魔王美樹の大冒険(旧:来水美樹が異世界召喚された件) 作:魔王信者
◆人類死滅率17%
「はあ?でっかい魔人が逆さまに埋まってる?」
総司令部に、魔人バボラの異変が届けられた。今なら無抵抗でやりたい放題である。
つまり近くの魔軍を蹴散らせば魔人は倒せる。
魔人討伐隊はそんな情報を元にバボラ討伐に出発する。
それとは別に動く者が居た。
「じゃあ、案内宜しく。」
ピンクのにゃんにゃんが、地図上で指し示すポイントへ連れていくように要請。受理した。
「こちらです。」
闇烏。ヘルマンのアサシンである。首領に何かを言い含められているのか、迷子のにゃんにゃんにならないよう先導していた。
アサシンの先導に従って移動する事2時間…例の洞窟に到着する。
「くんくん
…健太郎くんのにおいがする!?」
※しない。気分でそう感じるだけ。
そっと洞窟に近寄り、そっと洞窟の中を見る。
暗くて良く見えない…
ブン!
風切り音がする。
日本刀での切り落とし。刀はミキの首にクリティカルヒットするも、切断には至らなかった。
膨大なHPのおかげだが、HPの1/4が飛んだ。
「…え?!」
「くっ…なんだこの化物にゃんにゃんは!」
健太郎くんに攻撃されて、一瞬呆然とする。
だが第二撃目が繰り出されるのは咄嗟に避けた。
「ま、まって!」
「はぁ!!!」
健太郎は日光で再度斬りかかる。
仕方なく魔法シールドで防ぐ。
無敵結界は無効化できても、魔法シールドはなかなか突破できない。
不思議な装備である。
「話せばわかるよ!待ってってば!」
「にゃんにゃんだろうと、美樹ちゃんには近づけさせない!」
攻撃する訳にもいかず防戦一方となるミキだが。
(あれ?無敵結界あるから攻撃しても特に意味ない?)
ミキは、とりあえず火爆破で視界を奪うと一目散に逃げ出した。
(これじゃあ近寄ることもできないよ)
距離を一定以上とり、木の上で唸っていると闇烏がすっと背後に現れる。
勿論ミキは気づいていない。
「ううう、近寄りたい。でも近寄ると攻撃される。
なんだって、あんなに攻撃的なの?」
なお、空腹のせいである。
いや本当に。
「どうしようもないから、各国の魔人と戦おう。妨害戦だ!
さて、闇烏さんはどk…」
キョロキョロ見ようとして、真後ろに居ることに気がついて言葉が止まる。
「えーと、リーザスだったかな?そこの前線で戦ってる魔人さんまで案内してもらえます?」
「はい。…こちらです。」
白くでかい塊、鎧が戦場を駆け抜ける。
大きな弾丸と化した鎧で、敵を跳ね飛ばしていく。
今日も黒の軍を散々蹴散らし、その後襲ってくる魔軍に追い詰められる。
戦場の一角のみなので、上手く調整し、ローテーションで遅滞戦闘を行っている。
それとは別の箇所で、数敵優位を作り出して魔軍を蹴散らしている。
無茶に無茶を重ねている戦場であるが、量質ともに勝っている相手に対して、リーザス軍は良く戦っている方である。
そんな戦場の一角で人類の陣をまた蹴散らす。
陣でけちらされた者は後方に逃げ延び、再度陣を形成する。
白くでかい鎧が突破した陣は今日で26。果てなき戦陣は無限に生成されるかのようだ。
もちろん、黒の軍。その人間達の体力が持つ限り繰り返される。
そして体力は無限ではないのだ。
そんな白い鎧が次の陣に挑もうとするその横合いからファイヤーレーザー8本が突き抜けた。
それでも動きは止まらない。
陣に迫る白い鎧。
そこへ追撃のファイヤーレーザー32本。
地面や当たらなかったものが幾つか出たが、白い鎧はそこで動きを止める。
攻撃してきた方を見据えると、ピンクのにゃんにゃんがいた。
「…」
解せなかった。白い鎧は魔術師は何処かと見渡すと、火爆破が直撃する。
だが装甲のおかげで無傷である。
ピンクのにゃんにゃんが、白い鎧に迫る。
まさかアレが魔術師とも思えず、周辺を見ていると、ピンクのにゃんにゃんから収束されたファイヤーレーザーが放たれた。
その一撃。それがあろうことか装甲を破損させる。
「…」
それこそありえない。
こんな可愛いにゃんにゃんが、この
収束したファイヤーレーザーが再び放たれる。
先ほどの1本と違い8本の熱線がリトルへと注がれる。
あまりのスピードで回避は出来なかった。
恐るべき攻撃に対し、攻撃する手が止まる。
(こ、こんな可愛いにゃんにゃんに攻撃する…なんて、出来る訳が。ううん、反撃はしないと。)
十数発食らって地面を転げながらようやく反撃を行うも、有効な攻撃ではなかった。
「くっ」
装甲は損壊し、リトルが解かれる。
空いた穴からファイヤーレーザーが入り込む。が、無傷。
そこから先は無敵結界の領域である。
リトルは基本形態に移行。中からシルキィが漏れ出るように出てきた。
「やるね、もう…にゃんにゃんだからって容赦しないよ。」
「にゃーん」
「う…私の戦意を挫こうというのか。」
「残念」
火爆破で煙幕代わりとする。どうせ無敵結界で無効なのだ。
そんな使い方でも問題ないだろう。
「覚悟!」
煙幕から飛び出たシルキィは即座に魔法シールド…いや魔法障壁にぶつかった。
