ファイアーエムブレム 双極の盾   作:マフィン野郎

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3年の時を経てついに復讐の機会を得た私はいよいよ実行に移った。闇夜と豪雨に紛れてゲランに迫る。
いよいよ待ち望んだ瞬間。必ず奴を殺す。
全てを奪われた私のたった1つのやり残した事…

 


第一話 復讐

 

1

 

「あの時、貴様だけは始末しておくべきだった」

 ゲランは忌々しそうに吐き捨てた。その表情が苦虫を噛み潰したように憎しみに近い感情がひしひしと伝わってくる。それは私が抱いているものと全く同じ感情でもある。

「初めて意見が合ったわね。私は3年間それだけを思って生きてきた」

「探す手間が省けた。吾輩の前に無策で出てくるとはな」

 最後は雨の音にかき消されて聞こえなかったが、この男の事だ。“この国は自分の支配下”くらいの事を思っているのだろう。

 この男は立っているのはかつて私が仕えて居た国の政治を司る"シリアン王国宰相"。私はこの男にかつての立場を奪われた。

 あの日を境に、全てを失った。地位、名誉、友、信頼、誇り。失くしたものは数知れず、たった1つ残ったのは復讐心。ぽっかり空いた心の真ん中にどす黒い意志が突き立っていた。

「穿て フェイルノート」

 私の魔力が矢に組み合わさり風の力が形成される。魔道士の使う攻撃魔法とは違い、この弓矢に魔法の力を加える強化の術。風の力を得た矢は貫通力を大きく増して攻撃力を上げる。

「早速奥の手か」

「出し惜しみなしよ。あんたとは刺し違えても殺すわ」

「来るがいい小娘ッ!!」

 ゲランは自らの魔道書を詠唱することなく闇魔法を放つ。煙のような物体が三方から迫り、それは意志を持つかのように回避する私を追いかけて来た。

 バーンズガウン。上級魔道士でもごく僅かの闇魔道を極めたものが扱える最上級魔法。それを受けた者は体力や生気を術者に吸い取られると言われる。そんなものを喰らった人間で生きている者は存在しないので証明はできないが。

 ゲランから延びる3つの追っ手を躱しながら弓を放つスキを窺う。

「どうした?攻撃してこないのか?」

 挑発を無視して、回避に専念する。物体がスレスレを通るたびに吸い込まれそうな感覚に襲われ、距離が離れるとその感覚は消えていく。対象者を拘束する効果もあって捕らわれた時に脱出は難しい、ということか。

「このっ…!」

 接近しながらの初撃は防御に切り替えたゲランの魔防壁に防がれた。連続で風の力を纏った矢が命中コースに乗るがどれも弾かれると同時にゲランの口元が細かく動いて素早く腕を振るうと今度は速い閃光が飛んでくる。

 理系の上位魔法トロン。周囲に眩い閃光と共に駆けてきたそれを私は間一髪躱した。無理に体を投げ出すように躱したがトロンの電気を間近で浴びて体が少し痺れている。動きが鈍くなるかと思ったが、相手もそんなに連射出来る魔法ではない。

 持続時間の長いバーンズガウンと高威力のトロンの連携で相手を追い詰める戦い方は遠近、攻防にスキはないようだ。

「その程度か?先代軍師」

「準備運動に付き合ってるだけよ」

「減らず口を…!」 

 ゲランは詠唱なしのトロンと詠唱したバーンズガウンを使い分け、消耗を強いる。回避を強いて私のスタミナを奪った所を仕留めるつもりのようだ。

 私のスタミナが尽きるか、ゲランの魔力が底をつくかのチキンレース。私は回避もしながら、弓で牽制を繰り返す。風の力は使っていないのでいとも簡単に防がれてしまうがゲランは防御の全てを魔防壁に頼っている。

 その場を殆ど動かないゲラン。僅かな体の動きを見てもスピードは完全に私が勝っている。ゲランは先ほどから少しも立ち位置を動いていない。あの立ち位置を動かすほどの有効な攻撃が出来ていないことを表してもいたが…

「首領!」

奴の仲間の声が雨の中響く。一瞬感じた違和感にその場を離れると手斧が首元を掠めた。直前に気付いて回避したせいで体勢が大きく崩される。

ここで仲間の乱入は想定外だ。その直後、詠唱なしで真っ直ぐ放たれたトロンの稲光が身体を貫いて私は吹っ飛ばされた。

 身体に走る激痛。痺れて思うように身体が動かせない。高威力魔法かつ高魔力、そして雨の日という天気の効果も相まって威力を増している中で、意識が残ったのが奇跡だ。吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられて倒れ込んで蹲る。息を吸おうとするたび、損傷した内臓が悲鳴を上げている…それでもいつもより遥かに少ない呼吸で命を繋いだ。

 動けない私の耳にゲランと部下の声が入ってくる。

「どうしたのだ!?」

「騎士が来ます!」

「ちっ…退くぞ」

闇の中駆け出そうとするゲランは倒れる私を一瞥すると何かを言いかける。だがそのまま部下に促されてその場を去って行った。

倒れて動かせない身体が雨で冷えて行く。ゲランの魔法が直撃してるのに、良く耐えていられた。しかし何も果たせなかった。

先代国王の仇も討てず。この国も守れなかった。

「…もう、ないんだ…ね…」

 3年前に枯れ果てたと思っていた涙が落ちていくのを感じる。死んだらもう苦しむ事もない。悲願を果たせない悔しさはある。2度とそのチャンスが訪れない事を理解すると、その時本当に何もかもを失った。

 私は今までなんの為に生きてきたんだろう?死がすぐそこに迫る中で、生きる意味を見出そうとしている。毎日を駆け抜け過ぎて探す時間もなかったな…

 冷えていく体、次第に消えていく音。暗くなる世界に私は身を委ねる事にした。

 

 




2024年8月11日 少し編集しました。
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