もしルルーシュが現実の日本にいたら   作:右翼と左翼は自演仲間です

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V.V.捕獲

 アッシュフォード学園に戻ったルルーシュは、クラブハウスにある自室でゼロ仮面のスペアを手に取りながら、C.C.へ連絡を取っていた。

 

「無事か。ルルーシュ」

「ああ。だが想定外の事態が起こった」

「何があった? 急にお前の反応が消えていたが。今もこの近くにはいないな?」

「俺は学園にいる」

「学園だと?」

「ああ。俺、ナナリー、ユフィ、ミレイ、シャーリー、カレン、リヴァル、咲世子、それにカグヤとラウンズの2人、あと2人の女が謎のみかん畑に瞬間移動させられていた。それから数度瞬間移動させられ、先ほど学園に移動した。おそらく一人の男の仕業だ。神根島の瞬間移動に近かったが、ギアス関係者だと思うか?」

「私は知らないが、その可能性はあるな」

「知らないか。まあ期待していなかったさ。あいつは俺やお前とは別次元の存在に見えた」

「何だと?」

「何度でも瞬間移動できるらしい。EUのような距離でも一瞬だ。それに他人の視界を覗けるらしい。これらは既存のギアス能力を超えているように感じる。加えて、謎のみかん畑は次元の異なる場所にあるらしく、俺のギアスが使えなくなり、ユーフェミアやシャーリーにかかったギアスも消えていた」

「ほう」

 

 C.C.は興味ありげな反応をする。ルルーシュは少し不思議に感じた。しかし今はそれを問いただす余裕がない。

 

「だが、謎の男は表面上俺に協力的だった。今すぐ俺の邪魔をすることはないと思う。よって行政特区を先に片付ける」

「信用できるのか? その男は」

「はっきり言って信用できないが、対策を練るには情報が少なすぎる。下手に警戒して刺激しない方がいい。今はな」

「そうか。今、学園にいると言ったな。私が迎えに行くか?」

「ああ。頼む。来たついでにカレンも拾ってくれ。それに行政特区に関してだが、当初の俺を撃たせる計画は白紙撤回だ。ユーフェミアには別のギアスがかかってしまった」

「ふん、坊やが何か失敗したか?」

「というより、勝手にギアスが発動してしまったんだ。俺の意志とは関係なく」

「何!?」

「C.C.、貴様知っていたな。いずれ俺のギアスがこうなるということを」

 

 ルルーシュは珍しくC.C.に対して強い怒りをぶつける。C.C.は何も答えない。しかし聡明なルルーシュにとってここでの沈黙は肯定と同じだった。

 

「ふん、俺も分かっていたさ。ギアスがただ便利な能力ではないということくらい」

 

 マオのことがあるからな、と頭の中で付け加える。

 

「もう1つ。V.V.を知っているか?」

「何!? どこで知った。その名前を」

「知っているのだな。V.V.が俺とナナリー、それにお前を狙って行政特区に来ているらしい。本当だと思うか?」

「……ああ、近くにいる。さあ、私は答えたぞ。どこで知ったか言え。V.V.のことを」

「それも謎の男が言ったことだ。お前の反応を考えると、事実の可能性が高いのかもしれないな」

「うーむ。V.V.まで知っていたのか。気になるな、その男」

「魔女でも興味はあるんだな」

「ふざけたことを言うな。こんな時に」

 

 ルルーシュはその後V.V.の人柄や従えているギアス能力者についてC.C.に質問する。C.C.の返答は謎の男の発言とほぼ一致していた。以上からV.V.がナナリーや自分を狙っていると想定し、作戦を作り直すことになった。

 ユーフェミアが頑張ってギアスを解こうとしている。ルルーシュの心情としてユーフェミアの願いを叶えてやりたくはある。しかしV.V.が特区破壊を狙っている以上、穏便な終息は期待できない。何よりギアス能力者をここで始末しなければ、必ず厄介な壁として立ちはだかる。よって当初の予定通り、特区失敗を基点とした戦闘への流れを作り、その中でV.V.とギアス能力者を仕留めることにする。

