もしルルーシュが現実の日本にいたら 作:右翼と左翼は自演仲間です
俺は田中正晴(たなかまさはる)。主に歩行困難な高齢者向けの義足や靴を製作しているベンチャー企業の社長である。と言っても社員は俺1人で売り上げは芳しくなく、主に実家の農業と林業の手伝いで生活費を稼いでいる。
この生活を続ける中で俺は日に日に不安を増していた。農協が種子の値段を上げている。そして近所のスーパーが中国や東南アジアの安い農作物を売りに出している。日本の農作物だとしても、大企業タケナカックスのような広い土地に遺伝子組み換え種を植え農薬をばら撒くことで人件費を抑えつつ虫害も抑える、というような安い商品が売れている。このままでは競争に負けて農業で稼げなくなるかもしれない。実際売り上げは年々落ちている。人口減や高齢化も売り上げ減の原因かもしれないが、それ以上に競争力で負けていると感じている。今は安全性や新鮮さを売りにして買ってもらっているが、それがどこまで通じるか。テレビでは東北産の放射能を気にするなと言っている。養殖や農薬や遺伝子組み換えも安全基準を満たしているから気にするなと言っている。ふつうの人々はテレビに流されるだろう。俺が農薬の危険性を訴えても「お前は誰だよ偉そうに」「素人が医者や化学者より正しいのか」と返されるのがオチだろう。大学教授の名前には勝てない。
ベンチャー企業の方も感触がよくない。俺が特許を取って売り出した義足は1年ほどでそこそこ有名になったのだが、いよいよ大量生産かという段階で大企業が似たような商品を作り、それも特許が通ってしまった。だから「こちらの特許があるからライセンス料を払え」と言い辛い。義足の細かい技術ではこちらが勝っているが、消費者はオンボロなベンチャー企業よりも大企業の商品を評価するだろう。マーケティング戦略、商品を美しく見せる能力が違いすぎる。実際ネットの口コミでは俺の商品にほぼ評価がなく大企業の商品にたくさんの好評価とレビューがついている。
能力に自信があるならベンチャーをやめて大企業に入れば、と言ってくる友人もいるが、俺は株式会社が嫌いなんだ。なぜ資本家などという自分の技術がない連中に俺の成果を貢がなければならないのか。しかも東草のように役員や投資家が散々儲けておきながら会社は借金だらけで倒産寸前の企業が5割くらいだと聞く。5割という情報に信憑性はないが俺にとっては資本家という連中も同じくらい信憑性がないから、やはり大企業では働きたくない。
それに俺は人の役に立つ仕事がしたいのだ。ベンチャーで義足を作ったのも高齢社会の日本で歩けない老人の無念を晴らしてあげたいと思ったからだ。金目当てではない。だから大企業が俺の技術を盗んでもそこまで怒らなかった。
しかしなんだこの日本は。投資家、政治家とは何なのだ。能力がない癖に日本の税金を吸い取るばかりでなく日本に多額の借金を負わせて外国に持ち出し、その金で自分達だけ豪遊する。郵便貯金や年金は勝手に使って消えた年金などと言う。車の大量生産や都市開発で自然を壊し海を汚し原発事故でも自然破壊など気にせずまだまだ原発を増やそうとしている。
投資家や政治家は何故か一般人であるタケナカックスの社長を国家戦略特区の代表委員に据えて「農薬で害虫駆除」「ワクチンでウィルス撲滅」「放射線でガン治療」などと言っているが、日本の害虫、ウィルス、ガンとはまさに投資家と政治家なのではないだろうか。あげく政治家は国会で経済問題を棚上げにし戦争するぞ憲法変えるぞと言っている。メディアも同じく経済問題は扱わない。そしてネットでは政治家の犬らしき連中が「経済は上手く行っている」「戦争やれ」などとほざいている。経済が上手く行ってるなら戦争はいらないだろう。むしろネットで経済に対する不安が議論される度に、戦争を煽って経済問題を隠しているように感じる。いやそうなのだろう。本当にどうしようもない畜生である。
