コルテス平原での戦いは終幕を見せない。
第5軍団長イエリツは一騎打ちの末ゲクランに敗れ、国の未来と部下を託して逝った。そんなイエリツと志をともにして戦っていた副官モートンはイエリツの生前の想いを汲み、再び攻撃を試みていた。
竜に姿を変え異形を倒した後に倒れたシーチェ。将を失っても戦いを止めない敵。将や仲間の想いを力に変えたそれぞれの戦いは続く。
1
朝焼けが綺麗な空を舞いながら冷たい空気を肺いっぱいに吸い込むと、寝ぼけていた眼と頭が一気に冴えた。
空は心地よい。こうして1人で飛んでいると煩わしい事を考えなくて済むから。それに地上のどこよりも綺麗な景色が空には沢山ある。リアは飛竜と共に空を飛ぶ事が何よりも好きだった。
「今日も朝焼けが綺麗だなココ」
小さい鳴き声で答える相棒。ココ、とは我ながら可愛らしい名前を付けたと思っている。小さい時はやんちゃだったお互いもすっかり成長して今では立派に成体になり、リアも大人になった。
考えなければいけない事も頭を悩ませる事もその分増えたが自分自身が成長していると考えればどうという事はなかった。ココもそれを感じてなのか良く言うことを聞いてくれる。今では大切な相棒だ。
“ギャー。ギャッ、ギャーッ!”
珍しい。普段朝はは眠そうであまり鳴くことのないココがこんなに鳴くなんて、と思いながら周囲を見渡してみる。雲が流れている以外には空に影はない。コルテス平原に展開している空の戦力は自分とアリスという傭兵の〈ペガサスナイト〉だけの筈だ。アリスは今地上で寝ている頃だろう。
「どうしたココ?」
“ギャーギャーッ!グォォォッ”
高い鳴き声が威嚇するような低い声に代わり、リアは気を引き締めた。
飛竜は感受性の高い生き物。ココが威嚇した、という事はこの子は殺気かそれに近いものを感じたという事だ。
その時、地上が光った。
(魔道士か!!)
左の足で飛竜の腹を蹴ると同時に手綱を左に引くと飛竜は左に急旋回する。一筋の雷がすぐ近くを通り抜けていった。
「地上からここを狙ったのか…!中々やるな」
ここからでは敵の姿は見えるが、どこからの攻撃だったかまでは分からない。第5軍本陣がある所の上空で空からの警戒を続けていたが動きがあった時は報告するよう指示されている。
空から見る限り、人の波がわらわらと国王軍右翼側に向かって動いているのが見えた。戦列を組んだ集団が長方形にいくつも並んでいて、明らかに攻撃の為の前進だった。
「動き出した?奴ら、降伏しないというのか!」
将を失った事は既に知れているというのに。昨日から投降する敵はほとんど居なかったその答えがこれだ。
(地上では太陽を背にしている向きだから見えていないかもしれない。急がねば!)
「行くぞココ!」
2
「敵襲だァァァッ!反乱軍が突っ込んでくるぞーッ!」
哨戒に出ていた〈ドラゴンナイト〉がすぐ近くまで降下してきて叫んでいる声を耳にしてまた右翼側の部隊は騒がしくなる。夜通し治療を受けているシーチェの容態は変わらず、苦しそうに寝込んだまま体に籠った熱のせいで倒れた場所から動かせずにいた。
汗だくになった額を拭ってリシアは考える。ここから運ぶか、このまま意識が戻るまで治療を続けるか。どちらも危険な選択だった。
(こんな時、リワープがあれば逃げる事も出来るのに!)
“総員、突撃防御!衝撃に備えーッ!”
展開している部隊の長の号令が響き渡る。最前線はすぐそこだ。下手したら突破した敵が来れる程には近い。押し寄せてくる重圧がリシアの呼吸を乱す。今度のは人の発する意思。それぞれが抱える決死の覚悟が心をぐちゃぐちゃに踏み荒らしていく。
(集中して!このままには出来ないんだから!)