 

 ルルーシュはC.C.の操るガウェインに乗り、行政特区の会場に戻ってくる。会場ではブリタニア軍が慌しく動き始めていた。一部ガウェインに銃口を向け、静止を促すナイトメアもある。しかしルルーシュは脅迫を無視して再び会場の上空まで来た。

 

「会場の諸君、ユーフェミア殿下は先程何者かの襲撃を受けた。私は事前に察知し、無事逃げ切れたが、ユーフェミア殿下は行方不明だ。会場周辺のブリタニア軍が浮き足立っているのはそのためだ。本日の特区は破綻または延期になるだろう。日本人の皆は黒の騎士団の誘導に従い、会場を出てもらいたい」

 

 その声に日本人たちが逃げ始める。ブリタニア兵は逆に逃がさんとして出口を塞いでいく。

 

「ゼロ! お前がユーフェミア様を攫ったのだろう!」

「こいつらを逃がすな! 人質だ!」

 

 ゼロの演説はまだ続く。

 

「襲撃者の侵入を許したのはブリタニア軍であり、内通者が存在する可能性が高い。よって今後、襲撃者の捜索は黒の騎士団が行う。ブリタニア軍は、私の指示に従って動くように。ユーフェミア殿下の身が大切ならば」

 

 その言葉にブリタニア兵はさらに怒る。

 

「ゼロ! やはり貴様がユーフェミア様を人質に!」

「脅しが通じると思うなよ! ここには何万もの人質がいるのだぞ!」

 

 その間にも押し寄せる日本人が会場の外へ逃げようとする。堪えきれず、ブリタニア兵の1人が日本人の足元を撃つ。それが契機になったか、日本人達は一斉に悲鳴を上げて、蜘蛛の子を散らすように駆け出す。

 

「おいバカ! 撃つな!」

 

 この場の兵を仕切るダールトンが叫ぶが、悲鳴に隠され届かない。いや、届いていても、日本人憎しで撃っている者がいる。逃がさないよう足元を狙ったものもあるが、殺す意図を持った銃撃もあった。銃声と悲鳴が木霊し、血塗れた日本人が次々と倒れていく。

 

「裏切ったな。ブリタニア軍め」

 

 ルルーシュはこの場に黒の騎士団を呼んだ。

 

 ダールトンの説得とスザク及び黒の騎士団の参戦でブリタニア軍の虐殺は止まった。しかし日本人には100を超える犠牲者が出ており行政特区日本の失敗は誰の目にも明らかだった。

 

 ゼロはダールトンにコーネリアと共同での襲撃犯捜索を提案した。ミーティングは三時間半後に予定。ダールトンはスザクにこの場に残りユーフェミア捜索をするよう命じ、自身はコーネリアに指示を仰ぐため政庁に戻った。

 ミーティングの時刻が来る前に、ルルーシュは田中の能力で田中の世界へ移動した。

 

「ここは……?」

「俺の部屋だ」

 

 そういう田中の付近にはユーフェミアとナナリーとセシルもいた。

 

「貴様、ナナリーを巻き込む気か?」

 

 ルルーシュが田中を睨む。

 

「お兄様、EUに行ったメンバーで日本語が話せるのは私だけでした。それにユフィ姉様の相手なら私が一番ふさわしいと思います」

「ナナリー、しかし」

「ルルーシュ! ナナリーが手伝ってくれたおかげで、会話なら問題なくできるようになりました! 褒めてあげてください! 立派な妹です!」

「えっ。あ、ああ。すごいじゃないかナナリー。それに、ユフィも。まさかこんなに早く打ち勝てるなんて」

 

 ルルーシュはユーフェミアの気迫に押され、田中への追求を止めた。

 

