処女はお姉さまに恋してる-陰に輝く星-   作:揺れる天秤

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少し短め。


第47話 勉強会

 その日の放課後。織女さんと美玲衣さん、茉理さんの四人で視聴覚室へと足を運んだのだが──

 

「す、すごいですね…」

「ええ。一生徒の勉強会と考えていましたがこれは…」

 

 視聴覚室には50人程度が着席できる席は用意されていたが、座席はすでに埋まっており、室内後方にもクリップボードを持参して立ち見で参加しようとしている生徒がいる。

 

「ざっと見て…6~70人ぐらいでしょうか」

「けっこうな数ですね」

「うーん、半分以上は新規の参加者じゃないかな~」

「茉理は利用者の判断がつくんですか?」

「うん。だって、新規の参加者の人はノートとか持参してるんだよ」

 

 室内を見渡してわかるのはノートを開いて開始を待っているのはだいたい40人ほど。残りは確かに席にこそついていたり立ち見している中にも何かしらのノート類を持ってきているようには見えない。

 というよりも、筆記用具の類いを持参していないように見える。

 

「刹那さんの勉強法にノートを書いている時間なんてないよ。聞いているだけで精一杯。書く余裕を持てる生徒はいないと思う」

「それほど早いのですか」

「うーん。まあ、受けてみたらわかるよ~」

 

 そうしているうちに前の扉が開かれて四人の少女が入ってくる。一人は黒板近くの席に座るとノートパソコンを起動している。

 一人は壁に立て掛けられていた大型の黒板消しを持って黒板近くの壁で消す練習をし始める。

 残りの二人は手元のノートに視線を落として何かを確認しているようだ。

 

『えー、それでは──』

 

 赤髪の少女がマイクを持ちながらこちらを向いて──目が合う。固まる。

 

『…えっと。少し、落ち着きます。すみません』

 

 少女は近くの三人に声をかけて目線でこちらを示す。三人もこちらを見て、すぐに視線を外すと四人が同時に深呼吸。

 それぞれに肩を回したり、首を鳴らしたりと思い思いに緊張を解いているようにも見える。

 

「どうしたのでしょうか?」

「密さんと視線が合ったようにも見えましたが…」

「照星に見られているって意識してしまったのでは…」

 

 マイクを持った少女が改めてこちらを向く。

 

『失礼しました。では、始めます。…が、これは『勉強会』ですが自分には合わない、または無理だ、などと感じたのならその場で退出していただいてけっこうです。俺──あー、私達はこのやり方に慣れたものですが初見の方には正直、無茶苦茶するなと思うかもしれませんが──』

『美緒さん。そういうのはやれば大抵の人は納得するのですからいちいち説明しなくともいいです。時間、もったいないので』

『そうかぁ?初回のやつらってこういう説明しとかねーと後がうるさかったりするんだがなぁ』

『いいから、始めてください』

『わーったよ。じゃ、ちゃっちゃっとやるか。ついてこれねーやつは無視すっからそのつもりでな!』

 

 マイクを置くと少女は黒板へと向き直り黒板を二分するように真ん中へ線を書く。

 

「なんかいきなりフランクな感じになりましたね」

「いえ、たぶんあっちが彼女の素なのでは」

 

 そうこうしているうちに、先ほどの少女と隣に立つ少女が線引きをした区画に猛然とチョークを走らせる。

 説明を入れるためかいくつかの言葉の手前に『※』印を書き、それ以外はほとんど速度を落とすことなく書き上げていく。そして、赤髪の少女が先に書き終わるとレーザーポインタを取り出し──

 

『それでは、説明を始める。まずは──』

 

 始まったのは怒涛の説明。『※』印のついた言葉にポインタを合わせながら前後の文章も含めて説明していく。

 あまりの速さに一人の生徒が手をあげる。しかし、黒板消しを携えていた少女がマイクを持つ。

 

