それぞれの戦い、人となり,,,これまで共に戦って来た仲間達にスポットを当てる。
今回は騎士のアヤとゲイガン、そしてシスターのリシアのお話。
1
~プラマー伯領 港町カパダ~
公国で最も大きな港町カパダは国一番の魚介類の水揚げ量と他国との交易で賑わう大都市の1つである。商人や町人、傭兵や船乗り達が行き交い商いの声があちこちで繰り広げられる。
その光景はとても公都と自由な移動を領主によって制限されたとは思えない程に混乱もない。普段の日常はここでも崩されていなかった。
小高い丘の上、都市を見下ろす所に建てられているカパダ城の一室に通された私達はここで給仕達にもてなしを受けていた。領主のブレグ曰く“小休止”との事だ。正直言って、ありがたい。ここまで休む暇もないし戦いの連続だった。
装備と戦力を整えたら反撃に移れる。状況は過酷にもない程悪いとも言えるが、それを打開するのが私の役目だ。リクには意地でもゲランを倒し、玉座に戻って貰う。私が受けた恨みを晴らし、ゲランに復讐するための唯一の方法だ。
私を快く思わない兵士は多い。“裏切り者”“国賊”と罵る声はあちこちから聞こえている。それに反抗する事なく私は聞こえない振りをして毎日勝つことだけに集中した。どう動き、何を狙い、どうやって勝つか。劣勢に立つこの軍をいかに勝利に導くかだけを考え行動してきた。
(許されなくてもいい。信頼されなくてもいい。勝利を目指すのは私の目的を達する為だけど)
それでも後ろ指を指されるのは辛い。窓から見える城下町の風景を眺めながらあの人々の中に突然全てを失い、孤独に生きている人はどれだけ居るのか。果たしてそんな人は居るのだろうか。個人の事に構っていられないこんな状況で、そんな事を考えるなんて。相当やられているかも知れない。それが辛いと思うなんて、人間らしさが戻って来たのかなと思った。
そんな時、女性としても綺麗な声の持ち主が私に声を掛けてきた。
「そんなしかめっ面をしていてはせっかくの美人が台無しですわよシーチェ?」
「からかわないでよ。いくら幼なじみでも今の私とつるんだら何を言われるか分からないわよ」
給仕から貰った紅茶を手に甲冑と武器を外した洋服姿(と、言っても戦闘服姿ではあるが)のアヤが近寄って来る。
リクやブレグと同じく、アヤも私にとっては幼なじみだ。彼女の場合は上級貴族の産まれで、私とは良く遊んだしずっと仲良しでもあった。あの雨の日、ゲランに殺されかけて生死を彷徨っている時に声を掛けてくれたのはシスターのリシアとアヤの2人だ。
「周りの方がどう思おうと貴女は私の友人に変わりはなくてよ?気にする事ありませんわ」
「本当に芯が強いわねぇ。でも、かつての友人がまだそう思ってくれてる事はとても嬉しい」
「最初は疑ってしまったけど、貴女の戦い振りを見れば疑惑なのはすぐ分かるもの。また一緒に戦えて私も嬉しいですわ」
そう言って紅茶を嗜むアヤの仕草は貴族そのもの。そんな彼女も戦場に立てば勇猛果敢な戦闘狂に変わってしまうのだから人と言うのは分からない。
騎士になった理由というのも馬の遠乗りに出た時襲って来た賊と真剣で打ち合った時、命のやり取りの筈がアヤは心から楽しんでしまったそうで、それから両親のもう反対を押し退けて騎士になった。
「アヤは戦いになると楽しんじゃうから周りの状況はしっかり見てよね?」
「もちろんですわ。それも踏まえて愉しむものですから」
そこだけ聴くとなんとも危ない感じだが、これまでの時間がその心配を払拭するには十分だ。アヤは戦果に気を取られて孤立する様なヘマはしない。
「まぁ、アヤなら平気なんだろうけど」
「任せなさいな!そうですわ、今度久しぶりに手合わせを願えないかしら?王宮の兵士を相手にしていてもすぐ決着してしまってつまらなかったんですの」
