魔王美樹の大冒険(旧:来水美樹が異世界召喚された件)   作:魔王信者

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04 魔導士ハーレム崩壊

 耐える必要が無いのに耐えていた。

 

 我慢する癖がついていたから我慢した。

 

 結局のところ、彼女の精神はまだ成長していない。

 

 破壊衝動を抑え込む。

 

 この抑圧事態が精神の成長を阻害していた。

 

 やって良いことと悪いことの判断がついていない子供と一緒だ。

 

 だが見よ。今や抑圧する必要のない精神は、新たなストレスを抑圧対象としているが、我慢すべきかどうかを悩み始めた。

 

 

 ああ、お前たちは一体何者に向かって、その負の感情をぶつけていると思っているのだ。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 実際の所、訓練無しではいられない。

 常識や言語を憶える傍ら、訓練を開始する。

 

 といっても基礎体力が中心だ。

 彼女は程よく手抜きをし、雑魚の彼と同じ様な進捗で回る。

 

 魔法の練習はできないが、書物やスクロールでの勉強は終えた。

 雑魚の彼は魔法の練習をしているが、周りと比べ、とても雑魚な強さだった。

 

 そうして学習・訓練、そしてイジメと生活は充実していたと言える。

 

 

 

 

 聖暦1792年(異世界の暦) LP0004年(異世界の暦)

 新年を迎える。

 

 召喚されて約2ヶ月後の事だ。

 

 その日、勇者の一人が自殺した。

 

 彼女と同室の薬師だった。

 

 

 1月1日ともなれば異世界でも新年の祝い事となる。

 宗教国家たるこの国では特に重要となる新年を迎えるための儀式がある。

 

 お祝いなので彼女も心持ち期待していたイベントではあった。

 もちろんご飯が豪勢になるからという以外には無い。

 

 そんな祝い事をしているとき、自分たちが住んでいる学び舎の上から一人の女性が飛び降りた。

 

 祝いの席は一転惨劇となり、急遽事態の掌握を始めた。

 

 

 のこりの同室の3人は呼び出され、取り調べが行われた。

「彼女が飛び降りた理由について心当たりはありませんか?」

 

 取り調べは老司祭であり、いつも常識を教えてくれる教師だ。

 

「どうして、こんなことに。」

 

 悲嘆する彼女だが、司祭は語り出すまで根気よく待った。

 

「心当たりは良く分かりません。でも、魔導士の彼と一緒に行動する事が多かったかなって。」

 

「なるほど。では飛び降りた日の朝はどうでしたか?」

 

「わからないです。なんで、あんな事になったのか。普段と変わり無かったのに。」

 

 普段と変わりなく、何時ものように暗い顔をしていた。

 

 常に暗かった。

 

 そんな事を司祭に聞き出された。

 

 それで彼女への尋問は終わり。

 

「はぁ…早く帰りたいよぉ。健太郎くん…心配してるだろうなぁ。」

 

 

 

 結局、彼女はよく分からなかったのだが住処が変わった。

 

 光戦士グループはそのまま。

 聖女グループは修道院の方へ。

 魔導士は単独で魔術師の学院へ。

 B級連合は学院へ。

 残りの私たちと、魔導士グループの残りは、廃校していた跡地へ移った。

 

 イジメとグループを把握し、隔離することで対処したのだ。

 

 彼女にしてみれば、ワケが分からなかった。

 

「ねえねえ、いったいなんでこんな風に分けられたの?」

 何時ものように雑魚の彼に聞いた。

 

「え、聞いてないのか?」

「聞いてない。」

 

 よくよく考えれば同室で、特に会話する様な仲でも無い。

 彼女はずっと悲嘆していたから説明もおざなりで、同室の連携も無いから情報が来ない。

 

「…自殺した理由はほぼ、イジメが原因だ。」

「いじめ?」

 

 そもそもだが、彼女はイジメをイジメと理解していなかった。

 困ったなぁ。

 程度の問題だったからだ。

 