精彩を欠いたリシアの動きに声が掛かる。やけに高いところからの声に顔を向けると騎馬隊の隊長を務めるサミーだった。
「助けに来たぜリシア。あんたはシーチェの治療に集中しな。ここは俺らが引き受ける」
「サミーさん…分かりました。私たちをお願いしますね」
「おうよ。まずは深呼吸だ、大丈夫。あんたなら出来る」
スーッ…フゥー…と見せたサミーは自分と余裕のある表情を見せると自らも列の最後尾に加わった。
真似して肺いっぱいに空気を吸い込む。熱気を含んでいたが、心を落ち着かせるには十分だった。
“我が名はリシア 我 傷付き 彷徨える魂を救わん
罪深き営みに重なる死の輪廻に囚われた命へ 祝福を授け給え”
ライブの杖を翳す治療を中断して、リシアは両手を組んで唱える。この魔力を生かして人間の異常状態を回復させる特殊な魔法だ。シスターになってから修行して会得したもの。
(こんなに蝕んでるなんて…少しだけでも戻って)
竜に変身した人間の治療など恐らく誰も経験がない。病気や毒とは全く訳が違う状態異常にこの魔法が効くのかどうかも分からないがリシアは祈り続けた。
3
重たい瞼を開いた先の世界。私がもと居た場所とは全く違う所だった。ここは一体…と考える前に脳がズキリと痛む。そして相変わらず体は内蔵を直接焼かれるように熱くて、言葉に出来ない強烈な苦痛がずっと私を襲っている。
全てを平伏せる力の代償、というものなのか。そもそも私はその力の正体を知らずにいるのだが、異形の軍勢を瞬く間に殲滅したあの竜はシューレ教の言う伝説上のモノではないのか…?
“来タカ小娘。イヤ『盾ヲ持ツ者』”
あの低い声、竜の肉体の持ち主の声がどこからか聞こえてくる。姿は見えない。どこまでも広がる黒い闇を見ると少なくとも現実ではないのだけは理解できた。
声に反応して体を起こすと、不思議な事に熱が急に元に戻って苦痛は消え去った。
「助けて頂いた所だけど、私たちもっとお互いを知るべきだとは思いません?」
私はどこまでも広がる闇に向かって言葉を出してみる。なんの音も聞こえない世界の不気味さの中、私の声はよく通り広がっていく。
“『盾ヲ持ツ者』。我ハ人間二死ヲ運ブ冥府ノ番人、『オルヴァヌス』”
「オルヴァヌス…?!大陸の人間を滅ぼそうとしたあの黒竜だというの?」
“アレカラ数百年デ我ガ器トナル『盾ヲ持ツ者』ガ現レタノハ喜バシイ。力ヲ得テドウダ小娘”
「確かに…圧倒的だった。だけど世界を滅ぼすつもりはないわよ」
“ソノ弱ッチイ体デ我二逆ラエルト本気デ思ッテイルノカ?ソノ力ヲ使ウ代償トシテ、コノ程度ノ苦痛ヲ耐エラレヌノニカ”
「っ…言ってくれるわね」
ぐうの音も出ない。まさか大陸を滅ぼそうとした伝説の黒竜“オルヴァヌス”と対話している事も信じ難いが、言い合いに負かされるとは。
だが、こちらも反撃の材料はある。
「数百年も待って漸く自分が入れる器とやらが見つかったんなら私を壊れ物みたいに大事にすべきだと思うけど?」
“知ッタ口ヲ聞クナ小娘。時ガ来レバ頂ク。ソレマデ眠ルカ?”
「それは困る。私にも成すべき事があるから」
“ナラバ聴カセテミヨ。『盾ヲ持ツ者』オ前ノ成スベキ事トハナンダ?”