「っと、そうか。ユフィがそこまで回復しているなら、ビデオはいらないかもな」

「ビデオ?」

「ああ。実はV.V.を罠にかけるためにユフィに手伝ってもらおうと思っていたのだが」

「V.V.?」

 

 ルルーシュは簡単にV.V.について説明する。自分やナナリーを狙っている敵であり、ルルーシュや田中と同じような超能力が使えると。またルルーシュのギアスについてV.V.にバレているとも。田中はコードの能力を加えて教える。不死性とトラウマを呼び出し気絶させる能力。それにルルーシュのギアスを暴走させるために何かやった可能性についても。

 

「コード。恐ろしい力ですね」

「ああ。だが、対策を練る時間はあまりない。もうすぐコーネリアとゼロの会談が始まる。会談内容は誘拐されたユフィの捜査協力についてだ」

「ええっ? 私ですか? どうして誘拐されたことに?」

「その方が都合がよかったからだ」

「まあ、ルルーシュが言うのなら」

「俺の予想が正しければ、今頃V.V.はコーネリアの下へ行き俺のギアスについて説明しているはずだ。会談に行くなら俺の目を見ないようにしろ、とかな。オレンジの真相などそれっぽい証拠を見せて。コーネリアはある程度V.V.を信じるだろう。そして俺を生け捕りにし、ユフィの居場所を聞こうとする」

「でも私、別に誘拐されてませんからね」

「ああ。だからこの作戦はユフィがキーになる。無事であることをコーネリアに伝え、逆にV.V.を襲撃犯に仕立てあげる。ここでユフィのビデオ映像を使うつもりだったが、ふつうに会話できるならその方がいい。コーネリアを上手く説得してくれ。後はタイミングだ。V.V.は自身が超能力者であるのみならず他にも超能力者を従えているらしいからな。コーネリアでも生身では分が悪い。ナイトメアに騎乗した状態で、できるだけ早く、V.V.に攻撃するように仕向けるのがベストだ」

「なるほど。しかしルルーシュ、もう少し柔らかい言い方をしませんか? コーネリアお姉様はあなたにとってもお姉様なのですから」

「ふん、無理だな。あいつはブリタニアに染まった女だ」

「もう!」

 

 ルルーシュの予想通り、V.V.はコーネリアの下にいた。ヴィレッタ、バトレー、ジェレミア、スザク等の実例を見せ、ゼロが人の心を操るギアスという能力を持っていると説明した。その力でクロヴィスを殺し、ユーフェミアを誘拐したとも。またゼロの正体はルルーシュであるとも明かした。コーネリアは半信半疑だったが、一応ギアス対策にサーモグラフィや携帯カメラを利用した仮面を用意し、部下と共に被った。V.V.は用事があると言ってどこかへ出かけた。コーネリアはV.V.のことも怪しいと考えており、ダールトンと親衛隊に尾行させた。

 

 会談前、コーネリアとその部下はナイトメアに騎乗し行政特区の会場を目指していた。不意にランスロットがコーネリアに近づいてきた。

 

「止まれ、枢木スザク。何のようだ? もしや己の主も発見できぬままのこのこと現われたわけではあるまいな」

「ユーフェミア殿下を保護しました」

「何?」

 

 コーネリアとその部下はランスロットの後ろをついていく。そこには特派のコンテナ車があった。車の傍で、ユーフェミアがコーネリアに手を振っている。

 

「ユフィ。無事だったか」

「はい。お姉様」

 

 コーネリアはナイトメアから降りると、走って駆け寄り、抱きつく。

 

「馬鹿者が。どこで何をしていた」

「それなのですが、お姉様。V.V.という者に会いませんでしたか?」

「会った。会ったが、まさか」

「襲撃犯とはV.V.のことです。私は彼から逃げ、この特派に隠れていました」

「何? 詳しく聞かせろ」

 

 ユーフェミアはV.V.が超能力を使い、スザクを気絶させ、自分にも何らかのダメージを与えようとしたと説明した。その後、ユーフェミアはゼロに助けられ会場を脱出し、特派まで連れて行かれた。今まで無事であることを黙っていたのは、コーネリア以外のブリタニア兵が信用できなかったから。

