魔王美樹の大冒険(旧:来水美樹が異世界召喚された件)   作:魔王信者

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21 希望を求めて

ポリポリワン

 

 美樹達は過去のポリポリワンに来ていた。

 と言っても、何が変わるような世界ではない。

 

「そう言えば美樹ちゃんは、魔王に覚醒しているんだよな?」

「そだよー」

 移動した先でなんだが、魔王と言えば破壊衝動。いつも苦しんでいたしリトルプリンセス化しているのを一度見ているのだ。

 それが軽い感じで肯定されても、なにかお町さん(きつね)に化かされた感じがした。

 

「普通、こう…暴れたいとかそういうのは無いのか?」

「あーあの破壊衝動ね…なんかどうにかなった。」

 

「どうにかって。」

 とりあえず破壊衝動が無い事は喜ばしかった。

 なのでその件は解決したと見る事とした。

 

「それじゃあ、いつも通りの美樹ちゃんと考えていいわけだな。」

「実は、私は初対面みたいなものなので、いつも通りがわからないけど、だいたい同じかな?」

 

「ふうむ…じゃあ、取りあえず俺様といつもS〇Xしていたという事は憶えていないのか?」

「え?」

 いきなりなセリフで美樹は固まった。

「わわわ、ランス様!なんて事を言って!」

 

 いつも通りなランス。記憶喪失と見立てて適当な事を言ってみた。

「あっちの”私”って、健太郎くんを置いてそそそそそそ、そんな破廉恥な真似を!?」

「お?(やはり健太郎かーくそー面倒だな)

 おお、そうだぞ!滅茶苦茶やりまくってた」

 とりあえずテキトーな事を重ねて、美樹を騙していく。

 

「はーまあ、あっちの私がどうあれ、私は健太郎くんのほうが好きなので、そういう事は無いけど、そっかーそんな事があったのかー。」

 なお、美樹は信じた。

 信じた上拒否表明だった。

 

「(くっ、もうちょっとだったのにな。もう少し材料が無いとダメか。)」

 何処までも諦めないランスであった。

 

 当面の行動を考えると、お子様が多い事に気付く。

「とりあえず、非戦闘員は別の場所に退避してもらいましょうか。」

「別の場所?」

 美樹が、当面の移動先を考えているとシィルが移動先について尋ねる。

 

「良い感じに征服した世界があるんですよ。」

「ほう…」

 

 流石魔王、征服するんだな。とか、俺様よりも先に征服するなんてみたいな感想を思い浮かべる。

 

 さしあたって、2~3歳くらいのランスの子供たちは退避させなければならない。

 

 他の面子は戦闘員だ。お子様だがナギも戦える。

 前と違って復讐に燃えるというよりも、姉から云われた「生きて幸せを見つけろ」という遺言に従っている節がある。

 幸福は分からない。だがまずは生きることを先決と考えたのだ。

 

「じゃあ、まずはその異世界へゲートコネクト!」

 

 たどり着くと其処はジルの住む居城前。

「ぬおおお!魔王がいるぞ!」

「ああ、隣にいるな。」

 

 カオスがいきなり叫んだので、テキトーにランスが相槌を打つ。

 

「違う!別の魔王だ!」

「おお、凄い!分かっちゃうんだ~」

 美樹がそれにのっかっり、肯定した。

 

「ほう、この世界でも魔王か。なるほど」

「私の方が強いというのもあるけど、あっちこっち飛び回るので、お友達として寄らせてもらってるの。」

 

「魔王友…なんという交友関係だ。」

 ランスがあきれる様に云った。

 

「こんにちはー」

「お前は誰だ!」

「・・・あれえ?」

 何故か、面識が無い事になっていて、また大人しく捕まった。

 

「ぬあーー何故大人しく捕まらねばならんのだーーーー!」

 

 捕まった際に、同様に魔王パワー全開…にはせず半開にしていると、前回同様にジルが歩いてやってきた。

 

 JC魔王ジルさんである。

 

 

「……趣味?…」

 

 前と同じように訪ねてきた。

 どうも年月のズレが今一把握できていない美樹ではあり、まだ帰国事業はしていないようだが…

 

「あーーーーーーー魔王ジル!!!!!」

「………ラン…ス……!!」

 

「な、魔王ジルがこんな処に!?」とかなみ。

「え?えーーー!?」とシィル。

 

「なんじゃとーーーー!ジルだってぇええええええ!」

 カオスが布に包まれた中で叫ぶ。

 

「えっと、この人たちを傷つけたく無かったから捕まっただけだけど…あれ?知り合い?」

 

「美樹………こいつら、どういう事だ?」

「え?え?」

 

 さっぱり分からない美樹はとりあえず、落ち着くようにお願いした。

「とりあえず、お茶にしよう!」

 

