魔王美樹の大冒険(旧:来水美樹が異世界召喚された件) 作:魔王信者
世界は平和になった。
許容されるべき事態ではない。
混乱をさせるべき魔王システムが完全にバグっている。
このままでは、永久に現状が継続する可能性もある。
それは
バグは修正されなければならない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
人間になった美樹と健太郎が帰って行く。
ゲートは閉じ。
世界は平和に。美樹は新たな旅を決意しつつ先へ進もうとした。
その後ろから光が差す。
圧倒的な存在感。
圧倒的な光量。
そこに在るべきではない存在。
―神―
尋常ならざる存在。魔力というより、もっと別の力。
言うならば、此れが神の力か。
光で良く見えないが、神力を読み取ることで大凡の輪郭を把握することが出来る。
ヒトデ型の大きな奴だった。
「うおおお!なんだ!!この光は!!!」
ランス旧が叫ぶ。
「まぶしくて何も見えん。なんだこれは?
だが、俺様の直感が危険だと訴えているぞ!」
ランス新が同じく叫ぶ。
『魔王システムにバグが生じた。一級神では対処不能な程のバグ。
お前がバグか。排除する。』
名も告げぬ神は美樹に光線を当てる。
現れてから当然無敵結界など宛にしていない。魔法バリアを256枚重ねて防御するも、易々と貫通していった。
「くっ!」
だが結界の偏重で軌道は変えられたため、直撃は無い。
二発目は動いて回避した。
『ほう…』
美樹はすかさず、消えちゃえボム砲を放つ。宇宙戦艦の主砲並みの破壊力だ。
だがその砲撃はヒトデ神に届かずに消え失せる。
「なんだ!美樹ちゃんを攻撃し始めたぞ!?」
「なんか知らんが俺様の女に手を出すとは許せん!」
何時、お前の女になったのだと、ツッコミを入れる余裕も無く、攻撃が降り注ぐ。
『なるほど、一級神では敵わぬ力であるか。どうしたらそこまで強くなれるのか。』
返答する余裕もなく、大量に魔法バリアを貼り直しては砲撃を続ける。
特攻するような美樹ちゃんアタックでは致命的になりそうだとして、遠距離で攻撃を続けるもどうにも旗色が悪い。
「ぬおおお!あれは!」
「なんだカオス知っているのか?」
カオスがその姿をやっと確認できたようで、いきなり吠えた。
「プランナー!プランナーじゃ。三超神の一柱で儂らがあった神。そして儂を剣にした張本人…神じゃ。」
「な!あれが神!?
って事は俺が天使ちゃん達のウハウハハーレムが欲しいと言えばくれるっていうのか?」
「いや、あれは神の試練を通過してこそ。今顕現しているのは…今の魔王を排除するためじゃな」
「なんだと?今の美樹ちゃんに悪い所なんてあるのかよ?」
「知らん…だが、あの魔王が一級神の力を超えたから、消しに来たという事かの。」
「ぬう…アレ勝てるのか?」
「どうにも旗色が悪そうだのぉ」
「なんかドンドン撃ちまくってるが、正直何がどうなっているのか分からん。」
「果てしない頂上決戦のようなものじゃな。」
新旧カオス入り乱れての会話であったが、大凡皆観戦してる。
『なるほど、だいたい力は把握した。ご苦労だったな。』
そうプランナーが呟くと、美樹の手足が光の環に捕まる。
「なっ!」
『障壁での防御もこの通り…』
障壁の内部。自分の体から爆発が起こる。
「くは…」
『ふむ…高いLvに高いHPで生き延びたか。』
「美樹様!!!」
旗色が悪い所でなく、捕まって一方的に嬲られる状況になり、観戦していたサテラ新が叫んだ。
『Lvは1に戻しておこう。これで耐えきれまい。』
急速に失う力。Lvが1に巻き戻る。
理不尽なまでの権能。これが神か。
『さて、魔王の血を回収させてもらおう。』
光のキリのようなものが美樹の上空に現れる。
それで貫くつもりだろう。
プランナーは容赦なくソレを撃ち出す。
(もうだめ、終わった…)
そう諦めた瞬間目の前が暗くなり、突き飛ばされていた。
光のキリはサテラを貫き、そしてサテラは何を言う暇もなく消滅した。
「な!サテラ!!!」
ランス新が、サテラ消えた場所まで駆け寄るが、何も残ってはいなかった。
「あ、あぁぁ…」
美樹はサテラが消滅したのを見て呆然とした。なぜ死ななければ、消滅しなければならないのかと。
『ふむ、そういえば…お前も時間変革。バグだな。』
「な!」
光に貫かれ、ランス新はあっさり消滅した。
「ら、ランス様ぁああああああああ!」
「くっ、どうなってやがる、未来の俺様が一瞬で消し飛んだぞ!」
「あちらの儂も一緒に消し飛んだのぉ…まずい!」
「み、緑のおじさん…」
『…』
プランナーは再度キリを出現させると美樹を貫かんとしていた。
「いかん、美樹ちゃんを助けろ!