 

「そうか。そんなことが……。しかし、ゼロは信用できるのか?」

「はい」

 

 ユーフェミアは満面の笑みで答える。コーネリアは拳骨を入れる。

 

「痛いです」

「バカが。テロリストを信用してどうする」

「で、でも、ゼロは……」

 

 ユーフェミアはゼロがルルーシュだと言っていいのかどうか悩む。

 

「もしや、ルルーシュだとでも?」

「えっ……」

 

 コーネリアは山勘でV.V.から聞いたことを言ってみたのだが、ユーフェミアの反応を見るに、当たっているらしい。コーネリアは頭を抱え、ため息をつく。

 

「何ということだ。ルルーシュがクロヴィスを。それに、ユフィは知っていたのだな。だからゼロを信用して特区などと」

「すみません。いたっ」

 

 コーネリアはもう一度ユーフェミアに拳骨を放った。

 

「お姉様。V.V.の狙いも、実はルルーシュとナナリーで」

「ナナリーも生きているのか?」

「はい」

「そうか。やつめ、用事とはナナリーを殺すことか?」

「えっ。V.V.は今、どこに!?」

「安心しろ。ダールトンに後をつけさせている」

「あの、V.V.は、恐ろしい超能力を使います! 早く助けに行かないと!」

「ふっ、ダールトンはお前に心配されるような男ではない。しかし、話は聞こう。超能力は厄介だ」

 

 コーネリアはユーフェミアと共に特派のコンテナ車に入る。コーネリアは入ってすぐ驚くことになった。巨大なテレビスクリーンにゼロの姿があったからだ。

 

「久しぶりだな、コーネリア」

 

 偉そうに言うゼロ。コーネリアは一睨みしてから、ため息をつく。

 

「お前がルルーシュだったとはな」

「何?」

 

 ユーフェミアはテレビから視線を逸らす。ルルーシュはそれで情報源を察した。

 

「チッ。私の正体などどうでもいい。今重要なのは襲撃者への対応だ」

「ルルーシュ、私はユフィとは違う。無罪とはいかんぞ」

「言ったはずだ。どうでもいいと。何故ならルルーシュは死んだ人間だからだ」

「わけの分からんことを」

「それで、どうする? V.V.の捕獲に協力するのかしないのか」

「お前の協力などいらん。ナナリーのためにどうしてもというのなら、考えてやらんでもないが」

「何?」

「ユフィ、超能力の内容を教えてくれ。愚弟の相手をしている暇はない」

「ユフィ、作戦変更だ。頭の固い騎士気取りでは超能力に対応できん」

 

 ルルーシュとコーネリア。プライドの高い2人は互いに譲らず。ユーフェミアを利用しこの場を有利に進めようとする。当てにされたユーフェミアは災難だ。彼女にとっては2人が協力してV.V.を捕まえることが一番。ここは情報の少ないコーネリアに先に話しかけることにする。

 

「お姉様、V.V.の超能力は、スザクを気絶させた精神系の技と、不死身の体があるそうです。他にも部下に超能力者がいて、自身の周囲1キロくらいの時間を止められる人もいるとか。ただし止まるのは人間や動物の思考だけで、機械は動き続けるそうです。また、時間停止中は心臓が止まるという弱点があり、長時間の使用はできないとか」

「……不死身に時間停止か。頭が痛くなるな。この世の物とは思えん」

「やはり頭の固い姉上には無理か。おい、コーネリア。V.V.の向かう先は検討がついている。黒の騎士団で対応するから邪魔だけはするなよ」

「愚弟には荷が重いということが分かったよ。だが、ダールトンと私と親衛隊がいれば十分だ。ユフィ、ナナリーはどこに?」

「学園の友人と、安全な場所へ移動しています。ただ、V.V.は学園に向かっているため、ナナリーのダミーを潜りこませているそうです」

「ふん、味な真似を」

「学園の詳細はこちらに」

 