思考をフル回転させて考える。
この質問の回答次第で命運が決まる。力を手にするか、さもなくばこのまま殺されるか。伝説の黒竜、覚醒したオルヴァヌスを制御するのは不可能だとしても復活を遅らせる方法や阻止する方法は絶対にあるはず。
“その時”までにそれを見つければ私の勝ち。勝率は無くはない。ただ、自分と奴との根比べ。
だけど勝てるのか?相手は竜だ。今後物理的に戦う事も可能性に含めて…
“答エラレヌノカ”
「私は…私の成すべき事は…」
“オ前ノ心ノ底ニアルノハ復讐ト争イ。全テヲ奪ッタ者達、ソシテ奪イニ来ル者ヲ皆殺シニスルコト”
「っ…!」
化身していなければ心は読まれないと思っていたが、どうやら甘かったみたいだ。
オルヴァヌスの言葉に私は内心ギクッとした。復讐を果たし、祖国シリアンに尽くす。策を弄し、攻め寄せる敵を倒し恐怖させる。それは私の願いと同時に務めでもある。私は諦めて小さく息を吐いてから答えた。
「…ご名答。私の中には戦いの事しかない。シリアンに攻め寄せる国があればそれは私の敵。攻め寄せる敵は死を以て応える。守る為なら私は何にでもなるつもりよ」
“時ハ必ズ来ル。人間共ノ営ミハイズレ必ズ世界ヲ焼キ尽クス”
「そうだとしたらオルヴァヌス、貴方は今度こそ世界を滅ぼすのかしら?」
ある程度踏み込んだ質問をしてみる。こんな事がシューレ教に知れたら私はすぐに処刑されてしまうだろうし、どうせ誰にも言えない話だ。
姿の見えない黒竜に向けた言葉はまたどこからか返ってきた。
“我ハ世界ヲ焼キ尽クス力ヲ持タヌ”
「…どういうこと」
“ソレ以上ノ説明ヲ我ニセヨト言ウノカ小娘”
少しは自分で考えろ、という事らしい。
“オ前ニ暫ク我ヲ預ケル。好キニ使エ…”
その言葉と同時に私の右肩がズキズキと痛み、痣がまた広がった。黒い紋章のような模様が右腕全体に広がり、痣が最初に出来た右の手の甲には紋章と同じ色と模様をかたどった盾のようなものが浮かび上がっていた。
「これは『黒の盾』…?」
私がそれを認識した瞬間、その手の甲からの光が私の視力を奪った。
4
「…さん!シーチェさんっ!」
呼び掛けにもシーチェは目を覚まさない。苦しそうに呻く彼女を治療出来ず、リシアは涙目になりながら体を揺すった。ここで出来ることは尽くした。
後は本人の生命力に賭けるしかない。だからお願い。帰ってきて。
「容態はどうだッ?!」
仲間の問い掛けに答える言葉は今のところ見当たらない。すぐそこで武器を振るっている仲間たちに余計な心配を掛けられない。
夜明けと共に始まった攻撃は止む気配を見せず、それどころか猛烈な勢いで味方の戦列を食い破り始めていた。
“何人か抜けた!そっちに行くぞ!”
人の入り乱れる中から聞こえた叫び声。それが自分たちに宛てられている事は分かった。その直後、駆け込んでくる剣をてにした黒い頭巾の男たち。真っ直ぐリシアと倒れているシーチェに狙いを定める。
「“悪魔の命ここで頂く!どけ!」
男の殺気に湧き上がる恐怖。それでもリシアは逃げることなく男たちの前に立ちふさがる。両手をめいっぱい広げて敵を後ろに行かせないように体を大きく見せるが指先も足もガクガクだった。
「ど、どきませんッ!」
「ならば貴様ごと斬る!殺れ!」
命を奪う力を持つ者を前に、無力の人間に出来ることはない。だけど誰かがこの後は…
(あとは頼みますよ。皆さん…!)
迫る敵への恐怖で目を瞑った。
「させるか!」
届けと願いながらクルバルカを突き出す。守るべき仲間が目の前で殺されるのを見逃す事など出来ない。リクは3人を纏めて相手取り、そのうち1人を繰り出した突きで倒した。突然の攻撃に乱れた敵の連携、今度は左右からそれぞれが背後を取ろうと回り込む。
それをリクは殺気で封じた。
「勝敗の決まった戦いを何故戦い続ける!」
「我らは誇り高き第5軍なり!将軍の遺志を継ぎ、陛下を騙る賊と“悪魔”に鉄槌を下すまでは命が尽きようと我らの戦は終わらぬ!」