『個別での質問等は今回の勉強会における説明部分が終わり次第、受け付けます。今は説明に耳を傾けなさい』

 

 傍らでは止まることなく説明が続けられていく。そして、もう一人が書き終わるタイミングと説明を終えたタイミングが合う。

 二人がすれ違うように互いを避けると同時、説明を終えた側の黒板を黒板消しを持った少女が一発で半面全てを消す。

 

 『えっ!?』とノートを書いていた生徒達は固まるが、書いていた少女が消したばかりの半面に更にペースをあげて書きあげていく。

 説明は止まることなく続けられており、この時点でおそらくついていけなくなったのか、数名の生徒が立ち上がって室内から出ていく。空いた席には立ち見をしていた生徒が座った。

 

 説明し、終わると書いていた少女と入れ替わり、説明していた半面を黒板消しの少女が消して、説明が始まる頃には再び猛然と書いていく。

 何度か繰り返したところでようやく書いていた少女は卓に置いていたタオルで汗を拭きながら黒板から離れ、黒板消しを持った少女は黒板消しを傍らの壁に立て掛ける。

 そうして、説明を終えた少女がマイクを置くと、卓からタオルを持って額の汗を拭いた。

 

「──すごかったですね…」

「そう、ですね。しかし…」

 

 美玲衣が室内を見渡す。ノートを書いていた生徒が残っているのはわずか五人ほど。

 空いた席には立ち見していた生徒が座り、手持ちぶさたのはずの生徒達は小さく拍手している。

 

「減った、わね…」

「結局、ノートを取っていた生徒のほとんどはついていけずにリタイアした形になりましたね」

「刹那さんの勉強法って基本的にはスパルタなんだよ。特に今回の勉強会は歴史の話だから暗記がベースになっちゃってるから余計にね~」

 

 気がつくと質問を受け付ける形へと勉強会は変わっており、挙手をする生徒を指名しながらの受け答えが始まっていた。

 

 勉強会も滞りなく終わり、参加者が片付けをして帰っていく中で黒板前では彼女達が反省会のようなものを行っていた。

 参加者から紙を受け取っていた彼女達のところから生徒が掃けたところで彼女達の下へと移動する。

 

「あっ、照星の皆様。お疲れ様です!」

「はい。貴女方もお疲れ様でした。なんといいますか、すごく濃密な時間を過ごさせていただきました」

「いえいえ。照星の皆様の成績は知っていますから。我々の拙い説明ではわかりにくかった場所も多かったのではないでしょうか」

「そうですね。やはり少し駆け足気味に感じてしまいました」

 

 実際には教室が貸し出されている時間もあるため、仕方のない部分でもあるのだろう。

 黒板を消し終えた黒髪の少女は黒板消しを置くとこちらへと近づいてきた。

 

「美緒さん。そろそろ時間がまずいです」

「もうそんな時間?では、照星の方々、私達はこれで失礼いたします」

 

 教室の前で彼女達を見送る。何か盛り上がっているように見えるがさすがに何を話しているかまでは聞こえない。

 

「しかし、刹那さんの勉強法はスパルタですわね…」

「まあ、あれはあの子たちなりに解釈してやってるからまだマイルドだよ」

 

 茉理の声に美玲衣さんと織女さんの顔が茉理に向いた。

 

「あれよりスパルタな勉強法ってあるの…?」

「今度、美玲衣ちゃんも一緒に教えてもらったらどうかな?スパルタ方式をお願いしたらやってくれるよ」

「いえ、遠慮しておきます」

「しかし、彼女達は出席者のクラス等を最後に集めていましたが、あれはいったい…」

「今日の勉強会の概要資料を作ったら参加者に配るためじゃないかな~。だから、ノート取ってた人達を置いてきぼりにしてたわけだし」

「なるほど…」

 

 その後。勉強会に最後まで参加していた者は近日中に行われた小テストにおいて高得点を取っていたことは別のお話。

 

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