがくないですか?」

 ケイブリスが大人しいモードで聞いてくる。

 

「がんばって鍛えた。」

「え、それにしては…え?」

 

「じゃ戦闘開始。」

「ちょ!」

 

シャシャシャシャシャシャシャシャシャキーン

 

「え?魔法シールド何枚あるの?」

「128枚」

 

 この為に鍛えたとでも言うべき防御である。

 宇宙戦艦の主砲を耐えようとした賜物であるが、ケイブリス相手は些か過剰である。

 

「…え?」

「魔王同士っぽいし、無敵結界が無いから仕方ない。」

 

「……え?」

 

 美樹は構えるとケイブリスに向かって魔法?を発射した。

 どんな魔法か!白いから白色破壊光線か!?などと考えているが…

 

「消えちゃえボム砲!」

 黒色破壊光線なんてメじゃない強力な光線がケイブリスを襲う。

 上部の右肩…もとい右手が消滅した

 当然だ。戦艦の主砲と同等以上なのだから。

 

「ぐがああああああ!」

 

「ほらほらほらほら!」

 追撃でスノーレーザー的なものをばらまく。

 

 今、この時ばかりは弾幕シューティングゲームになっているが、勿論制圧射撃な上に避ける隙間など与えていない。

 

「くそがぁああああ!」

 

「なんだ、この美樹ちゃんは!!」

「魔王覚醒状態だな!」

 ランスとカオスが見学しながら話していた。

 

「(ぐ…旗色が悪い…どうしたら…

 そうだ!)」

「おい!サテラ、協力してこいつと戦え!!」

「!!!」

 

「なっ!!私にリトルプリンセス様と戦えと言うのか…!!ああああああ!」

 体が勝手に戦闘態勢に移行していく。

「止まれ!命令解除!」

 

 美樹がそう叫ぶとサテラの戦闘態勢は解除される。

「な!絶対命令権もか!!」

「ほらほら、私は止まれと叫ぶだけで終わるぞ、どーすんの?」

 

 ケイブリスが滅多打ちにされていく。

「ぐおおおおお、なんで、なんで同じ魔王なのにこんだけ違う!」

 

 アフターに出たか出ないかの違いかもしれないが、要するに適正者ではないという事もあるのだろう。

 

「種族的に…魔王に向いていないんじゃ?」

「ぐ、ぐおおおおおお!!!

 そんな事あるかああァァァァアアア!!!

 俺は!誰よりも!誰よりも努力して、最強になったぁあああああ!

 それが!ひょろひょろでなえなえのガキに負けるかぁあァアアアアアア!!」

 

「残念、負けるんだよ!!

 じゃあね!しねええええええええええええええええええ!」

 

 美樹ちゃんアタック…宇宙大怪獣相手に放つ、魔力を手刀に固めての突撃。

 魔法シールドも無いケイブリスの胸を易々と切り裂く。

 

「ぐはぁああああああ」

 

 美樹はケイブリスの心臓を貫いた。

 そして…

 

「消えちゃえええええええええええええええええええ!!!」

 

 体の中から放たれる消えちゃえボムでケイブリスを粉々に吹き飛ばした。

 

 余波でランスやサテラ達も吹き飛んでいく。

 

「にゃああああぁぁぁぁぁぁ!!!ケイブリスさまがしんだにゃん!」

「あああ、ケイブリス様が吹き飛んだワン!」

 

 

 

 彼女。美樹の仇討ちは完了した。

 

「………」

 しばらく立ち尽くしていた。

 

 

「お、おぃ…魔王と魔王が戦って、強い方が残ったぞ?」

「馬鹿剣が気付かれてしまうではないか!」

 

「呆然としている今がチャンスだろう!やれ!

 そして俺を突き立てろ!そして俺を魔王の血で満足させろ!」

「やかましい!とりあえず、あの美樹ちゃんは危険だ。

 どうしようもないから逃げる!

 戦略的撤退だ!」

「ら、ランス様!」

 

 ランス一行は逃げていった。

 だが、その場にはサテラが残った。

 

「リトルプリンセス様…」

「…その名前は嫌い。」

「あ、はい。美樹様」

 

 訂正すると、ちゃんと訂正された。

 サテラにとっては念願通りのリトルプリンセスではある。

 だが、どうにも違和感を感じずにはいられなかった。

 

「そうか…ここは、私の健太郎くんが居る所じゃなかったんだ。

 たぶんきっとそうだ、探さなきゃ。」

「あ、美樹様!」

 

 ふらふらと、移動を始める。

 宛など無いだろう。

 

 魔王ケイブリスは倒れた。

 だが魔王は残っている。

 

 これがどうなるか、誰にも分らなかった。

 

------------------------------

ランス城

 

アコンカの花が咲いていた。

 

『世界の変革をお知らせします。

 

 新しい魔王が誕生しました

 

 KL歴は開始早々ですが終了となります。

 

 来年からLP9年となります。

 

 お間違えなきように』

 

 

 

 

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美樹の魔王血量190%

 

 




ゲージはふざけすぎでしょうか。

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