魔王美樹の大冒険(旧:来水美樹が異世界召喚された件) 作:魔王信者
難しい事を考えるのは辞めた。
目の前に元気な健太郎くんが居るのだから、生きている事を感謝しよう。
そのようにして目を向けるが、明らかに致命傷な健太郎くん。
「(あれ?そういえば、なんで健太郎くんにも絶対命令権が効いてたんだろう。)」
よくよく見れば健太郎くんは魔人になっていた。
そんな気配がした。
じーーーと、もう一人の美樹とボロボロの健太郎を見ていると、視線に気が付いた彼女が話しかけて来た。
「あ、あの…えっと…
た、助けてくれてありがとう?」
「こんにちは、覚醒していない私。」
「え、えっと、覚醒しちゃってる魔王な私ーなのかな?あはは。」
魔力で編んだ黒マント着用をしているし、一度半覚醒しているのでなんとなく覚醒しているのは分かっていた。
「こっちの健太郎くんは、なんで魔人になっているの?」
「あーえっと…死にかけて、死んじゃいやだったから、えいって…こうなっちゃった」
なんとなくのニュアンスだけで通じるのは本人同士だからだろうか。
「ふうん…」
「えーと、覚醒した私は何処から来たのかな?」
「うん。まず異世界に召喚されてね・・・」
覚醒美樹は今までの経緯をかいつまんでっ説明した。
「そう…」
「うん。それで『私の』健太郎くんを探しているんだけど……」
「そ、そうなんだ。」
「……貰っちゃダメ?」
「ダメ!!!」
「だよねぇ~あはは。」
力で持っていこうとすればやれただろう。今覚醒されたとしても勝つ自信はあったが流石に自分相手にソレは無かった。
「私、……魔王覚醒しちゃったから、貴女のソレ回収しようか?」
「えっ!?
だ、大丈夫なの?」
「異世界でね、なんか破壊衝動が消えちゃったので、別にいいかなーって」
「なるほど…確かにそれなら別に良いかも。」
「でも、今貰うと…空腹と衰弱で死んじゃいそうだね。」
「う…」
「一旦、どっかで休もう。健太郎くんもボロボロだし、今人間に戻されても困るでしょう?」
「え?それって…」
「魔王をやめて、元の世界に戻る。
それが私たちの望みだったよね?」
「あ……うん。」
「私はまだ健太郎くんが見つかってないから、また旅を続けるね?」
「……わかった。がんばって!」
「うんがんばる!」
そう言って握手すると、自分同士の握手というのはなんか複雑だなと感じた。
しばらく、どうにか健太郎を移動させるために、平べったい岩の上に乗せ、それを抱えて持ち運ぶことにした。
移動していると…
「こらーーーーーーー!
勝手に行動するんじゃなーーーーい!」
ランス達がやってきた。
「あ、ごめんなさい。」
「あ、ランスさんたちだ?」
お互いに見合わせる。
「顔見知りなの?」
「なんで一緒に行動しているの?」
お互いの質問がぶつかるが、
「おお!美樹ちゃんが増えとる!」
「過去の、美樹ちゃん?」
これで、人類社会の損耗は激しくとも致命的ではない状況であると判断できた。
「よーし凱旋だ!ランス城に帰るぞ!」
自分も二人いる事には気づいていないランスが意気揚々と引き上げていく。
「あー、じゃあランス城にお世話になるのかな?」
「そうみたい」
そんなコンナでランスが城に引き上げると。
「コラーーー!俺様の偽物め!成敗してくれる!!」
「なんだと上等だ!お前こそ成敗してやる。」
「「死ねぇえええええええ!」」
お互いカオスで斬り合う。
「おお!」「おおおお!儂か!?」「おお儂だ儂だ!」
斬り合った瞬間分かり合ったカオスであった。
「ランス様!違います本物ですよ本物!」
「なんだと!?」
「ぐ、シィルまで偽物とは…手が込んでいる上に趣味が悪いぞ!」
「馬鹿を言うな!本物に決まっとろうが偽物が!」
本人なので同じ実力であるが、1年程年季が違うために転移ランスが押していた。
「とりあえずどーん!」
覚醒美樹が軽く衝撃波で二人とも吹き飛ばす。
「「ぐああああーーー」」
ごろごろっと転がって城壁で止まる。
「美樹ちゃん…」
「おい!心の友。この感じ、魔王に覚醒してやがる!」
「なんだと!?」
「いやいや、覚醒してるけどね。」
「くっ、ヒラミレモンの在庫はあるか?」
「はい、こちらに。」
すっとビスケッタさんが現れて過去ランスに渡す。
「おお、何時にも増して準備が良い。」
「いや、未覚醒に戻るつもりはないからね?」
「やかましい!大人しい美樹ちゃんにもどすぞ!」
「えー斬り付けた方が良くないか?魔王だぞ?殺そう!」
過去カオスが斬ることをランスに進める。
「うーん、その件には完全に同意なのだが、現状を鑑みるに止めといたほうが良いなぁ」
未来カオスがそのように言い、カオス同士で意見交換を始めた。
「そもそもどっちも、本物だよ?ちょっと未来から来たんだよ。」
「はあ?未来から来ただぁ!」
「だから、今のところ魔王が二人居る。」
そして魔王の血は3人分だ。
「あ、ちょっと休ませてください。お願いします。」
未魔王の美樹も現れた。
「な!美樹ちゃんも二人だと!?」
「おとーさん、どういうこと?」
ぴょんと現れたリセットが過去ランスと未来ランスを見ながら、面白がっていた。
「…
…
…」
未来ランスが爆発したようにリセットを抱きしめる。
「う、うおおおおおおリセットぉおお!!!!!」
「え?ええっ!?」
「うおおぉおお!生きているリセットだ!生きてるぞぉ!!!」
「な、こらーーーーーー!
