もしルルーシュが現実の日本にいたら 作:右翼と左翼は自演仲間です
「ゼロ、あの者を信用するのですか? 早く帰らなければ行政特区に集まった日本人達に危険が」
カグヤがゼロに言う。
「そうですね。できるだけ早く戻り、現地の混乱を鎮めるべきでしょう。おい、田中と言ったか」
「ああ。なんだ?」
「行政特区の成功は先ほど言った俺がお前に協力する条件の1つだ。俺とカグヤ様だけでも今すぐ現地に戻してくれ。……ユーフェミア殿下も、いるべきだろうな」
ルルーシュは濁すような言い方をする。カグヤ達の手前ユーフェミアを無視できないが、ギアスの問題があるからな。
「ユーフェミアの呪いはこの世界では解ける。しかし元の世界に戻った途端、再発する可能性が高い。よって戻すことは勧めない」
「ぐっ」
「ゼロ? 呪いとは何のことです?」
「何と言いますか、トラウマのような物です。発作的に発動してしまう。それは行政特区日本を確実に破壊するものです。いえ、それ以上の悲劇が」
「トラウマ? よく分かりませんが、ゼロがそう言うのなら」
「俺の能力はお前達を一度にここに呼び出すが、次に返すときは全員が同時に帰ってしまう。よってユーフェミアも一旦そちらの世界に戻る。しかしすぐさまこちらに戻す。呪いが全てを破壊する前にな」
「……すぐさま戻さずに、10秒くれ。呪いの状態を確かめたい。それと、元の世界に戻す時は、どこに戻るんだ? 移動前と同じ場所か?」
「ああ、同じ場所だ」
「少し変えられないのか?」
「少しだけなら変えられる。5mくらいかな? いや、待て。全員をゼロがいた場所に動かすこともできそうだ。全員じゃなくて何人かだけでもいい。同様にナナリー、モニカ、レイラ、その他の誰かがいた場所に動かすこともできる。レイラはEUの軍人で先ほどまでEUにいた。ナナリー及びモニカがいた場所は言うまでもないだろう」
全員を元の場所に戻そうと意識すれば、それぞれに必要な座標が何となく頭に浮かぶ。その座標を認識できれば別の人だろうと移動させられるって感じだな。
「そうか。ならば俺とユーフェミアとカレンをアッシュフォード学園に移してくれ。アッシュフォード学園なら、30秒は平気だろう。近くに日本人がいないだろうからな。30秒してからユーフェミアと俺をもう一度ここに呼んでくれ。いや待て。俺が合図をしたら戻してくれ。合図は襟首をこうひっかくようなポーズだ」
ルルーシュはきざったらしいポーズをする。
「それはできない。一度ここに召喚したら、俺はその世界の住人と視界を共有することができなくなる」
「何?」
世界がアニメの内容と変わるため視点も何もない、というのが正しいが。
「ちっ。まあいいだろう。では30秒後にもう一度召喚してくれ。それともう1つ。ナイト・オブ・トゥエルブ及びナイト・オブ・シックスは……。EUにでも送ってくれ。皇帝に報告されては厄介なことになるし、暴れられても面倒だ。できればあいつらの通信機を壊しておきたいが、EUであれば通信は届かんだろうからまあいいか。それで、残った女のことを、俺は知らないのだが」
ルルーシュは仮面越しにセシルを見る。
「彼女はセシル。ブリタニアの技術者だ。ランスロットを作った特派の人間で普段はアッシュフォード学園の近くにいる。気性は穏やかで日本人への偏見もない。スザクに勉強を教えているくらいだしな」
「ほう。そうか。ならばアッシュフォード学園に送ってくれ」
「分かった」
ルルーシュは少し思案する。
「……ところでお前はその能力を何度でも使えるのか? お前がこちらに来ることはできるか?」
「何度でも使える。そちらの世界へは行けるかもしれんが、それをやるとこの世界に帰って来れなくなると感じているからやりたくない」
「そうか。……先にこいつの能力でシャルルを」
「すまないが、お前の世界の人間は、もうここにいる12人しか召喚できない。抱きつくように密接した場合は別だが」
もうアニメを見て座標を指定できないからな。ここにいる12人はパスが繋がってるらしく何度でも呼び出せるが。
「何? そういうことは先に言え!」
「すまないな」
「ちっ。いや、これでよかったのかもしれんな。あいつは私自らの手で屠るべきだ」
ルルーシュは少し思案する。
「よし。では私からは以上だ。カグヤ様は何かありますか?」
「聞きたいことは山ほどありますが、今はゼロに任せます」
「ありがとうございます。そちらは?」