「イエリツの遺志だと?」
「賊には分かるまい!その女もろとも切り捨ててくれる!」
刃をギザギザに変形させて殺傷力を高めた“キルソード”を手にする敵との戦闘。素早い動きに対して的確に対処するリクだったが数的不利と背後を守りながら戦う制約の影響は大きく、左肩を凶刃が切り裂いた。
僅かに血が滴る左腕の痛みに構わず槍を振るい、2人を倒す。
リクは倒れた敵の死亡を確認すると自分の傷を確かめる前に倒れている軍師の傍まで行って跪く。
苦しそうな表情で倒れているその横顔に言葉をかける。
「シーチェ…少し休んでいろ。後は俺がやる。もう肩書きに縛られるのはなしだ」
国王と呼ばれる立場ゆえにこれまであまり前線に立たせて貰う事は出来なかったが、それでは守れないものがあまりにも多すぎることにリクは気づいた。自分が背負うべき責任や想いをこれまでは周りが自分の代わりに背負ってくれていたのだ。
ゲクランに討たれたイエリツも、その部下たちもこれまで戦って死んだ全ての兵士は自分の愚かさ故に命を失った。
「イエリツ将軍の仇を討つ!この先に奴はいるぞ!」
「行ってくる。あとで話そう」
リクはすぐに立ち上がり、戦列に加わって檄を飛ばした。
「国王の名に於いてこの国を何者にも荒らせはさせん!皆あと一歩前へ出よ!勝利は踏み出したその先にある!」
沸き上がる歓声に士気が上がるのを感じる。それに応じる様に敵側からも激が放たれた。
「愚かな賊如きに我らの王を騙らせるな!第5軍副将モートンが自ら討ってくれる!」
リクはその声を聞いて地面を蹴る。敵の全員がイエリツの遺志を継いで戦いを続けている。この戦いを止めなくては。
「モートンッ!」
「来ましたね。貴方を討てば終わらせられる。将軍の遺志、必ずやこの手で」
「勝敗は決した!もうやめろ!」
「遺志を継いで戦う者を止める術などありませんよ。我々の意思は挫けない!」
モートンの手にする魔道書が開かれて詠唱が始まる。魔法が放たれる前に動きを止めるため、リクは地面を駆けた。
モートンの真上に広がる魔法陣が稲妻を起こし、それがリク目掛けて飛翔する。3連の稲妻を槍で迎え撃つと稲妻は方々に飛び散って消えた。
(“サンダー”の魔法か。今は打ち払ったが次はどうだ?)
距離を取ろうとして今度は“ファイヤー”を放つモートン。地面を焼く炎に紛れて姿を眩ませる敵にリクはその場で身構える。
「動きを止めるのは自殺行為ですね!」
「姿を隠したつもりか?お前もシリアン軍人だろう?!戦いを止めろ!」
「…こうなってはどちらかが居なくなるまで終わりませんよ。我らは最後まで屈さぬ。選んだこの道が例え間違っていたとしても勝利が道を正す!」
その言葉にリクは察した。モートンやイエリツが自分たちが反乱軍に加担している事。その事実を知っているのか知らないのかは分からないが、少なくとも戻る道はないと決心してここに来た。進むしかないのなら勝つしかないと心得ていたイエリツとその遺志を継ぐモートンを突き動かすもの。
「勝利した先に何がある?!」
「…ここで言葉に出来るほど軽くはないもの…お互いに持ち合わせておりましょう」
モートンは炎の中からサンダーでリクを狙う。
持ち合わせているもの。そう言われて思いつくものは沢山ある。言葉に出来ないくらいのものを抱えて立っている。
それは自分とて同じだ。これまでに見たもの、感じたもの。話したこと。積み重ねてきたこれまでの自分の道。
栄光のものでもなく、立派なものではない。先代の父と比べられてしまえばずっと霞んで見えてもこの国の王は自分だ。自分の至らぬところばかりあって支えられていた事すら最近分かった。
それでも背負っているものは王としてのものだ。これからも背負い続けるもの。
「お前たちの道や生き様を抱えていく事が俺の国王としての使命だ!」
サンダーが目の前に着弾し、視力が一瞬奪われる。
(前が見えん…!)
