ファイアーエムブレム 双極の盾   作:マフィン野郎

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 賊の襲撃を受けた一行はシーチェの作戦と謎の女性の応援もあり、戦闘を互角に進めていた。しかし単身囮を引き受けた影響で負傷してしまう。思ったように体を動かせない事を恨めしく思う彼女を助けたのは…


第二十四話 恐れの森Ⅱ

 

 1

 

 頭に貰った一撃が効いている…。目潰しの後に凌いだはずの攻撃も脚にダメージを残しているようで、踏みこんだ時に違和感があったし普段よりも体が重く感じる。

 しっかりしろ。こんな所で倒れる訳にいかないんだ。あんな風に言い切ってむざむざやられる訳にもいかないんだ。

 挫け掛けた気持ちを持ち直してフェイルノートを構える。

「あんたを殺ればこいつらは総崩れだなぁ?死ねやぁぁぁ!!」

 対峙している賊の中でもひと際大きいのがその得物を素早く振り上げる。

 私が指揮官だと思っているのか?だとしたら好都合だ。振り下ろされた斧を躱し、攻撃の隙を窺う。

「私を殺ったらこの国全てがあんた達を殺しに来るわよ!人生の終幕にはまだ物足りないのではない?!」 

「構うもんか。俺達はどの道くたばるしかねぇ。最期まで好き勝手やるだけよ!」 

「その覚悟に技量なら賊に身を落とさなければ拾われることもあったろうに…」

 良く見れば他の賊に比べて体だけではなく装備も良いものを身に着けている。鉄製の甲冑に兜、肘当て膝当ても正式品の様だ。

 一瞬のうちに見えただけだったが。

 それよりも私の言葉が奴には癪に障ったみたいで声に怒気が孕む。

「俺達が恵まれなかったとでもいうつもりか?!!気に入らねぇ!気に入らねぇなぁ!!?」

 暴力的な斧の乱舞。こちらの反撃の前に繰り出される連続した攻撃、その一撃毎が必殺のもので、当たれば命はない。木の幹ですら両断し砕くその力で振り回されているキラーアクスは弓程度では防ぎきれない。躱すしかなかった。

 その度にグラつく体勢。いつもより踏ん張りを効かせる距離が長くなり、反撃が遅れる。

「無理するなシーチェ!一旦下がれ!」

 仲間の声が耳に入る。だけど、今ここを下がる訳にいかない。

 声を無視してそのまま戦闘を継続する。打ち合えば弾ける火花を浴びながら、一撃必殺の攻撃を喰らうかもしれない恐怖に抗う。 

 相手の動きに対して反応が一瞬遅れが出たせいで敵の一撃が頭を掠め、躱した拍子に後ろで纏める髪を散らした。側頭部も僅かに掠った様で冷たいものが流れて行くのが分かった。

(今のは肝が冷えたわ…!やっぱりさっきのが足を引っ張る…) 

「下がれシーチェ!!」 

 後ろで控えるリクの声。滅多に出さない鋭い声がさっきの誰かとは違う衝撃を与えた。だけど…!

「これくらいで!!」

 声を出して自分を奮い立たせ、前への推進力を無理やり作り出す。体勢不利とか関係ない。深く沈み込んで体のバネで跳ねるように飛び込む。  

 驚いた様に目を見開く賊の男。しかしその表情は一瞬で俄か笑いに変わった。

 その瞬間。その不敵な笑みに底知れない恐怖が沸き立つ。これまで何度も感じた死の恐怖。

「バジル!やっちまえ!」

 姿勢を下げる賊。その後ろ、見えなかった視界が開けた先でもう1人の賊が斧を投げる姿が映る。投げ斧よりも威力のあるショートアクスが高速で回転しながら迫ってくるのがスローモーションで、いやまるで止まっている様に見えた。 

 躱せない。低い姿勢から勢いの付いたこのタイミングでは…!だが直撃される訳にはいかない!