ルルーシュはナナリーの方を見る。ナナリーはまだ通訳の途中。そして今、終わった。
モニカが怒ってEUではなくブリタニアに戻せと言っている。そりゃそうだ。ユーフェミアはゼロに任せるとしか言わない。そのことにモニカはさらに怒る。何故敵を信用するのかと。アッシュフォード学園の面々は怒りはしないが困ったなあという感じだ。
ナナリーはこちらを見る。
「ユーフェミア様は、ゼロに任せると言っています。ところで、あの、私のお兄様がご無事かお聞きしたいのですが」
「きみの兄は無事だ」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
以上。ということで動いてもらおう。
「では元の世界に返すぞ。3、2、1」
モニカとアーニャをレイラの下へ。ルルーシュとセシルとカレンをナナリーの下へ。他は弄らずに返す。
そして30秒。ルルーシュとユーフェミアを戻す。
「いや、ダメ。殺したくないのに。でも殺したい。……また私は、こんなことを。呪い、ということでしょうか」
「やはりダメだったか。しかし最初よりも抵抗できていた」
やはり元の世界に戻るとユーフェミアにかかっていたギアスが再発するようだ。しかし抵抗できる時間は伸びたらしい。何度も召喚と返還を繰り返せばもっと伸びるかもしれないな。
「ルルーシュ、私、どうなってしまったのでしょう」
「先ほど話したのを覚えているか? 俺が命じれば君の意志に関係なく従ってしまうという。ユフィにはそういう呪いがかかっているんだ」
「ルルーシュが命じたの? その、日本人を……」
「ああ。日本人を皆殺しにしろと」
「わざとでないことは分かっていますけど、どうしてそんな命令に?」
「口を滑らしたのは確かだ。しかし、俺は呪いをかけるつもりはなかった。俺の意志に反して呪いが発動してしまったんだ」
「そうですか」
沈むルルーシュとユーフェミア。しかしルルーシュはキリと顔を上げる。
「しかし、落ち込んでいる暇はない。ユフィがいなければブリタニア軍が暴れ出し武器を持たない日本人が虐殺される可能性もある」
「そんな……」
「俺だけ式典に戻り、特区は成立したと発表しておく。ユフィは疲れから倒れたことにしよう。セシルを通してコーネリアに伝えれば、幾分疑われにくくなるだろう。スザクはユフィの騎士でセシルは特派の人間だからな。時間稼ぎにしかならんだろうが、その間にユフィにはギアスに対する抵抗を高めてもらう。何とかコーネリアを騙し通せるくらいには」
「大丈夫かしら。お姉様は私が倒れたなんて知ったら」
「頑張って説得してくれ。おそらく君にしかできないことだ」
「私に、しか……。そうですね。やってみます」
ルルーシュは俺の方を見る。
「ミレイに事情を説明し、ユフィは学園の地下にある隠し部屋でギアスに抗う訓練を受けてもらう。訓練方法は、とりあえず召喚と返還を繰り返してみてくれ。そしてユフィの反応を見ながら召喚までの時間を延ばしてもらう。と言ってもユフィの記憶は曖昧になるだろうから、ミレイに時間の計測を手伝ってもらう。では俺達を再びアッシュフォード学園に戻してくれ。次にユフィを召喚するのは30秒後。俺を召喚するのは、4時間後にしてくれ。ぴったり4時間だぞ」
「分かった。しかしお前に伝えるべきことがある」
「なんだ?」
「V.V.という男がC.C.とお前とナナリーを狙っている。V.V.はギアス能力者を多数従えており、現在特区日本の近くにいるはずだが、いずれアッシュフォード学園にも行くだろう。安全のためにナナリーはここに呼ぶべきと考えるが」
「そういうことは先に言え!」
叫ぶルルーシュ。しばし固まった後、何やら考える。
「その情報、確かなんだろうな?」
「ああ。これはお前の世界の住人と視点が繋がっている時に確認した情報だ」
「V.V.に従う人間のギアス能力は分かるか?」
「1人なら。自分の周囲最大1キロくらいまでにいる人間の体感時間を止める能力者だ。しかし体感時間を止める間は自身の心臓も止まってしまうため、長時間の使用はできない。現在14歳くらいで栗色の髪の毛の男」
「くっ。たった1人でその厄介さか。ならばナナリーはここに預ける。アッシュフォード学園が危険ならユフィを訓練する場所も変えるべきか。……カレンの実家にするか? 確かシュタットフェルトはユーロブリタニアの貴族。コーネリアも迂闊に手を出せんはずだ。何よりカレンがハーフであり近接戦闘に優れるというのが訓練にちょうどいい。よし。一旦学園に戻り、カレンとミレイにその旨を伝えてくる。シャーリー達も移動させるべきか? どうなんだV.V.というやつは。目的のためには人質も使うか?」