「そんな事やってる場合か!魔王がここにおるんだぞ!」

 カオスがわめくが、

「いや、私も魔王なんだけど?」

 

「い、いやどちらかと言えば、お嬢ちゃんも斬りたいんだけどもね、儂。」

「カオスはいつも通り煩いのでとりあえず放っておこう。封印だ。」

 

「ちょ、おま!儂が居なかったら魔王に何もできんのだぞ!?」

「煩い!話しにならん。とりあえず話しだ話。」

 

「ほぅ…ランス……おまえは、あの空間で…蹴り飛ばした事を

 何とも思っていないと?」

 

 いつもより早口なジルに、美樹はわずかに驚きながら様子を見守る。

 

「あーうん。すまん。」

 いや、それじゃあ許されないだろうと、みんな心の中で思った。

 

「…うむ……いい………許す………」

 そしてこのセリフでランスと美樹以外は思った。

(なんだこのチョロさ。)

 

「お?え?許された?」

 同様にランスもソレだけじゃ許されないとは思っていたが、存外簡単に許されたので驚いた様だ。

「許す………変わりに……一つ、いう事を聞いてもらう………いいな?」

「お?モノによるがいいぞ。なんだったら抱いてやろうか!?

 がっはっはっはっはっは!」

 

「……うむ………話しが早いな……行くぞ……」

 そう言って、ランスを捕まえて引きずるように去っていった。

「え?えー?ら、ランス様!?」

 

 一体全体何がどうなったのか分からないが、みな突然な成り行きで固まっていた。

 

「あー…これどうしたらいいんですか?」

 捕まえていた兵士が呟いた。

 

「いや、ほんと如何したらいいんだろうね?」

 

 

 良く解らないが、ジルがランスと仲良くやっている様子から、

 今日の所は客人として泊める事となった。

 

 

 

 

 翌日

 

「がっはっはっはっはっは!」

「ふぅ…やはり推論どおり………ランスとヤレバ才能限界が上がる。」

 早くも検証が終わった様子のジルであった。

 

「それでね、ジルさん。

 ちょっと行くところがあるんだけど、その間ランスさんのお子さんを預かってほしいなって。」

 

「…………ランスの……………子供…………」

 そこで満足気だった表情がいきなりピシッと固まり。

 どういう事?というような目でランスを見た。

「うむ。まあ…なんというか、その……な?」

 思いっきり目が泳いでいるが、言い訳はしていないようだ。

 

「子供か……魔王だと……子供が作れない………事は無いが………

 とても希少…………。

 うむ、孕むまでやるぞ。」

 そう言って、またランスを引き摺って行きそうになる。

 

「ちょ、待て待て!

 ジルとやるのは良いが俺様にも、やる事があるのだ!」

「……よその女?………」

「う………ぐ………」

 えらいぞランス。否定しなかったな。

 

「と、ともかくだ!

 〇〇している最中に言った通り、過去に戻って俺様の女達を救うのだ!」

「……………」←別にどうだって良いと思っている

 

「あーなんだったらランスさん置いていきましょうか?」

「だーっ!俺様を置いていくなんてありえんぞ!」

 

「どうしても?…………私よりも………他の………女を

 ………また……………選ぶ?」

 

「う、ぐ………」

 一度蹴り飛ばしていたが、その時はイイ女だが別段どうでも良いと思っていたがいざ余裕があるときに、このような事を言われると少し揺れてしまった。

 

 とはいえ、自分が行くとは言えなかった。

 また、あの箱庭に戻るのは嫌だったのだ。

 

「………ふん。……すべて終わったら来るといい………」

 そう言ってそっぽを向いた。

 

 どうやら、お子様を置いていくのは大丈夫の様だった。

 

 

 

「よし、では行くぞ!」

 当然の様に仕切るが、この一行のリーダーは美樹なのである。

 その筈なのであるが。

 

「なんか私空気だった。」

 唖然としつつ、ゲートコネクトを使用する。

 

 そして、あの世界へ移動する。

 

 メンバーは

 美樹、ランス、シィル、かなみ、サテラ、ナギだった。

 千姫とピグはお子様たちとお留守番となった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

◇人類死滅率26%

 

 

「ここは何年何月になるんだ?」

「えーと、LP7年12月18日ね。」

 周辺の聞き込みから帰って来た、かなみが答えた。

 

「!!!あっちから…健太郎くんの気配がする!」

 全然違う方向へ移動する。

「本当かー?」

 

 がさがさ…っと其処から飛び出て来たのは魔物だった。

「な、なんだ?」

 

 勿論、魔王の絶対命令権で質問を開始。普通に口を割る。

 

 

「ハァ!?ケイブリスが出張ってきているだって!?」

「どっち!?」

「あっちです。」

 

 美樹はみんなを置き去りにするスピードで飛んで移動した。

 

「あ、美樹ちゃん!!」

 

 

 

 

 飛んで行った先には魔人ケイブリスが、健太郎を握りしめ、未魔王な美樹を脅しつけて居たところだった。

 

「けんたろ、う、くん……おねが……ころさな、いで……おねがい……

 な、んでも、する……します……

 わたし、なら……なんでも言うこときく、

 から……おねが、い……おねがい、します……

 わたし……殺してもいいから……」

 

(ああ、私だ。健太郎くんが大好きな私だよ。うん。)

 

「くぁはぁはぁはぁ!