 私はフェイルノートを両手で思い切り斬り上げるようにして振り上げた。

 耳元で響く金属音に体がフワッとする感覚。斧を弾き飛ばそうとして思い切り私の方が吹っ飛んでしまう。おまけに肩も派手に斬られてしまった。自分の血を顔や服に浴びたのは随分久しぶりかもしれない…慣れない激痛が全身を奔った。

 背中から地面に叩き付けられて、辛うじて立ち膝の体勢を取るが連携していたさっきまで打ち合っていた敵が止めを刺す為に迫る。

「はっはーーー!ここまでだなぁぁぁ!!」 

「…く」 

 その手で刃を突き刺すまでは相手は自分を殺そうとしているのだ。どんな手負いの人間であってもそうでない事の証明にはならない。それを忘れたら立場は逆転する。  

 私の後ろから銀の髪とマントを靡かせて割り込む人影。装飾の施された槍は鋭い鋒で一閃した。 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

「んだと…?!」

 槍は振り上げた斧の下を突き抜けて、心臓を一突きした。傷口から噴き出した血がぼたぼたと地面と私、リクに降りかかる。動きが止まるのを確認したリクが槍を振って刺した賊から槍を抜くと私の傍に跪いた。

「…ありがと。貴方の槍働きはやっぱり安心できるわ」

「言ってる場合か!すぐに治療してもらえ!」

「そうね、この傷じゃ今は邪魔になるだけだから」 

 バッサリ切れた肩の傷を手で押さえながら立ち上がる。

 出血が酷い。これは早く治療して貰わないと…

「アイゼン、シーチェを運んでくれ!」

「了解です!援護頼んだ!」

 後ろから駆け付けたアイゼンに担がれ、前線から離れると意識が急に遠くなりだした。しっかり映っていた景色がぼんやりとし始め、やがて真っ暗になってしまった…  

 

 

「起キヌカ我ガ器。貴様ハコノ程度ダトイウノカ。ソノ程度デ何ガ出来ル?」

 声が聞こえる。公都を出てからずっと大人しかった黒竜オルヴァヌス。何も見えないが、確かにその声はすぐ傍から発されている。声の聞こえ方が変わっているのはどうやら私の周りを動いているからなのは分かった。

 そんなことより言いたい事が山ほどある。

「貴方の力、好きに使えと言ってなかった?」

「愚カ者メ。好キニ使エト言ッテ我ガ力ヲスグニ使エルト思ッタノカ人間ノ小娘如キガ」

「勝手に巣食って小娘呼ばわりして。私が死んで困るのはあんたよ」   

「ソノ強情サダケハ認メテヤロウ。我ニココマデ口ゴタエシテクルノハ…」

 そこまで言いかけて珍しく黒竜が言葉を止め、小さく笑うと沈黙を呼び込んだ。そこにすかさず切り込む。

「そこ。続けなさいよ」

「黙レ小娘」

 ち。私は舌打ちした。

「…なんなのホント」  

 いつもこんな事で冷静さを欠いたりは絶対にしないのに。

「悔シケレバ我ヲ使ッテ見セロ。貴様ハ知ッテイル」 

 黒竜の力の使い方を知っている?そう聞いて私は暗闇の中で思案する。いつ学んだ?いや、いつ学ぶとか、きっとそういう問題じゃないんだ。 

 知っている…これまでのオルヴァヌスとの会話や化身の経緯の中にヒントがある?

「精々オマエノ主ノ為ニ命ヲ燃ヤセ」 

 その言葉を最後にオルヴァヌスはまた沈黙した。 

 

「い…出血……!すぐ……!」

「この…………で!」

「見、!意識が戻っ…!」

 

 私は木に座り込むようにしている。隣にはリシアとミッシェルが2人掛かりで傷の治療に手を尽くしてくれているのが分かる。リシアは魔力で杖による治療を、ミッシェルは慣れた手つきで止血をしているところだった。

 出血のショックで気を失っていたのか…?どれくらいそうしていたか分からないが、戦闘はまだ続いている。剣戟の音は絶え間なく森に響き渡っていた。

「行かなきゃ…」

「はぁ?!その傷で行ったら死ぬわよ!動かないで頂戴!」

 気持ちが思わず漏れていた言葉にミッシェルが反応して強い口調で止められた。だけど、行かなきゃいけない。今自分の状態がどうだったとしても、行かなきゃいけない。具体的な理由を言葉にできないままに、体が感情に突き動かされる。   

「えぇっ?!動いちゃダメですよぉ!」

 杖を掲げて魔法治療を続けるリシアの声は今も泣きそうだ。対して静止しようとするミッシェルは怒りまくっている。

「行かなきゃ。私が自分で動けるうちに…終わらせなきゃ」 

 驚くほどすんなり立ち上がり、置いてあったフェイルノートを手に駆け出す。ラスティーやハボック達のいる射撃ポイントを駆け抜け、ベネットと対峙している賊の〈バーサーカー〉に狙いを付ける。