「一体何が?」
気がつけば四方を壁で覆われていた。
四角錐のようで、上空に隙間はない。
にゃんにゃんは更に外側に魔法障壁を形成していく。
シルキィが1枚目を破壊する頃には、4枚目を作り終えていた。
「なんだあれは、シルキィが捕まってるぞ?」
「あのにゃんにゃんがやったのか?」
「救い出すというのもアレだが、助けるか。」
「あんなんでも魔人様だからな~ニヤニヤ」
魔軍がにゃんにゃんに攻撃をしかけ、外からも魔法障壁を攻撃する。
とてもじゃないが外からの攻撃は効果なかった。
「邪魔」
ファイヤーレーザーと火爆破を駆使し、気がつけば魔軍は全滅していた。
シルキィが魔法障壁を15枚破った辺りで音を上げた。
段々固くなる障壁で、外にはすでに20枚程の障壁が組まれていた。
地面を掘るも、下にも魔法障壁がある始末で、イタチごっこより質が悪かった。
「もう、どうしよっていうのよ!」
「降参してくれるかな?」
「………それはできないわ」
「ならここでにらみ合いね。」
もう壁を壊そうという意志はないのか、どかっと座ってにゃんにゃんを見据える。
「そういう君はにゃんにゃんなのに、どうして人間の味方をするの?」
「この姿は仮の姿で、元々人間だよ。」
まあ今は魔王だが。
「うーん、無敵結界が厄介ですね。」
「無敵結界が無ければ倒されているよね、助かってるよ。」
敵に回すと厄介だなぁと思っていた。
そこでふとひらめく。
宇宙戦艦の主砲なら打ち破れるじゃないか。と。
しかし、宇宙戦艦をここに持ってくることはできないし、携帯用にすることもできない。
だが、だがもし…ゲートを通しての攻撃なら通るのではないか?
そのように思いついてしまった。
「良い事を思いついた。アレなら無敵結界もこれまでです。
それで、降参しませんか?」
「…しないよ。」
「残念です。」
ゲートコネクト。
異界との扉が開く、そして本体に意識を戻すと目の前にゲートが開かれていた。
ゲートの向こう側は見えないが…撃てば当たる。
宇宙戦艦主砲よりやや弱い程度に調整する。
そう、無敵結界を打ち破って余りあったあの宇宙戦艦主砲の出力。
それを鍛錬中にレーティアが改良しまくって、倍以上に出力が上がったソレ。
コレを相殺できるようになった美樹は、その倍以上になった主砲出力のやや弱めに調整した火力で撃ちだした。
魔法障壁20枚程が、まずは立ちふさがった。だがそれで勢いが半減するでもなく貫通。
砲撃が当たる直前、シルキィの無敵結界は魔王特性によって中和され無意味と化し、戦艦主砲の暴虐たる火力に晒された。
美樹はゲートを消し、意識をにゃんにゃんにもどすと、そこには抉られた大地と、魔血魂が一つ。
他には何もなかった。
「……あれー?」
★★★シルキィメダルGET!★★★
「あれえ?」
ミキは暫くそこで呆然としていた。
シルキィの魔血魂を咥えると、ミキは移動を開始する。
「闇烏さん、ナビゲートお願いします。」
変な方向に行くだろうと予測したミキは、大人しくナビゲートされるのだった。
黒の軍本陣
「ふうむ、魔人シルキィがピンクのにゃんにゃんと交戦中か」
「バボラの時や、裏番で目撃されていますが、人類軍側でかなり戦果を上げていますね。
あのにゃんにゃん。」
「敵でなければいい、実際魔人への対応は助かっておる。」
黒の将バレスと白の将エクスは、にゃんにゃんがシルキィと交戦していると聞き、先日魔物達を攻撃して暴れているにゃんにゃんが居るとの報告を思い出した。
「流石に無敵結界は壊せませんが、いい時間稼ぎにはなっていますね。」
「シルキィを援護する魔軍を一方的に叩く事が出来るかも知れん。増援しておくか。」
と、そのように話を纏めていると…
「バレス将軍!」
「どうした?」
入って来た黒の軍兵。伝令だろうが、その者から報告があった。
「現在魔人シルキィと交戦中のにゃんにゃんですが、
多重の魔法障壁でシルキィを閉じ込めたそうです。」
「ほう、しかし、魔法障壁は削れるし壊れる。黙っているシルキィではあるまい。
足止めにしかならんのではないか?」
「いえ、それが…
壊す前に新しい魔法障壁を張り、壊すころには新たに2枚の魔法障壁が出来ておりました。」
「なんじゃと!?」
「私が確認したのは、6枚の魔法障壁が破られ、新たに12枚の魔法障壁が作られた状態です。」
「これはこれは…その状態を維持出来たら魔人を封殺していると変わりませんね。
封殺している間に魔人討伐隊を呼んで始末してもらうのが宜しいでしょうか。」
「そうじゃな、さっそく伝令を出そう。あとシルキィ救出軍が来る。撃退の兵を用意せよ。
儂も現地を見に行くぞ。」
「はっ!」
話はまとまり動き出そうとしたその時、新たな黒の軍兵が入ってくる。
「将軍!」
「どうした!?何か動いたか!!」
「は、はい。えっとその。
例のにゃんにゃんが来ました。」
「は?」
「え?」
下をすり抜ける様に、ピンクのにゃんにゃん。ミキが本陣を訪れた。
え、なんでお前来ているの?