「止めです。お覚悟を…」
戻った視界の端っこに見えた魔道士のローブ。懐に踏み込まれている。反射的にクルバルカで切り上げようとした。だが、モートンの方が早かった。
激しい衝撃に体が吹っ飛ばされる。何かに突進されたような痛みが脇腹を衝いた。
黒い大きな影。弾かれたリクは地面に倒れた。
「陛下…ご無事でしょうか?ご無礼何卒お許しください…」
本陣でイエリツを討った【黒鬼】と呼ばれる男が傍で跪いていた。黒い鎧の胸の辺りを大きく穿たれたのを見て衝撃の正体はすぐに理解できた。
「ゲクラン!」
「戦友との務めを果たしに参りましたが…遅かったようです」
思わぬ乱入に気を取られたのはモートンも同じだった。彼の方を見ながらゲクランは苦しそうに言葉を続ける。
「“この国とあいつらを頼む”と言っていたがもはやどうあっても止める術はないのだろう…モートン」
「ゲクラン将軍…仰る通りです。賽は投げられました」
「…ならば仕方あるまい…」
ゲクランは手にする戦斧を杖に立ち上がるとリクの前に仁王立ちした。深手を負っているとは思えないほどにしっかりとした出で立ちから放たれる強烈な威圧感。覇気を纏うゲクランは静かに宣言する。
「陛下に手を出すことは【黒鬼】が許さぬ…」
「その傷で戦うのですか?」
「最期は某が決める」
モートンとの距離を一気に詰めるゲクラン。リーチの長い戦斧が振るわれてモートンは魔力でその斧を受け止めた。
魔力との力比べ。ゲクランは全く譲らず、寧ろ押し込んでいく。
「こんな筈は!」
「何事にも絶対はない。しかし人間の意志の力は絶対なのだ…!」
ゲクランは限界を超えていた。モートンの魔力の壁を張り続けたが、遂にその壁を破りその体を両断する。体から芯が抜けたように倒れたモートン。
戦斧を振り切ったゲクランもまたがくりと膝を折った。
「ゲクランッ!」
「陛下…どうか生きてこの国を…」
「死ぬな!あんたが居なくてどうする!」
リクは膝立ちのまま事切れたゲクランを揺すったが反応が返って来る事は無い。何とか意識を戻そうと横に倒した所に敵が迫る。
「やめはせんぞ今更ぁッーー!」
「モートン副将とイエリツ将軍の仇を取れ!!」
「竜を目覚めさせ、大陸を滅ぼそうとする連中を許すなッーーー!」
「「「オオオォォォ-ッ!!!!」」」
指揮官の死に屈することなく更に勢いを増す第5軍の兵士。守る側になった国王軍も高い戦意を維持しており、激しくぶつかり続ける。
リクもゲクランを弔うことも出来ないまま、すぐに戦いに飲み込まれた。
5
〈シリアン王城 玉座の間〉
国王軍に打ち込んだ楔が功を奏した事を確認したクロノアはコルテス平原を離れてゲランへと報告していた。ゲランと彼に付き従うクロノアにとっては第5軍の勝敗自体は気にする事ではなく、多くの人間が戦う事による計画の進行の方が優先された。
そして計画はゲランの思惑通り進む。
「これで聖教騎士団の動きも止まり、矛先が変わるでしょう。各国からの支援も我々に集まり動きが取りやすくなります」
「各国の動きはともかく、聖教騎士団の方はどうであるかな?」
クロノアの見解とゲランの見解は常に微妙な違いがあった。聖教騎士団やシューレ教をそれほど意識していないクロノアと常に警戒するゲラン。細かい部分についてお互い相談することがない2人は信頼とは別の関係で繋がっていた。
「ヴィツワ軍は動いているのか?」
「はい。詳細な連絡はこちらにはありませんので注意が必要ですが」
「どこまでも愚かな男よクーゲル…吾輩達を出し抜いて何かを企てておる」
「何を企てようと邪魔立てするのであれば後悔させるのみでしょう?」
クロノアの問いかけに如何にも、とゲランは満足そうに答えた。
「でしたら密偵の活動を更に密にさせます。細かく動きを察することが出来るでしょう」
「任せる。吾輩も支度に入るとしよう」
では、と残してクロノアはいつもの様に魔法陣でどこかへと消えていった。
玉座に残されたゲランはその椅子へと腰かけ、目を閉じる。
(貴様ごときに分かるはずがないだろう。わが一族の無念を。吾輩は成さねばならんのだ)
どれもこれも全てはこの為に支度してきた。国王の地位や名誉、富など余り物の栄光に過ぎない。計画が成功した先に大陸が焦土になろうともそれは結果的にそうなっただけの話で、目的さえ達成できればそれでも構わない。
「世界に蔓延る巨大な偽善に裁きを下す。誰がその力をもたらしたのか思い出させる。首を洗って待っていろシューレ」
FE新作が発表されました!おめでとうございます!
今作は過去の主人公たちが登場するという事で楽しみです。
…こんな時なのに続けていいんだろうか。と思ったりしてますがそれとは別に楽しみにしていただけると幸いです。
十六話ポイント
・シーチェ回復せず(現実)
自身が変身した黒竜オルヴァヌスと対話。オルヴァヌスがシーチェに宿り、『黒の盾』発現。『盾を持つ者』となる。
・ゲクラン、リクを庇いモートンを討ち戦死。
・ゲランの標的はシューレ教
・ヴィツワ帝国が行動開始