「シーチェ?!」

「こいつ生きてやがったか!?」

 賊の方は私の殺気を感じたらしく、ベネットから距離を取ると迎撃の体勢を取った。得物は他と同じ斧だが、こいつは両手に斧を持っている。攻撃方向が分かれるかもしれない。 

「死ねぇ!!」

 左右に振り上げた姿勢を見つつそのまま突っ込む。さっきまでは“見えなかった”敵の動きが見える。懐に入る姿勢とタイミングを僅かに変え、一撃を外させる。敵は何が起こったか分からないといった表情。目が見開かれ全身を恐怖が支配したのも分かった。  

「や、やめ…!」 

 敵の嘆く声に刃で答える。返り血をまた浴びた。それも気にならない。べたついて気持ち悪いなんて感覚はとうの昔に消え去っている。私が真っ二つにされるよりも遥かにマシだというものだ。

 フェイルノート付いた血を振り払い次の獲物は木の上の〈アーチャー〉。引き絞る弓矢が黒い焔を纏う。そして耳を衝く屍達の怨嗟の声。おぞましい恨みの歌声と共に放たれた弓矢は森の枝を砕きながら飛んで行った。

  

 2

 

「答えてくれるわよね」

 いつもより抑揚のない声で語り掛ける。血の付いたままのフェイルノートの間合いを保ってゆっくりとその周りを歩きつつ。

 動く事を封じられた賊は3人。ハスタ曰く親玉のガーリックという男が少しして反応した。

「…それは答えられねぇ」  

「主に義理立てして尻尾を振り続けるとでも?」

「バカか。俺らにはハナから義理もクソもねぇ」

 私の煽りに逆上する事なく、しかし強い怒りを含んだ苦々しい表情でガーリックは回答する事を突っぱねる。

 黙ってフェイルノートの切っ先を口に突っ込んでやった。唇が裂け前歯が欠けた様でガーリックは動けないまま痛がり、悲鳴を上げた。

「降伏した訳でも、まして軍人でもない相手の命を救おうとしているのに随分な口を利くのね」

「お、お前が敵を救う訳…!」  

「そう、ただの敵なら殺すだけ。貴方は特別よ?雇い主は誰なの?」  

 もう一度質問を投げると彼はまた黙ってしまった。表情は苦痛に耐えながらも何かを考えているみたいだった。私の事を知っているのなら、敵を救う訳がないという感想は間違いではない。だからこそ命を救われるかもしれないというこの状況を作り上げた。

「…クォンテだ」

「“歓喜の狩人”が相手か」

 帝国軍の高官の1人、弓を得意とする将軍だというのは昔聞いた事がある。私が軍師だった時はまだ名を知られ始めた頃だっただっただろうか。 

「目を付けられたら、最後だ…残念だったなぁ」

「奴より長生きするわよ。じゃ、サヨナラ」 

 フェイルノートを振るい、目を丸くしたガーリックの首を刎ねる。声を上げることもなく静かに事切れた頭領に弟分たちが代わりに声を上げる。その全てが私を罵るものだ。

「よくもアニキを殺しやがったな!!!」

「なに、同じ事を散々して来たでしょう。私利私欲の為に命を奪った者は相応の報いを受けるべきだわ。それとも自分達だけは許されるとでも…?」

 感情の籠っていない声が喉から流れる。敵を殺すことに容赦のない私が今更それに怖気付く事などありえない。命乞いの声を声とも思わない冷めきった心のまま私は残りの2人にも手を下した。

 ようやく戦いは終わった。賊であった男達の死体も森の中でなら土に還る。仲間の死者はおらず、弔いの必要もない。遅れてしまった行程を急ぐべきだろう。

「彼女を村に戻して旅を急ぐべきだわ。もうここに用はない」

 私は傍で成り行きを見守っていたリクに言った。いつもより捲し立てるようになった口調の機微を彼は察することが出来たみたいで短く、そして小さくそうだな、とだけ答えた。

「ただ…」

「まだ何か?」

 リクが付け加えようとするのに対する反応もいつもよりずっとキツくなっていたが、それに怯む事なく彼は続ける。

「傷の治療と野営が先だ。その傷のまま夜のこの森を彷徨いたくはないだろ?」

 空を見上げると木の葉から見える空からは太陽の光が届かなくなり始めていた。私としたことがそんな事にも気が付かないなんてかなり焦っているみたいだ。少し冷静にならないと…

