卒業式。
ここ、聖セラール女学院では『
それを
時間にして二時間ほどだろうか。生徒達の波は引き、照星達の周りから生徒がいなくなったところで刹那は近づいていく。
「照星の方々、ご卒業、おめでとうございます」
「あら?まさか女帝が私達の卒業を見送ってくださるとは…」
「敵対こそすれ、私は貴女方を尊敬してはおります。自分が来年、その位置に居ないことも理解しておりますゆえ」
「ふふっ。そうね。女帝を照星に推す生徒は居ないでしょう。ですが、私達から貴女に一つずつ、頼みたいことができました」
「私に、ですか?」
「ええ。貴女にしかできないことです」
頬笑む三人に刹那は背筋が伸びるのを感じた。自分よりも小さいはずの照星三人に、しかし刹那は大きな影響を持った三人に敬意を払うために背筋を伸ばした。
「貴女は常に照星を試す立場となりなさい。私達に対してそうであったように。前年の照星にそうであったように。まっすぐに愚直に進む貴女の意思を次代の照星達にぶつけなさい」
「はい。薔薇の宮」
「貴女の意見は正鵠を射つが如く鋭い。ゆえに、歯向かうことを常としなさい。貴女が私達を強く成長させたように、次代の照星達にも貴女の強さを教えてさしあげて」
「はい。百合の宮」
「照星は常に正しいわけではないわ。私達もこの学院においては一人の生徒であることに変わりないことを自覚させ続けなさい。そして、照星が間違う時はその言葉と行動を持って諌めなさい」
「はい。鈴蘭の宮」
三人の照星からの言葉を受けながら刹那は自分が気づくともなく涙が溢れていた。
在学中、彼女達とは幾度対峙したかわからない。時には間違いを正してさえくれた彼女達。ここ卒業にいたって、気持ちの揺れなかった自身を恨みもした。
だが、こうして言葉を賜って、自分はようやく理解できた。
──私は、彼女達照星を本当に敬っていたのだと…
凛とした立ち方をするこちらの背中や肩を叩いて照星の三人は歩いていく。
三人の姿が見えなくなるまで、刹那は三人の背中を見送っていた。
☆
三人が見えなくなってから、刹那はそこでようやく涙を拭いた。いつまでも泣いているわけにはいかない。自分は三人に頼まれたのだから。
『いやぁ、照星と女帝の別れは素晴らしいものだね』
「──千歳、か」
桜並木から現れたのは
「照星達の想いを受けて、貴女はどうするのですか?」
「決まっている。私は『女帝』だ。今も、これからも変わらずに。彼女達に言われるまでもない。私は、歯向かう人間なのだから」
「そうですか。しかし、このスクープは載せられないな。卒業された照星に迷惑をかけるのは間違いでしょうし」
「私は行く。次代の照星が誰になるのか。それは決まっているようなものだ。彼女達と向かうべく、私は───」
桜並木を歩いていく刹那の背中を千歳はカメラを構えて1枚写真を撮る。
「──さて、来年度はどうなることなのやら…」
楽しそうに、愉快そうに歩き始めた千歳は、最後に桜並木を振り返る。
「ありがとうございました、
桜並木が散り始めるころ、新しい日々は始まる…。