このような鬱屈とした思いをかかえて過ごしていた所、俺は不意に不思議な力を手に入れてしまった。マンガ・アニメのキャラを自由にこの現実に召喚また返還できるというものだ。
本当に何の前触れもなく、朝目覚めたらできるようになっていたのだ。俺はそれはもうはっちゃけた。エッチな女の子を探して召喚し、にゃんにゃんする毎日。しかし女にかまけて生活が疎かになってはならない。むしろこの能力を生かし安定した快適な生活を手に入れるべきだろう。
まずは能力の詳細を明らかにするべきだ。そう思い、俺は色んなキャラを召喚して調べた。
言語は設定があれば設定に従うがなければ日本語。服や小道具は持ち込めるが大きすぎると不可能。超能力や非現実的な怪力は使えなくなる。非現実的な科学知識の再現も不可能。呪いは消えるが怪我は消えない。超能力や呪いで若い体を再現している老人は若い体で召喚される。その後の老いの速度は不明。死者が五体満足なゾンビ状態で動いている場合は正常な肉体で召喚される。人間に擬態した妖怪等は人間の体で召喚され、その後現実世界では妖怪の体に戻れない。
キャラの姿や記憶は俺が引き出した年代に準拠する。召喚できるキャラの数はおそらく無制限だが、一作品に限る。しかしキャラを召喚した瞬間にそのマンガ・アニメは現実から消えるので、多くのキャラを出す場合は同時に出さなければならない。またアニメ・マンガは完全に消えるわけではなく名前や顔が少し変わった物が代わりに置かれ、人々の記憶も代わりの作品に置き換わるが、俺の記憶のみ消える以前の作品も残る。召喚したキャラを元の世界に戻そうと俺が念じれば戻るが、その時は全キャラが物語の世界に戻り、マンガ・アニメの名前も元通りになる。一度マンガ・アニメに戻したキャラをもう一度召喚する場合は前回の召喚の記憶を引き継がせることもできるし消すこともできる。ただしこのキャラは召喚された記憶を持ったまま元のアニメとは違う平行世界で生活しているらしく、この生活は原作を再現していないため原作のページを指定して召還するようなことはできない。
以上から俺は作戦を練った。俺の生活の質を上げつつ政治に対する鬱憤を晴らしてくれるキャラ。かわいい女の子がいればなおよい。というわけで俺の好きなコードギアスからルルーシュと女の子達を召還することにした。
思い浮かべるのは行政特区日本の会場。誤って日本人を皆殺しにしろとギアスをかけてしまったルルーシュ。それを嫌がるも従ってしまうユーフェミア。兄の帰りを待つナナリー。忍者兼メイドの咲世子。ルルーシュの記憶を無くしたシャーリー。実はルルーシュが好きなミレイ。ルルーシュの唯一の友リヴァル。ゼロに忠誠を誓うカレン。ここまではルルーシュを喜ばせ懐柔するために必要なキャラ。スザクはいらない。次にルルーシュは嫌がるが俺が楽しむために欲しいキャラ。ゼロの妻を自称するカグヤ。やさしい理系女子セシル。長身だけどかわいいモニカ。胸が大きいレイラ。
以上12人。それぞれのキャラを光が包み込むようにイメージする。そして同じ光を、俺の目の前に出し、世界を繋げる。
「さあ、来い!」
フッと一瞬で移動する。さあ来たぞ。かわいこちゃんとルルーシュが。
「なんだこの光? ユフィ! いや、その前にここはどこだ!」
「日本人を殺さないと……。えっ? ダ、ダメ! 私はなんてことを」
ルルーシュはユーフェミアを見つけた後、あたりを見回している。ユーフェミアはギアスが解けて自分の矛盾に焦ったか、しゃがみ込む。