「そうね。焦ってたどり着きませんでした、なんて話にならないし。ところで、あの大荷物の女の人誰?」

「あ、あぁ。実は俺もよく知らない。合流地点でたまたま隠れていたみたいなんだが」

「はぁ~…せっかく仕入れた新しい商品だったのに。どうしようかしら…」

 赤くて長い髪を横で縛っている細面の女性が困った顔で壊れた荷物を見つめている。彼女は私達よりも少し離れた所にいるにも関わらず何かを拾いあげてはぶつぶつ言っているのが聞こえてくる辺り、相当お困りなのが分かる。

「ねぇ、貴女は商人なのかしら?」

「うん、そう。旅の行商人アンナよ。さっきはお邪魔しちゃってごめんなさいね“シリアンの軍師さん”」

 自らを行商アンナと名乗った女性を改めて正面から見ると強烈な既視感を感じた。少しだけ記憶を辿ってみたが思い出せない…思い切って尋ねてみる。

「私を知ってるのはともかく、アンナ…どっかで見たことある顔をしてるわ。どこかで会ってるかしら?」

「あら、私は初めましてよ。他の姉妹が会ってるかもしれないけど」

「他の姉妹も同じ仕事を?そうよね、行商なら似てる人が居てもおかしくない。おかしく…あれ」

 ニコニコと微笑んでいるアンナの顔はやっぱり見覚えがある。それがいつどこでだったのかだけ、頭の隅っこで引っ掛かってしまって思い出すことができなかったが。

 それはまぁ、今は置いておこう。しかし行商人が味方になってくれれば色々と便利な事が増える。私は取引を持ち掛けることにした。

「どうしたの軍師さん?」

「ううんなんでも。私のことはシーチェでいいわ。ところでアンナ、私と取引する気はない?」

「商売の話なら聞いてあげてもいいわ」 

「今後手を貸してくれるなら必要な物資を貴女から優先して仕入れる。どう?美味しい話だと思わない?」

 私の提案にアンナは腕組みをして細い顎に手を当てて考え込んでいる。

(軍師様御用達なら箔が付くし、商売に困ることもなさそうね…新しい人脈も増やせるかも?貴族にも取り入れられれば更に販路拡大…!商売繁盛間違いなし…?!)

(((ぜ、全部聞こえてる…!)))

 仲間達が揃って心配そうにお互いの顔を見合っている。

 ここまで思っている事がでてしまっている商人は初めて出会ったが、きっと彼女なら騙したり裏切ることはないだろう。きっとそんな事を微塵も考えていないから逆に不安になるほど無防備なのかも知れないと思った。

「………喜んでやらせていただくわ。これからもどうぞごひいきに!」 

「え、えぇ。改めて宜しくお願いするわね。くれぐれも…私達の事は他言無用で、ね」

「うふふ、商売人は秘密を守るものよ」

(((いや、不安だわ)))

 …お互いいい取引をしたはずなのに、何故か私の笑顔がぎこちなくなっていた気がした。

 

 3

 

 その日の夜を私達は恐れの森の中で野営を取ることにした。全員で協力して天幕の設営と食料の調達を同時に進めていき、日が沈む前に設営は終わっていた。私はというと再び傷の治療を受けている。

 むすっとしたまま目も合わせてくれないミッシェルとしきりにそんな私達の仲を取り持とうとしてくれるリシア。治療の途中で飛び出して行ってしまったのは申し訳ないと思っているので、ずっと伝えようとしているのだけど中々話を聴いてもらえそうにない。

 こんな時、普段からしっかりコミュニケーションが取れていればもう少し話しやすかったりするんだろうか。等と1人考えながら私も黙って治療の経過を見守っている。

「……」

「……」

「あ、あのぉ。えーっと…皆でお茶でもしませんか?街で買ってきたお菓子があるんです!よ、良かったら…」

 勇気を持って提案してくるリシアの気遣いが心に沁みる。私は2人としっかり話すいい機会だと思って明るく賛成した。

「いいね!貴女の話も是非聴かせて欲しいわミッシェル。故郷の話とか旅の話とかさ」

 私はそう伝えて真っ直ぐ彼女を見つめる。表情を曇らせたままだったが、少ししてミッシェルはその曇り顔をちょっぴり明るくした。

「……仕方ないわね。付き合ってあげるわ」

「ありがと!じゃあ支度は私がするから」  

「待ちなさい。いくら治療したからってその傷は完治してないのに、腕を使う作業は見過ごせないわ。私がやるから、あんたは座ってて!」

 そう言うと素早く包帯を巻き直し、道具を片付けるとミッシェルは馬に結んでいた別の鞄から箱を取り出す。その中には明らかに高価なティーセットが入っていた。そこらで売ってるものじゃない。精巧なデザインと造形、かなり凝って作られている。 