アヤはかなりの剣の使い手だ。私がフェイルノートで掛かってもかなり苦戦する相手だが、鍛練となれば絶好の相手。受けない話はない。
「受けて立つわ!空いた時に声掛けるわね」
待ってますわ、とアヤが会話を切り上げたタイミングで領主の私兵が部屋に入って来た。
どうやら軍議をするのにリクが私を呼んだらしい。私は彼等の案内に従って部屋を後にした。
2
各々が談笑や装備の確認などをして過ごす中、リシアは一人負傷者が収容された医務室で奮闘していた。
一緒にここまで来た人達でも苦しんで居る人がいる。救いたい。ただ救いたい。リシアの想いが体を突き動かし、休息もそこそこに領主の衛生兵達に混ざったリシア。自身の魔力と回復の技術、その力を遺憾無く発揮し負傷者の救護活動を始める。
軍の中でも珍しいライブ等の回復の杖を使える人間は一刻を争うこの場ではとても重宝された。あちこちで彼女を呼ぶ声が上がり、その全てに応え続けた。
-困っている人を一人でも助けたい。この力はその為に女神様が授けてくれたのだからー
リシアの持つ魔力はそれは稀有なものだった。ライブの杖を翳せばたちどころにケガは治り、病気は快方へ向かう。
後ろ指を指されたり、魔女と呼ばれたりして自身の強い魔力を恨めしく思うこともあったが、そんな時に救ってくれたのは住んでいた村にあるシューレ教会のシスターだった。
“貴女の持つ力は貴女だけの力です。どの様に使うかは自分で決める事ですが、シューレ様は貴女の力の使い方を見ています。貴女が最も良いと思う事に使いなさい。人々も貴女の行いで見る目をきっと変えるでしょう”
そんなシスターの言葉に感化され、次の日には同じ教会のドアを再び叩いていた。困っている人の為にこの力を使う。かつて蔑んでいた人が困って頼ってきてもその人さえも救ってみせる―
一人でも多く。少しでも早く。
汗を拭いながら、懸命に負傷者を助けようと夜遅くまで治療を続けるリシアを周りに居る人間はすぐに慕う。
「ありがとう!あんたが来てくれて助かったよ」
「女神様もきっと彼等を救って下さります。勇敢な皆様に女神の微笑みがあらんことを」
医務室の入口で祈りを捧げるリシア。その姿に部屋中の兵士達が静かに頭を下げ、また横になりながら祈りを捧げたのだった。
3
義勇団一寡黙で怪力を誇る男、ゲイガン。
その恵まれた体躯と鍛え抜かれた筋肉、そしてそれを活かした豪快な戦い方は味方からは尊敬を、敵からは恐怖の対象として映っていた。そう言われるのもその勇敢な戦いっぷりと、彼の武勇伝が広く伝わっているからである。その真実を知るのは今となってはゲイガン本人のみで、色々な所で噂になるうちにとんでもなく話が大きくなってしまっていた。
そして今日も彼の数多ある武勇伝を聴きに来た若い兵士達に囲まれ、その状況に困っている。
「ゲイガンさんて、突っ込んでくる熊と素手で格闘して一撃で倒したんですよね?!」
(熊じゃなくて突っ込んで来たのは俺の当時可愛がっていた犬だし殴ってない)
「バカ!そんなこと皆知ってる!この方はドラゴンと格闘して屈服させたんだぞ!」
(それは迷子になっていたドラゴンにちょっと餌を与えたら懐かれただけだ)
どうしてこんな事に。
頼りになると思って貰うのはありがたいが、このあらぬ方向に飛んでいるおとぎ話を確認しにわざわざ来ないで欲しい。
その話を聞いて否定する時間があるなら落ち着く所で詞でも考えたい,
「今のどの話も間違ってるぞ」
毎回ちゃんと否定しているはずなのに。聴きに来る人間の殆どはそんな謙遜して!みたいな反応をする。あまりにそれが続くのでもう否定する事も諦めた。
(もう本当に勘弁してくれ)
寡黙な男の表情が曇りだす。口数が少ない分、相手は顔をよく見ているのでその変化にはいつもより敏くなり、兵士達が固まった。