「何が起こったのです!」
「カグヤ様!」
「ゼロ!」
カレンはゼロの護衛。咲世子はカグヤの護衛に急ぐ。
「え? お兄様? いえ、これは変声機の音」
「ナナちゃん!」
「会長!」
ミレイはナナリーの護衛。リヴァルはミレイの護衛。
「えっ、私どうして? どうして忘れてたの?」
「えっ? う、うわああああああ!」
「アーニャ! っと、ユーフェミア様!」
「ええっと、これはどういう現象?」
記憶を取り戻したシャーリーとアーニャ。アーニャは記憶の差が膨大過ぎたからか、頭を抱えて叫ぶ。モニカはアーニャにまず気付いたが、ユーフェミアを見つけてそちらの護衛に。セシルも控えめにユーフェミアの傍へ歩く。
「私は、一体……」
俺は最後に残ったレイラにそっと近づいていく。何となく。おっぱいデカいなこいつ。
ここは父親の所有するみかん畑。昼間で近くには誰もいない。ルルーシュ達はゼロ陣営、ナナリー陣営、ユーフェミア陣営、俺とレイラ、1人倒れたアーニャに別れ、互いに互いを警戒する。
「ゼロ、どうします? 何が起こったか分かりますか?」
「ゼロ、これは神根島の」
「似ているな」
「ユーフェミア様、何が起こったのでしょうか」
「分かりません。しかし以前、似たような経験があります」
「そうなのですか?」
ゼロの仮面を被ったルルーシュ、カレン、ユーフェミアは瞬間移動の経験があるため、それと重ねる。よって他の者よりは冷静だ。
と、ここでナナリー陣営に変化が。
「あれ? 目が……」
ナナリーの大きな目がぱっちり開いたのだ。ギアスの呪いは解けているので自然とこうなる。
「ユフィ姉様!」
「姉様だと? 誰だ貴様」
「ナナリー! 目が開いたのですね!」
「ユーフェミア様?」
ユーフェミアが目の開いたナナリーに気付き、笑顔で駆け寄る。護衛のモニカも後を追う。ルルーシュもビクンとしてナナリーの方を見たが、踏みとどまった。ゼロの仮面をつけているからね。
こうしてナナリー陣営にユーフェミア陣営も加わった。そろそろいいだろう。
「聞いてくれ。実は君達をここに呼んだのは俺なんだ。プリーズリッスン、サムワンコールユーヒアー、ザッツミー」
ゼロ陣営及びナナリーは日本語が分かるが、他は分からないだろうから慣れない英語を話す。彼等にとってはブリタニア語だろうけど。
「ゼロ。俺はブリタニア語が苦手なんだ。日本語で話すから通訳してくれ」
「その前に俺の質問に答えろ。貴様は誰だ!」
ルルーシュがゼロ仮面の片目をカシャッと開けて言う。しかしギアスにはかからない。もっとも、その方が話が早いからかかったフリをして話すが。
「俺は田中正晴。主に歩行困難な高齢者向けの義足や靴を製作しているベンチャー企業の社長だ。と言っても社員は俺1人で売り上げが芳しくないため、主に実家の農業と林業の手伝いで生活費を稼いでいる」
「お前が私達をここに呼んだと言ったな。どういう意味だ」
「お前達を一瞬にしてここへ移動させた。俺にはそういう能力がある」
「何故私達を移動させた」
「俺には目的がある。その目的に協力してもらうため、お前達が必要だった」
「その目的はなんだ」
おもしろいように話が進むな。やはりギアスにかかったフリをしてよかった。
「俺は自身の生活に不満を持っている。技術は金にならず、農業は追い詰められ、政治には期待できない。この状況を打破するためにはこの国、いや世界ごと変える必要があるのかもしれない。それをできる頭脳がお前にはある」
「……私個人の頭脳か? では他の者達は何故呼んだ?」
「ユーフェミア、ナナリー、ミレイ、カレン、リヴァル、咲世子はお前の日常に必要だからだ」