「凄くいいティーセットね」 

「…ふぅん?」

 私の声に反応したミッシェルは目を細めて分かるんだ?みたいな顔をしてこちらを品定めしている。そりゃ私だってお茶会に参加する事も主催する事もあったからそれなりに目は肥えている。舌の方は自信ないが…

 ただ、あれだけのティーセットを持ち歩いているのを見るとミッシェルは平時の何もない時はお茶会を開くのが好きだったのかもしれない。

「せっかくリシアが買ってきてくれたお菓子があるんだし、こうして息抜きも必要よね。そういえばあんたには訊きたい事が山の様にあったんだわ」

 淹れる為の準備をしている間に思い出したみたいにツンとして言い放つ小さなトルバドールに私は何でも答える覚悟を決めてから応じる。

「今日は何でも答えてあげるわ。私も質問するけどいいわよね」 

「ふ、ふん!私は全部は答えないかも知れないけどね!」

 言葉だけを取るとプンプンしているみたいだが、笑顔のミッシェルが嬉々として準備しているのを眺めながらこの後のお茶会を私は楽しみにするのだった。

 

 

 

「あいつら…めっちゃ楽しそうだな」

「あんだけ嫌ってたシーチェとミッシェルが茶を飲むとは」

 少し離れた所で楽しそうに話しをしている様子を見ながらリクとハスタは食事の支度を進めていた。とは言っても料理の経験がない2人ではちっとも工程が進まないので助っ人としてハボックとアリスが入り、リクとハスタは席や食器、飲み水等の支度を進めている。  

「なあ王様」

「リクでいい。今更かもしれんが」

「じゃ遠慮なく…いや、そうじゃない。さっきは悪かったな」

 ハスタは真剣な表情でリクと向き合う。何の事か見当はついた。

「気にするな」

「あ、あぁ…」

 ハスタは思ったよりも会話が続かなそうなリクに困惑した。頭を捻って会話を続けようとしたが続きが思い浮かばないまま、お互いただ準備を続ける時間が続く。 

 唐突に会話を再開したのはリクの方だった。

「あんた、さっき賊の男と会話してただろ。知ってる仲なのか?」

「知ってる仲…そうだな、そう言われればそうとも言えるかもな」

 リクの質問にハスタの手が一瞬止まったがすぐに続ける。それに気が付いたリクは答えてくれるのを待つ。返事がなければこの話は終わりだ。そう思いながら作業を続ける。

「俺の…家族を殺した連中だ」

「!」

「そうバツの悪い顔すんな。珍しい話じゃない、この稼業なら恨みを買う事はままあるもんさ」

「それでも…続けるのか」 

「だから続けるんだ。死ぬまで永遠に。それが俺の償いなんだ」

 視線は手の皿を見つめたまま、力強い言葉で決意を口にするハスタの瞳には強い憎悪と深い悲しみが混ざっている。それを振り払うように自嘲気味に笑ったハスタは努めて明るく切り返す。

「リク、あんたはどうなんだ?シーチェとは“順調”なのか?」

「ん…“順調”? どういう事だ?」

「…え?」

「……は?」

 質問の意味が分からなかったリクと、それ分からないのか!とツッコミを入れたくなるが入れようか迷うハスタがお互いに見合ったまま固まる。

 ハスタが視線を外した瞬間、遠くから高く鋭い声が飛んできたのに2人は背中を震わせた。

「あんた達そういうのは見えない所でやんな!!!」

「「いや、ちが…」」

「いいからさっさと飯の支度しな!冷めちゃうじゃないか!」

 アリスの怒号に気圧されたリクとハスタは一気に作業の速度を速めたのだった。 

 

 

 





 ここまでずっと戦闘シーンとかばっかりなので日常シーンを入れていきたいと思って最後書いてみました。
 最近ゲームのFEを全然やっていないのでイメージがつかないです…が想像と妄想でやっていきたいと思います。
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