「ああ。間違いなく拷問され人質にされる」
「そうか。ならば生徒会メンバーだけでも移動させるべきだな。必要となれば、彼等にも俺達の事情を知らせよう」
「いっそEUに動かすか? レイラの家ならばこれくらいの人数簡単だ」
「レイラという女は信用できるのか?」
「ああ。それに信用できないならギアスをかければいいし」
「……確かにEUに安全な拠点があれば便利だが、リスクが大きすぎる。レイラがブリタニアに俺たちを売るリスクが」
「俺を信じろ、と言ってもうさんくさいだろうからな。今から行って確かめてこい。ナナリーもそちらに送る」
「おい待て!」
ルルーシュの返事を待たず、ルルーシュとユーフェミアをレイラの近くへ移動させる。さらにはナナリー、ミレイ、リヴァル、シャーリー、カレンを召還する。
「きゃっ」
「またかよ」
シャーリーやリヴァルは尻餅をつくが、カレンは軽く着地してこちらを睨む。
「どういうこと? ゼロが日本に戻るんじゃなかったの? ゼロはどこ?」
しかし返答はせずにレイラの元へ送る。
さて、ルルーシュはレイラを上手く説得できるだろうか。モニカは暴れてないだろうか。
3分くらい待ち、ルルーシュ、ナナリー、ユーフェミアをこちらに呼ぶ。
「日本人を殺、しちゃ、ダメ!」
「ちっ。好き勝手してくれる」
「きゃっ」
ユーフェミアがまだ抵抗している感じだった。いきなり3分も待てるようになったのか?
「どうだったゼロ。ユーフェミアの様子は」
「何とか抵抗している感じだった。カレンのことをブリタニア人だと思い込むことでギアスに抗っている感じだったがな。それよりも! どういうつもりだ! いきなりEUに送るなど! それもラウンズの目の前に!」
この反応は、モニカが何かしたのか? アーニャはまだ動けないだろうし。
「モニカが何かやったか?」
「ああ、蹴り飛ばされた。咄嗟に止めろとギアスを使ってしまった。というより勝手にかかった。俺のギアスは常時使用状態になっているみたいだ」
そう言えばルルーシュの仮面が一部壊れて、左目の近くが見えている。そこから若干だが素の声も聞こえる。
「あ、あの、お兄様なのですか?」
そしてナナリーがルルーシュに尋ねる。目元と声でバレたのだろう。
ルルーシュは「はあ」とため息をつき、観念したように仮面を外す。
「そうだよ。俺がゼロだ。ナナリー」
「お兄様! で、でも、ゼロはクロヴィスお兄様を! あの、冗談なのですよね? ゼロのフリをしていたとか」
「違う。俺がゼロだったんだ」
「そんな……」
ナナリーはショックを受けたようだ。ルルーシュも泣きそうな顔になっている。ルルーシュはナナリーに拒絶されることが何よりも辛いはずだ。
ルルーシュは不意に拳をギュッと握る。
「ナナリー、今は時間がないんだ」
「分かっています。行政特区のことですよね。ユフィ姉様は、こんな状態ですし」
「ああ。俺だけでも現場で指揮を執らなければ」
ルルーシュはユーフェミアの方を見る。
「ユフィ、EUでギアス……、君にかかった呪いの名はギアスと言うんだが、それに打ち勝つ訓練をしてくれ。ギアスを攻略し次第、俺の元へ来て欲しい」
「はい。残念ですが、今の状態では表に顔を出すことはできませんね」
「ユフィ姉様は知っていたのですか? お兄様がゼロだって」
「ええ。ごめんねナナリー。黙っていて」
「もう。酷いです。お兄様もお姉様も」
ナナリーは目に涙を浮かべながら顔を逸らした。そのことに辛そうな表情になるルルーシュとユーフェミア。
「ルルーシュ。新しい仮面を手に入れるために学園に戻すぞ。その場合、セシルの近くに瞬間移動することになるが」
「構わん。それと、カレンを日本に呼んでくれ。もしもの時は紅蓮の力が必要になる。もう1つ。EUにいるラウンズをお前の力で無力化してもらいたい。ここに呼んでもいい。少なくともナナリーに手が届く範囲には来させるな」
「いいだろう。ただし俺1人では手に余るため咲世子を借りるぞ」
「咲世子さん? 何故だ?」
「白兵戦のプロだからだよ」
「バカな……」
そうしてルルーシュをセシルの下へ、ナナリーとユーフェミアをレイラの下へ送る。
そしてすぐさまカレンをここに呼んでからルルーシュの下へ送る。
さらにはアーニャ、モニカ、咲世子をここへ呼ぶ。