ここでルルーシュがしまったというような顔をする。自分の正体につながる話だからだろう。
「他は個人的な趣味だな」
「お前は先ほど、技術と農業の話をしたな? 日本はそんな悠長なことを言ってられる場所ではないだろう。もしやここは日本以外の場所か?」
「厳密には、お前の住んでいた日本ではない。ここは別世界の日本。平行世界の日本と考えてもらいたい」
「なんだと!?」
驚くルルーシュ。カレンやカグヤは話半分で疑っている感じだが、ルルーシュにとっては俺はギアスで操られているはずなので真実味が増すことになる。
「おいゼロ! 日本語で話をするな! こちらにも分かるようにブリタニア語を使え!」
モニカがブリタニア語で叫ぶ。怒って早口なので聞き取りづらい。
「あっ、私が通訳しますね。抜けがあるかもしれませんが。ゼロ、少し時間をください。彼女たちにも分かるように通訳しますから」
「いいだろう」
「そちらの、田中さんも、いいですか?」
「構わない。むしろ是非してもらいたい。ゼロは通訳してくれなさそうだしな」
「なっ、貴様!」
と、ゼロが驚いている。俺がナナリーと会話したのがそんなに不満か? ……いや、俺がギアスにかかってないと気付いたのか? ルルーシュのギアスには特有の記憶の欠陥が出るため、もしギアスにかかっていたら、ゼロは通訳してくれなさそうだしな、などとは言えないだろうから。
「ゼロ、俺の目的に協力してくれなどと急な頼みで申し訳ない。しかしお前は俺に貸しがあるはずだ」
ここで先手を取ってみる。
「貸しだと?」
「ああ。ユーフェミアは非常に危うかった。俺は悲劇を未然に防いだ」
「き、貴様! どこまで!」
「俺はお前の視点でお前の世界を見ることができた。そういう能力なんだ」
「なんだとっ」
「ゼロ! 拘束しますか!」
ゼロが不利と感じたか、カレンがルルーシュを庇うように前に出る。
「待てカレン。貴様は私に貸しを作っていると言ったな。では私がその貸しを返したとしよう。その後に私達はどうなる?」
「好きにすればいい。望むなら元の世界に戻そう」
「信用ならんな」
「ならば監視をつけるといい。俺が裏切ればいつでも殺せるように」
「お前の力があれば、監視などいつでも移動させられるのではないか?」
「正直に言えばそうだ。つまり俺を拘束する方法はないな」
完全自立型の機械で拘束することはできるが、それもたぶん誰かを召還すればすぐさま壊せる。マンガ世界には身長50mとかもいるしな。
「ふん、どうだかな。ひとまず話は分かった。いくつかの確約が得られるならば取引に応じてやってもいい」
「そうか。よろしく頼む」
「まだ受けると決まったわけではないぞ。この世界の情報をより多く得てからだ。その間、こちらの者達、いや、そちらのユーフェミア皇女殿下達含めて誰一人傷つけることは許さん」
「いいだろう。そもそもそんな気はない。たとえお前が取引を拒否したとしてもな」
「どうだかな」
「とりあえず俺の部屋に来てもらおう。パソコンで好きなだけ検索してくれ」
「いいだろう」
俺はナナリーの方を見る。ナナリーは翻訳した英語をユーフェミア等に話している。話し終わった所、こちらを見る。
「通訳は終わりました。ユフィ姉……、ユーフェミア様はゼロに任せると言っています」
「そうか」
「あの、どうしてゼロが、私やミレイさん達のことを気にかけてるんです?」
「……ゼロ本人に聞いてくれ。きみになら話すだろう。いや、ユーフェミアに聞いてもいいぞ」
「待て!」
と、ここでルルーシュから待ったが。
「ナナリーには後で私から言う。場所を用意しておけ」
「いいだろう。ただし、ユーフェミアが先に喋ってしまうかもしれんがな」