なんだか知らんが美樹ちゃんが死ねば終わるぞ!」
ランスが直感なのかそう叫ぶ。
「助けろってったって、神相手!?」
「ちょっとコレ無理があるんじゃ。」
「いい悪いじゃない、やるんだ!」
光のキリが再び降り注ぐが、もう一人のサテラが鞭で美樹を引き寄せていた。
「さあ、これで…」
邪魔をしたサテラは光線に貫かれて消滅する。
『邪魔をするな。』
プランナーがそう告げると、ほとんどの人間が動けなくなる。
そんな中、異界のゲートが開いた。
「ほれ、魔王を異界の門で逃がせ!まずは逃げるのが先決であろう!?」
ミラクル・トーが開いた異界の門だ。何処へつながっているかは彼女しか分からない。
「わかった!」
動けるものが数人で、動けない美樹を引き摺っては消滅しを繰り返す。
『そうか、皆死を望みか。』
キリで美樹を攻撃するのは魔王の血を回収する為だ。よって力加減ある攻撃に留めていた。
「や、みんな!やめてーーーー!」
力の限り魔法シールドを貼るが、駄目。
ランス城も消滅した。
美樹の後ろに居る、ミラクルと未来ナギ、ランス旧にかなみだけだった。
「…未来から来たんだよな?こんな結末変えろよ、行け!!」
ランスが美樹を蹴り出す。
「あ!」
とっさにナギを抱えて異界の門をくぐると、そこはいつか見たポリポリワンだった。
振り向くと、異界の門は閉じている。
手と足についた輪っかはプランナーの力。このままでは不味いと思い、吹き飛ばすと新しい異界の門を作る。
そうだ。魔王ができるのだ。神に、プランナーにできない筈が無い。
だが異界は神にとっても異界。
とりあえず別のへ移動する。
正直来たくは無いが恐竜たちの世界だ。
「と、とりあえず過去のあの世界(ポリポリワンだが名称を決めて居ない)へ……」
他人がやったことは覚えている。
セラクロラスがやったのと前と同じ出口ならすぐに作れた。
すぐに移動する。
「あ、あああ、みんな皆が」
美樹の腕の中でナギは震えていた。
或いはあのまま死んだほうが楽だったのか。
「……」
ポリポリワンの移動すると、すぐに物陰に隠れる。
暫くすると、自分達が現れた。
「そう言えば美樹ちゃんは、魔王に覚醒しているんだよな?」
「そだよー」
そういえばそんな会話もしたなぁと思い出す。
会話が終わって、未来から来た過去の自分達が異世界へ移動する。
「かち合うと、どうなるんだろう。」
何かヤバい気がして隠れたが別にかち合っても良い気がして来た。
いいや、ゲートコネクト。
(口は足らないけど、意外と賢いジルさんに相談しよう。そうしよう。)
美樹は今後の方針を完全に失った。
(誰か助けて…!)
プランナーはポリポリワンまで追ってきたが、そこで見失ってしまった。
異界は管理外なので仕方ない話だった。
『……まあ、これはこれで楽しみができるという事か。』
悪魔の存在を許容しているのも、世界に混乱が起こるからである。
多少は大目に見る。
そういう事だろう。
或いは世界に平和が訪れず、そのキーとなる者が魔王システムでなければ、わざわざ自ら出向く事も無かったのだ。
また、一級神で対処可能であれば、それもまた自ら動く事ではない。
Lvを1にしても、なんらかのバグのせいで倒しきれなかっただろう事が予想された。
なんにせよ、混乱が起こるなら可。という事だ。
みんなポンポコ殺してすいません。