俺様のむs…えっと…なんだ、女もでもないし…
ええい!俺様のモノを勝手に取るな!偽物め!!」
「ええい、貴様のモノでは無いわ!俺様のモノだ!俺様の娘だ!やるか馬鹿たれ!」
一度手から零れ落ちたせいで。かなり素直になっていた。
「コレ、誰がどうやって収拾つけるの?」
総統司令部
「これが現在の戦況です。」
ウルザが指し示す戦況は良いものではなかった。
まず自由都市が関ケ原の戦いで敗北。そのまま陥落していた。
残り3か国でも同様に厳しい状況が続いており、カミーラも永久牢から解放されている。
「うーむ。
ケイブリスは倒したんだがなぁ」
未来ランスは唸り声を上げる。
「なっ!ケイブリスを!?いつの間に」
「倒したのは、私だよ…」
覚醒美樹が肩を落としランスに突っ込みを入れる。
「え…えっと?」
「うん。じゃあーそうか。私が各地を巡って停戦させてくればいいよね。」
「あれ?未覚醒の魔王だったはずじゃ?」
「あ、覚醒中なので大丈夫。魔物たちは命令は聞くから。」
「…え!?」
魔王=敵=破壊の権化である。
穏当な魔王など存在しない。しなかったのだ。
そんな空気をきにせず、スタスタと外へ向かう覚醒美樹。
「じゃあ、行ってくるね。」
一週間かけて飛び回り、魔物たちは全軍魔物界へ引き上げていった。
不満もあろうが、魔王の言う事は絶対なのである。
帰り着くと、未魔王な美樹と健太郎が出迎えてくれる。
「あ、健太郎くん。元気になったんだね。」
「あーえっと。うん。元気になったよ。
えーとえっと、美樹ちゃん?魔王になっちゃったみたいだけど大丈夫?」
「大丈夫だよ!」
ちらりと未魔王な美樹を見て
「ちょっと借りるね。」
そう言って健太郎に抱きつく。
「ちょ、美樹ちゃん?」
「暫く…しばらくこのままでいさせて……」
かなりの間、声もなくそのまま抱き着いていた。
そのうち、なんか一緒に帰っちゃおうかなぁ、両手に花で健太郎くんも文句ないよね。自分同士だし大丈夫だよね?などと、欲望がもたげて来た。
「……ありがとう。」
結構な時間が経った後、魔王な美樹は離れる。
結局欲求は封印した。
「健太郎くん成分も補充したし!これで10年は戦えるよ!」
「う、うん。」
「じゃあ、その魔王成分頂戴。」
「あ、うん。大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。」
そうして、未魔王美樹はただの人間美樹となり、健太郎も魔人から人になった。
「じゃあ、後は帰る方法だね。」
「あ、それは大丈夫。ゲートコネクト!」
「うわあ…なんというか、なんでもできる様になったんだね…」
「そりゃあ…覚醒するとね。」
こうして、城のみんな、サテラx2やらランスx2やらに挨拶し、二人は囲まれて元の世界へ帰っていった。
「あとは『私の』健太郎くんを探し出せばいいだけ…」
この世界で争いは極小化された。
大戦争も終り、人類は総統が統一した。
反乱の目がありそうな自由都市は壊滅している。
「世はなべて事もなし」
ハッピーエンドである。
「うん、うん。良かった。
さーて、がんばるぞ!」
そう言って気合を入れる美樹の後ろに、光が差す。
認められるのだろうか?
魔王の脅威も魔物の脅威も無い大団円を。
===============================
美樹の魔王血量285%
魔王血量はご指摘頂いた通りですね。
また、過去改変回りでは動きが無い感じですが、難しい話にはしないつもりです。