「す、すみませんでしたぁ!」
ゲイガンを怒らせたと勘違いして血の気が引く兵士達。囲んでいた彼等は最敬礼で頭を下げると蜘蛛を散らす様に瞬く間に解散した。
「…」
残されたゲイガンは全く動じる事なく、飲みかけの珈琲に再び口を付けるのだった。
4
「来たなシーチェ」
「如何様でございますか」
「知恵を借りたい。ここからゲランを討伐するまでの戦略を考る」
それを口にした瞬間、シーチェの口元が緩んだ。まるで待ってましたと言わんばかりの表情でテーブルの上の地図や情報を記した紙を手に取り目を落とす。
「リク。やっぱりこいつをここに招くのはどうなんだ。
そもそもこいつが居ると知ったら兵士達の士気や忠誠心にも関わってくるぞ」
「国王殺しの軍師が居るって?私はやってないって言い続けたけどね。誰にも信じて貰えないからこそ、私の為にも陛下に玉座に戻って頂く」
「それは一体どういう事だ?」
「先代陛下を殺し、私を追放したゲランへの復讐よ」
ここに来る途中の馬車でも言っていた言葉でシーチェはブレグに応えた。あの事件以来シーチェを嫌って居るブレグにとっては今の全てが気に入らないのだろう。ゲクランもブレグと同じ立場だが、彼女が王城からの脱出の時に共闘した時からゲクランは表だってその不満を口にはしなくなった。
ゲクラン曰く、“あの行為から欺瞞心は感じられない。かつてのシーチェ殿の様だ”と。
「私がこれから立てる作戦は全て勝つために立てる策です。敵対し、向かって来る者には一切の容赦はしませんが、よろしいですね?」
シーチェの真っ直ぐな視線がリクを射貫く。これまでシリアンを支えて来た民でもある公国の兵士を敵対するのであれば容赦なく殺すと言う。今は逃亡中の身であるが、このまま黙って居るわけにもいかない。かつての仲間も居るかも知れない。
「抵抗する人間だけか?」
「降伏した者や無抵抗の者には如何なる私の判断も下す事は致しません。為政者として思うまま判断なされるがよろしいかと」
先代の様に治世をし振る舞って来たつもりだったが、ゲランに唆されて反乱に加担した貴族も幾つか居る。それを聴いた時、まだまだ王としては未熟なんだとリクは悟った。強き王であることが民に慕われ、周りが付いてくるものだと思っていたが、どうやらそれは違うとい事実に気付いた頃には王位すら危ぶまれていた。
どうすれば父の様になれるのか。王城を出てからリクは自問してきたが答えになるヒントすら手繰り寄せられないままだ。そしてこの国を想い、国難を乗り越える知恵を与えてくれそうな人物の心は既にこの国と共にはない。
「如何されますか?」
シーチェは表情を変えずに選択を迫ってくる。
(全てを自分で選べと。そう言う事なのか?お前が前に言っていたあの言葉は)
リクの脳裏には三年前に言われたある言葉が鮮明に思い出されていた。
心は決まった。
「分かった。何が必要なのかは俺が考えて選択する。俺が王城に戻る為の策はあんたに任せるぞ」
それを聴いたシーチェは承知致しました。と応えた。そして再び地図と書類に目を落とした。
「状況を教えて頂けますか。敵、味方、国内情勢、知り得る事を分かる範囲でお願い致します」
支援会話風にしようと思っていたのですが、それぞれの人物にスポットを当てる感じにしてみました。
※シーチェとアヤだけ支援会話みたいになりました
彼等のクラスは
シーチェ→軍師
リク→ロード
エリフ→パラディン
アヤ→ソシアルナイト(剣)
ゲイガン→戦士
リシア→シスター
本来リクやシーチェのポジションは剣を扱った方が良かったのかもしれませんが、そこは多めに見て頂けるとありがたいです,,,(笑)
亀もいいとこの更新ですが、引き続き宜しくお願い致します。