 と、セシルがパソコンを手にやってきた。アッシュフォード学園の詳細な図面が3Dで見れる。

 

「お前は特派の」

「はい。セシル・クルーミーと申します」

 

 コーネリアはダールトンへ確認を取る。確かにV.V.を乗せた車はアッシュフォード学園の方向へ向かっているようだ。

 

「確認は取れた。こちらからダールトンに応援を送ろう」

「ありがとうございます。お姉様」

「ただし、私はこのままゼロの元へ行き、捕獲する!」

「そんな! どうして!」

 

 コーネリアをやっと説得できたと思ったのに、まだルルーシュと和解してくれなかった。どころか戦闘。ユーフェミアは真っ暗な気持ちになる。

 

「いや、それでいい」

「えっ」

 

 しかし、当のルルーシュは肯定した。

 

「俺とコーネリアが戦わなければV.V.が怪しむ。異能力者は可能な限り油断させ、能力を使う間もなく仕留めるべきだ。ただし、この後の展開を考えると、余計な消耗をするべきではない」

「この後の展開などないさ。ルルーシュ、お前は私が討ち取るからな」

「そんな……」

「一騎打ちでどうだ。コーネリア」

「いいだろう。受けて立つ」

「お姉様! ルルーシュ! どうして!」

 

 叫ぶユーフェミア。コーネリアは楽しげに口端を上げていた。

 

 コーネリアが特区会場に着いた時、一騎のナイトメアが堂々と佇んでいた。それはルルーシュの愛機ガウェインではなく藤堂の乗る月下だった。

 

「ルルーシュ、貴様というやつは」

「いざ、尋常に勝負」

 

 その頃、ルルーシュは特派のコンテナにいた。ルルーシュはセシル、ロイドと共にナイトメアの自動操縦プログラムを作成しながら、黒の騎士団とユーフェミアに指示を出している。

 

「P3遅いぞ、早くしろ。ユーフェミア、N1はポイント変更だ。M16に動かせ」

「は、はい。スザク、広場ではなく裏門で待ち伏せお願いします。ダールトン将軍は時限式流体サクラダイトの設置を急いでください」

 

 ルルーシュは黒の騎士団とユーフェミアに、ユーフェミアはスザクとダールトンに指示を出す。ダールトンはゼロの存在に気付いているが、現在は利害が一致しているのでユーフェミアに従うという形で作戦に協力していた。スザクは単純にユーフェミアに従っていた。

 

「ロイド、これはなんだ?」

「どうせなら三次元駆動も自動化させようかなあなんて」

「ほう。ならば引き殺せるようにしておけ」

「そういうつもりで作ったんじゃないんだけどなあ」

 

 どれほどプログラムを弄ってもナイトメアで人を捉える精度には限界がある。しかし銃撃よりは直接ぶつかる方が命中率は高いだろう。

 

 さて、今回は学園の中でも見通しのよい広場にナナリーの偽者(咲世子)を置き、近くにナイトメアに乗ったカレンを忍ばせ、逃げ道と想定されるルートに自動操縦ナイトメア、ダールトン、スザク、黒の騎士団を配置するという布陣を取った。ルルーシュの指示はそうだった。しかし田中はV.V.がナナリーの偽者に感づく可能性に気付いた。ナナリーにはC.C.因子が植え込まれており、コード保有者には別のコード保有者やギアス能力者が近くにいることを感じる能力があるからだ。よってV.V.にナナリーの存在を認識させるために、ルルーシュに内緒で広場にナナリー本人を忍ばせていた。ただし変装させて。なお、学園は放課後だが部活動を行っている生徒もおり、広場にもいくらか人影がある。彼等の身は非常に危険だが、V.V.を油断させるため避難させることはできなかった。

 