 良い子だぜぇ、リトルプリンセス!

 おい、うし車の中にぶちこめ!

 殺すのは城にもどってからだ!

 見張りもつけておけよ!」

 

「全員。お座り…」

 

 ケイブリスはお座りした。

 

「は?え?なんだ?」

 ケイブリス以外も。あのストロガノフもわん、にゃんも全員お座りした。

 

「健太郎くんから手を放して。ね?命令。」

「あ、はい…」

 

 ケイブリスが手を放すと、健太郎もお座り状態になった。

 色々ヤバい傷なので、お座りも大変な苦痛ではあるが。

 

 目が笑っていないが口の笑っている美樹が現れた。

「えっ?え?」

 顔がくしゃくしゃになって泣き顔状態の美樹が新しく現れた者…自分?に対して目をむいた。

 

「ケイブリース。良い子のリトルプリンセスちゃんだよ~」

 さっき、ケイブリスが良い子と言っていたので、アドリブで付け加える。

 

「え、…あ、はい。」

(ななな、なんだこの圧迫感。というか逆らえない命令感といいあれ?

 あっち偽物?え?もしかして俺様ピンチ!?)

 

「あ、健太郎くんもお座りしちゃってる。健太郎くんだけ命令解除ね。」

 そう言うと、崩れ落ちる健太郎。

「み、美樹ちゃん。」

 

(あー健太郎くんだ…傷いっぱい負ってるけど、健太郎くんだ。

 助かってよかった。) 

 

 美樹は安堵してケイブリスに向き直る。

 

「うん。自害しろとも、抵抗するなとも言わないよ。

 健太郎くんに手を出さなきゃどう抵抗しても良いよ。」

 

 改めて命令を下す。

 

「え、えーと。あの…ご、御免なさい!

 命狙って申し訳ありませんでした!!!!!」

 必死になって謝る。

 ダメだ魔王になんて敵うわけない。最悪な展開だーと焦りまくっていた。

 

「あーそういうの良いから。とりあえずししばくね。」

「たたたた、助けてください!許してください!!!!!!」

 

 美樹のファイヤーレーザーがケイブリスの腕を消し飛ばした。

 

「ぐがあああああああぁぁぁぁぁぁあああああ!」

「ほーら抵抗しなさいって。」

 

「け、ケイブリス様ぁあああ!」

 周りの魔物が叫びたてるが、前に来て盾になろうとする者は居なかった。

 

 当然だ。今の美樹は魔王190%+Lv1602の全開状態なのだから。

 

 魔王ケイブリスの時と違い、HPで言うなら50万~90万程度だ。

 

「ほらほらほらほら」

 ファイヤーレーザーだと消し飛ばすと思い、炎の矢…いや火の矢で攻撃を加ええていく。

 火の矢は炎の矢より弱く手加減するために美樹が適当に作ったものだった。

 勿論美樹が放てば、普通の魔法使いが放つファイヤーレーザーよりの威力がある。

 

 ズタボロのケイブリス。

 全く抵抗らしい抵抗すらできずに転がっていた。

 

「ふん。」

 衝撃派でトドメを刺すと、魔血魂を回収。初期化して取り込んだ。

 

「にゃーん、ケイブリス様が死んだにゃーーん!」

「わーん、ケイブリス様が死んだわーーん!」

 

 わんとにゃんは泣きながら逃げていった。

 

 他の魔物も逃げる中、ストロガノフだけがそこに呆然として立っている。

 

「どうしたの?逃げないの?」

「…………」

 すっと礼をするとそのまま歩いて立ち去って行った。

 

「(なんだったんだろう?)」

 ストロガノフは目標を見失ってしまったのだ。

 だが自殺する訳にもいかず、かといって復讐戦も意味が無い。

 ふと、頭の片隅に学者の顔がチラついたので、まずは話をしよう。と立ち去ったのだった。

 

 

「さて…」

 美樹は、未魔王な自分と傷だらけの健太郎くんへと向かった。

 

(あれ?…あれ?

 健太郎くんは無事だけど…『あの健太郎くんは、あっちの私の健太郎くんだ』

 あれ?)

 

 

 助けて気が付いた。

「『私の』健太郎くんは何処?」

 

 その呟きに誰も答える者はいなかった。

 

 


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