シルキィほっといて帰って来たの?なんで?
みたいな目がミキに降り注いだ。
勿論そんな空気も視線も無視してずんずんとバレスの前に来る。
ぺっ、と、魔血魂をバレスの方に転がす。
「シルキィ。大切に保管して。」
それだけ言うと、ささっと間を抜け、ぴょんと飛び跳ねて去っていった。
「えっと、にゃんにゃんが魔人シルキィを撃破。その魔血魂を咥えてここにやってきました。」
「それを早く言え!全軍出撃、追撃じゃ!!!!」
追撃は出来る時にできるだけする。
黒の軍、白の軍は魔人が破れて総崩れした魔軍を追い立てていった。
「闇烏さん」
ミキが呼ぶとしゅたっと、横に現れる。
「自由都市の魔人の処へ。」
「こちらです。」
今度は自由都市の方へ移動した。
夜を過ぎ、昼になって自由都市の前線の一つに辿り着く。
魔人レイ。
雷の魔人がその暴虐を振るっていた。圧していた前線が、魔人一人の為に押し返された。
「おらあああああ!」
ミキは反省した。
主砲クラスの砲撃なんてしたから悪いのだと。
あそこまで吹き飛ばすつもりは無かった。
魔王の攻撃=無敵結界は剥げる。そう考えた方が良いと思った。
なので、ほんのちょっと、炎…いや火の矢でいいからぶち当てて無敵結界を剥いでしまおうと考えていた。
目の前で暴れる魔人レイに魔法シールド8枚で逃げ場を奪う。
「あっ?なんだ!?」
ゲートコネクト。
火の矢…
本体の美樹が放った無敵結界を壊すだけの火の矢。炎の矢を下回る手加減攻撃のための一撃がレイに放たれた。
魔法シールドのおかげで退路は無い。
その一撃は普通の魔法使いの撃つファイヤーレーザーの速度を上回り、残像からファイヤーレーザーを思わせるも、白い火のためにライトの様にも見えた。
無警戒だったレイが嫌な予感がして飛びのく…が、魔法シールドが邪魔をして回避できず脇腹に直撃した。
脇腹は抉れたが、血が飛び散らなかった。
火の熱により焼け、そのおかげで血が出なかったのだ。
もしも飛びのかねば、腹に大穴が空いていただろうか。
無敵結界は語るに及ばず、直撃直前で無に帰した。
「馬鹿な…」
ゲートは閉じ、にゃんにゃんが歩いてくる。
(ゲート経由なら攻撃OKと…)
なんだかダメダメな攻撃方法を思いついてしまった美樹であった。
「これで勝てる…
魔人さん魔人さん。降参しませんか?」
「っざけんな!にゃんにゃんが!」
降参しなかったようなので、にゃんにゃんVerファイヤーレーザー8本をお見舞いした。
「ぐぬぉおおお!」
数本外したがものの、直撃したファイヤーレーザーが彼を痛めつける。
ミキを睨み付けると、レイは戦略的撤退を開始。
「うわっ!?レイ様?」
レイは魔軍の中を逃げていく。
追いかけるミキ。
立ちふさがる魔軍を蹴散らし、レイを追う。
蹴散らされた中に魔物将軍が居たが、勿論気にせず蹴散らした。
「しつこいな、おらあああああ!!!」
雷で進路をふさぎつつ、ミキを攻撃。
特に防いでいなかったので直撃を食らうも、HPに余裕があるため追撃は継続された。
「くそっ!」
そうしているうちに町に入られ、レイを見失っていた。
「仕損じたか。」
ミキは今回はこれまでとしてCITYに帰還した。
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バボラを倒したランス一行は、シルキィが弱っているという事でリーザスへ移動するも、
シルキィ討伐済みに落胆し、ついでとばかりにハウゼルを襲撃、戦場で撃破した。
「出番がなかったから、がんばってみました。」
と、ルラ(ナギ)がそれなりに頑張っていたが、だいたいはランスが倒した。
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〇勇者が各地で暗躍しています。
〇魔人バボラが何もできず討ち取られました。
〇ピンクのにゃんにゃんが魔人シルキィ撃破
〇ピンクのにゃんにゃんが魔人レイを撃退
〇ランスが魔人ハウゼルを撃破
人類死滅率 17.8%→24.6%
シルキィは好きなんですけどね、なんでこうなってしまったのか。