to be with...   作:ペンギン13

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1章
BLACK SHOUT


轟音が会場を揺らす。

Diezelのアンプから歪んだギターが吠え、繊細な鍵盤の響きがサウンドを彩り、尋常じゃない手数のドラムがバンドを前へ前へと引っ張っていく。

そして、それらの音を背に圧倒的な熱量を持った歌声が、観客たちの感情をこれでもかと揺さぶる。

 

「相変わらず、とんでもなくうまいなぁ・・・」

 

女子高生離れした演奏に、PA卓をいじりつつ思わず独り言。

 

「でもやっぱり、ベースが惜しい」

 

深紅のベースを必死に弾く彼女を見て思う。

高校生のレベルで考えると彼女は十分上手い。しかし周囲のスキルがやたらと高いせいでリズムの不安定さや、音の粒立ちの粗さが際立ってしまう。

しかし、そんな周りに比較して足りていないはずの彼女のベースの音が、ベースを弾く姿がなんでかわからないけれど記憶に強く焼き付く。なぜだろう・・・。

 

そんなことを考えているうちに、最後の曲が終わった。

メンバーがステージから去り照明が落とされるが、観客の熱狂はいまだ冷めやらず、アンコールを求める声が地鳴りのように鳴り響く。

 

「陽さん!やっぱ凄いっすねRoseliaちゃんは!」

 

左隣の照明卓の前に座る、金髪が興奮気味に話しかけてくる。

 

「ホントな、もうさっさとメジャー行っちまえって感じだよ」

 

「もういつでも行けちゃいそうっすよね!あーでもそうすると、もうここでやってくれなくなっちゃうかなぁ」

 

「まぁ、こんなしょっぱい大きさのハコでやる意味もないだろうしな」

 

「じゃーメジャーは反対っす!燐子ちゃんを間近で見られないとかありえねーっす!」

 

「勇人、お前この間は紗夜ちゃんに踏まれたいとかいってなかったっけ・・・?」

 

照明担当の後輩、日向勇人と頭の緩い会話を繰り広げていると、左耳に着けたインカムから女性の声が入る。

 

「お疲れさまー!Roseliaにアンコール2曲お願いするんだけど、そっちは大丈夫?」

 

「お疲れ様です、まりなさん。大丈夫ですいつでもいけますよ」

 

「おっけー!それじゃあよろしく!」

 

インカムの声が途切れると、薄闇のステージに5人の姿が現れ。

悲鳴のような歓声が上がり、会場のボルテージが一気に上がる。

 

「勇人、アンコール2曲分残業だ。しっかりやろう」

 

「了解っす!頑張っちゃいましょー!」

 

勇人の手でステージが色とりどりのライトで照らされ、舞う埃がキラキラと光る。

卓のミュートを解除し、フェーダーを上げる。

 

「頑張れ、ベーシスト」

 

バンドサウンドと歓声に包まれる会場を眺めつつ、俺はそう呟いた。

 

 

 

----------------

 

 

 

「今回も盛り上がったなぁ・・・」

 

先程までの熱狂が嘘だったかのように、シンと静まり返った会場の床にモップをかける。

本日のライブも大盛況のうちに終了、祭りの後の静けさというか、哀愁というか、この時間は結構好きだ。

 

「Roseliaちゃんが出てくれるライブは安心して見てられますよねー!あこちゃんマジキュート!他の出演バンドさんはなんだか気の毒っすけど」

 

こいつが一緒の時は、あんまり感じられないね、静けさ。

お前、さっきまで燐子ちゃんがどうこう言ってたよね?

 

「まぁほぼRoselia目当てのお客さんだしな、集客がある分こっちとしては大助かりなんだけどさ」

 

「共演バンド以外、人がいないライブとか見てるこっちもしんどいっすからねー・・・」

 

「一般だとわりとよくある話だから言ってやるなよ・・・」

 

バンドをやっていたときを思い出して塩辛い気持ちになる。

ここCiRCLEでは、高校生がブッキングライブに参加する際にノルマと呼ばれるものを課していない。

その代わりに1人1杯、500円のドリンクを購入することをお願いしている。

通常、この規模のライブハウスのブッキングライブに出演するとなると、2万円ほどのノルマがバンドに課せられるのだが、オーナーの方針でこのようなシステムになっている。

曰く「ガキから金をむしり取るのはロックじゃねぇ」とのこと。

もちろん、そういう理由からある程度の集客を見込めるバンドじゃないと出演できなかったりするわけなんだけど、それにしたって若者に優しいライブハウスだと思う。

 

「高橋くーん!今ちょっといい?」

 

出入口から爽やかな女性の声が響く。

 

「まりなさん、どうかしましたか?」

 

「ちょっと今ね、Roseliaの子たちのライブの総評をしてたんだけど、彼女たちがPAの意見も聞いてみたいって言っててさ」

 

「俺のですか?あんまり大したことは言えないと思うけど・・・」

 

というか、女子高生とか下手なこと言ったら泣かれそうで怖い。

 

「大丈夫大丈夫!思ったことをそのまま伝えてくれればいいからさ!ね、お願い!」

 

上目づかいで、手を合わせて頼み込むまりなさん、この人いくつだったっけ・・・。

 

「今、失礼なこと考えなかった?」

 

凄い満面の笑み、目は笑っていない。

 

「Roseliaさんは上で待ってるんですよね、待たせちゃ悪いですし早く行きましょうか!」

 

「失礼なこと考えたよね?」

 

「勇人!悪いけど残りの仕事頼んだ!」

 

まりなさんから逃げるようにロビーへと向かう。

 

「陽さんずりー!オレも友希那ちゃんとお話ししてー!」

 

だからお前、ついさっきまであこちゃんがどうこう言ってたよね?

 

勇人の絶叫を背に、ロビーへの階段を上った。

 

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