 度し難いほどのイジメも彼女にすれば耐え易き事象にすぎない。

 セクハラも適度に回避できるように成長してしまった。

 

 きっとスカートをめくられてもいきなり吹き飛ばすとか、そういう事は無くなっただろうし、そもそも、めくられない様に動けるようになった。

 

「まあ、多分だが本命はあの魔導士の彼に強引にやられてたんだろう。だからこそ、彼から、彼女らが引き剥がされた。」

 彼はやりすぎたのだ。

 その下地も固まる前に手を出しまくり、最悪の事態を引き起こしてしまった。

 

「そんな、彼がイジメていたんだ。いじめって何かわからないけど、ひどいことだったんだね。」

「おまっ。なんでわからないのか分からん。」

 

 雑魚の彼は呆れたが、まあ、天然な彼女のこと。仕方ないと納得した。

 

 

 

 移動に結局一ヶ月もかかり、全員が顔合わせ出来たのが今日となる。

 全員に個室が与えられ、男女入り混じりなのでそれなりのルールが敷かれる。

 

「じゃあ、一人一人自己紹介する?」

「いや、今更自己紹介するまでも無いんじゃない?」

 彼女にとっては必要だった。

 

 同室の彼女らと雑魚の人は知っていたが。ソレ以外は分からなかった。

 

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考える→雑魚の人

 

(確かアキさんだったかな。細くて背の低い彼。勿論それでも私より背が高い。)

 

考える→男の人1

 

(名前が思い出せない。でも確か獣使い。

 アキさんがケモナーとか言ってた。だからきっと獣使い。)

 残念、そっちがシーフだ。

 

考える→男の人2

 

(同じく名前が思い出せない。シーフだったかな?)

 こちらが獣使いである。

 

考える→同室の子1

 

(レンジャーのユウさん。ちょっと背の高い茶髪だった女の子。3ヶ月も経ったので根元が黒い髪)

 

考える→同室の子2

 

(召喚士のソラさん。漢字で空って書くんだけど、実は違う読み方らしい。でも恥ずかしいのでソラでいいみたい。)

 アップルと読みます。

 

考える→他の子1

 

(魔導士グループだった、錬金術師の子。名前は分からない!)

 

聞いてみる→錬金術師

 

「あのぉ、名前なんでしたっけ。」

「え、今更聞くの?失礼な…。

 私はヒロ。そっちの彼女はシズカよ。ちゃんと憶えてね。」

「ありがとう!」

 

考える→シズカ

 

(さっき教えてもらった魔導士グループだった彼女はシズカさんだね。)

 

見る→ヒロ 錬金術師

 

 錬金術師の恰好なのだろうか、前身茶色いだぼだぼでポケットの多い服を着ている。

 

見る→シズカ 祈祷師

 

 白いフード付きの貫頭衣を着ている。真っ白いイメージだ。

 

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「男が3人で女が5人。やや女性が多いって感じか。無難に男女分けたほうが良いな。風呂場は無いから水浴びは日毎でいいか。」

「うえー毎日浴びたいんだけど。」

「周り雪降ってて凍えちゃうよ?お湯沸かして体拭くぐらいが限度じゃない?」

「じゃあ冬は各自って事で。」

「水浴びできるようになったらまた区画を分けましょう。」

「次に…」

 

 このようにそれぞれ生活を開始したが、それでも手伝いをする神官や小間使いはいる。

 全員の部屋について掃除する掃除婦、食事を提供する料理人、護衛/監視といった感じだ。

 

 新しい生活になり、イジメられることに起因するストレスが無くなった。

 異世界召喚によるストレスが残っているが、それはどうしようもない現実であり、目を背ければどうなるかわからない。

 皆そこまで子供ではない。

 次を見据えて頑張るしか無い。

 

 

 すなわち勇者を受け入れるということに。

 

 

 

 

 

 

 




美樹ちゃんの性格がなんかちがうな?と思うかと思いますが、気にしないでください。
いろいろ融合して変になった。
と、思っていただければ幸いです。

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