「ゼ、ゼロ。ん? また移動か! 貴様!」
「ううっ。頭が、痛い」
「またこの光」
モニカが俺の方へ突っ込んできた。アーニャはまだ苦しそう。咲世子は警戒しながらこちらを見ている。
モニカは俺の近くで飛び上がり、太ももを見せながら俺の顔を蹴り上げようとする。しかし足が届かない。
「ぐっ、体が……」
蹴りは豪快に空振り。着地も失敗。尻餅をつく。
「ふっふっふ」
この世界では、非現実的な怪力やスピードが使えない。より厳密に言うと、筋力は見た目の筋肉量に縛られる。手足の細いアニメキャラは運動能力がすごく落ちるのだ。
「くそっ! 何をした!」
「ふっふっふ。クランプのキャラは細すぎるということ」
モニカは再び立ち上がり、ハイキック。女性としてはキレのある動きだが、現実的でしかない。一般農民の俺でも腕に力を入れれば受け止められるし、タックルで倒せる。
「ぐっ、このっ! 離せ!」
俺はモニカを押し倒し、絞め技をかけようとする。が、これは難しいな。体が恐ろしく柔らかい。アニメの絵が赤ちゃん肌みたいにプニプニだから筋肉もめちゃくちゃ柔らかいのかな。
しかし、この場には咲世子がいる。
「咲世子さん。この方を縄か何かで縛ってくれませんか? 事情は説明しますから」
「それはゼロの指示ですか?」
「はい。ゼロは無力化を指示しました」
「分かりました。とりあえず従っておきます」
「あそこの枝に縄を巻いてます。もしものために持ってきていたやつです」
咲世子は俺の指示に従い、縄でモニカを縛った。
ひとまずモニカの問題はこれでいいだろう。これからはユーフェミアの訓練だ。
「咲世子さんはゼロの下へ送ります。ラウンズを無力化した旨、ゼロに伝えてください」
「はい」
モニカとアーニャは、一瞬EUに送ってまたこっちに呼ぼう。ユーフェミア、ナナリーと一緒に。ルルーシュは仲介役をミレイにしたいらしいけど、俺はブリタニア語がしんどいからな。日本語を話せるナナリーの方がありがたい。
「日本人を、好きになります! ですから、殺、殺、殺したくありません! よ、よし。何とか正気を保てました。若干記憶が飛んでますけど」
おお、ユーフェミアが何か変な抗い方してる。でもさっきよりかなり安定してるぞ。この分なら案外早くギアスに勝てるかもね。ユーフェミアはアニメでもそこそこ抗ってたしこういう精神力が強いのかな。それとも愛するルルーシュやスザクが関わっているから早いのかな。ナナリーもルルーシュを止めたいとかそういう気持ちで父親のギアスを破ったしね。
「ナナリー。ユーフェミアはどれくらい耐えられた?」
「ずっとこんな調子でした。苦しそうに体を震わせていましたが、日本人を殺そうと動いたことはなかったです」
「そうか。よくなってるな」
ユーフェミアも耐えられてうれしそう。ただし額に汗びっちょりで肩で息をしているが。
「はあ、はあ、はあ。もう一度、お願いします」
ユーフェミアは苦しそうにこちらを見て言う。
「少し休憩しよう。疲労で倒れては訓練どころではない」
「いえ、大丈夫です。いけます」
「そうか。まあみかんでも食え」
「私はこんな所で立ち止まるわけにはいかないのです。私がいなくなったと知った兵達がどんな行動に出るか」
いい気合だ。危ういが、この気力が出ているうちにたくさん練習させた方がいいかもな。
「では、もう一度EUに戻そう。5分頑張ってみろ」
「はい!」
そして俺はユーフェミア達をEUに戻す。5分後、再び召喚する。
「す、す、好きだから、殺さない! 殺していいはずがない! はあ、はあ、はあ」
「ナナリー。どうだった?」
「先ほどよりもさらに安定していたと思います。2分くらいは私と会話もできました。言葉が途切れることもありましたけど」
「ほう。すごいな、ユーフェミアは」
「はい」
「ところでナナリーは大丈夫なのか? 目は」
「はい。元の世界に戻ると少し怖くなりますけど、開けることはできます。体が目の開け方を覚えている感じです」
「へー」
しかしアーニャはまだ苦しそうなんだよなあ。マニアンヌが何かやってるのかもしれないな。
そうしてこのようにユーフェミアの召喚を繰り返すこと15回。時間にして4時間。ようやくユーフェミアは元の世界でもふつうに話せるようになった。日本人を目の前にした状況や集中力を失った状態ではどうなるか分からないが、とりあえずコーネリアの目の前には出せる。
ルルーシュと約束した時間でもあるし、一度ルルーシュを呼んで成果を報告しよう。