「ルルーシュはコーネリアとの一騎打ちを避けたのか。ま、あいつは嘘つきだしね。想定内さ。でも、嘘つきには罰を与えるよ」

 

 V.V.はコーネリアが藤堂と一騎打ちしているという報告を受けた。スザクがユーフェミアを奪還したとの報告も受けており、少し怪しく思ったが、おそらくユーフェミアにギアスをかけて暗殺か何かを狙ったのだろうと予測した。いずれにせよコーネリアがルルーシュに敵対しているので問題ない。ダールトンが監視に来ていることにも気付いているが特には問題視していない。

 

「ふふふ。感じるよ、ナナリー。そこにいるね」

 

 そうこうしている内にV.V.は車で学園に入る。守衛が静止を促すが、教団のギアス能力者が守衛を気絶させる。V.V.は車を降り、教団の部下と共に堂々と広場へ歩いていく。人数は11。

 

「何あれ? コスプレ?」

「なんか怖いな。相手しないでおこう」

 

 生徒達はV.V.一向に気付くが、異様な雰囲気を恐れて離れていく。

 そしてとうとう、V.V.が車椅子に乗ったナナリーに気付く。ナナリーは目を閉じたままパンを千切って猫にあげていた。

 

「健気だね、ナナリー。でも君の兄がいけないんだよ。やれ」

 

 V.V.の命で教団員がナナリーに襲い掛かる。目が見えず動けないはずのナナリーは、恐ろしく素早い動きで教団員に向けて何かを投げつけた。

 

「何?」

「ぐあっ」

 

 声を上げ、3人の教団メンバーが倒れる。ナナリーのはずの女はさらに煙玉を地面に投げつける。あまりにも手際がよく、暗殺者として訓練されたはずのギアス教団員も対応できなかった。

 気付くとV.V.の額にも何かが刺さっていた。脳が揺れ、不死身のV.V.も倒れてしまう。倒れながら額に刺さった何かを抜く。東洋の暗殺者が使う武器だった。

 

「あいつを殺せ! 偽者だ!」

 

 V.V.が言うや否や、教団員の1人を中心として赤いサークルが伸びる。そのサークル内部に入った人間は誰もが動きを止めてしまう。いや、サークルを出した当人とV.V.は動けていたが。

 彼は銃を取り出し、煙玉で見えづらい中ナナリーの偽者を探す。そして見つけた。しかし彼が銃を撃つ前にナナリーの偽者は光に包まれて消えてしまった。

 

 田中の能力である。田中はルルーシュの指示でミレイの瞬間移動を繰り返していた。ミレイはギアスの範囲に入らないように特派のコンテナから監視カメラで現地を見て、それを田中に報告していた。田中は約1秒毎に召喚と変換を繰り返し、煙玉の報告をミレイから受けた後、ミレイを返還し咲世子とナナリーを田中の世界に呼んだのだった。

 

「……はっ。これが、時間停止というやつでしょうか。恐ろしい力ですね」

「咲世子さんもすごい動きでした。私驚いちゃいましたよ。今度教えていただけませんか」

「ナナリー様がそうおっしゃるのでしたら」

 

 その頃、V.V.達はルルーシュの用意した罠と対峙していた。

 まずカレンのガニメデの攻撃で2人が死んだ。教団員は能力でガニメデの動きを封じ、V.V.と共に逃げ始める。逃げる間に無人ナイトメアが現れる。教団員は能力で同じように動きを止めようとしたが、無人であるため止まらず(厳密には自動操縦プラス遠隔操作。ルルーシュが遠隔操作もしている)、銃撃と踏まれたことにより3人が死んだ。残った3人で車に辿り着き、門を出たのだが、そこで地面が大爆発を起こした。車は爆発に巻き込まれ、運転手は即死でV.V.も大怪我を負う。もう一台の車に乗っていた教団員は血まみれのV.V.を担ぎ、車に乗せようとする。しかしその車もどこからか銃撃を受け、爆発した。教団員は爆発に巻き込まれ、動けなくなった。


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